エクスペリエンスは“心霊ホラー”シリーズの最新作として,2018年9月13日にPlayStation Vita用ソフト「
NG」を発売する。同社初のホラーアドベンチャーとして好評を博したシリーズ前作
「死印」(
PS4/
PS Vita/
Switch/
Xbox One)から恐怖演出を強化しつつ,シナリオ面でもボリュームアップしたという本作の序盤を遊んでみたので,その
インプレッションをお届けしよう。
1999年の夏,ありふれた日常が恐怖に塗り替えられていく
本作の舞台となるのは,1999年の夏,東京・吉走寺。高校生活最後の夏休みを持て余していた主人公・
鬼島空良(きじまあきら。名前は変更可能)は,ある夜,自宅アパートのドアの前で一通の黒い手紙を拾ったことから,奇妙な現象に襲われるようになり,その中で義理の妹の
愛海(あみ)が忽然と姿を消してしまう。
舞台となる吉走寺。あくまで筆者の想像だが,「死印」の舞台だったH市から都心に向かって電車で30分くらいのところな気がする
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ゲームの冒頭で,主人公の名前と外見を決められる。一度決定したら,途中で変更はできない
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空良の叔母・鬼島那津美(左)と,その娘の愛海(右)。母子家庭で母親を亡くした空良にとって,2人は義理の家族にあたる
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自宅のボロアパートのドアの前で黒い手紙を拾ったことから,空良の周囲に異変が起こり始める
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愛海にせがまれて一緒に撮った証明写真がエライことに……
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そして,不思議な笛の音と共に現れる謎の少女(?)・
かくやと出会い,彼女が言う“死の遊び”に自分達が巻き込まれてしまったことを知る。死の運命から逃れ,愛海を取り戻すためには,かくやが要求する遊びに打ち勝つしか方法はない。こうして空良は,仲間と共に否応なく怪異に立ち向かうことになる……。
かくやと名乗る人形のような少女(?)。愛海をさらい,空良を“遊び”に巻き込んだのは彼女の仕業だ
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主人公の空良は,ヤクザが仕切るアンダーグラウンドな喧嘩試合で無敗を誇る腕っぷしの強さで,ぶっきらぼうな性格だが,家族や仲間想いの一面もある少年だ。また,彼の親友である
天生目聖司(あまのめせいじ)は暴力団「天生目組」組長の息子で,優男風の外見に反して,裏では結構あくどいことにも手を染めているようだ(ただしホラーは大の苦手)。
空良の親友,聖司。まだ高校生なので彼自身は組員ではないが,裏では組員を使って危ないことも行っている。ときには,それが怪異の調査の手助けになることも
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そんな,アウトローに片足を突っ込んだような2人が対峙する怪異は,前作「死印」のように,廃校となった小学校やいわくつきの樹海といった,いかにもそれらしい心霊スポットに出現するのではなく,何気ない日常を侵食してくる存在として描かれている。普段,近道として利用している高架下や,昼間は多くの人が訪れる公園の池,ひっそりとした夜の住宅地,果ては自宅のアパートなど,身近な場所が恐怖に塗り替えられていく様は,「死印」とは違った怖さを感じさせる。
あばばばばば……!(錯乱)
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最初に調査する怪異
「うらしま女」編では,街で偶然知り合ったオカルト大好き少女・
葉月 薫(はづきかおる)を仲間に加え,空良達3人でうらしま女の謎を追うことになる。
実際のゲームの流れは「死印」と同様,パートナーとして同行する相手を選んで,2人で怪異が現われるスポットを探索するというもの。懐中電灯で怪しい場所を照らし,怪異の手がかりやアイテムなどを入手しながらストーリーを進めていく。パートナーを途中で交代することもでき,特定の人物を連れて行かないと発見できないスポットなどもある。
黒系のゴシックファッションが特徴的なオカルト好き少女,葉月。可愛い
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パートナーと2人で怪異の出没するエリアの探索を行う。画面左上のミニマップは拡大表示で全景を見ることも可能に
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ずぶ濡れの妊婦の姿をしているという,うらしま女。すでに嫌な予感しかしない
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また,空良はモノに付着した血痕に触れることで,その血にまつわるビジョンが見える
「ブラッドメトリー」という能力を持っており,これが怪異の正体を探る大きな手助けとなる。ネタバレになってしまうため詳しくは書けないが,それぞれの怪異にはしっかりとしたバックグラウンドが用意されており,なぜその怪異が発生するようになったのかが徐々に判明していく流れは,本シリーズにおける見どころの1つだ。
ブラッドメトリーを使って,怪異が発生する原因となった出来事を探っていく
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探索中に危機が迫ると発生し,制限時間内に正しい行動を選ばなくてはいけない
「クライシスチョイス」や,怪異との対決シーンである
「サバイバルエスケープ」といった,一歩間違うとそのままゲームオーバーになってしまう仕掛けは,本作でも健在だ。
怪異を消滅させる際,呪いを浄化させる
「キュア」と,霊的な苦痛を与えて破壊する
「デストロイ」の2つの方法があるのも「死印」と同様で,後者の場合は同行者に呪いが降りかかって死亡してしまう。もし同行者が死亡してもゲームはそのまま続行されるが,全員で生き延びたいと思うのが人情というもの。今回もいかに怪異を成仏させるかに頭を悩ませることになるだろう。
怪異と遭遇し,クライシスチョイスが発生。急いで正しい行動を選ぼう
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サバイバルエスケープでは,怪異や周囲のスポットを選択して,正しいアイテムを使うことで状況を打破していく。どうすれば怪異を破壊せず,呪いを浄化できるのだろう……
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一方,新要素である
「ジャッジシステム」は,登場人物の会話に対して,憤怒の形相からとびきりの笑顔までの5段階の表情を選んで応じるというもので,それによって相手の好感度が変化する。今回プレイした範囲では確認できなかったが,ゲーム終盤でこの好感度に応じて隠し情報が開示されるなど,やり込み要素の1つになっているようだ。仲間が途中で死んでしまっては元も子もないので,やはりキュアルートで怪異との対決を乗り切っていきたいところだ。
那津美の仕事中,愛海の面倒を見てほしいと頼まれる空良。ここは,とびっきりの笑顔だ!
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ゲーム全編を通じて,もう1つのやり込み要素となっているのが「Dカード探し」。Dマンと名乗る謎の人物からのメールに書かれたヒントを頼りに,どこかに隠されているDカードを探していく。Dカードには,さまざまな怪異の逸話が書かれており,その中にはH市で起こった“あの事件”のことも
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舞台や設定を新たにし,「死印」とは異なる恐怖の形を表現しようとする試みは成功しており,不意に身の回りに恐怖が迫ってくる演出には,しばしばドキッとさせられた。また,空良や聖司以外の登場人物も,どこか常識から一歩外れたアウトロー的な魅力があり,その面でもうまく差別化が図られている。まあ,初回プレイでは筆者……じゃなくて怪異のせいで,みんな死んじゃったけど。
怪異は撃退したものの,呪いを浄化できなかったために葉月が犠牲に……
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ちなみに本作は「死印」と世界観を共有しており,ちょっとした隠し要素や登場人物のセリフに,つながりを感じさせるものがある。もちろん,前作をプレイしていない人でも問題なく楽しめるので,その点はご安心を。
探索パートの操作が直観的なようでいて,かえって煩雑に感じられる部分もあるが,アドベンチャーゲームとしてのシステムも全体的にブラッシュアップされており,良質のホラーを体験できる作品に仕上がっている「NG」。そもそも,タイトルの“NG”にどんな意味が隠されているのかも,この先のストーリーの鍵を握っているので,ホラーゲームが好きな人はぜひ手に取ってみてほしい。
葉月との会話の中で,なにやら聞き覚えのある単語が。あれはイヤな事件だったね……(遠い目)
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