レビュー
「ダライアス コズミックコレクション」特装版は13本収録だからこそ見えてくるものがある。Gダラ世代的な視点でレビュー
「ダライアス コズミックコレクション」は,2Dグラフィックスの「ダライアス」シリーズタイトルを1本にまとめたオムニバスソフトだ。ソフトの形態は,アーケード向けタイトルをまとめた「通常版」と,家庭用タイトルも含めたうえ特典を同梱した「特装版」の2種類。通常版と特装版の収録内容は以下の通りだ。なお,今回レビューするのは特装版となる。
■通常版
- ダライアス(OLDバージョン) / アーケード
- ダライアス(NEWバージョン) / アーケード
- ダライアス(EXTRAバージョン) / アーケード
- ダライアスII(2画面版) / アーケード
- SAGAIA(バージョン1) / アーケード
- SAGAIA(バージョン2) / アーケード
- ダライアス外伝 / アーケード
■特装版
- ダライアス(OLDバージョン) / アーケード
- ダライアス(NEWバージョン) / アーケード
- ダライアス(EXTRAバージョン) / アーケード
- ダライアスII(2画面版) / アーケード
- SAGAIA(バージョン1) / アーケード
- SAGAIA(バージョン2) / アーケード
- ダライアス外伝 / アーケード
- ダライアスII / メガドライブ
- SAGAIA / Sega Master System
- ダライアスツイン / スーパーファミコン
- DARIUS TWIN / Super NES
- ダライアスフォース / スーパーファミコン
- ダライアス・アルファ / PCエンジン
※Amazonプライムデー限定の通常版および特装版にはゲームボーイ版「サーガイア」も付属(販売終了)。
ちなみに筆者は初代「ダライアス」とだいたい同い年(1986年後半に発表〜具体的な資料は残存していないものの,一説によると1987年初旬に発売)であり,主に1990年代のアーケードゲームと家庭用32ビットCPU&CD-ROMマシンで育ったゲーマーだ。一番馴染み深いダライアスシリーズのタイトルは,PlayStation互換仕様の基板・FXシステムで動作する「Gダライアス」なので,ここでは「Gダラ世代」と名乗らせていただく。
そんなわけで,ダライアスシリーズの最初期タイトルをプレイしたことはあるものの,「ゲーセンに3画面のドでかい筐体が出てきてビビったぜ!」や「ダラ外のスコアタで万札を溶かしたぜ!」的な体験はまったくない。「ダライアス コズミックコレクション」に“あのころの懐かしさ”を期待している古参ゲーマーは多いかと思うが,本稿でそういった側面にあまり触れないことはご容赦いただきたい。その一方で20代以下のゲーマーの,「自分が生まれる前の古いゲームを遊んで楽しめるのか?」という疑問に対する参考になれば幸いだ。
特装版には,バージョン違いを含めて13種のタイトルが収録されているので,どれから手を付けていくかが悩みどころ。筆者としては,せっかくのダライアスということもあり,「ルート選択」をオススメしたい。つまり,まずタイトルラインナップを眺めて,どういう順番でプレイしていくのか考えるわけだ。
今回が初移植となったアーケード版「SAGAIA」を中心に据えるなら,差異をちゃんと体感すべく,まず「ダライアスII」をしっかり身体になじませたい。家庭版を懐かしむなら,「アルファの前にダライアス,ダライアスII(メガドライブ)の前にダライアスII(AC)」と交互にプレイすれば,アーケードの魅力をいかに家庭用ハードへ持ち込むかといった開発者の足跡が感じられて,ひと味違ったプレイ体験を得られるだろう。劇中の時系列で「ダライアス → 外伝 → II → ツイン → フォース」と並べてみたりしてもいい。
そんなわけで,Gダラ世代としては,Gダラまでの歴史を感じながら,なるべく多くのタイトルに触れるべく,「ダライアス(OLD) → II(AC) → SAGAIA(Sega Master System) → II(メガドライブ) → ツイン → アルファ → 外伝 → SAGAIA(AC)」といったルートをセレクトした。その内容を紹介しよう。
ダライアス(1986年発表/アーケード)
まずは初代「ダライアス」,それもNEW版やEXTRA版でなく,オーソドックスにOLD版から始めたい。
どのタイトルでもそうだが,まず[ZR]ボタンを押して,ボタン配置と連射速度を確認&調整しよう。アーケードスティックならいいのだが,Joy-Conだとデフォルトの基本操作が[A/B/X/Y]ボタンにアサインされていたりするので,人によってはショットとボムの押し分けや,「ダライアス外伝」におけるブラックホールボンバーでの緊急回避がやりにくい。ショットとボムが分かれているタイトルは1ボタンに両方をアサイン可能で,各ボタンに秒間5/10/12/15/20/30回から連射設定を付与することもできる。
「ダライアス コズミックコレクション」の開発はエムツーが担当していることで,同社タイトルでおなじみの“ガジェット”が,アーケード向けタイトルに搭載されている。と言ってもM2 Shot Triggersにおけるランクグラフやボスタイマーなどではなく,パワーアップアイテムの取得状況やアームの耐久力を明示化するくらいのものだ。ただ,これらはプレイ時に「把握していないと困る」ものなので,非常に助かる要素でもある。
さて,改めて紹介するまでもないと思うが,「ダライアス」である。自機はシルバーホークで,弾切れ(表示可能な弾数の上限に由来する連射レートの低下)への注意が必要な横長画面,警告表示から登場する巨大な水棲生物型戦艦,ステージクリア後にはルート選択を行う。なお,カジュアルプレイヤーならボス戦の仕様差からNEWバージョンをプレイするといいだろう(OLDバージョンだとショットがレーザーやウェーブ状態のときボスにダメージが入りにくい)。
ちなみに,「ダライアス」の初期出荷版は19インチのブラウン管を3基搭載していた。アスペクト比4:3の19インチディスプレイは横幅が約39.6cmだから,ディスプレイの全体幅は3倍で約118.8cmと計算できる。つまり,アスペクト比16:9の53インチ(横幅約117cm)〜55インチ(横幅約121.7cm)ディスプレイに出力すれば,計算上ではアーケード版とほぼ同じ迫力を体感できる!
「ダライアス」のオリジナル筐体は80〜90万円ほどしたという。Gダラ世代としてはタイトーの「テアトロ50」など,1990年代後半に流行した50インチスクリーン仕様の汎用筐体が懐かしいが,調査したところでは各社とも150万円前後で販売していたようだ。しかし,今なら55インチの4Kテレビが標準モデルなら10万円前後,高級モデルでも30万円台,低価格モデルなら5万円台で入手できる。アーケードと同スケールの体験が10万円程度で家庭に導入できるのだから,何とも素晴らしい時代である。ハムスターからリリースされているPS4「アーケードアーカイブス ダライアス」もそうだが,「ダライアス」は「今の時代だからこそ家庭でプレイすべきゲーム」と言えるだろう。
大画面が一般的になった一方,タイトー製多画面筐体の特徴でもあったボディソニック技術は,家庭用展開が廃れてしまった。数軒の大手家電量販店に問い合わせてみたが,今現在ボディソニックを採用したオーディオ機器は取り扱っていないとのこと。マニアックな電器店ではボディソニック用のトランスデューサをモジュール単品で取り扱っていたりはするものの,導入するのは割と大変だ。また,「ダライアス コズミックコレクション」ではアーケード基板から出る音の再現までこだわって作られているが,音響環境に体感が左右されることは否めない。アーケード版「ダライアス」の自宅再現を試みたい人は,こういったサウンド面をじっくり考えてみよう。
ダライアスII(1989年稼働/アーケード)
次はアーケード版「ダライアスII」だ。本作はストレートな「ダライアス」の続編で,パワーアップしたシルバーホーク,巨大化したボス,複雑化された敵配置により,激しい戦いを楽しめる。難度は上昇しているが,自機撃墜後が“その場復活”になったり,道中ゲームオーバーからのコンティニューが可能となったりしているので,カジュアルプレイも楽しみやすい。
「ダライアス コズミックコレクション」に備わっている機能のうち,とくに「ダライアスII」をプレイするにあたって注目したいのが,クイックセーブ/クイックロード機能だ。これを使えばノーミスクリアへのハードルが格段に下がる。筆者は「ダライアスバースト クロニクルセイバーズ」インタビュー記事のとき,「ダライアスII」隠しエンディングの画面撮影……つまりノーミスクリアを試みたが,低難度設定でもたどり着けなかった。それが,セーブ&ロードを繰り返せる本作なら隠しエンディングも楽勝(比較的)! 実力によらないズルい手段ではあるが,それでも自力で隠しエンディングを見るという感動は大きいので,皆さんもスクリーンショットや動画で満足せずに,この体験を味わってほしい。ちなみに,クイックセーブ/クイックロードはガジェットではなく標準機能なので,家庭用タイトルでも使用できる。
SAGAIA(1992年発売/Sega Master System)
「ダライアスII」の欧州版である「SAGAIA」は本作のウリだが,ここは一旦,家庭用のSega Master System版「SAGAIA」に寄り道したい。“マスターシステム”と言ってもSega Master SystemはFM音源や連射装置を搭載していないので,国内版セガ・マスターシステムとは仕様が若干異なり,実質的には「セガ・マークIIIの海外版」にあたる。
Sega Master System版「SAGAIA」は,1992年というSega Master Systemの末期,というか次世代ハードの拡張オプションである「メガCD」がとっくに出ていたころに発売されたソフトなので,熟成された開発テクニックが注ぎ込まれていて,ゲームというよりも「ダライアスII」というゲームをコンパクトに再現したこと自体が非常に面白い。「一見の価値アリ!」なタイトルだ。
ダライアスII(1990年発売/メガドライブ)
「SAGAIA」から,次はメガドライブ版「ダライアスII」に行ってみよう。元が同じゲームかつセガハード同士なので,8bitマシンから16bitマシンへの移行によるゲームの変化を肌で体感できる。まあ開発の時系列で言えばメガドライブ版「ダライアスII」が先だけど。
本作のサウンドデータ移植を手がけたのは,後に「ラングリッサー」シリーズや「LUNAR」シリーズに携わる岩垂徳行氏。制作当時の同氏は神奈川県・綱島に存在したタイトー中央研究所に通って小倉久佳氏に指示を仰いでいたとか。アーケード基板に比べて音源が弱いメガドライブで,いかにしてOGRサウンドを再現すべく努めたのか,思いを馳せてみるのも一興だ。
ダライアスツイン(1991年発売/スーパーファミコン)
「ダライアスII」を3種類プレイして,次は「ダライアスツイン」だ。直前の「ダライアスII」を移植したメガドライブ用ソフトに対し,こちらは「ダライアスII」をベースに新規開発されたスーパーファミコン用ソフト。この2作が1本のソフトに収録されているのは,例えるなら東西ドイツの分断で生き別れになった兄弟が,ベルリンの壁が崩壊した後に再会を果たしたようなものだ。たぶん。
スーパーファミコンはメガドライブより画像処理能力が高いので,発色数が多いしキャラクターはデカい。ただ処理速度は劣るので,敵のアニメーションパターンには鈍さと硬さが感じられる(スーパーファミコン最初期のタイトルであり,開発環境が成熟していなかったのもあるが)。「ダライアスII」をベースとしてはいるものの,斜めスクロールのエリアやオリジナルのラスボスなど,独自要素が多く盛り込まれており,「ダライアスらしさ」には若干欠けるが,ユニークなタイトルとなっている。
ダライアス・アルファ(1990年リリース/PCエンジン)
メガドライブ,スーパーファミコンと来たら,一歩戻ってPCエンジンに立ち寄りたい。PCエンジンは8bitマシンなので,メガドライブやスーパーファミコンの前世代機,セガ・マスターシステムやファミリーコンピュータの同世代機にあたる。こう書くと,「“PCエンジンのダライアス”はSega Master System版SAGAIAみたいな感じ?」と思うかもしれない。だが,どうだろう! デカいキャラが滑らかに動く! PCエンジン,しかもCD-ROM2のアーケードカード対応ソフトなどではない,普通のHuカード仕様ソフトなのに!
PCエンジンがアーケードゲームの移植に対する強さで人気を博したことは有名だが,こうしてメガドライブやスーパーファミコンと比較しつつ特色を体験すると驚きが大きい。
ちなみに「ダライアス・アルファ」は,PCエンジン用ソフト「ダライアスプラス」の購入者向けキャンペーンで,当選者に配布されたものだ。生産数が非常に少なく,実物を見ることすら稀なタイトルなので移植は嬉しいが,こうなるとオリジナルの「ダライアスプラス」……というか,そのフルサイズ版の「スーパーダライアス」と,せっかくだから「スーパーダライアスII」も欲しくなるところ。この2作はWii向けバーチャルコンソールで出ていたが,それも1月末で販売終了となってしまっている。Wii向けバーチャルコンソールはレアなタイトルが多かったので,Nintendo Switch後方互換という形で復活してくれると嬉しいのだが……。
それにしても,任天堂ハード(スーパーファミコン)・セガハード(Sega Master System,メガドライブ) ・NEC-HEハード(PCエンジン)のゲームが1本のソフトにまとまっているのは,非常に感慨深い。1990年前後の家庭用ゲーム機の雰囲気を感じるにも,「ダライアス コズミックコレクション」は便利な一本だ。
ダライアス外伝(1994年稼働開始/アーケード)
といった流れで家庭用ダライアスの一画面に目が慣れたら,シリーズの中でも人気が高い「ダライアス外伝」に,メインディッシュと思って飛び込みたい。
ただ「ダライアス外伝」の魅力は,簡潔に説明するのが難しい。標準で連射仕様のショットと自機無敵効果のあるブラックホールボンバーによる軽快なプレイフィール,音声素材が活用されエモーショナルさを増したBGM,ビビッドカラーのユニークな敵……いろいろと秀でた部分はあるが,それ以上に各部がうまく噛み合っていて,プレイが筆舌に尽くしがたいほど気持ちいいのだ。ゲーマーなら一度はプレイしてみてほしい。
SAGAIA バージョン1(1989年稼働開始/アーケード)
最後に,デザート的にアーケード版「SAGAIA」を,とりあえずバージョン1でゆったりと楽しもう。ディープな作り込みのあまり,ステージ構成に冗長さが否めない「ダライアスII」だが,「SAGAIA」はステージ短縮,一部の中ボス削除,ボス耐久力低下,道中の攻撃が熾烈化という,思い切ったアレンジが施されており,かなりサクサクしたプレイ感となっている。「ダライアスII」現役世代は違和感が否めないかもしれないが,Gダラ世代的にはこちらの方がとっつきやすい気がする。
といった形でプレイしてきたが,このルートを一本通ったら終わりというわけではない。ときには「ダライアス」をEXTRA版にしたり,「ダライアスツイン」を異色作の「ダライアスフォース」にしてみたり,アーケード版「SAGAIA」をバージョン2にしたり,あるいはまったく別のルートを考えてみたり。そう,「ダライアス コズミックコレクション」特装版は13種類のタイトルが収録されているからこそ,さらに幅広い楽しみ方ができるのだ。
皆さんも自分なりのルートを,13タイトル(あるいはゲームボーイ版サーガイアを含めた14タイトル)から見出してほしい。もちろん,通常版で「あのころのタイトル」をじっくり遊ぶのもルートの1つだ。
それにしても,ここまで充実していると,抜けている「スーパーダライアス」シリーズもやっぱり欲しくなってくる。あと携帯電話アプリの「ダライアスオーシャン」とAmigaの「Darius+」あたりもどうでしょう,タイトーさん。DLCで。どうでしょう。
「ダライアス コズミックコレクション」公式サイト
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