テストレポート
ゲーマー向け超小型PCの第2弾「GPD WIN 2」が4Gamerにやってきた! まずは従来モデルと外観を比較してみる
ニンテンドー3DSシリーズのような折り畳み機構を備えた筐体に,5.5インチ液晶とゲームパッド,キーボードを搭載。そして何よりフルスペックのWindowsが動作するというその仕様は,「夢のゲーマー向け超小型PC」の誕生を印象付けるものだった。
ただしGPD WINは,そもそも搭載するCPU――正確にはSoC(System-on-a-Chip)だが,便宜的にCPUとする――がAtomと非力で,また組み合わせられるストレージは容量が64GBと少なく,その性能も決して高くなかった。
特殊配列のキーボードはキーボードで,使い勝手に大きな問題を抱えていた始末(関連記事)。第1弾らしい荒削りさが魅力とも言えたが,いろいろとハードルの高い感じだったのも確かである。
あれから1年以上経った2017年12月21日。GPDは,ゲーマー向け超小型PCの第2弾となる「GPD WIN 2」を発表した。折り畳み機構付きの筐体を採用する基本コンセプトはそのままに,スペックのほぼすべてを強化してきた製品だ。
2018年では事実上のプロモーション活動であるクラウドファンディングキャンペーンがIndiegogoで始まり,現時点では2018年5月の発売に向けて,開発途上となっている……のだが,突然,その評価機が4Gamerに届いた。完成度に関する情報は今のところ得られていないが,ぱっと見る限り,ほぼ製品版相当のようである。
取得予定とされている日本の技術基準適合証明マークはないため,無線LAN機能を利用できないバージョンと紹介することも可能だが,ネットワークに接続していない状態を,カメラマンの佐々木秀二氏に撮影してもらったので,取り急ぎ,初代「GPD WIN」と比較してみたい。
それに先だってお伝えしておくと,GPD WIN 2の主なスペックは以下のとおりとなる。
●GPD WIN 2の主なスペック
- CPU:Core m3-7Y30(2C4T,定格1GHz,最大2.6GHz,L3キャッシュ容量4MB)
- メインメモリ:PC3-15000 LPDDR3 SDRAM 8GB
- グラフィックス:HD Graphics 615(実行ユニット数未公開,定格300MHz,最大900MHz)
- ストレージ:SSD(Serial ATA 6Gbps接続,容量128GB)+microSD(最大容量未公開)
- パネル:6インチ,解像度1280×720ドット,10点タッチ対応
- 無線LAN:IEEE 802.11ac,Bluetooth 4.2
- 有線LAN:なし
- 外部インタフェース:USB 3.0 Type-C×1,USB 3.0 Type-A×1,Micro HDMI出力×1,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子×1
- スピーカー:内蔵2chステレオ
- マイク:内蔵
- カメラ:非搭載
- バッテリー容量:4900mAh×2
- ACアダプター:出力5V 2.5A
- 公称サイズ:162(W)×99(D)×25(H)mm
- 重量:約460g
- OS:64bit版Windows 10 Home
- 価格:899ドル(※税別,予定)
- 保証期間:1年間
まずは開封。付属のACアダプターは,出力がUSB Type-C形状
GPDから届いたGPD WIN 2は,黒い製品ボックスに収められていた。初代GPD WINのユーザーなら分かってもらえると思うが,ぱっと見の印象は初代の製品ボックスそっくりだ。ただ,初代だとかぶせ箱になっていたのがGPD WIN 2ではいわゆるワンピース箱になっているという違いはある。
そんな製品ボックスの中には,GPD WIN 2本体と,ケーブル接続端子がUSB Type-CになっているACアダプター,USB Type-Cケーブル,インイヤーヘッドフォンが入っていた。ACアダプターとUSB Type-Cケーブルは新作のようだが,どこかで見たような形状のインイヤーヘッドフォンは初代GPD WINに付属していたのと同じように見える。
製品ボックスから取り出したGPD WIN 2だが,初代GPD WINと比較すると大きく感じる。GPD WIN 2の本体サイズは実測約162(W)
なお以下,2台を並べて1枚に収めた写真は,いずれも左がGPD WIN 2,右が初代GPD WINとなる。
天板を開いて真っ先に飛び込んでくるのはゲームパッド部とキーボードだと思うが,ここは後ほどあらためてチェックしたい。
液晶パネルは,初代GPD WINの「5.5インチ,解像度1280
また,下の写真では分かりづらいと思うが,液晶パネルの色は,GPD WIN 2で明らかに向上している。GPDはパネルの駆動方式を公開していないものの,初代GPD WINがTNなのに対し,GPD WIN 2ではIPS(もしくはIPSに近い駆動方式)に変わっている可能性が高い。
なお,液晶ディスプレイ部でもある天板は,「およそ140度強にまで開いたところで半固定になるが,ここから手前と奥に微調整できる」点で,初代GPD WINと変わっていない。
最大で約180度まで開ける点もこれまでどおり。ただ初代GPD WINの場合,本体背面側のUSB Type-A端子に何か差さった状態だと180度まで開き切らなかったのに対し,ヒンジ部が本体から飛び出ない仕様になったGPD WIN 2の場合は,USB Type-Aポートに何か差した状態でも問題なく開き切ることができるようになっている。
その本体背面部を見た写真が下だ。USB 3.1 Gen.1 Type-A端子がGPD WIN 2だと低い位置に移動しているのが分かるだろう。
また,やはり詳細は後段でお伝えするが,GPD WIN 2ではショルダーボタンのレイアウトが変わり,また数が増えている点もポイントだ。
ちなみに本体前面には何もなく,非常にすっきりした印象になっている。
初代GPD WINも底面から吸気する仕様ではあったが,排気は本体正面向かって左手前側のスリット経由となり,本体を手に持った場合,左手が排気孔を覆うような形になっていた。GPD WIN 2ではCPU性能の向上に合わせて冷却周りを見直したということなのだろう。
外観を一通り見ただけでも,GPD WIN 2では,かなり細かくアップデートが入っていることが窺えると言っていいのではなかろうか。
ゲームパッド部はレイアウト変更と嵩上げがトピック。[L3/R3]ボタン新設にも注目したい
さあ,お待ちかねの入力系だ。
GPD WINシリーズをGPD WINたらしめているゲームパッド部では,左アナログスティックとD-Pad,右アナログスティックと[A/B/X/Y]ボタンの配置がそれぞれ入れ替わったというのが,GPD WIN 2における大きな特徴となる。
また,よく見ると分かるのだが,GPD WIN 2では,アナログスティックとD-Pad,そして[A/B/X/Y]ボタンの高さがいずれも,初代GPD WINより高くなっている。アナログスティックに関して言えば,「周囲の凹みが深くなって,相対的により高く感じられるようになった」と評したほうが適切かもしれないが,体感レベルでは「高くなった」という評価でいいだろう。
初代GPD WINの抱えていた「アナログスティックの高さ問題」は,徳岡正肇氏も改善を要望していた部分だったりするが,GPD WIN 2で一定の改善を見たという理解でよさそうだ(※「実際にどうか」はテスト結果を待ってほしい)。
背面側にあるショルダーボタン類にも,大きく変更が入った。
初代GPD WINでは,背面左右両端に[L1/R1]ボタンを配し,その内側,少し離れたところに[L2/R2]ボタンを配置するという,一般的なゲームパッドとは異なるショルダーボタン配置を採用していた。
それに対してGPD WIN 2の場合,背面左右両端に[L1/R1]ボタンを搭載するところは変わらずながら,両手でグリップしたとき[L1/R1]の下,一般的なゲームパッドにおける[LT/RT]トリガーとほぼ同じ場所に[L2/R2]ボタンが追加となった。それだけでなく,初代GPD WINになかった[L3/R3]ボタンが,[L1/R1]ボタンの内側に新規追加となっている。
初代GPD WINでは,[L3/R3]ボタンを物理的には持たず,キーボード部に配置するという,かなり無理矢理な処理になっていたわけだが,その点でGPD WIN 2の物理[L3/R3]ボタンは福音と言っていいのではなかろうか。
ちなみに初代GPD WINだと,[L2/R2]ボタンが内側すぎて押しづらい問題があったが,GPD WIN 2ではその問題もクリアになっている可能性が高そうだ。
レイアウトからキートップの形状まで変わったGPD WIN 2のキーボード
続いては前段で後述するとしたキーボードだが,こちらはほぼ別モノと言っていいほど変わっている。
とくに注目したいのは次に挙げる3点だ。
- [L3/R3]や[SELECT][START]といった特殊キーをメインキーと別の島として独立させるレイアウトの廃止
- 6列レイアウト化
- キートップ形状変更
1つずつ説明していこう。
初代GPD WINでは,PC用キーボードとしてタイプするときにあまり使わない特殊なキーを,メインキーボードの右に,独立した島として置くレイアウトになっていた。しかしそのため,ただでさえスペースに限りのあるメインキー部は狭くなり,主要なキーのピッチは実測約7.5mmと,実用性の面でかなり難のあるものになってしまっていたのが否めない。また,前段でも軽く触れたが,独立した島のところに[L3/R3]ボタンを配置するという“変態配列”だったのも,かなり問題だった。
その反省に立ったのか,GPD WIN 2でGPDは特殊キーの島を廃止して,メインキーを可能な限り横幅一杯まで広げたレイアウトを採用した。その甲斐あって,メインキーのキーピッチは幅9mmと,わずかだが大きくなり,タイプのし易さも改善している。
ちなみに,キーの奥行きは6.5mm。両製品で共通だった。
2.は1.と関連した項目だが,初代GPD WINの5列から1列増えた6列構成になったことで,一般的なノートPC用キーボードと同じように,[Fn]キーとファンクションキーの組み合わせにさまざまな機能を割り当てられるようになった。そしてその結果として,特殊キーの配置における変態度が大きく下がっている。
もちろん,[F1]〜[F6]キーに[F7]〜[F12]キーも割り当ててあったりするなど,多少の無茶はあるものの,かなりの部分で無理なく操作できるようになった印象がある。
3.の効果は,使い込んでみないと分からないので,現時点では事実のみを書くことにするが,初代GPD WINで基本的にすべてのキーでキートップが前後に緩やかな弧を描いて膨らんだ形状になっていたのに対し,GPD WIN 2ではその向きが左右方向へと90度回転している。
またGPD WIN 2では,キーボード最上列中央にある[電源]キーと,キーボード最下列にある[Space]キーは,カーブのないフラットな形状になっていたり,[W/A/S/D]キーは,キートップの中心が突起のように盛り上がった形状をしていたりする点も,キートップの形状周りに生じた違いとして紹介することができるだろう。
キー入力がしやすくなったかどうかの検証はいずれ結果をお伝えするとして,GPDが,キーの配列や形状もしっかり見直してきたことは理解できるレイアウトだとまとめておきたい。
Serial ATA接続のM.2 2242型SSDは簡単に交換できる
最後に,GPD WIN 2のストレージについても触れておきたい。
本稿の冒頭でも少し触れたが,初代GPD WINの搭載するeMMCタイプのフラッシュメモリは,基本的にスマートフォンやタブレットでの利用が想定されるもので,PC用のストレージとしては速度性能に物足りなさがあった。しかも初代GPD WINだと容量は64GBしかなく,Windows Updateが積み重なっていくと,容量管理的にかなり厳しくなることが否めなかった。
その点GPD WIN 2は,完全に別モノだ。ストレージはSATA接続で容量128GBのM.2 2242型SSDに代わり,しかも,底面のカバーを外すだけで簡単にアクセスできるようになった。つまり,速度性能は標準で改善しており,さらにSATA接続でM.2 2242準拠のSSD――選択肢は少ないものの,国内でも入手は可能――を購入し,さらに自分でOSやアプリケーションを移し替えられるだけのPCの知識があれば,容量を増やすことも可能になったわけだ。
テストが終わったら検証記事を掲載予定。乞うご期待
単体でPCゲームをプレイできる超小型PCというコンセプトこそ引き継ぎつつ,GPD WIN 2はまったく新しいマシンになったと言っても過言ではなさそうである。
正直,ニュース記事を書いた時点の筆者は,GPD WIN 2にあまり興味を持っていなかった。「初代GPD WINのブラッシュアップ版」だろうと高をくくっていたからだが,本稿の執筆にあたって評価機を触っているうちに,「これはちょっと欲しいかもしれないぞ」と思い始めたりしている。それほどまでに,ガジェットとしての魅力は大きく増している印象だ。
あとは「ゲームPC」としての実力次第といったところだが,その点はテストが終わり次第,お伝えしたい。数日,というレベルでは検証し切れないと思うので,少し時間はかかると思うが,楽しみに待っていてもらえれば幸いだ。
GPD WIN 2のIndiegogoキャンペーンページ
GPDによるGPD WIN 2日本語特設ページ
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