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Vigil: The Longest Night
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「Vigil: The Longest Night」プレイレポート。クトゥルフ的な世界観で繰り広げられる探索型の横スクロール型アクションRPG
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印刷2020/10/17 12:00

プレイレポート

「Vigil: The Longest Night」プレイレポート。クトゥルフ的な世界観で繰り広げられる探索型の横スクロール型アクションRPG

 Another Indieは2020年10月15日に「Vigil: The Longest Night」PC / Switch)を発売した。

画像集#001のサムネイル/「Vigil: The Longest Night」プレイレポート。クトゥルフ的な世界観で繰り広げられる探索型の横スクロール型アクションRPG

 「ダークソウル」のフォロワーが“ソウルライク”と呼ばれるようになり,そんな中で,ソウルライクでありつつも2D横スクロールのアクションRPGである「Salt and Sancturary」PC / Switch)というタイトルが生まれた。その「Salt and Sancturary」を強く意識したタイトルがこの「Vigil: The Longest Night」で,いわば“ソルトライク”といったところだろうか。ストアページの説明文にも,「『Vigil: The Longest Night』は『Salt and Sanctuary』と『Castlevania』(悪魔城ドラキュラ)の影響を受けたゲームです」と書かれているほどだ。ちなみに本作と「Salt and Sanctuary」は,コラボレーションが決定している(関連記事)。

 しかし,その後に「このゲームは難易度が高く,プレイヤーはこの上ない恐怖の物語に直面することになります。」とあり,「そ,そんなあ……」とプレイする前から心を挫かれてしまいそうだが,果たして,どんなプレイフィールなのか。過去,心をバッキバキに折られながらも「ダークソウル」シリーズを全制覇し,「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」やメトロイドヴァニアと呼ばれる探索アクション系ゲームが大好物という筆者がプレイレポートをお送りしてみたい。なお,本稿ではSwitch版の発売前のビルドをプレイしている。


“夜警”レイラの帰郷から始まる,常夜の物語。不気味な怪物がはびこる,幻想と陰鬱の世界


 本作は,洗礼と言わんばかりに,ゲーム開始からすぐに初のボス戦に突入する。といっても,いきなり絶望感を植え付けられるようなものではない。回復ポーションも多く所持しているので,まだ操作方法がおぼつかない状態でも,なんとか倒せるだろう。
 このボス戦で,後々苦戦しそうな予感がした人は,メニュー画面で「システム」→「ゲームプレイ」→「難易度」と辿っていき,「イージー」にしておこう。ソウルライクなのに難度設定があるというのも本作の特徴だ。

画面下部にボスのHPゲージ,画面左上にプレイヤーの体力とスタミナゲージ。ゲージ類のレイアウトを見ても,2D であること以外はソウルライクであることがビンビンに伝わってくる。「Salt and Sancturary」をプレイ済みの人なら尚,見慣れた感じだろう
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これも見慣れた……。ただし,本作はゲームオーバーになるとセーブデータをロードするタイプで,自分を倒した相手の元へ行って,失った何かを回収しに行く要素はない。任意のセーブ以外に,定期的にオートセーブもされているので親切だ
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難度はゲーム開始前にも選択するが,プレイ中いつでも変更可能だ
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 さて,本作の舞台となるのは,“永遠の夜の世界”。主人公のレイラは,その世界で“夜警”という女戦士業のような仕事をしている。なかなか家に帰らない生活をしていたレイラだったが,妹の誕生日を機会に,久々に故郷の街・マイエに帰還する。しかし,街では,住人であるブルーナという女性の失踪事件が起こっており,妹・デイジーの姿も見えない。レイラはマイエの街を拠点に,ブルーナとデイジーの捜索を始める……という導入となっている。

時折,レイラの前に現れる「灯の番人」。口振りからして,“夜警”はレイラのほかにもいるようだ。そして,番人が語る“試練”とは……?
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久々に街に帰ってきたレイラ。街の門番たちとも顔なじみの様子がうかがえる
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 朝が来ない世界だけあって,空には常に月が浮かび,街も活気にあふれているとは言い難い。常にどこか陰鬱としており,しかしそれが幻想的な雰囲気を醸し出す一助にもなっている。ストアページの解説によると,H.P.ラヴクラフト()にも影響を受けているらしく,ダークでホラーな世界観が好きな人にはたまらないだろう。

※H.P.ラヴクラフト……怪奇小説で有名な,アメリカの小説家。クトゥルフ(「クトゥルー」とも)神話の生みの親

街……というよりは,かろうじて灯りがある廃村のような,暗いイメージが漂うマイエ。ただ,月光のせいか,どこか幻想的でもある。筆者の勝手なイメージだが,ラヴクラフトの小説「インスマウスの影」に出てくるインスマウスの町を思わせる
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 世界観やストーリーは,街の人々との会話や,本棚の本を読むことでプレイヤーが少しずつ察していくスタイルとなっている。長いイベントを見続けるようなことがないのは良いのだが,序盤から多くの人物名が一気に出てくるので,適当に読んでいると「誰が誰で,それぞれの関係は……」と把握するのは,やや困難かもしれない。

 また,NPCのセリフも,正直,何を言っているのか分からないことも多く,レイラも「何を言っているの?」と直球の返しをすることも。これは翻訳がおかしいわけではなく,その人が動揺・混乱していることが多いからで,「こういう世界観なんだ」と思ってもらえればいい。そもそも,この世界は単純に変な人が多かったりする。

固有名詞も多く出てくるが,なんとなくで読んでいるだけでも想像力を刺激される
画像集#009のサムネイル/「Vigil: The Longest Night」プレイレポート。クトゥルフ的な世界観で繰り広げられる探索型の横スクロール型アクションRPG

お前は何を言っているんだ……(※このキャラクターは,こういうキャラです)
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 次の目的地などは,メニューの「メモ」を読めばだいたい分かるが,サブクエスト的なものとの区別がされておらず,誰に頼まれた依頼をこなせば話が進むのかは,ちょっと分かりづらいかもしれない。
 また,サブクエストが未クリアの状態で先へ進むと,×マークが付くことがあるようで,こうなると,おそらくこのサブクエストは手遅れ。クエストのクリアは不可能になるのだろう。本作にはエンディングが複数あるらしいのだが,分岐条件は,このあたりのクエストクリア状況が関係してくるのかもしれない。

あるボスを倒した後,一部のクエストに×マークが。クエストをしっかりとクリアしてから先へ進みたい人は,セーブデータを分けておき,「このクエストは,どのボスを倒すまでに解決しなければいけないか」をチェックしながら進めるのもいいだろう
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 街も含め,フィールドマップはすべてサイドビューでの横スクロールアクションとなっている。段差がある場所では,上を押しながらジャンプボタンを押すと上の段差に登り,そこから下を押しながらジャンプボタンを押すと,下の段差に降りる。アクションゲームではおなじみの操作だ。

段差のある場所は,2通りの道がある。背景に溶け込んでいるような,分かりづらいルートもあり,その先には宝箱があることも
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 高所から落下するとダメージを受けるが,上から落下しないと行けないような場所もあり,マップは探索の楽しみにあふれている。自分より低い位置に関しては,下を押しっぱなしにすることで,少しだけ様子が見える。下に何があるか分からず,怖くて降りられない……という場合は,この方法で探ってから降りるといいだろう。

下が見えなくて怖い……そんなときはしゃがんで下を押しっぱなしにしてみよう
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 また,比較的早い段階から「二段飛び」が可能になり,これによって行ける範囲がグッと広がる。序盤から,いかにも二段ジャンプがないと行けなさそうな場所がいくつかあり,今までに行った場所を調べ直す楽しみがある。こうした部分はメトロイドヴァニア的な楽しみの醍醐味と言えるだろう。

2体目のボスを倒すと,早くも「二段飛び」が解禁される。ここからは一気にメトロイドヴァニア的な“探索の楽しさ”が生まれる
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ゲームが進むと「スライディング」も可能になり,さらに探索の幅が増える
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 序盤を少し過ぎたあたりで,レイラの身に少し不思議なことが起きる。マイエの街や周囲の地形は同じなのだが,そこに住まう人々と会話すると,微妙に歯車が噛み合わない違和感を覚えるのだ。

 しかも,街を騒がせているのは失踪事件ではなく,原因不明の疫病になっている。先ほどは辺鄙な場所で花を見ていた少女が,街の病院のベッドで寝ていて,話すと「そんな所には行っていない」と言うし,行方不明だった妹・デイジーは街に戻ってきていて,病院で手伝いをしている。酒場のおばさんとはついさっきも話したはずだが,「久しぶり」と言われる。軽く混乱するレイラだったが,疫病の原因を探るべく,再び街の周辺を飛び回ることになる。

 序盤から登場人物の数が多く,人間関係も含めて「誰が誰だかよく分からんなぁ」と思いつつ進めていたのだが,レイラの周囲に異変が起きてからは,「あれ? この家に住んでいた人は違う人だったような……いや,この人で合ってるっけな?」と意外なまでに,自分が「以前との違い」に気付くことに驚く。
 序盤から多くの登場人物を放り込んできたのも,あえてプレイヤーに「1人1人の名前や人間関係は覚えていられないけど,とにかくこの街には多くの人がいるんだな」という,わざと「ぼんやりとした把握」をさせるためのものだったのかな,と感じる。そうすることで,このときに生じる違和感が微妙にあやふやになり,久しぶりに帰郷したレイラとプレイヤーの感覚・視点が重なるような気がするのだ。

 疫病の原因を追っていく内に,誰を信じて,誰を疑うべきなのかの疑心暗鬼に陥る出来事もあり,気付けば,ストーリーにグイグイと引き込まれる。「Vigil: The Longest Night」という1つの怪奇・幻想小説を読んでいるような没入感があり,「ダークソウル」とはまた一味違ったダークさが,確かにある。


4つの武器と豊富なスキル。純粋な強化を望むか,新たなアクションを得るか


 怪物を倒していくと経験値が溜まりレベルアップし,この際に「スキルポイント」が得られる。このスキルポイントを何に振るかによって,プレイヤーごとに大きく性能の異なるレイラを育て上げることができる。

 レイラが扱える武器種は,剣,斧,デュアルブレード,弓の4種類。それぞれに固有の武器スキルがあり,この4つに,レイラの基礎能力を上げる「コモンスキル」を加えた計5つのスキルツリーにポイントを振っていく。

スキルポイントさえあれば,何にどれだけ振ってもマイナス要素はない。おそらくは,自分の好みの武器スキル1種+コモンスキルに振っていくことになるだろう
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武器によって動作の軽い・重いもあるが,「特殊アクション」も異なる。ひととおり使ってみよう
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 とにかく安定してゲームを進めたいという人は,「最大HPを増加させる」「被物理ダメージを軽減する」「攻撃力を上げる」というスキルを効率良く習得していくといいだろう。
 しかし,こうした能力アップ系のスキルばかりにポイントを使っていると,使用する武器固有のアクションの習得が遅れてしまう。堅実なバトルスタイルの筆者はまさにこのタイプで,「そろそろコモンスキルには振りたいものがなくなってきたから,武器のアクションに振ろうかな……」と,随分遅れて習得したところ,敵をサクサク倒せる爽快アクションがあることを後になって知り,今までコツコツと斧を振り回してきたことを,ちょっと後悔した。

グルグル回りながら横に薙ぐ「旋風」,ジャンプからの回転落下攻撃「アースシェイカー」。斧の通常攻撃は重くてスローなだけに,豪快な技は快感
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 「よし,この武器でいこう!」というお気に入りの武器ができたら,鍛冶屋で鍛えておきたい。各所で「小さな微光の石」というアイテムが拾えるのだが,これを1つ消費することで,武器・防具を1段階強化できる。

「小さな微光の石」で鍛えられるのは+3まで。次の段階からは「微光の三角石」が必要になる。これは防具も同様
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通常の強化とは別枠で,魔法系の強化も可能。こちらは段階的な強化ではなく,1回のみ。使用する宝石によって効果が異なる。防具の強化も可能だ
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 小さな微光の石はゲームを進めていけばそれなりの数が手に入るし,敵が落とすこともある。どれに使うべきかはそこまで深く悩まなくていいと思うが,なかなか決められない人はスキルポイントを温存してセーブしておき,武器スキルに振ってアクションを試してみた後でロードし直すのもいいだろう。

 さらに,「奥義」というものもある。奥義と聞くと,必殺技のような物理攻撃をイメージする人が多いのではないかと思うが,本作では,感覚としては魔法に近い。ゲーム中の説明文では「奥義呪文」と表示されるので,実際,魔法なのかもしれないが,クールタイム制になっていて,MPのようなものを気にする必要はない。

最大8個の奥義をセットしておき,クールタイム中に他の奥義に切り替えて使うことができる。奥義はサブクエストの報酬など,ゲームを進めていくと少しずつ増えるものなので,序盤からあれもこれも使えるというわけではない
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おそらく最初に使うことになる攻撃系奥義「炎のカササギ」。青い鳥を複数召喚して,敵にけしかける。クールタイムが0.5秒と短く,連打できるのが強みだが,威力はあまり高くない。接近したくない相手を遠くから攻撃するとき用だろうか
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自分が走った跡が燃え盛る「怒りの行進」。炎に触れた敵に継続ダメージを与えられる。地面を這うスライム系がいる場所で使うと便利
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炎の弾を地面に投げ,その後,空中で3つに分裂する「バウンシング・ファイヤーボール」。一見,使いづらそうだが,至近距離で敵に当てると結構なダメージを与えられる
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 奥義の中には攻撃手段だけではなく,面白い効果を持つものもある。
 例えば,「堕ちた目玉」は,離れた位置に何があるかを確認できる奥義。本来なら自分が進んで画面をスクロールさせないと確認できない場所や,深い穴の底などに投げ込むと,転がっていった目玉を中心に画面がスクロールし,そこに何があるかを確認できるというものだ。ほかにも,最後にセーブしたフクロウの彫像へワープできる「フクロウの羽根」は超便利で手放せない。

「堕ちた目玉」。気味が悪いが,便利
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セーブポイントとなるフクロウの彫像。これに触れると,HPが回復し,倒した敵が復活する点もソウルライクだ。彫像からほかの彫像へは元々テレポートできるのだが,「フクロウの羽根」を使うと,自分がどこにいても,最後に訪れたフクロウの彫像へ飛ぶことができる。フクロウの羽根はゲーム開始直後に手に入る
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奥義の中には特定のオブジェクトをどかせるものなど,シナリオ上必須になるものもある。怪しいマークのオブジェクトを見たら,場所を覚えておきたい
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 装備品も豊富だ。防具はそれぞれ固有のグラフィックスが用意されていて,変更するとレイラの外見が変わる。頭,マスク,胴体,手,足といった部位ごとにすべて変わるので,自分なりのコーディネートが楽しめる。

 ただ,この装備品を外見に反映させる処理がかなり重いのか,Switch版では装備変更時に数秒間,まったくキー入力も受け付けないフリーズ状態のようになる(※とくに,初めての装備品に変更するときが長いように思う)。長いときでは8秒間ほど止まるので,「フリーズしたのか?」と焦ってしまう。

新たな装備品を得るたび,性能だけでなく,どういう外見に変化するのかの楽しみもあり,嬉しいところだ。装備をすべて外すとセクシーな姿になれるが,「ダークソウル」シリーズのように動きが身軽になりはしないので,単に防御力が低いだけのマゾプレイに……
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装備品には「指輪」もある。装備できる指輪は最大4つまで。このあたりも「ソウル」シリーズを彷彿とさせるが,あちらと異なり,同種類の指輪を複数装備することもできる。「攻撃+5」の指輪を複数つけて攻撃力を大幅に盛るなど,チューニングの幅が広い
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ロード中に表示される装備品の説明画面。圧倒的既視感……!
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比較的序盤の店で売られている高額装備。スゴく強そうなので,めっちゃ金貯めて無双したろか! という野望が頭をよぎる
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ちなみに,その武器でしか出せない固有技を持つ武器もある。この「黒曜石の短剣」には「破空斬」と書いてあったので,表示されているコマンドを入れてみると……カッコイイ!
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ソウルライク+メトロイドヴァニア+ラヴクラフトの怪作。忍び寄る“ソルトライク”の足音


 「ソウルライク」と聞いて一番怖いのは,やはり,難度の高さだろう。「面白そうだけど,自分はちゃんとクリアできるのだろうか……」という不安を抱える人も多いのではないだろうか。
 しかし,本作の場合は難度「イージー」がある。ゲームによっては,「この難しさで,イージーを名乗るのかよ!?」と感じるものもあるが,本作は「イージーだ……!」と納得できる易しさだ。

 序盤から容易に装備を鍛えられることに加え,レベルアップで得られるスキルポイントを割り振ることでの強化もある。前述のように,「最大HPを増加させる」「被物理ダメージを軽減する」「攻撃力を上げる」というスキルを優先的に習得していくことで見違えるほどに強くなる。さらにスキルによって,回復ポーションの回復力を高めたり,所持できる本数も増やせたりする。正直,ここまでしなくとも,ボス戦は意外とゴリ押しできてしまうこともある。……イージーだからだろうけど。

筆者はすでにレベル40台まで来ているので,そこそこ進んでいると思うが,これまでのボスで「何度やっても倒され,心が折れる……」という戦いはなかった。イージー万歳!
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 本作が影響を受けたという「Salt and Sanctuary」には難度設定がなく,それなりに難しいゲームだ。しかし本作の場合,イージーを選択すれば,少なくとも,バトルの難度が高くて挫折するということはないのではと思う。ソウルライクというジャンルの特徴を覆すような,「このジャンルの初心者にもオススメ」なゲームだ。難度を「ハード」にしたら分からないが。

このマップの画像はまだ上にスクロールするのだが,地下マップなどは,これとは別になっている。マップは,かなり広いと言えるだろう。ただ,セーブポイントでもあるフクロウの彫像が点在していて,彫像から彫像へはテレポートできるので,移動はそう困難ではない
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 また,何かを失うわけではなく,純粋にセーブポイントからの再開という点や探索の楽しみは,もうひとつの影響を受けたという作品「Castlevania」シリーズの後期作品に通ずるものがある。

街では,家を購入できそうなイベントも。法外な価格を吹っ掛けられるので,筆者はまだ買えていないが,そういえばアイテム欄に「部屋の装飾に使用できる」という物があったような……
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でも,これはちょっと飾りたくないよね……
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 ただ,気になる点がまったくないわけではない。
 まず,エリア切り替え時の読み込み時間が,かなり長い。筆者がプレイしたのはSwitch版だが,microSDカードより遥かに読み込みが速い本体メモリ内からの起動でも長く感じた。エリアの切り替え以外にも,街には家や酒場などが存在するが,その1つ1つに入るたびにそこそこ待たされるため,ゲームのテンポを損ねている。ここは非常に惜しい点だと感じた。

 もう1つは,ゲームそのもののフリーズだ。上記のように,エリア切り替え時の読み込みが長めなのだが,この読み込み中にフリーズしてしまうと,ゲームを再起動するしかなくなる。筆者はこの原稿を書き上げるまでに,このフリーズ現象を5回体験している。しかも,その内の1回はボス戦を終えた直後のエリア切り替えだったので,苦労して倒したボスからやり直すハメになり,なかなかヘコんだ。

Nooooo……となる瞬間
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 読み込み中以外にも,ゲーム中に突然エラー表示が出てゲームが強制終了したこともあった。しかもまれに起きるのではなく,割と頻繁に発生する。
 このエラー落ちの怖い点は,セーブしたはずのデータの内容が巻き戻るときがあることだ(※巻き戻らないこともある)。症状としては,「およそ1つ前にセーブした場所のデータがなぜか復活して,そのデータに書き換えられている」という感じだろうか。
 長めのダンジョンを探索し尽くして,やっと見つけたフクロウのセーブポイントでセーブ。さあ,そろそろボスかな……というところでエラー落ちして,再起動して再開してみると,ダンジョン突入前のセーブデータに巻き戻っていた。「セーブさえすれば安心」というわけでもないのが恐ろしい。これには心が折れかけた。

 ちなみに,担当編集がプレイしたSteam版では上記の不具合は起きていないようで,どうやらSwitch版特有の問題のようだ。なお,冒頭で述べたように本稿は発売前のバージョンでプレイしており,これらの不具合は,今後のアップデートで改善の見込みがあるようだ。

 また,細かくツッコむと,セーブデータに表示される「セーブした場所の地名」と,実際の現在地名が異なっているケースがある。たとえば,「見捨てられた家」という場所があるのだが,そこでセーブすると「荒廃した家」と表示される。しかも,そことは別の場所で「荒廃した街」という地名があるため,非常にややこしい。

ここはテレポート名では「見捨てられた家」,しかしセーブデータでは「荒廃した家」,これとは別に「荒廃した街」というテレポート場所がある……
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 ラヴクラフトに影響されているとなると,おそらく原文は難解だったのではないかと思うが,ローカライズに関しては,分かりやすい部類に入ると思う。ただ,喋っている人物の名前表示の間違いや,誤字脱字が数か所,見受けられた。

このシーンでは,一部,喋っている内容が表示されない
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このシーンでは,おそらくレイラのセリフなのに「デイジー」と表示されてしまっている。そのため,デイジーが1人で会話しているヤバい人みたいな感じに……
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 このように,普通にプレイしただけでも結構ヤバい不具合が出てきているので,アップデートで修正されるのを待ちたい。不具合を除けば,とても楽しいゲームなのだ。

 「『Salt and Sanctuary』と『Castlevania』の影響を受けたゲーム」というだけはあり,この2作品が好きな人は必ず楽しめるはずだ。「Salt and Sanctuary」よりキャラクターが大きく描かれ,3つの難度を用意。序盤から,いかにも二段ジャンプじゃないと届かない位置に宝箱が置いてあったり,豊富な装備品で,どういうビルドにするかと楽しく頭を悩ませたりとメトロイドヴァニア的な探索の楽しみは充分だ。
 まさに「Salt and Sanctuary」と「Castlevania」の良いとこ取りをしつつ,クトゥルフ神話を思わせるダークな世界観を加えた,新たなソルトライク作品の誕生だといえる。筆者はメトロイドヴァニアが大好きなのだが,本作のような“ソルトライク”は,その進化型を見せられる思いだ。今後,こういうタイプのゲームがどんどん増えていきそうな予感すらある。

 ちなみに,「Vigil」とは「徹夜」を意味する単語らしい。明けない夜の世界をさまようレイラの物語にふさわしいタイトルだと思うが,プレイヤーの皆さんは,のめり込みすぎて思わず徹夜してしまった……ということのないように。

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