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[GDC 2025]ゲームの“顔”としてのユーザーインタフェース──「メタファー:リファンタジオ」のUIは,感情を揺さぶる体験の一部
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アトラスはもともと独自のアートスタイルで知られるが,ペルソナシリーズを経て,そのスタイリッシュなビジュアル性は日本にとどまらず,世界中のゲームファンに強い印象を与えてきた。
直近作のメタファーでは,ファンタジーという新たな舞台で,ビジュアル表現も新境地へと踏み込んだ。中でも注目を集めたのがUIで,一見すると大胆なデザイン重視のレイアウトに見えるが,実際に触れると必要な情報が自然と目に入り,直感的に操作できるよう緻密に設計されている。
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同セッションでは,本作のUIデザインを担当したスタジオ・ゼロのイセコウジ氏が登壇し,メタファーにおけるUIの役割やアートスタイルでのアプローチ,開発中に直面した課題から,ペルソナシリーズとの明確な差別化をどのようにして図ったのかまで語られた。
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ビジュアル・アイデンティティを構築するために大切なこと
メタファーの開発初期,UIチームには3つの目標があった。それは,ファンタジーというジャンルにふさわしい,新たなアートスタイルを築くこと。UIがゲーム全体のビジュアルの方向性を先導すること。そして,ほかのゲームにはないメタファーだけのUIを作ることだ。
また,イセ氏らが狙ったのは,UIはただ情報を表示するものではなく,この世界の第一印象であり,語り手にもすることだった。
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制作の流れとしては,ゲーム全体のUIに影響するメインメニューのデザインを考えて,それをほかの部分に反映していった。講演では,実際に制作された初期UIコンセプトが5つ紹介されたが,いずれもユニークで魅力的でありながら,最終的にすべてボツになったという。
・羊皮紙モチーフのファンタジーUI
・NES風のクラシックなレトロゲームUI
・不安や迷いを可視化する心理的なUI
・思考の海から意味をすくい上げるカラフルなUI
・感情を色インクで表現するスタイリッシュなUI
これらは決してダメなデザインではなく,それぞれコンセプトを持っていて面白いビジュアルだ。しかし「メタファーでなければならない」という根拠が薄かった。また普遍的すぎたり暗すぎたり,ポップすぎたりと,作中の雰囲気と合っていないという理由もあったようだ。
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当初のイセ氏は,どうしてもペルソナシリーズを意識しすぎてしまい,ほかの人の意見を聞いては迷うといったように,UIデザインをどうすればいいのか,かなり悩んでいたそうだ。
そうした迷いにとらわれていたとき,ディレクターの橋野 桂氏から「今は他人の意見を聞かなくてもいい。まず自分たちがなにを作りたいのかを明確にしよう」と言われたことが転機になったという。
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再スタートのキーワードは「超(ハイ)・スタイリッシュ」。単なるスタイリッシュではない。超(ハイ)の意気込みだ。イセ氏らは以下の4つの要素を持つ“目が離せないほどの強いビジュアルインパクト”を宿したUIを目指すことにした。この4つを満たすことで,UIがゲームの“顔”として機能し,作品全体の印象を形づくるという考え方だ。
・Cool(第一印象で魅力的)
・Immersive(没入感があり目を奪われる)
・Intriguing(想像力を刺激する)
・Buzzworthy(人に語りたくなる魅力)
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ここからは実際に,ゲームに採用されたUIが紹介されていった。
例えば,戦闘リザルト画面の絵面は,「空から王が常に見ている」という世界設定を表現するために,キャラクターたちを上空から俯瞰視点で見下ろす構図が選ばれた。
ほかのゲームであれば通常,魅力的なキャラクターの顔がしっかりと見える前面構図を採用するところだが,メタファーでは「この世界でしか成立しない構図」を選ぶことが徹底された。
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また,戦闘中のスプラッタペイント風の演出や,短い文字表現で構成されたエモーショナルなトップUIなども,「命がけの戦い」というゲーム体験を視覚的に支える存在として設計されている。
UIは情報の伝達だけでなく,プレイヤーの感情を加速させる装置にもなる。バトルの始まりの派手なカットインやエフェクトがその一例で,プレイヤーの感情が一気に高まるように組まれた。
アトラスと言えば,一手のミスでパーティ全体を危機に陥るような,悪魔的なバトル難度が特徴だ。そこでUIにも“その厳しさや殺意”をテーマに取り入れて,演出やビジュアルを仕立てていったという。
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バトル中,画面上部に表示される“王の顔”も,主人公たちの戦いぶりを見下ろすという,世界観や物語を反映した意味が込められている。
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また,これはゲームの根幹にも触れるところなので詳しくは説明できないが,UIは「プレイヤーとは別の存在としての,主人公の描き方」もデザイン的な特徴となっている。メニュー画面で横たわっている主人公の頭から言葉が飛び出すような演出にしても。
・ペイントの揺らぎ → 感情の流れ
・幾何学的なライン → 思考の道筋
・タイポグラフィ → 内面の言語化
といった具合に,ビジュアルのすべてに意味を込めていった。
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リリース後,メタファーのUIは世界的に高い評価を受けた。その結果,「Best Art Direction」など数々のアート賞を受賞し,各種メディアではUIに着目した特集も組まれた。事実,「UIで興味を持った」「メニュー画面を見て購入を決めた」というプレイヤーの声もあったという。
マーケティングやグッズ展開でも,パッケージビジュアルではなくUIデザインが用いられた。まさにゲームの“顔”として採用されるほど,メタファーのUIは作品を象徴するビジュアルとなったのだ。
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講演の最後,イセ氏は「ゲームのビジュアル・アイデンティティを構築するために大切なこと」を次のようにまとめた。
■ほかにはない表現:
ほかのゲームでは成立しない,唯一無二の表現を目指す
■記憶に残る象徴性:
一目で心に残る,象徴的なデザインを意識する
■感情を動かす力:
プレイした人の心を揺さぶり,人に語りたくなるUIを作る
情報を伝える役割の枠を超え,世界観やキャラクター,そしてプレイヤーの感情にまで寄り添う存在として設計されていたメタファーのUI。筆者もゲームに初めて触れたとき,戦闘リザルト画面の見下ろし構図は昔ながらのトップビューRPGを思わせる懐かしさを感じ,メニュー画面で主人公の頭から選択肢が広がる演出も,常に思考が渦巻いているような感覚を表しているようで,自分の実感とも重なるものがあった。
こうした印象を生んだそれらすべてが,実は意図された設計であり,ナラティブな考えが込められていたことにあらためて驚かされた。
メインビジュアルでもない。キャラクターでもない。UIがゲームそのものを語る“ビジュアル・アイデンティティ”になり得る。それは本作が提示した,UIの新たな可能性を象徴するメッセージだと思う。
「メタファー:リファンタジオ」公式サイト
「GDC 2025」公式サイト
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