マーベラスが2021年5月20日に発売するNintendo Switch用ソフト「
ルーンファクトリー5」を発売前にプレイできたので,ゲームの特徴や魅力をお伝えしよう。
本作は,ファンタジー世界での冒険やダンジョン探索,バトルといったRPG要素と,畑仕事や釣り,町の住人との恋愛といった生活要素を融合した
「ルーンファクトリー」シリーズの最新作だ。ナンバリング作品としては2012年7月19日に発売されたニンテンドー3DS用ソフト「
ルーンファクトリー4」以来の完全新作で,Switchでは2019年7月に発売された4のリメイク作品「
ルーンファクトリー4スペシャル」に続く2作目となる。
そんな本作は,シリーズならではの
“生活している感”や“手間”の楽しさはそのままに,
絶妙な調整によって遊びやすさが進化していた。
今度の主人公は治安維持組織の新米隊員!
町の平和を守りながらスローライフを楽しもう
本作の物語は,何らかの異変によって意識を失っていた主人公が,モンスターに襲われる少女の悲鳴を聞いて目を覚ますことから始まる。少女を助けるべくモンスターに挑み,最後の力を振り絞って撃退したものの,その場で力尽きてしまった主人公は,少女に連れられ,本作の舞台となる小さな町・
リグバースへとたどり着く。
町の住民たちが見守るなか,ふたたび目覚めた主人公は,倒れたショックからか自分の名前以外の記憶を失っていた。行くアテもなく困惑する主人公だったが,そこで住民たちから警備組織
「Seed」への入隊を勧められる。こうして主人公はSeedの一員として,記憶を失った自分を受け入れ,仕事と住まいを与えてくれた町の助けとなるべくリグバースでの生活を始めることになるのだ。
ゲーム開始時に主人公が行き倒れ,記憶を失うという物語の始まりは,RPGファンならなじみ深いものであるのはもちろん,シリーズの伝統ともいえる展開であり,ルーンファクトリーを初めて遊ぶ人もシリーズのファンも,すんなりと作品の世界観に入っていけるだろう。
ゲーム開始直後の選択肢でプレイヤーキャラクターの性別が決定される。過去シリーズの例にもれず,本作においても“失われた記憶”が物語の鍵となりそうだ
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リグバース署長のリヴィア。見た目は幼いが,その言動には謎の風格がある。彼女によると,リグバース署は人手不足で住民のボランティアに頼っている状況だという
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Seedの総督にして,組織を作り上げた立役者のガンドアージュ(左写真)と,隊員の1人でハーフエルフのスカーレット。Seedは本作の世界で強権を握っていた“帝国”の崩壊後,世界の治安を守るために勃興した組織だという。このことから,帝国に関係する物語が展開された「ルーンファクトリー4」の後の時代であることが分かる
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「タマシイのかがやき」を測定するソウルスフィアの反応を見たリヴィアは,主人公が「アースマイト」と呼ばれる特別な人間だと教えてくれる。これもシリーズのお約束的な展開のひとつだ
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警備組織に所属したといっても,リグバースは「住人が大事なメガネをなくしてしまった!」が大きなニュースになるほど平和でのどかな町である。所属して早々にモンスターたちとの戦いに明け暮れる……ということはない。
それよりまず求められるのが,自身の生活環境を整えること。リヴィアいわく「Seedはじきゅうじそくがキホン」とのことで,隊員といえど固定の収入的なものはない。そのため主人公は,畑を耕して作物を育てて収穫し,周囲の山や川などに足を延ばして食材や鉱物などを集め,それらを素材として料理や鍛冶(クラフト)を行いながら
自分自身で生活基盤を築かなければならないのだ。
主人公は何気なく畑仕事をこなしてしまうが,実はこの世界における農作業は才能が要求される技能とされている。アースマイトである主人公は,何かを育てたり,作り出すことに長けているのだ
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シナリオが進行する場所はミニマップに表示されるほか,メニュー画面の隊員メモや,セーブメニューから「現在の目標」という形で確認できる。日常の作業の中で目標を忘れてしまったときはこちらで確認しよう
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そうは言っても,それらは厳しいものではない。ルーンファクトリーシリーズの醍醐味となっているのが“ユルさ”。最新作でもそれは健在で,
プレイヤーそれぞれのペースで楽しめるようになっている。
物語にはメインシナリオがあるが,これは強制されるものではないため,十分に生活の基盤を整えてから挑んでも問題ない。シナリオを進めていくと,町のお店や施設,その背中が畑になっている巨大なドラゴン
「ファームドラゴン」といった,冒険や生活の助けとなる要素が開放され,冒険できる地域も広がっていくが,じっくり進めていけばそれらを順を追って覚えていけるはず。序盤はゲームの基本を掴みつつ自分のペースでシナリオを進めていこう。
ファームドラゴンは背中が畑となっており,耕すことで作物を育てることができる。仲間となったモンスターが暮らすモンスター小屋を作ることも可能だ
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出荷箱から離れていてもらくらく出荷
ロックオン機能で一気に便利になった農作業
ここからは,農作業の基本について紹介したい。物語のイントロダクションが終わり,自身で操作が可能になれば,すぐに畑で作物の種や苗を育てたいところだがそうはいかない。
リグバース署裏に畑となる土地があるが,ゲームが始まってすぐは荒れ果てた状態だ。まずは雑草や石などを取り除こう。落ちている枝や石,雑草,枯草などは出荷することでお金になるが,のちに資源として必要になるものがあるので,序盤は拾ったものを保管しておくといいだろう。なお,岩や切り株は,斧やハンマーといった農具を使って素材にすることも可能だ。
最初はクワとじょうろ以外の農具を持っていないが,斧やハンマーを入手したら岩や切り株をどかして素材にしよう
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雑草や石などを取り除いたら,クワを使って土地を耕し,作物の種を撒き,じょうろで水をあげよう。この時注意してほしいのがRP(ルーンポイント)。農具などの装備品を使うと消費されるポイントで,RPがなくなった状態から農具を使い続けるとHP(体力)が減り,HPがゼロになると倒れて病院に運び込まれてしまう。
RPやHPはアイテムを使ったり,町の施設でお風呂に入ることで回復できるが,寝ずに夜まで作業する生活が続くと病気になってしまうことがある。睡眠をとればRPとHPは全回復するので,無理せず可能な範囲で1日の作業を進めよう。
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道具ごとにスキルがあり,何度も使い続けることでレベルアップする。スキルが高レベルになると消費RPが減るだけでなく,RPやHPの上限が上昇する場合もあるので,毎日続けることで少しずつ作業が楽になっていく |
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ハンマーや斧といった主要な農具は購入できるが,掲示板に張り出される依頼をこなすことでも手に入る |
リグバースでの生活を体験して感じたのが,
ゲームシステム全般の親切さ。とくに農作業の面では,オブジェクトをロックオンする機能が力を発揮してくれる。本作では収穫した作物は出荷箱に収める必要があるのだが,出荷箱をロックオンして収穫物を投げ込めば,遠距離から簡単に収納できるのだ。
また,アイテムを拾ったり,作物を収穫したりするときは,[A]ボタンを長押しすれば,最初に拾ったものと同じアイテムを自動で集め続けてくれるので,「出荷箱をロックオンし,[A]ボタンを押しっぱなしでアイテムを集める→手持ちがいっぱいになったら出荷箱に投げ込む」を繰り返せば,手間なく収穫物が集まるのが嬉しい。
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基本的なカメラワークは三人称視点だが,畑の範囲内に入ると自動で農作業がしやすい見下ろし視点に変わる |
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ロックオンで投げられる範囲は広く,序盤なら畑の隅から隅までギリギリで届く。収穫する際は,どの位置からも投げ込みやすい位置に集荷箱を配置しておくといい |
農作業そのものに関しても非常に楽になるように調整されており,ボタンを連打するだけでたいていの作業は自動で進むようになっている。たとえばクワを装備した状態で[B]ボタンを連打すれば,自動で次のマスに進んで耕してくれるので,細かな操作での調整は不要だ。
このように,とくに繰り返し実行する必要のある操作は,毎日の作業が苦にならないよう調整されている印象だ。サクサク進められるだけに,ついついRPの消費を確認せず作業を続けてしまえるだけに,そこは注意してほしいが,この
“遊びやすさへの配慮”によって,こういったゲームに不慣れな人でも気軽に楽しめるだろう。
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農具や装備は[L]ボタンで開く「Lポケット」で切り替えできる。Lポケットで呼び出すアイテムの種類は自由にカスタマイズできるので,自分が遊びやすいポケットの設定を考えよう |
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収穫時には,一定確率でルーンが出現しRPを回復することも。ごく稀に,2008年11月リリースの「ルーンファクトリー フロンティア」で登場した精霊・ルーニーの姿で出現することもあるようで,シリーズファンにはちょっと嬉しいサービス要素かもしれない |
リヴィアに話しかけると,現在の週と来週の豊作になる作物,凶作になる作物を教えてくれる。予報に合わせて収穫することで多くの作物を得られるので,効率的に稼ぎたい人は忘れずチェックしておこう
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農作業を順調にこなせるようになり,RPにも余裕が出てきたら,今度は料理や鍛冶といったクラフトに挑戦するのも面白い。クラフトを行うためには対応した作業台や素材に加えてレシピが必要になるが,それらがひととおり揃えばレシピを指定するだけで作成できる。
どのクラフトも最初は簡単なものしか作れないが,回数を重ねることでスキルレベルが上昇し,より高度なレシピを習得できるようになる。高度なクラフトで獲得したアイテムは農作業にも役立つので,これらを成長させることで結果的に農作業の効率が向上し,より自身の生活が充実する仕組みになっているのだ。
素材は収納箱や冷蔵庫に入っていても指定可能で,回数を設定すれば同じものを一気に作ることも可能だ。現在のレベルに合ったレシピの素材を収集し,少しずつ能力を向上させていこう
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スキルレベルを一定以上まで上げた状態で,対応する「レシピパン」を食べることで新たなレシピを習得できる。レシピパンは町のお店で購入できるが,一度に購入できる数には限りがあるので,レベルを上げる予定のスキルに適したパンを早めに買っておくのもアリ |
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クラフトを行うためには免許と対応する家具が必要になる。家具を購入する際には,お金に加えて木材と石材を消費するので,斧やハンマーを使って集めておくのも大切だ |
シリーズおなじみの結婚や新要素「メイキング」で,町での暮らしはより豊かに
仕事でRPを使い切ったら,今度は町に出て住人たちと交流してみよう。住人たちはそれぞれ生活スタイルが異なり,時間によって移動するので,毎日の交流の中で住民への理解を深めていくことになる。まずは,種や食べ物を購入できる雑貨店や,RPとHPを回復できる旅館といった重要な施設を覚えつつ,そこで働く人々や,道中で出会う住民とのふれあいを楽しんでみよう。
マップは画面右上にミニマップとして表示され,いつでも拡大できる。赤いピンが置かれていたら,そこでイベントが発生する合図だ
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施設の中でも特に重要なのが旅館だ。アイテムの消費なくRPとHPを回復できるので,RPを使い切ったときに訪れよう
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毎日の会話を繰り返すと,住民それぞれとの「仲良し度」が上昇し,一緒に冒険を楽しめるようになる。気になる相手を見つけたら,何らかのアイテムをプレゼントするのも有効だ。生活に余裕が出てきたら,素材を集めてプレゼント用のアイテムをクラフトしてみるのも悪くない。
お気に入りの
「結婚候補キャラクター」がいれば,その相手とコミュニケーションやデートを重ねることでパートナーとして迎えることができる。これもシリーズの醍醐味の一つだろう。
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メニュー画面から住民たちの仲良し度を確認できる。アイコンがハートマークなのが結婚候補キャラクターだ |
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結婚候補キャラクターに限らず,住民たちには好き嫌いがある。プレゼントするときは相手の好みに合わせてアイテムを選ぼう。好き嫌いは日常の会話の中で見えてくるので,ふとした情報を見逃さないようにしたい |
町での生活をより豊かに楽しくしてくれるのが,新要素の
「メイキング」だ。ゲーム中にあるさまざまな達成条件をこなすことで得られる「Seedポイント」を消費することで,鍛冶や料理の免許取得や道具開発,施設の強化,バッグ(インベントリ)の拡張,そして料理大会やバレンタインといったイベントの開催などが行える。住民の依頼などをこまめにこなして「Seedポイント」を集めよう。
本作で過去シリーズとは大きく異なる点の一つが,プレイヤー自身がイベントを選んで実施する点。イベントでの交流や成果によって,住民との仲良し度が上がることも
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Seedポイントは主に掲示板にある依頼の達成や,リヴィアから情報をもらって「指名手配モンスター」を討伐することで手に入る
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リグバースでの生活に慣れてきたら,一度でも行った場所であれば一瞬でワープできる
「ワープメニュー」を使って時間短縮をするのも重要だ。
非常に便利な機能なのだが,いちシリーズファンとしてはこの機能が用意されていることには少し驚いた。ルーンファクトリーは“生活をすること”自体に軸足を置いた作品だけに,ワープという効率重視な機能があることで,大事な部分が失われないか不安に思ったのだ。
しかし,その不安は杞憂となりそうだ。ワープ可能な地点は町中のランドマークや大通りを基点とした数箇所に絞られ,ワープした地点から目的の場所へは歩くことになり,通りすがりで出会う住民たちとの交流が発生する。“生活している感”を損なわないよう,一つの選択としてさりげなくワープ機能が追加された印象で,こういった細かな配慮が感じられるのは,シリーズファンとしては嬉しいポイントだった。
過去シリーズには「エスケープ」という帰還専用のルーンアビリティ(魔法)が用意されていたが,本作におけるワープはその上位互換のような存在で,自由にワープポイントを選んで移動できる
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さて,ここまで,町でののどかで平和な生活を紹介してきたが,ファンタジー世界が舞台である本作では,のんびりした暮らしをしているだけというわけにはいかない。リグバースの周囲には多くのモンスターが生息しており,貴重な素材を集めるために探索したときや,Seedの一員として依頼を受けた際に,町の外でモンスターと戦うことになる。
バトルのシステムは非常にシンプルで,基本的に武器を装備した状態で[B]ボタンを連打するだけで格好良いコンボ攻撃を叩き込める。武器は使い込んでいくとスキルレベルが上がるので,使いやすい武器種を絞り,それを重点的に使用すると戦いやすくなるだろう。
モンスターはゲートを中心に出現しており,モンスターを個別に倒してもすぐにゲートから再出現してしまうので,安全に素材を確保したい場合は早めにゲートを叩くのが基本だ
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フィールドに存在するダンジョンには貴重な鉱石が眠っていることがある。武器だけでなく,ハンマーなどの農具もしっかり持ち込もう
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ダンジョンにはモンスターがいるだけでなく,大岩や火炎柱といったダメージギミックも存在する
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ダンジョン最奥には強力なボスモンスターが待ち構える。挑戦する前に回復アイテムなどをしっかりと揃えておきたい
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[X]ボタンと[Y]ボタンにはRPを消費して発動できる特殊技「ルーンアビリティ」と「魔法」をセットすることができる。こちらは装備する武器に関わらず使用可能なので,お気に入りの武器と相性の良いものを探してセットしておくとバトルを有利に進められるだろう。
町の外は危険な場所がたくさんあるが,そういった場所はレアな素材や鉱石が出現するスポットでもある。町の外にもワープできるので,素材集めに良い場所があればワープで行き来するのもアリだ。
もちろんロックオンはモンスターにも使用できる。武器での攻撃はもちろん,ルーンアビリティや魔法を使った遠距離攻撃を使う時はとくに役立つだろう
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リグバース署にはSeedの隊員が駐留しており,声をかければピンチのときに助けてくれる。冒険に出かける前には忘れず援護をお願いしよう
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素材集めのために戦う場合は,Seedサークルを当てることでモンスターを拘束できる「ホールド」も活用しよう。サークルで拘束したモンスターからは一定確率で「とくべつなアイテム」がドロップするので,足止めと素材集めを両立できる。ボタンを長押しするとより強力な「チャージホールド」となり,一定レベル内のモンスターを仲間に引き入れることも可能だ。
そのままだと1日が経過すると離れてしまうが,アイテムを渡して仲良くなればモンスター小屋で暮らしはじめ,プレイヤーの手伝いをしてくれるようになる。モンスター小屋で暮らすモンスターはいつでも連れて歩けるようになるほか,一部のモンスターからは卵や羊毛といった畜産物が手に入るので,冒険だけでなく生活の助けにもなってくれる。モンスターとの仲良し度によってお手伝いの内容も変わるので,モンスターを仲間にしたら毎日お世話しよう。
捕まえたモンスターと仲間になるためには,ファームドラゴンにモンスター小屋を建てておく必要がある。食料として牧草が必要になるので,事前に用意しておくのをお忘れなく
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多くのモンスターには騎乗することが可能で,騎乗中はモンスターの固有技が使える。とくに序盤は力強いものとなるだろう
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ひととおりの要素に触れてみて,本作は過去シリーズの要素をしっかりと整理したうえで,
新たなルーンファクトリーの形を見せてくれるゲームになっている印象を受けた。収穫と戦闘,両方に活かせるロックオンシステムや移動に便利なワープシステムなどは,シリーズの魅力である“手間”や“日常感”を楽しむ部分を残しつつ,プレイヤーの遊び方に合わせて簡単にもできるという,バランスがよく取れた調整となっていた。
より美麗なイラストとモデルとなったキャラクターやそれを描き出すグラフィックス,バトルや各種イベントなどの演出も強化されて美しくなり,シリーズの強みをしっかり見据えた“正当進化版”と言える作品に仕上がっている。シリーズの経験者,未経験者を問わず,ファンタジー世界でのスローライフを楽しみたい人はぜひ本作に触れてみてほしい。
結婚候補キャラクターが初登場する際には専用のアニメーションが流れる。こちらも必見だ。なお,一度見たイベントやムービーシーンは,自宅の設備「映写機」で何度も楽しめる
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