2020年2月27日に発売されるSwitch向けソフト
「バブルボブル 4 フレンズ」のインプレッションをお届けする。
「バブルボブル」は1986年に発表されたアーケードゲーム。「泡はきドラゴン」の
バブルンとボブルンが力を合わせて100のステージを攻略していくという内容で,泡の特性を活かしたゲームデザインが素晴らしい,1画面固定型アクションゲームの名作だ。「バブルボブル 4 フレンズ」では,
ゲームシステムやグラフィックスが一新された最新作と,
オリジナル版を忠実に移植した「バブルボブル」が両方遊べるということで,新旧のプレイヤーどちらもが楽しめるパッケージとなっている。
2月27日発売のSwitch向けソフト「バブルボブル 4 フレンズ」。通常/ダウンロード版が5280円(税込)で,サウンドトラックやステッカーなどが付属する特装版が1万780円(税込)だ
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なお本稿では,最新作のゲームモードを「フレンズ」,オリジナル版が楽しめるモードを「オリジナル」と表記している。また泡を使ったテクニックのいくつかには正式名称がないようなので,筆者が馴染んでいる俗称を使って紹介していくので,あらかじめご了承いただきたい。
「フレンズ」では,とある子供部屋に置かれたおもちゃ「バブルン」が不思議な力で動き出し,おなじく動き出した意地悪な魔法使い「どらんく」を倒すために,夜の子供部屋で大冒険を繰り広げる,というストーリーが展開する
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「オリジナル」に加え,新作「フレンズ」には全100ステージ(ノーマル50+ハード50)が用意されている。本棚やおもちゃ箱など,異なるモチーフに彩られた5つのワールドで冒険を繰り広げる
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カワイイ顔して奥深い。名作アクションゲームがSwitchに復活
アーケード版の移植となる「オリジナル」は,吐いた泡で閉じ込めた敵を,背びれや頭突き,踏みつけで割って倒していくアクションゲームだ。敵を全滅させればステージクリアとなる分かりやすいルールで,奥深いプレイや可愛らしいキャラクターを楽しめる。
使うボタンは
「泡を吐く」「ジャンプ」のたった2つ。コントローラの多数のボタンを使う近年ゲームに慣れた人からすればシンプルに感じるかもしれないが,泡は攻撃だけでなく,移動にも活用できたりと,工夫のしがいがあるところが面白い。
また先述のとおり,敵を倒すにしても泡を当てるだけではダメで,かつ閉じ込めた敵をまとめて倒す
「れんさ割り」を意識することで,攻略に深みが与えられている。うまく決めれば得点に倍率が掛かるうえ,敵を倒すと出現するフード(得点アイテム)で高得点が狙えるのだ。
最初のうちはアバウトに遊んでいてもれんさ割りできるが,ある程度ゲームが進むとそうもいかない。ハイスコアを狙うなら,敵を閉じ込めた泡が1か所にまとまるよう,ステージの形と敵の動きを把握してパターンを組むことが大事になる。この辺りは,1980年代のゲームらしい面白さといえるだろう。
たくさんの敵をまとめて割る「れんさ割り」で高得点をゲット。得点によって残機が増えるほか,文字を揃えることで残機が増える「EXTENDバブル」も出現しやすくなる
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例えば敵を閉じ込めた泡の間が少し離れていても,
「隣り合った泡は連鎖して割れていく」という性質を利用し,出した泡でつないでおけば,まとめて倒すことが可能。こうした工夫で一気に倒せれば気分爽快で,かつ得点的にもお得感がある。
またステージによっては敵がすぐに逃げ出したり,地形が複雑だったりで,れんさ割りが困難な場合もある。そんなときは各個撃破に切り替えるのがポイントだ。敵を本当のギリギリまで引きつけ,泡へ閉じ込めると同時に割る,通称
「かぶりつき」や,割ると炎や水,稲妻がほとばしる特殊バブルを利用した攻撃を駆使して進んで行こう。
敵がたむろするハートの中には,普通のジャンプではたどり着けない(左)。しかし水が入ったバブルを割り,水流に乗れば中に飛び込める(右)
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さらにジャンプボタンを押しっぱなしにすることで,泡の上で飛び跳ねる
「あわジャンプ」もあり,ステージ内に流れる
「気流」に乗って漂う泡の性質と組み合わせることで,普通のジャンプでは届かない高所に登ることも。また泡の上でジャンプ→ジャンプした先で再び泡を吐いてジャンプ……と繰り返すことで,足場がない場所を駆け上がる,通称
「階段登り」といったテクニックもある。これらを駆使し,またステージごとのパターンを熟知することで,敵をあっというまに処理できるようになる。ときには,敵が動き出す前に全滅させられるほどだ。
泡の上で飛び跳ねる「あわジャンプ」(上)と,あわジャンプを繰り返しつつタイミング良く泡を吐く「階段登り」で,垂直の壁も駆け上がれる(下)
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泡が持つ3つの性質,すなわち
「中に何かを包む込むことができる」「衝撃があると割れる」「風で漂う」という要素を,一つのアクションに凝縮したのが本作のメカニクスの肝なのだ。一つの要素にさまざまな使い方を盛り込むことで幅を広げるゲームデザインは1980〜90年代のゲームに良く見られたものだが,中でも「バブルボブル」は,群を抜いてこれがうまかったタイトルと言えるだろう。今となっては決して広くはない画面の中に,これだけ濃密なアクションを詰め込んだ本作には,今回の再プレイを通し,改めて感心させられてしまったほどだ。
進行をセーブできなかったり,ディスクシステム版にはあったステージセレクトがなかったりと不満がないではないが,インディーズゲームの流行で,ドット絵の魅力やシンプルなゲームデザインの大切さに脚光が当たる今だからこそ,遊んだことのない人にも一度は触れて欲しい。なおゲームデザイナーの
MTJこと故・三辻富貴朗氏は,生前本作について「女性やカップルをゲームセンターに呼び込むことを意識して作った」と語っており,そうした点はキュートなキャラクターデザインや,スイーツいっぱいのアイテムなどに垣間見ることができる。当時のアーケード事情なども想像しつつ,プレイしてみるのもまた一興ではないだろうか。
アイテムの派手な効果も「オリジナル」の魅力の一つ。「ホーリーウォーター」を取れば敵は全滅し,ステージ上にボーナスアイテムが乱舞する。2人プレイ時は取り合いになるので覚悟しておこう
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こちらは「クロス・オブ・ウォーター(水色)」。ステージが水浸しになり,敵が全滅する
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アイテム「魔法の杖」を取ってステージをクリアすると,存在していた泡が全てフードになり,さらに巨大フードが出現する。敵を倒すうえで,できるだけ沢山の泡を出しておくのが高得点のコツだ
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オリジナルの基板で使えた隠しコマンドも使用可能。その1つ「スーパーバブルボブル」(タイトル画面で[R]・ジャンプ・泡・←・→・ジャンプ・[R]・→)は高難度の100面が遊べるマニア向けのモードだ。このほか「ノーミスでなくてもワープ扉出現」「パワーアップアイテム常時所持」のコマンドが存在する
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ノーミスで特定面に到達すると,ワープ扉が出現。くぐると謎の部屋があり,画面下の壁に書かれた謎の文字を解読すると,隠しコマンド解読のための情報が得られるようになっている
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名作の血脈を受け継ぎつつ,新たな境地を拓いた「バブルボブル 4 フレンズ」
さて,オリジナル版の解説が長くなってしまったが,完全新作である「フレンズ」についても紹介していこう。
「バブルン」「ボブルン」「クルルン」「コロロン」(
「バブルシンフォニー」に登場した面々だが,物語的なつながりはないようだ)の最大4人でプレイできる「フレンズ」だが,基本ルールは「オリジナル」と変わらない。大きく変化したのは
「スキル」と
「しゃがみ歩き」の2つの新アクションだ。
「スキル」は[L]か[R]で発動する特殊技で,ボスを倒しワールドをクリアするごとに新しいものが増えていく。ただし,装備できるのは1つだけ。敵が多いなら,割ると横一直線に稲妻が走る泡が吐けるようになる
「サンダーバブル」や,時間経過で爆発する泡を吐く
「ボムバブル」がオススメ。気流が激しいステージなら,一定時間気流を止める
「ストップウィンド」などもいい。状況に合わせて選びたい。
とくに面白いのが
「ダッシュ」のスキルで,名前こそ地味だが,短時間無敵になって敵をすり抜けられるうえ,ジャンプ中にも使用可能。間合いを一気に詰めて強襲したり,ステージをショートカットしたりもできて,使い方次第でさまざまな可能性がありそうだ。
ボスを倒すと,新たなスキルが入手できる
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「サンダーバブル」(左)や「ストップウィンド」(右)など,スキルの効果は様々。使用できる回数は強力なものほど少なくなる
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「ダッシュ」のスキルは,短時間の無敵を伴う高速移動技だ
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「しゃがみ歩き」は,バブルン達がかがんだ低い姿勢で移動するもので,これを使って狭い通路をとおり抜けたり,敵の飛び道具をかわしたりできる。とくにボス戦では重要になるので,しっかり使いこなしたい。
スキルの回数はフードを取れば回復し,EXTENDバブルを揃えると(残機と同時に)スキルのレベルと上限回数が増加する
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低い姿勢で攻撃を避けられる「しゃがみ歩き」
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敵の動きを見極めた「れんさ割り」や,「あわジャンプ」「階段登り」といったテクニックも,依然として使用可能で,攻略には重要な要素だ。「れんさ割り」によるフードの高得点化や,ステージクリア時の巨大な「クリアフード」も残っており,「バブルボブルしているじゃないか!」と喜ばしく感じられた。
「フレンズ」でも依然重要な「れんさ割り」。ちなみに見た目宝石だろうが王冠だろうが,得点アイテムはすべて「フード」である
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ステージクリア時に登場する「クリアフード」。葡萄のタルトやチョコバナナなど,美味しそうなものが揃っている。ちなみにチョコバナナに添えられたハートチョコには,かつてのタイトーのマスコットキャラ「ちゃっくん」のドット絵があしらわれている
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そのほかの新要素としては,画面比率が4:3から16:9となり,多人数プレイに対応するためかステージは全体的に広めになっていること,またバブルン達の基礎性能が,「オリジナル」よりも向上している点が挙げられる。
前者は1人プレイだとミスしたときのダウンタイムが伸びがちになってやっかいだが,多人数プレイだと攻略を分担したり,ほかのプレイヤーをジャンプの踏み台にできたりもするようなので,新たな定石が見つかる可能性もありそうだ。
カメラがズスームアウトするくらいの広大なステージも登場
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後者は,「オリジナル」におけるパワーアップアイテムがスポイルされたことの裏返しとして,基本性能が向上しているようで,ミスしたときのリカバリーが効きやすいことを鑑みても,かなり遊びやすくなっていると感じられた。また同じステージで何度もミスすると,
「ムテキでコンティニューする」が解禁となり,とりあえずクリアはできるようになる。初心者にはありがたい要素と言えるのではないだろうか。
「オリジナル」ではジャンプボタンを押しっぱなしにする必要があった「あわジャンプ」だが,「フレンズ」では押しっぱなしは不要となった。細かいながらも,遊びやすい配慮だ
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「ワールド」は10のステージで構成され,最後には巨大なボスが登場
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ボスを倒せば超巨大フードが。なお一度クリアしたワールドはいつでも選択可能となる。ありがたい
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一度エンディングを迎えると,全50ステージのハードモードが解禁となる(左写真)。敵が常時怒り状態で,かつ「ムテキでコンティニューする」も不可という,やり込みプレイヤー向けの要素となっている
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先人への多くのリスペクトが散りばめられた良作
初代「バブルボブル」から34年,前作「バブルメモリーズ」から24年もの時が過ぎ,ゲームをめぐる状況が変化した中で生まれた「バブルボブル 4 フレンズ」。「れんさ割り」やフード集めの気持ち良さ,泡の特性を活かしたアクションなど,オリジナルの良いところを受け継ぎつつ,新たな要素を加えた本作は,先人への多くのリスペクトが散りばめられた良作と言える。
その一端は,例えばオリジナルとよく似た構成のステージだったり,故・三辻氏へ献辞を捧げたステージだったり,あるいは「ムテキでコンティニューする」オプションにあしらわれた初代の無敵化アイテム「ちゃっくんハート」だったりに見ることができ,筆者のような旧来のファンには嬉しいばかりだ。広くなったステージや,パワーアップアイテムのスポイルなど,好みが分かれる部分はあれど,2020年に「バブルボブル」を作ろうとするスタッフ陣の気概は,しっかりと感じられた。
背景に「Dedicated to MTJ」(MTJ氏に捧ぐ)と書かれたステージが登場。MTJとは初代を手がけた故・三辻氏のペンネームだ
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初代を思わせる構成のステージも
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「ムテキでコンティニューする」の選択肢に描かれた,無敵化アイテム「ちゃっくんハート」
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かつてタイトーが得意としていた1画面型アクションだが,今やめっきり新作も少なくなってしまった。名作「バブルボブル」も,派生作である
「パズルボブル」の大ヒットで,バブルンとボブルンを見ても「ああ,パズルボブルのキャラだね」と認識されることも少なくない。そんな今だからこそ,「バブルボブル」の面白さに改めて触れてみてほしい。マイニンテンドーストアでは「あらかじめダウンロード」もスタートしているので,ぜひお試しあれ。
「バブルボブル」の操作説明。使われているイラストや文言は,アーケード版のインストカードそのままである
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