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西川善司の3DGE:COMPUTEX 2019 NVIDIAプレスカンファレンスで発表された不思議なブランディングキーワード「NVIDIA Studio」と「RTX Studio」ってなに?
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印刷2019/05/29 00:00

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西川善司の3DGE:COMPUTEX 2019 NVIDIAプレスカンファレンスで発表された不思議なブランディングキーワード「NVIDIA Studio」と「RTX Studio」ってなに?

今回のプレスカンファレンスの進行役はNVIDIA代表のJensen Huang(ジェンスン・ フアン)氏ではなく,PCビジネス部門のSenior Vice Presidentを務めるJeff Fisher氏であった
画像集 No.002のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:COMPUTEX 2019 NVIDIAプレスカンファレンスで発表された不思議なブランディングキーワード「NVIDIA Studio」と「RTX Studio」ってなに?
 2019年5月27日は午前中にAMDの基調講演が,午後にはNVIDIAのプレカンファレンスが開催された。
 事前に「SUPER」の文字がクローズアップされる謎のティザー映像が公開されており,これに関係あるものが発表されるという予測の中でのプレスカンファレンスとなった。しかし,結論から言えば,例の「SUPER」と関連したものは発表されず,まったく別のものが発表された。噂によれば,このSUPER案件は後日開催されるE3の会期中に発表されるものらしい。

 本稿では発表された内容を噛み砕いてまとめていくが,念のために今回のプレスカンファレンスの流れについても軽く言及しておこう。

 NVIDIAでPCビジネス部門のSenior Vice Presidentを務めるJeff Fisher(ジェフ・フィシャー)氏は,「スポーツカーの業界基準であるポルシェ911を生み出したポルシェは,最近ではSUVモデルを提供して,これが世界的な新しい乗用車のスタイルの流行のきっかけとなった」「NVIDIAのGPUは最初ゲームファン向けのものだったが今ではAIや自動運転向けのプラットフォームのスタンダードとなった」「まったく新しい市場を開拓し,これまでになかったような別のマーケットスタンダードを生み出した点において両社は似てはいまいか」という「NVIDIAのビジネスモデルがポルシェとよく似ている」論をオープニングトークとして展開した(※SUVの流行あたりで異論のある人もいると思うがFisher氏の私見である)。

中央が1964年発表の初代ポルシェ911。2002年に発表されたSUVスタイルの4ドアのポルシェ・カイエンは今やポルシェの売り上げ半分を支える屋台骨商品となった
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中央が1995年に発売されたNVIDIAのGPU初号機「NV1」。2006年発表のGeForce 8800 GTX以降,コアアーキテクチャはGPGPU応用への対応を睨んだCUDAへと刷新された。いまやGPGPU用途のGPU製品はNVIDIAの屋台骨商品になっている。また,以降のGPGPUブームの火付け役にもなった
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 その後は,G-SYNCディスプレイの新製品から始まり,ゲーミングノートPC製品においてNVIDIA製GPUは広く採用されていること,昨年発表したリアルタイムレイトレーシング技術はゲームグラフィックスに革命を生み出したことに触れた。面白かったのは「我々NVIDIAとしても次世代PlayStationがレイトレーシングに対応したことを歓迎したい」と競合AMD製プロセッサを採用するゲーム機に対して賛辞を贈っていたことだ。ゲームグラフィックスにレイトレーシングを積極導入していく流れに持っていくためには,業界全体で足並みを揃えなければ難しいので,「このあたりは敵味方関係なく,共にこの流れで頑張っていきましょう」というエールを贈ってといったところか。

 非常に長い発表会だったが,結論から述べるとメインとして発表したかったのは「NVIDIA Studio」というエコシステムだったようである。

アルタイムレイトレーシング関連のアップデートでは,対応ゲームとして一人称シューティングゲームの名作「Quake II」(1997年)のリメイク版「Quake II RTX」が6月6日より無償リリースされること,7月下旬に発売予定の同じく一人称シューティングゲームの人気シリーズ「Wolfenstein: Youngblood」と,台湾のゲームスタジオのSoftstarが開発中の新作RPG「The Legend of Sword and Fairy 7」のPC版がリアルタイムレイトレーシングに対応することなどがアナウンスされた。「Wolfenstein: Youngblood」は5月28日より販売分のGeForce RTXシリーズ製品パッケージにバンドルされる見込みだとのこと
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NVIDIA Studioとはなにか?


 今回のプレスカンファレンスで発表された内容で最もチェックしておくべきキーワードは2つある。それは「NVIDIA Studio」と「RTX Studio」だ。

 まずは「NVIDIA Studio」から見ていこう。
 これは近年のNVIDIAが力を入れているNVIDIA製RTX GPUを中核とした新しいソフトウェアエコシステムになる。
 NVIDIAは,ゲーム開発者向けに有益に使えるグラフィックスライブラリ的な「GameWorks」を提供している。例えば実用的な影の生成手法や効果的なアンチエイリアスの実現テクニックなどをソースコード付きで公開しているわけだが,似たようなものには「VRWorks」というVRコンテンツ開発者向けのライブラリもある。
 微妙にコンセプトは違うのだが,今回発表された「NVIDIA Studio」はこれに近いものだとまずは理解しておこう。「微妙なコンセプトの違い」については後述する。

 NVIDIA Studioにおけるターゲットは「クリエイター向けアプリケーション開発者」となる。クリエイター向けアプリケーションとは,実際に今回のNVIDIA Studioフレームワークに賛同を示しているラインナップから例示すれば,Autodesk Maya 2019 や Autodesk 3ds Max 2020,Blackmagic Design DaVinci Resolve 16,Daz3D Daz Studio,ゲームエンジンのUnityやUnreal Engineなどだ。そう,映像制作,CG制作,ゲーム制作などをはじめとした,コンピュータを使って作品やコンテンツを作るためのアプリのことである。RTX GPUの持つハードウェアレイトレーシング機能を使ってレンダリングを高速化したり,GPU実装によってエンコードを高速化したり,AI処理を加えたりといった最適化が実現されるようだ。

 そうしたクリエイター向けアプリケーション開発企業は,NVIDIAとのパートナーシップを結ぶことで,NVIDIA Studioには,そこのクリエイター向けアプリケーションの動作に完全に最適化されたドライバ,あるいはそのアプリが必要とする機能を提供する特別版のドライバが含まれるようになる。アプリ開発者側としては,他社のGPUを使うよりも「機能が高い」「安定性に優れる」といった恩恵を,自社アプリとそのユーザーに提供できるわけである。

 上で後回しにした「微妙に違うコンセプト」とは,GameWorksやVRWorksにはあまり関係のなかった「ユーザー側でも,そのフレームワークのメリット」を享受できるところだ。
 ここで言う「ユーザー」とは,クリエイター向けアプリを活用するクリエイターその人のことだ。例えばゲーム開発者だったり,映像編集者,CGアーティストだったりするわけだが,彼らは自分の愛用しているクリエイター向けアプリがNVIDIA Studio対応アプリだったとすれば,NVIDIA Studioドライバ(場合によってフレームワークの一部や全体)をインストールしてNVIDIA製GPU環境でそのアプリを使えば,他社のGPUを使うよりも「性能が高く」「安定性に優れた」作業環境で作業が行えるワケである。あるいはNVIDIA Studio非対応クリエイター向けアプリを使うよりも「性能が高い」「安定性に優れる」作業環境が得られるわけだ。

NVIDIA Studioのソフトウェアスタック。実際のところ,NVIDIAのレイトレーシングフレームワークである「NVIDIA RTX」ともよく似た構成となっている
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定番クリエイター向けアプリ群のパフォーマンスは,AMD Radeonを搭載したMacBook ProよりもNVIDIA Studio対応環境のほうが良くなることを示したグラフ
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RTX Studioとはなにか?


 今回のNVIDIA Studio,「ターゲットがクリエイター向けアプリ開発者(社)」「ターゲットユーザーがクリエイター」ということであれば,SIGGRAPHあたりで発表すべき案件のような気もするが,そこはそれ,もう一つのキーワード「RTX Studio」が,実にCOMPUTEX向けのものになってくるのでCOMPUTEXで発表したということなのだと思われる。
 RTX Studioとは「NVIDIA Studioに対応したコンピュータ」,より正確に言うと「NVIDIA Studioに対応したGeForce RTX/Quadro RTX搭載マシン」に付けられるブランドのようなモノである。具体的には,前出のクリエイター向けアプリが「高い機能性」「優れた安定性」で利用できるスペックを備えていることを保証することになるのだ。
 そう,実は今回の「NVIDIA Studio」発表に合わせて,各メーカーからこぞって「RTX Studio」バッジ付きPCがたくさん発表されることになったことから,COMPUTEXでの発表となったのだ。

実際,今回のCOMPUTEXでは,7社から17モデルのRTX Studio PCが発表されることとなった
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 「RTX Studio」バッジ付きPCの日本への導入はまだ未定だが,相応にクリエイターが多い日本ではニーズけっこう高そうである

プレスカンファレンス会場にずらっと並べられたRTX Studio印の新製品たち。価格は安いもので1599ドルから。もちろん,Quadroを搭載したモデルもあるため上は青天井である
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RTX Studio対応製品のボディには「RTX Studio」バッジが貼り付けられている
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 もともとNVIDIAは,こうしたクリエイター向けの取り組みとしては,QuadroブランドのGPU製品のラインナップがある。
 Quadroシリーズは,主要なクリエイター向けアプリでの動作を前提として,ドライバレベルでの最適化を行っていたり,あるいは主要業務用アプリにおけるOpenGLの機能APIの動作検証や安定性テストなどを経た製品であり,ある種,NVIDIA Studioのコンセプトと被っているところが多い。
 ただ,Quadroシリーズは製品として高価である。どちらかと言えばQuadroシリーズは,大手企業ユーザー,あるいはプロ向けの製品だ。高価な分,安定性と機能性が保証されているのがQuadroシリーズの特徴である。GPUコアそのものはまったくGeForceと同じであっても,だ。
 ではNVIDIA Studioのフレームワークは何かといえば,プロクリエイターはもちろんとして,それ以下の,ホビー系クリエイターなどまでもターゲット間口を広げたもの……ということになろう。YouTuber,インディゲーム開発者,同人映像作家のような個人活動ベースのクリエイターなどにはNVIDIA Studioはまさにうってつけだといえる。

 今回発表されたNVIDIA Studio対応のRTX Studio対応の新製品群のなかには,QuadroシリーズのGPU製品を搭載したものもあり,ダブルスタンダード感が否めない点もあるが,概ねは「クリエイターの皆さんに安心してお使いいただけるGeforceブランドのクリエイター向けPCがRTX Studio印です」というコンセプトにはなっているようである。
 ちなみに,この「NVIDIA Studio」誕生の背景には,アマチュアクリエイター層が拡大してきている中で「クリエイターがクリエイター向けアプリをちゃんと動かせるコストパフォーマンスのよいPCが事実上,ゲーマー向けPCしかなくなってしまった」ということがあるようだ。
 ゲーマー向けノートPCは確かに,高性能CPU/GPUを搭載してはいるが,ゲームプレイに特化した仕様になっていることも多く「プロセッサ性能は高いがディスプレイの色が悪い」「実装されているインタフェース群が偏っている」など,「性能要件は満たしていてもクリエイター向けアプリを動かすには使いにくい」ということが少なくなかった。こうした動きに対応すべく誕生したのがNVIDIA Studioであり,RTX Studio印のPCということのようである。
 まあ,難しいことはともかく,クリエイター志向のユーザーはゲーマー向けPCではなく,シンプルにRTX Studio印のPCを買えばよくなり,分かりやすくなったわけで,これはこれで良いことなのではなかろうか。

NVIDIA Studio公式情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 20,GeForce GTX 16

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