セガゲームスより,2019年7月にリリースされた
「東京2020オリンピック The Official Video Game」 (
PS4 /
Switch )は,発売以来定期的なアップデートが行なわれ,2020年4月17日には
発売当初から無料配信が予定されていた種目がすべて追加 され,オリンピックで行なわれる
18種目 (※テニス,卓球のダブルスを別種目とカウントすると20種目)をプレイすることが可能となった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で約1年の延期が確定した東京2020オリンピックだが,現実に先んじてひとまず完成形となったゲーム版の
追加4種目(スポーツクライミング,ラグビー,4×100mリレー,柔道) に絞って紹介していこう。なお,リリース時に収録されていた14種目については以下のリンクを参照してほしい。
※本稿のボタン表記はPS4版のものです
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スポーツクライミング
スポーツクライミングは,東京2020オリンピックで初めて五輪種目として採用された競技だ。公式大会で行なわれるスポーツクライミングには,
リード (高さ12m以上のコースをどこまで登れるかを競う),
ボルダリング (高さ5m以下の複数のコースをいくつ登れたかを競う),
スピード (高さ10mもしくは15mのコースを登る速さを競う)と3つのルールが存在するが,
本作でプレイできるのはスピード となっている。左右のアナログスティックでアバターの両手を動かしてホールド(突起物)をつかみ,対戦相手よりも先に頂上のボタンを押して勝利することを目指す。
左右のアナログスティックがアバターの手に対応しており,つかまなければならないホールドに近い角度で倒すほど登るスピードがアップしていく
レコードで勝負する種目共通のスーパーベストスタート(スタート前に[L2]ボタンを押してパワーを溜めるアクション)はあるものの,一度勝負が始まってしまえば使用するのはアナログスティックのみ。本作に収録されている競技の中でも操作はかなりシンプルな部類に入るが,それゆえにアナログスティックの入力精度は重要だ。
登る先にあるホールドと同じ角度にスティックを倒さないと失敗となり,ホールドをつかんだとしてもアバターの自由になっている側の手(アナログスティック)で次のホールドを掴まないと勝敗を左右するレベルのタイムロスが生じる。なので,左右のアナログスティックを交互に倒すのが基本的な操作となる。
スタート時は左右どちらのスティックを倒してもOK。左→右→左と登っていくか,右→左→右と登っていくかは好みで選べる
筆者は,素早く登るためのセオリーをイマイチ理解できておらず,最初は難度「ふつう」のCPUにも追いつけず,正直「難しすぎるのでは?」と感じていた。しかし,アナログスティックを倒す精度,左右両方を使う点に気づいてからは,ほどよい難しさだと感じた(それでも油断すると金メダルを取り損ねる)。
精度の高いプレイには演出やボーナスが発生する点や,そしてなによりスポーツクライミングをゲームで体験できる目新しさが魅力的に映る。今では,本作の中でもトップクラスにお気に入りの種目だ。
ホールド飛ばしやスピードアップといったブースト効果は,精確なアナログスティック操作を続けてコンボをつなげると発生する
ラグビー
昨年,日本で世界大会が開催されたことで一気に注目度が上がったラグビーも収録されている。ただしオリンピックのラグビーはスタンダードな15人制ではなく,
7人制のラグビー(セブンズ) だ。本作でもそれに準じて7対7で試合を行なう形式になっている。
試合に参加する選手は15人制ラグビーから約半数になっているが,フィールドの大きさはそのまま。そのためパスや長距離のランが成功しやすい
ゲームとしては“スピード感と随所にみられる個人技が見どころ”(日本ラグビーフットボール協会製作の
セブンズ解説動画 から抜粋)という,セブンズならではの特色がかなり強調されている印象だ。
その象徴的ともいえるアクションがボールを持った際に行なえる
高速ラン で,フリーでボールを持てたら接触プレイに持ちこませずにトライを決めることも難しくはない。ボールを持ったら高速ランで前進→スピードが落ちたらいったん高速ランを中止→R1ボタンを押し直して高速ラン……と繰り返していく戦法が非常に強力なのである。
さらにボールを持った選手がアバターであれば,ボールを持つ時間が長くなるほど専用ゲージが溜まってい
き,満タンになると確実にトライがもぎ取れる
「スペシャルダッシュ」 をくり出すことも可能になる。本作のラグビーは,とにかく“走る”という行為が強いと言えるだろう。
守備側のアクションやタックルが弱いわけではないのだが,攻撃側にはタックルをかわせるダブルステップやブロックといった選択肢があるので,やはり守備側よりも攻撃側が有利に感じる。敵味方が密集していない場所にパス,もしくはボールをキックし,高速ランからのトライを狙っていくと気持ちよく点を取っていけるだろう。予選〜決勝を通じて“勝ちやすい”種目でもあるので,各種ウェアをアンロックするためのポイント稼ぎにも利用しやすいはずだ。
小刻みに[R1]ボタンを押して高速ランのトップスピードを維持できれば,後方にいる敵選手を振り切るのは容易だ。万が一タックルで組みつかれても,それに反応して[□]ボタンを押せば踏みとどまってパスを行える
トライ後に行なうコンバージョンはボールを蹴るタイミング以上に,風の向きと強さを注視して角度の調整を行なうことが重要
4×100mリレー
本作最後の追加種目として配信された4×100mリレーは,タイム競争系のゲームでは唯一の団体競技だ。とはいえ4人全員をプレイヤーひとりで順に操作するため,プレイフィールは,中距離を走っている感覚に近いと言えるかもしれない。
走る距離=ボタンを連打する時間,そして必要なボタン連打の質も異なるため,個人種目の100m走とは異なるプレイ感覚になっている
合計400mを走ることになるため,ほかの陸上種目よりも多くのボタン連打を要求される4×100mリレーだが,速く走るためのルールがほかの競技と異なっているのも注目ポイントだ。
100mや110mハードルでは基本的にボタン連打をするほど選手のスピードが上がっていったが,リレーでは画面に表示されている
ゲージのピンク色のエリアに,カーソルを合わせ続ける ことで加速していく。ピンク色のエリアは走り出した時の速度よって異なるので,考えなしに一定のリズムでボタン連打し続けるわけにはいかない。加えて走者が交代するタイミングではバトンタッチを行なうアクションが入るため,個人で走る種目より注意すべき点が多く,安定したメダル獲得を目指すには,しっかりと操作に慣れる必要がある。
裏を返せば,速く走るために必要なのが連打スピードではなく適切な連打量なので,練習を積み重ねていけば,ボタン連打力頼りになる種目よりはタイムを伸ばしやすいということでもある。ボタン連打が苦手で短距離走がイマイチ……という人でも得意な種目になる可能性があるのだ。
スピードを上げていけるピンク色のエリアは,初速によって範囲が異なるため,スピードが上がるたびに適切なボタン連打のペースも変化していく
バトンパスのタイミングが迫ると画面上に2色のラインが出現。重なった瞬間に左スティックを前に倒すと次の走者が加速する
柔道
本作の柔道は実際のオリンピック競技とは異なり,
4対4の団体戦 で戦う。相手の袖,もしくは襟をつかむ(つかまれる)ことでゲージが出現し,攻守両方のボタン連打でカーソルが左右に移動する。技あり,一本が成立するゲージの範囲内にカーソルを収めることができれば,技が成立する仕組みになっている。
ゲージ内の技あり,一本が成立するゾーンは,選手の性能やお互いのスタミナ量,つかみが成立した際に入力していた左スティックの方向によって細かく変化する。スティックを上下左右のどこに倒してつかんだかは,投げが成立した際の決まり手にも影響する
つかんでから投げを成立させるには,カーソルを動かすための[×]ボタン連打が必須だが,つかみあいのたびに全力でボタンを連打するのは選手のスタミナをいたずらに消耗させるため効率が悪い。しかも,体力0の状態でつかまれると問答無用で投げが確定してしまう恐れもあるため危険だ。常にゲージを確認しつつ,技の成立を避けるという
“ほど良いボタン連打” でスタミナに差を作り,それから仕留めにかかるといった戦略が必要になってくる。チーム共有のゲージをどこで消費して3勝するかを考えておくと,堅実に勝ち続けていけるだろう。
一例として筆者の攻略方法をあげておく。まず,先鋒戦でディフェンス重視の戦略を採り,チームゲージを溜めつつ,スタミナ切れでの勝利 or 引き分けを狙う。そして,次鋒戦は自身のアバターを配置し,優れた基本能力とつかんだ瞬間に一本が確定するアバターの特権「必殺つかみ」で王手をかける。最後の大将戦は,溜まったチームゲージを吐き出し,「組手切り」(投げ抜け)不可の「飛び込みつかみ」,攻守を逆転できる返し技で決める。
手堅く勝ちを狙えるうえに“システムをすべて使い切って戦っている感”が味わえるのでオススメだ。
つかまれてからでも入力が成立する組手切りや,ステップでの間合い調整でつかみそのものを回避できるなど,守りのシステムが充実しているのも柔道の特徴
アバターは専用ゲージを消費して使用できる必殺つかみが存在するため,高い確率で勝ち星を挙げられる。残り3人で2勝,もしくは1勝1分けをもぎ取るかを考えていきたい。ちなみに4戦目までに決着がつかなくなった場合は,アバターによる代表戦で勝敗を決する
4月17日からはトップアスリートが全員集合。18種目で超人と対決
4月17日に追加されるアップデートは,4×100mリレーの追加だけに留まらない。これまで定期的に入れ替わりで登場していた
実在の現役&レジェンド日本人選手のアバター が一斉に配信されるのだ。期間中は本作の全種目のトレーニングモードでトップアスリートと試合を行なうことができるようになる。登場選手は下記を参照してほしい。
■2020年4月17日〜5月14日に登場するトップアスリート(敬称略)
ケンブリッジ飛鳥(100m)
多田修平(100m,4×100mリレー)
山縣亮太(100m,4×100mリレー)
小池祐貴(100m,4×100mリレー)
桐生祥秀(100m,4×100mリレー)
中村克(100m自由形)
松田丈志(200m個人メドレー)
早田ひな(卓球シングルス/ダブルス)
平野美宇(卓球シングルス/ダブルス)
伊藤美誠(卓球シングルス/ダブルス)
福原愛(卓球シングルス/ダブルス)
張本智和(卓球シングルス/ダブルス)
清水聡(ボクシング)
篠原信一(柔道)
井上康生(柔道)
坂口佳穂(ビーチバレーボール)
村上礼華(ビーチバレーボール)
野口啓代(スポーツクライミング)
楢﨑智亜(スポーツクライミング)
吉田沙保里(全種目)
トップアスリートはその名に違わず非常に高いポテンシャルをそなえているため,簡単に勝利を積み重ねていける相手ではない。直接戦わなくても勝てる集団競技(サッカーや野球など)や,一撃で勝負を決める手段がある種目(ボクシング,柔道)などはまだしも,タイムで勝負する陸上や水泳,スポーツクライミングで勝利するのはなかなかにハードだ。本作をとことん遊びたい人は,最高難度“もっとつよい”のトップアスリート打倒を目標にしてみるのも良いのではないだろうか。
筆者の場合,柔道だけはそれなりに勝利を収めることができた。30年近く嗜んでいる格闘ゲームの経験が活かせたのが大きい(組手切り投げ抜けが成立するまでの猶予が長く,通常のつかみは高確率で防げる)
記録で勝負するタイプの競技は難易度「ふつう」でもほぼ全滅。全種目余裕で金メダルが取れるプレイヤーであっても,トップアスリートは歯ごたえのある対戦相手として立ちはだかる