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レビュー
RDNA 2世代のミドルクラス市場向けGPUは,RTX 3060 Tiと戦える
AMD Radeon RX 6700 XT
2021年3月17日22:00,AMDが開発したRDNA 2世代のミドルクラス市場向け新型GPU「Radeon RX 6700 XT」(以下,RX 6700 XT)のレビューが解禁となった。モデルナンバーからも分かるとおり,RX 6700 XTは,2020年11月に登場した「Radeon RX 6800」(以下,RX 6800)の下位に置かれるGPUで,AMDは1440pでのゲームプレイをターゲットしたGPUであるとアピールしている。
それに加えて,北米市場における搭載カードの想定価格が479ドルと,RX 6800の579ドルから100ドル安く,競合製品である「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070)の499ドルよりも,20ドル安い位置付けだ。
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RX 6700 XTについて,AMDは,「ゲームを高画質な設定にしても高いフレームレートを発揮する」と豪語しているが,それは本当なのだろうか。早速,その性能を検証してみたい。
GPUコアにNavi 21を半分にした形のNavi 22を採用
ブースト最大クロックは驚きの2.5GHz超え
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冒頭でも述べたように,RX 6700 XTは,RDNA 2アーキテクチャに基づくGPUで,コアには「Navi 22」(開発コードネーム)を採用している。Navi 22は,TSMCの7nmプロセスルールで製造されるもので,ダイサイズは336mm2と,RX 6800の「Navi 21」コアと比較して65%程度の規模に収まっている。搭載するトランジスタ数は約172億個で,これは競合するRTX 3070などが採用する「GA104」コアに近い。
RDNA 2アーキテクチャでは,シェーダプロセッサ16基を束ねて,AMDが「Stream Processor」(以下,SP)と呼ぶ実行ユニットとしたうえで,それを4つ集めて,キャッシュメモリやレジスタファイル,スケジューラにテクスチャユニットなどを組み合わせた演算ユニット「Compute Unit」(以下,CU)を構成している。
このCUを2つセットにした「Dual Compute Unit」を10基束ねて,さらにL1キャッシュやラスタライザ,それにレンダーバックエンドなどを組み合わせたものを,AMDは「Shader Engine」と呼んでいるわけだが,Navi 22コアはShader Engineを2基搭載している。つまりNavi 22では,CUの総数は2×10×2で40基となり,SPの総数は16×4×40で2560基となる計算だ。
なお,RX 6700 XTは,Navi 22のフルスペック版は,Navi 21コアをちょうど半分にした規模である。ただ,すべてを単純に2分の1にしたわけではないことは,西川善司氏による解説記事で詳しく説明しているので,参照してほしい。
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また,RX 6700 XTは,上位モデルと同様にリアルタイムレイトレーシング処理を担う「Ray Accelerator」(以下,RA)を実装している。RDNA 2アーキテクチャでは,1基のCUに1基のRAを組み合わせる構造を採用しているので,Navi 22におけるRAの総数も40基となる。これもRX 6800の80基に対して,50%の規模だ。
さらにRX 6700 XTは,RDNA 2アーキテクチャにおける特徴のひとつに挙げられる「Infinity Cache」と呼ばれるキャッシュシステムも搭載している。その容量は96MBで,RX 6800の128MBと比較して75%の規模となる。AMDによると,RX 6700 XTにおけるInfinity Cacheは,256bit接続で12GHz相当のGDDR6メモリと比較した場合,最大でメモリバス帯域幅は2.5倍向上したのに相当するとのことだ。
そのほかに,CPUがグラフィックスメモリに対するフルアクセスを可能とする「Smart Memory Access」をサポートする点や,PCI Express 4.0(以下,PCIe 4.0)に対応している点などは,上位モデルと違いはない。
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その一方で,グラフィックスメモリにGDDR6メモリを採用するものの,メモリインタフェースは192bitに抑えられている。メモリクロックは16GHz相当なので,メモリバス帯域幅は384GB/sとなり,これはRX 6800やRTX 3070の448GB/sに比べると86%程度の規模だ。AMDとしては,メモリインタフェースの弱点はInfinity Cacheでカバーできる,という算段なのだろう。
なお,グラフィックスメモリ容量は12GBと,RX 6800よりは少ないものの,RTX 3070の8GBを上回っている点は押さえておきたいポイントだ。
そんなRX 6700 XTの主なスペックを,RX 6800と,従来製品である「Radeon RX 5700 XT」(以下,RX 5700 XT),それにRTX 3070と「GeForce RTX 3060 Ti」(以下,RTX 3060 Ti)の仕様をまとめたものが表1となる。
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カード長は実測で約266mm
重量は900g弱と比較的軽め
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カード長は実測で約268mm(※突起部除く)だった。RX 6800リファレンスカードが同266mmなので,それとほぼ同サイズと言っていい。ただ,横から見ると,基板自体は約244mmほどしかなく,GPUクーラーが,基板後方に20mmほどはみ出た格好だ。RX 6800リファレンスカードは,基板は約264mmなので,RX 6700リファレンスカードでは,GPUの規模に合わせて基板も短くなっているようだ。
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外観はブラックとシルバーのツートンカラーというデザインで,これはRX 6800リファレンスデザインを踏襲したものだ。ただ,90mm角相当のファンは上位モデルの3基から2基へと減っており,このあたりもGPUの規模に合わせた変更と言っていいだろう。なお,これらのファンは,GPUの負荷が低い,いわゆるアイドル状態では回転を停止する機能も用意されている。
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PCIe補助電源コネクタは,8ピン+6ピンという一般的な仕様だ。外部出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.1 Type A×1という構成で,RX 6800リファレンスカードが用意していたUSB Type-Cを省略した代わりに,DisplayPortが増えた格好だ。
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レビュワー向けテストドライバを使用
レイトレーシングのテストも実施
それではテスト環境の構築に話を移そう。
今回の比較対象には,上位モデルのRX 6800と,置き換え対象となるRX 5700 XT,それに競合製品であるRTX 3070とRTX 3060 Tiを用意した。このうち,RX 5700 XT搭載カードとして利用したSapphire Technology製「SAPPHIRE PULSE RADEON RX 5700 XT 8G」は,ブースト最大クロックを1925MHzに引き上げたクロックアップモデルだが,MSI製ソフト「Afterburner」(Version 4.6.2)でブースト最大クロックをリファレンスの1905MHzに変更すると,ゲームクロックが1300MHz台まで低下してしまったので(※GPU-Zによる確認),このカードについては工場出荷時設定のまま使用していることをここで断っておく。
なお,RX 6700 XTは,PCIe 4.0に対応しているため,CPUに「Ryzen 9 5950X」を,マザーボードにAMD X570を搭載したMSI「MEG X570 ACE」をそれぞれ選択している。
利用したグラフィックスドライバは,Radeon勢が「20.50-210301a
一方のGeForce勢は「GeForce 461.92 Driver」で,これはテスト時の最新バージョンにあたるものだ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
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マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | Radeon RX 6700 XTリファレンスカード (グラフィックスメモリ容量12GB) |
Radeon RX 6800リファレンスカード (グラフィックスメモリ容量16GB) |
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Sapphire Technology SAPPHIRE PULSE RADEON RX 5700 XT 8G (Radeon RX 5700 XT,グラフィックスメモリ容量8GB) |
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GeForce RTX 3070 Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 EVO(MZ-75E500,500GB) |
電源ユニット | Corsair CMPSU-1200AX(定格1200W) |
OS | 64bit版Windows 10 Pro(Build 19042.804) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 2.13.27.501 |
グラフィックスドライバ | 20.50-210301a-364541E-RadeonSoftwareAdrenalin2020 |
GeForce 461.92 Driver |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション23.2に準拠。ただし,RX 6700 XTがレイトレーシングに対応しているので,その性能を確かめるために,「3DMark」(Version 2.17.7137)におけるレイトレーシングテストの「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」を追加した。
さらに「Fortnite」では,レギュレーションで規定するテスト方法に加えて,グラフィックスAPIをDirectX 12に変更したうえで,レイトレーシングを描画負荷が最大となるように有効にしてテストを実施している。なお,レイトレーシング有効時でも,テスト方法自体はレギュレーションと同じだ。
解像度は,AMDがRX 6700 XTに関して1440pでのゲームプレイを想定しているため,3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択している。
RX 6700 XTの性能はRX 6800の8割前後
タイトルによってはRTX 3070を上回ることも
それでは,3DMarkの結果から順に見て行こう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
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RX 6700 XTは,RX 6800の80〜88%程度の性能で,RX 5700 XT比では20〜31%程度上回った点はなかなか立派だ。競合製品との比較では,Fire Strike“無印”やFire Strike Extremeでは,RTX 3060 TiはもとよりRTX 3070を上回っている点は評価できるポイントだ。Fire Strike UltraではRTX 3070に逆転を許してしまうものの,その差は1%もない。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
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ここでも,RX 6700 XTのスコアはRX 6800の80〜82%程度に落ち着いている。RX 5700 XTとの差も26〜30%程度あり,RTX 3070を安定して上回ているあたりは,特筆すべきポイントと言えるだろう。
グラフ3は,Fire Strikeからソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだ。
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すべてのテストにおいてCPUを統一しているため,スコアもキレイに横並びになるはずだが,Radeon勢のスコアのほうが若干低い傾向が見られる。Radeon SoftwareのCPUに対する負荷が少しだけ大きいのかもしれない。
GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ4だ。
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RX 6800 XTやRX 6800がそうであったように,ここでもRX 6700 XTのFire Strike“無印”のスコアが,RTX 3070やRTX 3060 Tiに対して芳しくない。RTX 3070のスコアを見た限りでは,CPUのボトルネックとも考えられず,何かしらドライバソフト側に問題があるのではないだろうか。
それ以外のテストを見ていくと,RX 6700 XTは,RX 6800の78〜79%程度で,RTX 3070に届かないものの,RTX 3060 Tiに対しては格の違いを見せ付けている。
DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果に移ろう。グラフ5は総合スコアをまとめたものだ。
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ここでも,RX 6700 XTのスコアは,RX 6800の79〜82%程度,RX 5700 XTの+20〜22%程度と,Fire Strikeの結果を踏襲した形となった。ただ,NVIDIAのAmpereアーキテクチャGPUは,Time Spyでスコアを伸ばす傾向があり,ここではRTX 3070に大きな差を付けられてしまっている。RTX 3060 Tiに対しても,Time Spy“無印”ではなんとか上回っているものの,Time Spy Extremeでは,逆に約4%の差を付けられている。
続くグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果となる。
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まず,GPUテスト結果からだが,RX 6700 XTはRX 6800の77〜79%程度で,総合スコアと似た傾向だ。やはり,RTX 3070には太刀打ちできておらず,RTX 3060 Tiに対しても,Time Spy“無印”で上回るものの,Time Spy Extremeで逆転を許してしまっている。
一方のCPUテストの結果は,Fire Strikeとは異なり,CPUが同一なためスコアもほぼ並んでいる。RTX 3070がTime Spy“無印”で多少高いものの,誤差の範疇と言っていいだろう。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。なお,RX 5700 XTはリアルタイムレイトレーシングに対応していないので,スコアもない。
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RX 6700 XTのスコアは,RX 6800の約76%となった。RA数で見ると,RX 6700 XTはRX 6800の67%しかないものの,それより差が詰まっているのは,動作クロックの高さがカバーしたのだろう。ただ,それでもRTX 3060 Tiと比べれば約84%程度しかなく,レイトレーシングの弱さは上位モデルと同様,RX 6700 XTでもウィークポイントであると指摘しておきたい。
DirectX Raytracingの性能を見るDirectX Raytracing feature testでも,傾向は同じだ。その結果がグラフ9だが,RX 6700 XTはRX 6800の約71%の性能だが,やはりRX 3060 Tiにはまったく届かない。RTX 3070の半分程度の性能しか発揮できておらず,Port Royal以上にリアルタイムレイトレーシングの弱さが課題であることははっきりしたと言えよう。
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続いては実ゲームでのテストであるが,「バイオハザード RE:3」の結果がグラフ10〜12となる。
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ここでも3DMarkと同じく,平均フレームレートでRX 6700 XTは,RX 6800比で76〜83%程度の性能を発揮している。RX 5700 XTに対しては26〜30%程度の差を付ける一方で,RTX 3070には届かない。ただ,RTX 3060 Tiに対しては,平均フレームレートと99パーセンタイルフレームレートともに安定して上回る性能を見せた。
RX 6700 XTが意地を見せたのが,グラフ13〜15の「Call of Duty: Warzone」(以下,CoD Warzone)だ。
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ここでRX 6700 XTは,平均フレームレートにおいてRX 6800の82〜87%程度まで差を詰めており,RTX 3070に対しても,あと一歩のところまで近づいている。RTX 3060 Tiに対して8〜11%程度もの差を付けている点は立派で,とくにAMDが想定している2560×1440ドットの99パーセンタイルフレームレートで,RTX 3060 Tiが90fpsに満たないのに対して,RX 6700 XTは100fpsを上回っている点は特筆に値する。
レギュレーションどおりのテストを行ったFortniteの結果がグラフ16〜18だ。
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ここでは,RX 6700 XTの結果があまり芳しくない。平均フレームレートにおいてRX 6700 XTは,RX 6800の73〜81%程度の性能を発揮しているものの,RTX 3070はおろかRTX 3060 Tiにもまったく届かない。Fortniteは,GeForceシリーズへの最適化が進んでいるため,RX 6700 XTには不利な戦いになったということなのだろう。
そんな傾向にあるFortniteで,レイトレーシングを有効にすると性能はどう変わるのだろうか。その結果がグラフ19〜21となる。
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3DMarkのPort RoyalやDirectX Raytracing feature testがそうであったように,RX 6700 XTの結果は今ひとつだ。平均フレームレートでRTX 3060 Tiの47〜69%程度の結果しか残せておらず,レイトレーシングの弱さはゲームでも表れている。それに加えて,RTX 3070やRTX 3060 Tiは,DLSSを有効にすることでフレームレートが伸びることを踏まえると,やはりRX 6700 XTにおけるレイトレーシングは実用的は言い難い。
そのFortniteと似た傾向となったのが,グラフ22〜24の「Borderlands 3」だ。
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RX 6700 XTは,RX 6800比の平均フレームレートで82〜88%程度の性能を発揮しているものの,RTX 3060 Tiには後塵を拝する結果となった。その差は7〜9%程度と決して小さくなく,とくに99パーセンタイルフレームレートでは,1920×1080ドットで10fps以上も差が付いてしまっている点を踏まえると,見劣りしてしまうのは事実だ。
グラフ25は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
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このベンチマークでは,CPU性能もスコアに影響するため,解像度が低いと差が縮まりやすい。それはRX 6700 XTとRX 6800でも同じで,1920×1080ドットでは約4%しか差がないものの,3840×2160ドットでは差が約29%にまで広がっている。
また,同ベンチマークはGeForceシリーズへの最適化が進んでいるため,RX 6700 XTはかなり不利な戦いを強いられているのだが,3840×2160ドットのスコアに注目して欲しい。RX 5700 XTはスクウェア・エニックスの指標で最高評価とするスコア7000をようやく上回る程度だが,RX 6700 XTでは9000以上にまでスコアを伸ばし,ゲームの快適さがかなり向上しているのだ。
そんなFFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ26〜28となる。
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平均フレームレートは総合スコアを踏襲しているものの,RX 6700 XTが3840×2160ドットで60fpsを超えた点は評価できるポイントだ。また,最小フレームレートに着目すると,RX 5700 XTは1920×1080ドットでも60fpsに達していないのに対して,RX 6700 XTは60fpsと達している点から見ても,ゲームを快適にプレイできることは間違いない。
グラフ29〜31には,「PROJECT CARS 2」の結果をまとめている。
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ここでは,他のタイトルとは異なる傾向が見て取れる。RX 6700 XTは,平均フレームレートでRX 6800の79〜95%程度となり,解像度が低い場合はCPUのボトルネックにより差が縮まるものの,高解像度では8割前後の結果を残している。
RTX 3070との比較では,1920×1080ドットで約18%もの差を付けられてしまっているが,2560×1440ドットでは約1%,3840×2160ドットで約2%と,高解像度では差を縮めている。このあたりは,Infinity Cacheが奏功したのかもしれない。
RX 6800から消費電力が20W弱低下
RTX 3070よりも低い消費電力を実現
RX 6700 XTの消費電力も確認しよう。
RX 6700 XTの公称Board Power(カード全体の消費電力)は,RX 6800より20W低い230Wであるが,RX 5700 XTと比べれば5W増加している。GeForceシリーズにおけるTGP(Total Graphics Power)との単純比較は少々乱暴だが,数字だけの比較では,RTX 3070の220Wよりも大きい値だ。果たして実際の消費電力はどの程度なのだろうか。
そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみた。なお,今回は3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中の結果を示している。その結果はグラフ32のとおりだ。
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これを見ると,RX 6700 XTが200W強で推移しているのに対して,RX 6800は230Wほどと,はっきりと消費電力の低減を確認できる。また,RTX 3060 Tiよりも若干高く,RTX 3070と同程度のようにも見える。なお,240Wを超える場面をカウントしてみると,RX 6700 XTは9回,RX 6800は116回と,その違いは明白だ。
そこで,グラフ32の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたものがグラフ33となる。
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この結果を見ると,RX 6700 XTは,RX 6800より約17W,RX 5700 XTよりも約12W,それぞれ低い。RX 5700 XTとの差が,スペックよりも開いているのは,今回,RX 5700 XT搭載カードとして,メーカー独自のデザインを採用した製品を使用したためだろう。なお,RX 6700 XTの消費電力は,RTX 3070よりも約4W低いのが,この結果から確認できる。
続いてログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力のみを計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ34だ。
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このテストではピーク値を結果として採用する都合上,全体的に数値は高めになってしまう。そのため,RX 6700 XTはRX 6800から約16W減っているタイトルもあれば,約6W増えているタイトルも見られる。また,RTX 3070比でも20〜24W程度低いものもあれば,約9W増えているものもあり,かなりバラつきがある結果となった。
最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ35のとおりだ。
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RX 6700 XTは,アイドル時でも50℃と高めだが,これはファンの回転が停止するためだ。それよりも,高負荷時に81℃まで達してしまった点は指摘しておきたい。もちろん,81℃程度では動作に問題はないものの,長時間稼働させた場合に,ほかのデバイスへの影響も決して無視できない。
RX 6700 XTリファレンスカードの動作音は,筆者の主観であることを断ったうえで述べるとかなり静かな印象を受けた。少なくともRX 6800リファレンスカードやRTX 3070 Founders Editionより静かで,どうやら静音性を重視して,回転数をあまり高めないようだ。そのうえ,RX 6700 XTは動作クロックも高いので,温度が高くなりがちなようである。このあたりはメーカー独自のクーラーを搭載する製品で,温度が下がることを期待したほうがよさそうだ。
競合製品と勝負できる高いポテンシャル
供給体制と実売価格がネック
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想定価格は479ドルだが,579ドルのRX 6800が国内では7万円強で販売されたことを考えると,日本では6万円強と言ったところになりそうだ。正直,コスト性能には疑問が残るものの,全世界的な半導体不足に加えて,マイニングブームの再燃によるグラフィックスカードの需要過多の現在の市場において,この価格でも発売直後はすべて売り切れてしまうのではないだろうか。
とくに,伝え聞くところによると,日本市場の入荷量はさほど多くないとのことで,発売日には争奪戦になることが予想される。価格がこなれてくれば,RX 6700 XTは競合製品とも十分勝負できるおもしろいGPUだけに,AMDだけの話ではないとはいえ,市場への供給体制が改善することを期待したい。
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AMDのRadeon RX 6700 XT製品情報ページ
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