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印刷2018/12/27 14:33

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あの「ロードス島」での冒険が30年の時を経て甦る。大幅リニューアルされた「ロードス島戦記RPG」を,メディア向け体験会で遊んできた

 KADOKAWAのテーブルトークRPG(以下,TRPG)「ロードス島戦記RPG」が,2018年12月20日に発売された。
 本作は1980年代末から1990年代に大きなブームを巻き起こし,後のライトノベルへと続くムーブメントの火付け役となった作品「ロードス島戦記」をベースに,同作の世界で冒険を楽しむことを目指して開発されたTRPGタイトルだ。1988年の小説版発売から数えて30周年の今年,その原点となった本作が,リニューアルされてリリースされることとなった。

KADOKAWAから12月20日に発売された「ロードス島戦記RPG」。版型はB5のソフトカバーで価格は4000円(税別)。総ページ数は320ページに及ぶ。またドラゴンブック・サポートショップにて購入すると,ポストカードサイズのロードス島MAPが付属する
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 今回4Gamerは,同作のメディア向け先行体験会に参加してきたので,そのレポートをお届けする。ゲームマスターを担当してくれたのは,本作のデザイナーの一人でもある,グループSNEの杉浦武夫氏だ。30年の時を経て,生まれ変わった本作のゲームシステムを紹介するとともに,杉浦氏にリニューアルのポイントなどについて聞いてきた。

TRPG ONLINE内「ロードス島戦記RPG」サポートページ

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「英雄戦争」時代のロードス島を舞台に,冒険の旅へ


文庫版「ロードス島RPG」
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 改めて本作の概要から説明していこう。
 「ロードス島戦記RPG」は,1989年から1994年にかけ発売された「ロードス島戦記コンパニオン」シリーズ(コンプコレクション),また同シリーズに改訂を加え,1995年から1996年に文庫形式で発売された「ロードス島RPG」シリーズ(角川スニーカーG文庫)に,さらなるリニューアルを加えたものとなる。

 舞台となるのはもちろん“呪われた島”ロードス島。剣と魔法によるスタンダードなファンタジーの世界で,プレイヤー達はこの島に生きる冒険者となってさまざまな困難に立ち向かい,ときに戦乱に身を投じることとなる。英雄達が乱世に覇を唱え,騎士や魔術師,あるいはエルフやドワーフといった亜人種達が戦場に華を添える。ゴブリンやダークエルフが暗躍し,空にはドラゴンが,地には魔獣達が跋扈する。今でこそスタンダードだが,当時の日本ではまだ馴染みの薄かったハイファンタジーの世界観に,当時の若者達は夢中になったのだ。

 ゲームシステムは,現在人気を博している「クトゥルフ神話TRPG」でもお馴染みの10面ダイス2つを用いた直感的なパーセンテージロール(いわゆるD100)を採用。加えてダメージ算出などでは,6面ダイス1〜3個も用いられる。
 キャラクターの作成もシンプルにまとめられている。「種族」「クラス(職業)」を選択し,ポイントを「能力値」に振り分ける(ダイスロールも可能)程度で,フルスクラッチで作成しても慣れれば30分程度で冒険に旅立てるだろう。クラスごとの役割が明確なため,作成直後のキャラクターは自分の「特技(スキル)」や「呪文」さえ把握すればセッション中の行動に迷うこともない。初期キャラクターでは個性を出すことが難しいものの,キャンペーンで長く遊ぶことで特技の成長や「上級クラス」で差別化が図られ,「ソード・ワールドRPG」のようなマルチクラス的なキャラクターに育てることも可能だ。

※「ロードス島戦記RPG」と「ソード・ワールドRPG」は,冒険の舞台となる地域は違えど,フォーセリアという同じ世界観を共有している。

 このほか300ページ超えのルールブックには4本のサンプルシナリオと,TRPG初心者向けへのマスタリングTIPSなど,手厚いサポート記事などが収録。シナリオは小説版の最初のエピソードである「灰色の魔女」と,その背景である「英雄戦争」を下敷きにしたものになっていて,原作を追体験できるという意味でも完成度の高い1冊と言えるだろう。

サンプルキャラクターシートには,古参ファンにとっては懐かしの面々が並ぶ
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戦場ルールやデータ面が大幅リニューアル


 さて実際のプレイに移っていこう。今回遊んだシナリオは,サンプルシナリオとして本書に収録されている最初の1本だ。参加したプレイヤーは筆者を含めた3名で,パーティのバランスを考えながらクラスを選択する。その結果筆者は「人間」の「騎士」,そして残る2名は「エルフ」の「精霊使い」と,「人間」の「司祭」を選択した。
 ネタバレになってしまうのでシナリオの詳細は控えるが,内容としては,もはやファンタジーRPGの伝統と言っていい「ゴブリン退治」である。首尾よく見張りのゴブリンに気取られることなく洞窟に侵入した筆者達は,そこで思いも寄らない敵と遭遇することなった。戦闘の開始である。

 本作の戦闘では,異なる3つのルールから選択が可能だ。

  • 簡易戦場ルール:敵勢力・味方勢力毎に前衛・後衛で分けた概念的な戦闘方式。
  • 標準戦場ルール:各キャラクターの向きと位置関係を明示しつつ,移動などは目算で処理する戦闘方式。
  • 上級戦場ルール:戦場をマス目の敷かれたグリッドマップを用いて,位置関係を厳密に管理する戦闘方式。

上級戦場ルールの解説ページ。グリッドマップを使い,移動距離や魔法の効果範囲なども考えながらのタクティカルな戦闘が行える
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 体験会では,今作で新たに追加された簡易戦場ルールが用いられた。
 前衛エリアのキャラクターは敵の前衛しか近接攻撃の対象にできず,一方で後衛エリアからは,飛び道具であれば自由に対象を選んで遠隔攻撃が可能。しかし後衛には,前衛の数を超えてキャラクターを配置できないため,いわゆるタンク役のキャラクターが存在感を増す仕組みである。また近接離脱戦闘からの逃亡といった細かな部分もしっかりフォローされていて,緊張感のある戦いが楽しめた。
 なお今回体験したのは簡易戦場ルールのみだったが,シナリオに応じて,例えば重要なボス戦などは上級戦場ルールを使うなど,柔軟に運用するのがいいだろう。

簡易戦場ルールを使用した戦闘の様子。敵のクリティカルヒットで前衛の司祭(左手黒いコマ)が倒れ,絶体絶命のピンチに
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 そのほか筆者が気付いた点としては,攻撃の命中判定が「命中ー回避」の引き算方式から,「能動側の攻撃判定→受動側の防御判定」となったことなどが挙げられる。また「騎士」と「戦士」の差別化として,イニシアティブに大きなボーナスが得られる特技【戦闘指揮】が「騎士」側に加えられた。こうした「特技」関連や上級職周りには,とくにデータ面の整理が行われているような印象だった。

洞窟の奥からなにやらヒソヒソ聞こえるので,<ウィンドボイス>でその声を拾ってみる。ゴブリンの親玉がいるらしいと分かり,エルフの暗視で射程を見極めつつ<スネア>で足止め。<モラル>で命中力を強化しつつ,【戦闘指揮】でイニシアティブを取って奇襲という作戦で挑んでみた……が,ダイス目に恵まれず失敗。ゲームマスター側のダイス目が走っていたこともあって,パーティから犠牲者が出てしまった。でも,これこれ! これがロードスの冒険ですよ!
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印象は変えずに,でも遊びやすく――グループSNE・杉浦武夫氏ミニインタビュー


 試遊ののち,本作のデザイナーの一人であり,今回ゲームマスターを務めてくれた杉浦武夫氏に話を聞いてみた。その模様をインタビューとしてお届けする。

4Gamer:
 サンプルシナリオ,楽しませていただきました。本作について少し掘り下げてお聞きしたいのですが,今回のリニューアルにあっては,主にどんな部分が変更されたでのしょうか。

主にデータ面を担当したというグループSNEの杉浦武夫氏。かつてグループSNEに所属する前は,氏もまた「ロードス島戦記コンパニオン」をプレイヤーとして楽しんでいた一人という
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杉浦武夫氏(以下,杉浦氏):
 ルールの分かりやすさや印象は大きく変わらないようにしていますが,数値周りはかなり手を入れてあります。もう,どこが変わったか分からないくらい(笑)。また文庫版の「ロードス島RPG」はキャンペーン重視だったのですが,今作では単発セッションでも楽しめるよう,初期キャラクターでもスピーディに戦えるように調整をほどこしています。初期キャラクターの扱いやすさという意味では「コンパニオン」に近いと言えるかもしれません。

4Gamer:
 今回の体験プレイではプレイヤーに死亡者が出てしまいましたが,もしかして結構シビアなバランスだったりするのでしょうか。

杉浦氏:
 パーティ構成やダイス目にもよりますが,ヘタをすると死んでしまうバランスではあると思います。むしろ,レベルがあがってくると死にづらくはなるので,最初の冒険が一番危険かもしれません。というか今回はマスタースクリーンを使わず,全部オープンダイスだったのマズかったですね。ルールブックにも,「マスタースクリーンを使いましょう」って自分が書いたのに(苦笑)。

4Gamer:
 ああ,そうしたコラムが充実しているというのは,ルールブックを拝見していて確かに感じました。初心者ゲームマスターが悩みがちな「交渉」の処理であるとか,あるいは「キャラクターの引退」についてとか。マスタリングのHowtoが充実している印象です。

杉浦氏:
 これまでのリプレイなどでSNEが培ってきた,初心者マスターが陥りがちなポイントへのフォローが詰まっています。そうした具体的な運用例を増やしていったら,結果的にかなり分厚い本になってしまいました。

4Gamer:
 ベーシックなファンタジーRPGとして,初心者にもオススメかもしれないですね。30年前と違い,10面ダイスも手に入りやすくなりましたし。

杉浦氏:
 もちろん「ロードス島戦記」がベースですので,メインターゲットはベテラン層になるかと思いますが,シンプルなルールでもあるので初心者の方にも遊んでほしい,と思っています。

「ロードス島戦記コンパニオン」
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4Gamer:
 かねてからの疑問だったのですが,「ロードス島戦記コンパニオン」と「ソード・ワールドRPG」って,ほぼ同時期のリリース(共に1989年)だったじゃないですか。作中の舞台が異なるとはいえ共にフォーセリア世界を扱っているわけですが,なぜ2作に分かれたのでしょうか。

杉浦氏:
 実は,本書の前書きに高山さん(元グループSNE所属で,本作の旧版デザイナーである高山 浩氏)が書いているのですが,「ロードス島戦記コンパニオン」は,実はコンピュータRPGの「ロードス島戦記〜灰色の魔女〜」(PC88 / PC98 / MSX2 / X68 / FM-TOWNS / Win95)をベースとして生まれたTRPGだったんですよ。デジタルのRPGに慣れた人にもなじみ深いように,判定や魔法の扱いなどがコンピュータRPGに近くなっています。

4Gamer:
 ああ! そういうことだったんですね。

杉浦氏:
 一方で,「ソード・ワールド」はTRPGファン向けのゲームシステムとして,水野さん(元グループSNE所属で,「ロードス島戦記」原作者の水野 良氏)と清松(グループSNEの清松みゆき氏)を中心に当時開発が進んでいました。そのために,フォーセリアのゲームシステムが二つ生まれたという。概ねそんなところだと聞いております。

4Gamer:
 確かに「ロードス島RPG」と「ソード・ワールドRPG」では魔法の扱いに違いがあったりしましたね。今回の「ロードス島戦記RPG」では,その辺りはどうなっているのでしょうか。

杉浦氏:
 今作では,「ソード・ワールドRPG 完全版」「ソード・ワールドRPG ロードス島ワールドガイド」のデータをベースに,さらに清松が秘蔵していた“最新の”世界観データも参考にしつつ,再構成を行いました。【魔法拡大・数】や【超英雄】といった要素も,「上級特技」としてエキスパートルールに収録されていますし,それらを使えば「ソード・ワールド」っぽい遊び方もできたりする。そういう意味では「フォーセリアが舞台のRPG」として,最も新しい版と言えるかもしれません。

4Gamer:
 おお,それは「ソード・ワールド」ファンにも嬉しい話ですね。では最後に,ロードスファンへのメッセージがあればお願いします。

杉浦氏:
 4Gamerの読者さんは,恐らく「ロードス島戦記」をご存じであろうかと思うので,ではそうした方達に向けて。本作「ロードス島戦記RPG」は,プレイの感触は旧版の「コンパニオン」や「ロードス島RPG」と変わらずに,かつ遊びやすくしたTRPGです。少人数でも楽しめるようになっていますし,昔のメンバーを集めてオンラインセッションで遊んでいただけたら嬉しく思います。あるいはお子さんと遊んでいただくのも良いかもしれません。4本のシナリオはキャンペーンになっていて導入にも最適なので,ぜひ昔を懐かしみつつ遊んでいただければ幸いです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。



 なお公式のサポートサイトでは,ルールに関するQ&Aや,セッション運営に便利なシート類の配布も行われている。事前に印刷しておくとスムーズにプレイできるのでぜひ活用してほしいとのことだ。
 リニューアルを迎え,新たな展開が始まる「ロードス島戦記RPG」の今後に期待しよう。

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