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「FFXIV」初のオーケストラコンサート「FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2017 -交響組曲エオルゼア-」開催。光の戦士が涙した初日公演をレポート
――祖堅さんにとっても念願の単独開催が実現しましたが,1日めの公演を終えた感想をお願いします。
祖堅正慶氏(以下,祖堅氏):
父親がオーケストラの団員だったので,昔からコンサートはよく見てきたんですが,国際フォーラムで4公演もやるとか,「なんだそれ?」みたいな感じでした。結局のところ,プレイヤーさんに支えられているタイトルだなと改めて感じました。
――音楽的な何かというよりも,まずはプレイヤーへの感謝を感じたと。
祖堅氏:
ゲネプロが終わったあと,有楽町駅からホールAに向かって3往復ぐらいの列があったのをガラス窓から見て唖然としましたね。本当にプレイヤーの皆さんに支えられているタイトルだと思いました。あ,音のこといった方がいいですか?
――何かあればおうかがいしたいです。
祖堅氏:
音に関しては,自分が作った曲が大舞台で,しかもゲームを愛してくださっているプレイヤーさんに届けられるのは幸せだと思いました。
――オーケストラの譜面は祖堅さんが書き起こされたんですか。
祖堅氏:
さすがに最終的なところは専門家に頼んでいます。基本的なところは自分でやって,お化粧直しを専門家にお願いしたり,元々できているオーケストラの音源を改めてオーケストラで演奏できるように,うまいこと譜面にしてくれる方にお願いしたり。いろいろなパターンで今日演奏できる譜面を用意しました。ですから,僕だけではなく,いろいろな人に手伝ってもらっています。
――完成したオーケストラ譜面を見て,新しい発見とかありましたか。
祖堅氏:
そうですね,オーケストラ譜面って案外細かくて,文字が小さいなと(笑)。
――今回のオーケストラ開催の準備にどれぐらいかかって,何が大変でしたか教えてください。
吉田直樹氏(以下,吉田氏):
去年の9月ぐらいに音楽出版のとある人から「今決断してくれれば,来年の9月23日,24日の国際フォーラムを押さえられますよ。どうします」と言われて。そのころにFFXIVがどうなっているか分からないけど,1回ならなんとかなるんじゃないか,たとえ8人しかお客様がいなかったとしてもやる価値があるのではないか。そう考え「その場で押さえろ!」言ったあとに,さてどうやって会社を説得しようかなと(笑)。
やるからには興業にならなくてはなりませんし,当然本業のFFXIVできちんとした会社貢献,利益的なもの,そしてお客様への満足度を提供していかなくてはなりません。僕らが頑張れるとしたら,最新拡張パッケージである「紅蓮のリベレーター」を,どれだけ最高の状態で出せるかですから。
あとは,興業で入っていただいたプロマックスの皆さんと,祖堅はもちろんマネージャーチームだったり,音楽出版の人たちだったりと,数え切れないぐらいの人たちに動いていただいて,1年がかりでやってきた感じですね。
祖堅氏:
譜面は2年がかりですね。
――将来的なものとして用意していたんですか。
祖堅氏:
そうです。あれだけプレイヤーさんに言われたら,いつかはやらなくちゃいけないだろうと思っていたので,プロデューサーにも内緒で動いてました。
吉田氏:
俺,知ってたけどね?
祖堅氏:
あ,そう? バレテーら(笑)。
吉田氏:
やるからにはやっぱり大きな箱で,僕らの自尊心よりもプレイヤーさんが会場に来たときに「俺たちが遊んでいるゲームはこんなにすごいんだ」って思ってもらいたかったので,FFXIVらしくでかいところで突っ走ってみようよという感じでした。
そこに向かって走ってこれて良かったと思いますし,繰り返しになってしまいますが,やっぱり光の戦士たちに支えられて今があるんだとステージに出て改めて思いました。
――あまりタキシードを着る機会はないと思うのですが,その感想もお願いします。
吉田氏:
むしろ,僕が感想を聞きたいです。僕は似合っていないとしか思っていなくて。
祖堅氏:
大変だったんですよ。(吉田氏が)普通のシャツを着ていると,みんなから「地味だなー」って言われて。
吉田氏:
祖堅は「念願なんで燕尾服が着たい」とすぐに決まったんです。チョッキだチョッキだと喜んで,これがまた似合うんですね。僕も燕尾服が着たかったんですけど,壇上で燕尾服が2人並ぶのはちょっとおかしいので,自然とタキシードになったんです。でも,シャツを着るとみんな「なんか違うな」という雰囲気で首をひねるんですよ。
祖堅氏:
今回はフォーマルにいきましょうというお題があったのですが,フォーマルにしたらなんか地味だなとなって。いろいろ付けていったら……。
吉田氏:
シャツにシルバー入れてみましょうとか,ヒョウ柄をつけてみましょうとか。ヒョウ柄はホント酷かったよね。これのヒョウ柄があること自体にビックリでしたけど。
祖堅氏:
さらに赤を入れてみましょうとかやっているうちに,最終的には歌舞伎町の男になっていました。
吉田氏:
最終的にこの姿に決まりましたが,最後に東京フィルハーモニー交響楽団さんの名前を噛んでしまったのは,着慣れない服を着たからだということにしておいてください(笑)。
――以前から,祖堅さんはゲーム体験に寄り添ってこそのゲームサウンドと話されています。今回のコンサートも,その言葉以上にゲーム体験に寄り添っている感じがしましたが,これは祖堅さんの曲と東京フィルハーモニー交響楽団さんの演奏の相乗効果でしょうか。
祖堅氏:
そこは譜面の段階からめちゃめちゃ意識していました。ゲーム体験ありきなので,いきなり全然違うオーケストラアレンジの曲を始めても,コンテンツに対しての思い出が蘇らないと思うんです。だから僕は今回2ループ構成で譜面を作って,1ループめは実直にゲームになっている音をそのままオーケストラでやったらどうなるかにかなり神経を使いました。そしてオーケストラならではでこういうことができるんだよ,というアレンジを2ループめにもってきて,オーケストラってスゴいなっていうことが分かりやすくなるように構成しました。
――植松さんは「Distant Worlds」で,ファイナルファンタジーのコンサートを100回以上公演されていてかなりのベテランですけど,今回FFXIVのコンサートにあたって,何かアドバイス的なものをされたんですか。
植松伸夫氏(以下,植松氏):
僕がアドバイスしてほしいですよ(笑)。
シリーズ単体でこれだけ集客力があるなんて……「Distant Worlds」じゃ,ここ(東京国際フォーラム ホールA)の4回を満席にするのは難しいと思う。
さっきも吉田さん達と話していたんですけど,とにかくお客さんが,海外の人もファンの方々が熱いんです。なんでFFXIVはこんなに熱いんだろうと思っていましたが,彼ら(吉田氏らスタッフ)自身が熱いんです。それが,お客さんに伝わっていると思います。
僕もこの年になってますから,頑張ればうまくいくとは思ってないんですよ。いくら頑張っても,うまくいかないことって世の中にいっぱいあるんです。でも,やっぱり頑張らないとうまくいかない。何年か前のFFXIVはうまくいかなかったこともありましたが,ここまで立ち直らせた彼らの熱意が,この会場のお客さんを見てもよく分かりますよね。だから,本当にどうすればあんなにお客さんが入れられるのか,俺がアドバイスをもらいたいぐらい。
吉田氏:
褒められ慣れてないから,恥ずかしい(笑)。
――今日のコンサートに参加した感触からして,FFXIVの海外単独コンサートの開催は可能そうですか。
植松氏:
可能だと思いますよ。だって,ファンフェスでのベンヤミンさんのピアノとスーザンさんのボーカルのステージで,十分「いける」という感触を得ていますから。
吉田氏:
最初(のオーケストラコンサート)はお膝元の日本からというのは分かる。でも,うまくいったなら海外でも開催してほしいというファンの声をたくさんいただいています。今回1度やりきったことで,ある意味パッケージになったと思うので,海外でもお届けできればと思います。
――演奏と一緒にスクリーンで映像を流していましたが,映像と音楽をすりあわせていく部分は大変だったと思います。どんな苦労がありましたか。
吉田氏:
あれは,ある意味海外公演も視野に入っていて,グローバルどこででもやれるようにしています。題字が英語で,下に小さく日本語が入っているのもそのためです。
僕が最初にすべて字コンテを作って,?井 浩と前廣和豊に構成を頼んで,あがってきた映像を僕や祖堅がチェックしました。「究極幻想」だけは起動からバトルのところに曲の盛り上がりを合わせたいというので,そこを調整したぐらいですね。
祖堅氏:
なので,海外公演のお声がけをお待ちしております。
――今回選曲の中にクリスタルタワーがありましたが,「Distant Worlds」ではなかなか選ばれない曲だと思います。27年前に作られた曲を,後輩の祖堅さんがアレンジをして,コンサートで演奏されるのはどういう気持ちでお聞きになってましたか。
植松氏:
いや,嬉しいような恥ずかしいような。自分のコンサートでやったことないし。
祖堅氏:
めちゃくちゃいい曲じゃないですか。
植松氏:
(小声で)いくら欲しいんだよ。
一同:
(笑)
祖堅氏:
言っておけば,次のパッチとかで安く(曲を)作ってくれるかもって。
吉田氏:
僕は「悠久」をやりたかったんですよ。だけどFFXIVの曲じゃないよなって。個人的に聞きたかったんですよ。
祖堅氏:
クリスタルタワーメドレーみたいな案もあったんですけど,ちょっと尺が長くて断念しました。でも,今回のクリスタルタワーは,通常時と戦闘時の2曲をまとめて,という工夫をしました。
吉田氏:
クリスタルタワーでは,バトルに入った瞬間にスムーズに曲が移行するシステムを作りました。このときのためにに作ったシステムで,クリスタルタワー以降もいろいろなところで使っていますけど,それもきっちりオーケストラで再現できていて,ここもゲーム体験の再現に近いのかなと思いました。
――新生編のラストの3曲は,まさにバハムート組曲という構成になってましたが,なぜこのような構成にしたのでしょうか。
祖堅氏:
ゲームは「紅蓮のリベレーター」まで進んでいますが,当時の最初のレイドコンテンツとして大迷宮バハムートというのは,センセーショナルな,幾多の光の戦士を駆逐してきた……。
吉田氏:
ダメなんだけど,駆逐したら(笑)。
祖堅氏:
(笑)。そんな由来のある特別な蛮神で,開発側からしても思い入れのあるコンテンツだったんです。コンサートでも話しましたが「親の声よりも聞いた曲」という言葉が生まれるぐらい,サウンドを聴いただけでいろいろなものが蘇るというのはなかなかありません。
新生エオルゼアからプレイされている方にとって,バハムートは特別なはずなので,第一部の締めを飾るコンテンツとして用意するものは,大迷宮バハムートだろうと意見が一致したので,あの3曲を最後に持ってきました。
吉田氏:
先輩方が過去にファイナルファンタジーシリーズを作ってこられたなかから,召喚獣が生まれて,「ファイナルファンタジー7」で映像を含めて極限に至りました。
バハムートという存在がなければ,たぶん新生エオルゼアのアイデアも出ていなかったと思います。バハムートは僕らにとっても思い入れがすごくありますし,ファイナルファンタジーのファンにとってもそうだろうと,揉めずにアッサリ決まりました。
祖堅氏:
会場の入り口に開発者のメッセージボードがあるんですけど,お気に入りの曲として圧倒的多数なのが「試練を超える力」なんです。同じ想いがプレイヤーの皆さんにもあるだろうと思いますので,入れたかったという感じです。
――会場にはバハムートをクリアしていないプレイヤーさんも多かったと思いますが,そちらに向けてのメッセージという意味もあったのでしょうか。
祖堅氏:
そこまで深く考えてないよね。
吉田氏:
制限解除で行ってくれればいいかな,くらいですね。
――シヴァ自身はパッチ2.4の蛮神なのに「忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜」は第二部に組み込まています。弦楽四重奏というガラリと変わったアレンジにしたこととあわせて,その意図を教えてください。
祖堅氏:
「忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜」はシヴァのテーマですけど,今回のオーケストラで編曲するにあたって,シヴァのテーマではなくてイゼルのテーマとして扱ったんです。イゼルは竜詩戦争の歴史を知っていることもあって,彼女にもいろいろと思うところがあります。それを演奏で表すにあたって,何が一番適切なのかと考えたときに,弦を4つ重ねて線と線を絡み合うような繊細さを表現しようと思って弦楽四重奏に,そして第二部に組み込んだというわけです。
――今回コンサートで演奏された18曲というのは,FFXIVの膨大な曲の一部だと思うんですが,曲の選定はすんなり決まりましたか。
祖堅氏:
むちゃくちゃ揉めましたね。
吉田氏:
主にここ(指で吉田氏と祖堅氏の間を往復させて)がね。
――今回演奏できなかったけど,これはやりたかったなという曲はありますか。
祖堅氏:
ざっくりいうと,3国とイシュガルド,あとはダンジョンメドレーですかね。大灯台シリウスは最後まで当確上にあったんですが,尺が長くて落ちてしまいました。そういう曲はたくさんありますね。
――そういった曲も含めて,いつか「紅蓮のリベレーター」もオーケストラで聞きたいなと思うのですが。
吉田氏:
マネージャーから「なんとか(紅蓮のリベレーター)を入れられないか」と言われて,アンコールのラストならアリだと思うので,祖堅に聞いてみたらと返答したんですけど,(祖堅氏の口まねっぽい口調で)「今更,何言ってるの間に合うわけないじゃん!」。
祖堅氏:
締め切りを2週間を切ったあとに聞かれて,さすがの僕も「それは無理だよ」と。今回のコンサートでは,しっかりとしたクオリティでプレイヤーさんにお届けしたかったので,付け焼き刃で作ったような譜面は絶対に避けたかったんです。
吉田氏:
もし次も,というお声をいただいたのであれば,第一部をドマ編,第二部アラミゴ編でもいいし……。
祖堅氏:
まだまだ新生も蒼天でやってない曲もありますし。
吉田氏:
いや,それだと紅蓮に辿り着けないって(笑)。もし次もやれるのであれば,また選曲で取っ組み合いがあると思います。開発もマネジメントも,FFXIVのゲーム体験や曲に思い入れが強い人がたくさんいて,意見を聞き出すと収集がつかないので。権力順に決めていくことにします。
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」公式サイト
「ファイナルファンタジーXIV」公式サイト
FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2017
- 交響組曲エオルゼア- セットリスト
01. 希望の都 / 祖堅正慶 / 仲間将太
02. 静穏の森 / 祖堅正慶 / 宮野幸子
03. 極限を超えて / 祖堅正慶 / 宮野幸子
04. 絢爛と破砕 〜クリスタルタワー:シルクスの塔〜 / 祖堅正慶 / 宮野幸子
05. 究極幻想 / 祖堅正慶 / 宮野幸子
06. 試練を超える力 / 祖堅正慶 / 鈴木克崇/仲間将太
07. 白銀の凶鳥、飛翔せり / 祖堅正慶 / 宮野幸子
08. Answers / 植松伸夫 / 成田勤
<第2部【蒼天編】>
09. 不吉なる前兆 / 祖堅正慶 / 鈴木克崇/仲間将太
10. 彩られし山麓 〜高地ドラヴァニア:昼〜 / 祖堅正慶 / 黒田賢一
11. 逆襲の咆哮 / 祖堅正慶 / 黒田賢一
12. Dragonsong / 植松伸夫 / 成田勤
13. メビウス 〜機工城アレキサンダー:天動編〜 / 祖堅正慶 / 辻峰拓
14. 忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜 / 祖堅正慶 / 辻峰拓
15. 英傑 〜ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦〜 / 祖堅正慶 / 黒田賢一
16. Heavensward / 祖堅正慶 / 鈴木克崇
<アンコール>
17. そして世界へ / 祖堅正慶 / 宮野幸子
18. 天より降りし力 / 祖堅正慶 / 仲間将太
<出演者>
指揮:栗田博文
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
出演:
ファイナルファンタジーXIV プロデューサー兼ディレクター 吉田直樹
ファイナルファンタジーXIV サウンドディレクター,コンポーザー 祖堅正慶
スペシャルゲスト:コンポーザー 植松伸夫、ヴォーカリスト スーザン・キャロウェイ
司会:吉田直樹
※敬称略
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXIV
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