インタビュー
【Nintendo Switch 5週連続インタビュー(4)】「1-2-Switch」編。一緒に遊ぶことで,仲良くなれるゲームを目指して
同作は,Nintendo Switchに付属している二つのJoy-Conを,2人のプレイヤーで一つずつ“おすそわけ”してプレイするというゲーム集である。
それにしてもなぜ,画面を見ないゲームを作ろうと考えたのか。どんな遊び方を想定しているのかなど,気になるところをプロデューサーの河本浩一氏に聞いた。
本体と同時発売のパーティーゲーム「1-2-Switch」をプレイ。IRカメラやHD振動など,Nintendo Switchならではの機能を使ったミニゲームが楽しめる
Nintendo Switch体験会の本体紹介ステージをレポート。有野晋哉さんと小松未可子さんがJoy-Conのさまざまな機能を使う「1-2-Switch」で対戦した
「1-2-Switch(ワン・ツー・スイッチ)」公式サイト
実家に持って帰って
親戚と一緒に遊べるようなゲーム
4Gamer:
1-2-Switchは,かなり個性的なタイトルだと思いますので,まずはコンセプトから教えてください。
はい。簡単に説明すると,画面を見るのではなく“目と目を合わせて”遊ぶゲームです。Nintendo SwitchにはJoy-Conが最初から二つ付属していますので,これを二人のプレイヤーさんが一つずつ“おすそわけ”して遊ぶ形になっています。
4Gamer:
これはどういった経緯で生まれた企画なんでしょう?
河本氏:
私はNintendo Switchの総合ディレクターでもあるんですが,ハードの仕様が先に決まったんです。それを踏まえて,Nintendo Switchの特長でもある“おすそわけ”をするゲームが必要だろう,と。さらに言うと,画面を見つめて遊ぶゲームはたくさんあるので,同じようなものを作ってもしょうがないなというところから始まりました。
Nintendo Switchのゲームをいろいろ試している中で、「エアピンポン」という試作がありました。これはNintendo Switchの画面に得点板が表示されて,Joy-Conをラケットに見立てて卓球をするというゲームなんですが,これがなかなかユニークだったので,そこを膨らませていこうという形で開発がスタートしました。
4Gamer:
収録されている一つ一つのゲームが,アイデア重視の瞬発力勝負だという印象を受けました。そうなると,どれを採用してどれをボツにするかの判断基準が難しいのではないかと思うのですが,そのあたりはいかがでしょう。
河本氏:
分かりやすさを重視しています。というのも,海外ではホームパーティー,日本ではお盆やお正月の帰省のときなどに,普段はゲームで遊ばない人とも気軽に楽しめるものを目指しているんです。
Wiiの頃も,同じように実家に持って帰って遊んでくれた方が大勢いらっしゃったんですが,Wiiを持って帰るとなると……。
4Gamer:
どうしても荷物が増えてしまいますよね。センサーバーも持って行かないといけないですし。
河本氏:
その点,Nintendo Switchなら簡単に持ち運びできますので,帰省のときなんかにも適していると思うんです。
で,親戚が集まる場などで,Joy-Conを渡してさっと遊べるようなゲーム。シンプルだったり,ちょっと笑えたりするものを中心に選びました。
4Gamer:
なるほど。どのゲームもテンポの良さが印象的です。
河本氏:
そこも重視しています。基本的に2人で遊ぶゲームなんですが,3人以上がいる場で,「面白そうだから僕にもやらせてよ」みたいな声が出たとき,すぐ入れ替われるようにしたかったんです。
分かりやすく面白ければ,見ている人もやりたくなるでしょうし,そういうときにすっと入れ替われたらいいな,と。
4Gamer:
そこで1プレイに20分かかっていたら,待っている人が飽きちゃいますもんね。
個人的には,このテンポの良さと,題材のちょっと砕けた感じから,「メイド イン ワリオ」シリーズを思い出しました。
河本氏:
実は私が入社して最初に作ったのが,64DDの「マリオアーティスト ポリゴンスタジオ」に収録していた「サウンドボンバー」というミニゲームなんです。そのサウンドボンバーが元になってメイド イン ワリオが生まれたということもあって,私はメイド イン ワリオのコンセプション担当ということになっているんですよ。
4Gamer:
ということは,1-2-Switchはその流れを汲んでいる……?
河本氏:
いえ,汲んでないです(笑)。まったく意識しないで,新しいものを作りました。砕けた感じが好きなスタッフがいるという意味では,共通しているかもしれませんけどね。
4Gamer:
そうなんですね(笑)。
1-2-Switchみたいなゲームをメイド イン ワリオとして作ることは考えなかったんですか?
河本氏:
メイド イン ワリオは次々とルールが違うゲームが押し寄せてくる,割と難しいゲームなんですけど,それを画面を見ないで遊ぶと,かなり難しいゲームになってしまうんです。
それに,1-2-Switchは画面の前がゲームステージで,遊んでいる人そのものがゲームキャラクター,というゲームなので,ワリオのキャラクターも活きないんですよ。なので,始めからメイド イン ワリオのことは考えなかったですね。新しいものを作りました。
4Gamer:
そういうことだったんですね。
任天堂というとマリオやゼルダを思い浮かべる人も多いですが,実はミニゲーム集のようなものにも秀作が多いですよね。
河本氏:
ありがとうございます。そこに当てはまっているといいのですが,私は「脳を鍛える大人のDSトレーニング」「すれちがいMii広場」などのディレクターを,「バッジとれ〜るセンター」「Miitopia」などのプロデューサーをやりました。短い時間で楽しめる,ちょっと変わったゲームの担当になりがちです。
4Gamer:
どれも一筋縄ではいかないというか(笑)。
河本氏:
はい(笑)。本当に一筋縄ではいかないお題が多いよなあ,と思いつつ,頑張って楽しんで作っています。
テクノロジーデモではなく
Nintendo Switchの機能を利用した新しい遊び
4Gamer:
1-2-Switchって,ある意味Nintendo Switchというハードウェアのテクノロジーデモのような位置付けでもあるのかな? と思ったんですが,そのあたりはいかがでしょう。
うーん……そこまでではないですね。テクノロジーデモなら,もっとテクノロジーらしいものを作ります。ただ,それで娯楽になるかというと難しいところだと思うんです。それこそ,実家に持って帰って親戚のおじさんなんかと一緒に遊べるか? という観点では,技術的に面白いだけだと,どこが楽しいのか分かっていただけないかもしれませんよね。
なので,HD振動やモーションIRカメラを使った遊びについても,Nintendo Switchが持っている機能を利用しているに過ぎません。
4Gamer:
目的は,あくまで遊んでもらうことにあるわけですね。
河本氏:
ええ。ただもちろん,「HD振動ってどんなものだろう?」と興味を持った方に試していただいて,「これがHD振動か!」と納得していただけるようなものにもしています。HD振動を利用して,Joy-Conの中に入っているボールの数を数える「カウントボール」なんかは,もしかしたらテクノロジーデモとしても成立しているかもしれません。
ただ,「ボールが何個入っているでしょう?」というゲームにしているので,やはり誰かと一緒に楽しく遊んでもらうのが一番の目的なんです。
4Gamer:
一人で遊べるゲームは収録されていないんでしょうか?
河本氏:
Joy-Conに向かって口を動かす「大食いコンテスト」と,本体を抱えて遊ぶ「赤ちゃん」の2種類だけです。これらもどちらかというと一人で遊ぶというより,遊んでいる人の姿を周りの人が見て楽しいかどうかを大事にしています。ギャラリーの存在が前提にあるというか。
なので,本当に一人で遊ぶにしても,その様子を配信してみるとか実況してみるとか,そういう形のほうが楽しめるんじゃないかなと思っていますね。
4Gamer:
なぜそこまでして,人と人とのコミュニケーションを重視しているんですか?
河本氏:
コミュニケーションということそのものが面白いので,そこを利用したかったというのはあります。
Nintendo Switchって,外に持って行って遊びやすいハードですから,そうなると遊んでいる人の周囲にほかの人がいる環境も生まれやすいと思うんです。それならばいっそ,ほかの人の存在をちゃんと意識して遊ぶゲームにしたほうがいいんじゃないかな? という考えです。
4Gamer:
遊んでいる姿を見てもらうことも,遊びの中に含まれているという考え方ですか。
河本氏:
そうですね。ゲームをチョイスするときもそこは大きな基準でした。「僕にもやらせてよ」となるときって,遊んでいる人の動き自体が面白いこともあると思うんです。
4Gamer:
確かにそうですね。
ちなみに,ゲームの種類はどれぐらい用意されているんでしょう?
河本氏:
全部で28種類です。
4Gamer:
その中に,Nintendo Switch Proコントローラーが使えるものなど,Joy-Conを使わない遊びはありますか?
河本氏:
それはありません。あくまでJoy-Conを使って2人で遊ぼうというコンセプトを貫いていますので。
4Gamer:
では,このゲームを作るうえで,苦労したポイントはどこでしょう?
河本氏:
こういうゲームってほかに例がないので,どういうところに落とし込もうかを考えるのには苦労しましたね。どこまで複雑にしていいのかとか,シンプルにしすぎるとかえって遊びにくくなるのではないかとか。
誰にでも気軽に遊んでほしいと考えてはいるものの,要素をなくしていくとゲームになっていなかったりもして(笑)。
4Gamer:
確かにその塩梅は難しそうです……。
「1-2-Switch」をきっかけに
誰かと仲良くなってもらいたい
4Gamer:
1-2-Switchは,Nintendo Switchの機能をしっかり活用していると思うんですが,それならばいっそ本体にプリインストールしても良かったのでは? とも思うのですが。
そう言っていただけるとありがたいんですけど,インストールするための容量が必要になりますし,シビアな話ですが,ソフトの開発コストも本体に乗ってしまいます。割と特殊なゲームですし,しかもほとんどすべてのゲームが2人用なので,人によってはいっさい起動しないゲームが最初から入っているとなったら……。
4Gamer:
ああ,確かに抵抗を覚える方もいるかもしれませんね。ゲームはひたすら1人で遊びたい! という人も確実にいますし。
河本氏:
そういう方に楽しんでいただけるゲームも,Nintendo Switchにはしっかりありますから,本体はなるべくプレーンなほうがいいのかな,と思っています。
4Gamer:
ですね。
ちょっと根本的なところを確認させてください。1-2-Switchでは,“画面を見ない”“目と目を合わせる”というあたりがキーワードになると思うんですが,企画段階でこれらはどちらが先にあったんでしょう?
河本氏:
まず画面は見ないというものがありました。そうやって作っていく過程で,これはどうも相手を見たほうが面白いぞ,ということになったんです。
私を含めて,開発スタッフにも内向的な人間がいて,普段はあまり人の目を見ないんですけど(笑)。でもゲームを作っていると,「久々に人の目をじっくり見た!」なんてスタッフも出てきたりして。そうこうしながら人の目を見ていると,笑っちゃったりするんですよね。
その,なんだか分からないけど妙に笑ってしまうような感覚をゲーム化できないかなと思って,こういう形にしたというところはあります。
4Gamer:
とくに日本人って,相手の目を見て話すのすら苦手な人が多いと思うんですよ。
河本氏:
ええ。私もとても苦手です。
4Gamer:
そういう意味で,日本市場では「相手の目を見て遊ぶゲームです」と説明されると,引いちゃう人も少なくないのでは? という気がしてしまいます。
河本氏:
おっしゃるとおり,ちょっとギャンブルですよね。
なので「相手の目を見て遊ぶゲームです」というだけではなく,「Joy-Conの新機能を使ったゲームでもありますよ」という部分も伝えていきたいんです。
4Gamer:
なるほど。
先ほどからうかがってきたこともまとめて考えると,そのどちらの入り口にせよ,目指すところはコミュニケーションの媒介であるという認識で間違いはないでしょうか。
河本氏:
もちろん遊んで楽しい,という基本的なところが大事ですけど,1-2-Switchを一緒に遊んだことをきっかけに仲良くなってもらえたらいいな,とも思ってます。
4Gamer:
となると,活用シーンもいろいろ想像できますね。
最近,親子でコミュニケーションをとる機会が減ってきた家庭であるとか。
河本氏:
実は私にも小学校高学年の娘がいるんですが,最近,よそよそしくなってきているのを肌で感じているんです……。
4Gamer:
そんな時期に,一緒に1-2-Switchで遊べば関係が改善できるかも?
河本氏:
できます! ……と信じているんですが,開発途中のものを持って帰るわけにはいかないので,まだ試せてはいません(笑)。
4Gamer:
良い結果が出ることを期待しています!
本体と同時発売のパーティーゲーム「1-2-Switch」をプレイ。IRカメラやHD振動など,Nintendo Switchならではの機能を使ったミニゲームが楽しめる
Nintendo Switch体験会の本体紹介ステージをレポート。有野晋哉さんと小松未可子さんがJoy-Conのさまざまな機能を使う「1-2-Switch」で対戦した
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