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印刷2017/09/05 16:28

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VR HMDのエントリー市場を切り開くかも? Windows Mixed Reality対応VR HMDをIFA会場で試してみた

 独ベルリン市で開催中の家電見本市「IFA 2017」では,AcerとDell,HP,Lenovoの4社が,2017年のクリスマス商戦期に世界市場での発売を予定している「Windows Mixed Reality」(以下,Windows MR)対応のVRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)を出展していた。会場でこれら4社の製品をすべて試すことができたので,Windows MR対応VR HMDにはどんな特徴があり,どういう位置づけの製品なのかを簡単にレポートしたい。

Microsoftブースで展示されていた各社のWindows MR対応VR HMD。左からLenovo,Acer,1つ空けてASUSTeK Computer(以下,ASUS),HPの製品となっている。ASUSはIFA 2017に出展していない(※別会場で自社イベントを実施)ため,IFA会場では体験できなかった
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 なお,Windows MR対応VR HMDの詳細は,Acer製品のレポート記事をGamesIndustry.biz Japan Editionで掲載済みなので,そちらも合わせて参照してほしい。

開発版Windows Mixed Reality Headsetとはどういうものか



2017年に登場するWindows MRデバイスは,すべてがVR HMDである


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 まずは,Windows MRとは何かについて,簡単に説明しておこう。
 発表当時,「Windows Holographic」と呼ばれていたWindows MRは,Microsoftが開発したVRや拡張現実(Augmented Reality,以下 AR)向けの技術である(関連記事)。Microsoftが,VRやARを扱うAPIやモーションコントローラを定義し,Windows 10における標準規格として公開することで,互換性があるVR/AR機器や対応アプリケーションの普及をうながして,エコシステムの拡大をうながしているわけだ。

 WindowsでMRと聞いて,Microsoftが開発者向けの提供しているMR HMD「Hololens」を思い出す人もいるだろうが,今回各社が披露したのは,それとは違う。今回の4製品は,Microsoftが「Immersive headset」と呼ぶVR対応HMDで,有り体に言えば,Oculus VRの「Rift」やHTCの「Vive」などと同じような体験をするためのものだ。
 Windows MR対応VR HMDを装着したユーザーの視界に映し出されるのは,CGで作られた映像であり,ユーザーの周囲にある実際の情景は見えない。各社のVR HMDは,前面に2つのカメラを備えているのだが,これは外界やモーションコントローラの認識に使うもので,外界の映像をユーザーに見せるためのものではない。
 一方,Hololensは,周囲が肉眼で見えるシースルータイプのデバイスで,現実の風景にCGを重ねる点が大きな違いだ。

Windows MRの標準モーションコントローラであるWindows Mixed Reality motion controllers
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 Microsoftが標準的な仕様を定義して,各社がそれに合わせた機器を作るという状況であるため,じつのところ,4社による製品に仕様上の大きな違いはない。ディスプレイは解像度2880×1440ドット(※片眼あたり1440×1440ドット)で,最大リフレッシュレートは90Hz,視野角は95度など,主要なスペックは共通である。
 Microsoft製のモーションコントローラ「Windows Mixed Reality motion controller」が,1セット付属するモデルが用意されている点も同様だ。

Windows Mixed Reality motion controller。スティックとメニュー操作用のボタン,タッチパッド,ホーム画面に戻る[Windows]ボタンが見える。写真は右手用のもので,左手用は左右反転した形状だ
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裏側から見た状態。グリップの先端にトリガーボタンがある。また,グリップ部分にもボタンがある。白い輝点はモーショントラッキング用のマーカーだ
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モーションコントローラを両手に握って操作するのがWindows MR対応VR HMDの基本だ。ただ,モーションコントローラはVR HMD前面のステレオカメラで位置を認識しているので,その範囲から外に出ると認識できなくなる
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 VR HMDの仕様に違いがないので,現時点でメーカーごとの違いは,価格と外観程度でしかない。それを踏まえたうえで,各社の製品を写真で簡単に紹介しよう。

 まずAcerの「Windows Mixed Reality Headset」(型番:AH100)だ。国内でも開発者向けバージョンが販売された製品の一般消費者向けバージョンであるが,HMD自体は開発者向けと同じとのことで,開発者向けHMDにモーションコントローラを付属した製品といったところだろうか。

AcerのWindows Mixed Reality Headset。HMD本体は開発者向けと変わらない
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 DellのWindows Mixed Reality Headsetは,「Visor」(バイザー)という製品名が付いている。モーションコントローラとのセットで,北米市場での価格は449.99ドル(税別,本体のみは349.99ドル)とのこと。白い筐体が目を引くポイントだ。

DellのVR HMDであるVisor
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大きなリング状のヘッドバンド(左)を頭に被り,ヘッドバンド後端にあるダイヤルを動かして,頭部を締め付けるように固定する仕組みだ(右)。基本的な装着方法も各社で共通だが,ダイヤルの取り付け方法は異なっている
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 HPのWindows Mixed Reality Headsetも,開発者向けバージョンが国内で販売されていた(※本稿執筆時点では販売停止中)。

Microsoftブースでのデモで使われていたHPのVR HMD
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 最後はLenovoのVR HMD「Explorer」だ。モーションコントローラのセットが449ドル(税別,本体のみは349ドル)となっている。

ゴーグル部分を跳ね上げた状態のExplorer
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ヘッドバンド後端の固定用ダイヤルは,Dellの製品とは異なり,ヘッドバンドの外に出ている
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エントリー向けのVR HMDとしての価値アリ


Lenovoブースで体験中に,いつの間にか撮影されていた筆者
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 さて,今回,4社のVR HMDで体験できたのは,Microsoftが用意したVR空間での体験デモだ。操作のチュートリアルと,Windows MR対応アプリではこんなことができるということを示すミニコンテンツが入ったデモで,既存のWindowsアプリケーションを操作したり,360度ビデオを見たり,ミニゲームを楽しめるようになっていた。
 ミニゲームは単純なガンシューティング風のゲームだったが,敵の攻撃を体全体で動いて避けるので,難度が上がってくると体全体で避けては撃ちの繰り返しになって,プレイにも熱が入る。モーションコントローラの位置認識は,若干精度の甘さを感じることもあったが,おおむね快適で,VR空間上にあるものを掴む操作も,ちょっと試すだけですぐに慣れた。

Microsoft製のデモコンテンツ。スティックを倒して移動先を指定し,テレポートで移動するVRコンテンツでは定番の操作形態だった
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 また,Dellのブースでは,SUPERHOT Teamが開発したFPS「SUPERHOT」のVR版「SUPERHOT VR」も体験できた。Windows MR対応のSUPERHOT VRは,Viveで動作するSteam VR版をベースにした移植版のようだ。
 筆者は以前にViveでこのゲームを体験していたが,こちらもとくに違和感なくプレイできた。ただ,まだ開発途中のためか,画面上にシルエットで表示されたモーションコントローラの形が,Vive付属のワンド型コントローラのままである。製品版が登場する頃には,Windows MR用モーションコントローラのシルエットに変わっているかもしれない。

Dellブースで動作していたSUPERHOT VR。中身はSteam VR版と変わらないようだった
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 IFA 2017開幕に先立ち,MicrosoftでHoloLensの開発を率いるテクニカルフェローのAlex Kipman(アレックス・キップマン)氏は,同社公式Blogで,Steam VRのコンテンツがWindows MR対応VR HMDでも動作すると発表していた(関連リンク,英語)
 Kipman氏の発言だけでは,Steam VR向けVRコンテンツが何も手を加えることなくWindows MR対応VR HMDでも動作するのか,それともなんらかの改修,あるいは移植作業が必要なのかは分からない。ただ,後発のWindows MRが,Steam VRでサポートしているAPIと近いものを用意して,互換性を取りやすいようにしていた可能性はあるだろう。Windows MR対応VR HMDでSteam VR用VRコンテンツが動作するのであれば,(体験の質はともかく)VRアプリケーションが不足する心配は少なそうである。

 もちろん,Windows MR対応VR HMDは,RiftやViveに及ばない点も多い。とくに顕著なのは視野角の狭さで,RiftやViveが110度のところを,Windows MR対応VR HMDは95度しかない。数字で見れば15度にすぎないが,Windows MR対応VR HMDでは,顔のサイズの空き缶を被って世界を覗いているような,視界の狭さを感じずにはいられなかった。
 また,モーションコントローラの位置検出をゴーグル部分の広角ステレオカメラに頼っているため,大きく動かしてしまうと,すぐにカメラの検出範囲外に出てしまい,見失ってしまう点も気になる。

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 そうした欠点を考慮すると,Windows MR対応VR HMDは,RiftやViveといったハイエンド市場向け製品に対する,エントリー市場向け製品として価値があるのではないだろうか。Riftも登場当初に比べれば,モーションコントローラ付きのセットが6万3800円と安くはなってはいるが,Windows MR対応VR HMDは,それよりもさらに安い。
 それにRiftやViveは,VR HMDを使う部屋に,ポジショントラッキング用のカメラやベースステーションを設置する手間が必要である。しかし,Windows MR対応VR HMDは,ポジショントラッキングを前面のステレオカメラで行うので,別途カメラを設置する手間が必要ないのだ(※動ける範囲を登録する作業は必要だが,VR HMDを持って歩けばいいだけである)。

 こうしたWindows MR対応VR HMDの利点は,VRのエントリー市場を開拓する点で役立つだろう。Steam VR用のVRコンテンツには,実験的で斬新なものも多いので,そうしたコンテンツをなるべく手軽に試してみたいという人にとって,Windows MR対応VR HMDは価値ある製品になるのではないだろうか。

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Windows Mixed Reality開発者サイト

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