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僕はずっと,MMO世界の傍観者だったんです――不定期連載「原田が斬る!」,第3回は「ソードアート・オンライン」川原 礫氏とのVRMMO談義
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印刷2017/03/25 00:00

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僕はずっと,MMO世界の傍観者だったんです――不定期連載「原田が斬る!」,第3回は「ソードアート・オンライン」川原 礫氏とのVRMMO談義

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 鉄拳シリーズのプロデューサー・原田勝弘氏による対談企画「原田が斬る!」の第3回をお届けする。

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 第1回,第2回とゲーム開発者をゲストに迎えてきた本連載だが,第3回ではゲーム開発というフィールドから少し離れ,VRMMOをテーマにした小説「ソードアート・オンライン」(電撃文庫 刊)(以下,SAO)の作者である川原 礫氏をゲストに迎えた。
 題材が題材だけに,川原氏がMMORPGプレイヤーであることは想像に難くないが,実は原田氏も,黎明期のMMORPG界隈で名を馳せた有名人だったりする。

 そんな2人のトークは,MMORPGはもちろん,VRやAIといった最新テクノロジーについてまで広がり,さらには2月18日に封切られたアニメ「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」と,その中で重要なファクターとなっているAR技術についても,深く語られている。
 ゲーム開発者として,作家として,そして1人のゲーマーとして,両氏はどんな未来を思い描くのか。期待に胸を膨らませながら読み進めてもらえると幸いだ。

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MMORPG黎明期と,「SAO」の原風景


4Gamer:
 本日はよろしくおねがいします。今回はMMORPGについて造詣の深いお二人の対談ということで,まずはMMO遍歴から伺っていきたいと思うのですが,最初はやっぱり「Ultima Online」(以下,UO)ですか?

原田勝弘氏(以下,原田氏):
 最初に見たのは「Meridian 59」でしたが,MMO遍歴のスタートという意味ではUOですね。いまだに月額課金していて,20年越しのアカウントを保持しています。今やプレイはほとんどしてないんですけど。

小説家の川原 礫氏。2009年より,電撃文庫にて「ソードアート・オンライン」シリーズを発表。全世界におけるシリーズ累計発行部数が1900万部を超える大ヒット作となった。そのほかにも「アクセル・ワールド」「絶対ナル孤独者」の人気シリーズを持つ(Twitterアカウント
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川原 礫氏(以下,川原氏):
 僕が始めたのはUOの日本語サーバーで,ちょうどFeluccaとTrammelに分かれようかという時期だったと思います。始めたときはまだ,分かれてなかったんですよね。

※UOを構成する2つの世界。マップなどはほぼ同一だがルールが異なり,FeluccaではPKや窃盗が可能,Trammelでは不可能といった違いがある。開始当初はPKなどが可能な一つの世界のみだったが,後にFelucca とTrammelに分裂,PKを嫌うプレイヤーらが率先して移住していった。

4Gamer:
 原田さんは英語サーバーですよね。βテストからですか?

原田氏:
 βからですね。「SAO」風に言えばビーターってやつです(笑)。正式サービスは1997年からで,日本語サーバーができたのって1998年の後半だったと思うんだけど,川原先生の年齢だと社会人になったばかりって時期じゃないですか?

川原氏:
 年齢的にはそうでしたね。ただ,僕は普通に就職しなかったので。その頃は漫画を描いたり,漫画家さんのアシスタントをしたりしていました。そっちの方面で食えれば良いなぁ,と思いつつ,ブリタニアから帰ってこない,みたいな(笑)。

原田氏:
 ということは,大学を出て,すぐにそういう道に行かれた?

川原氏:
 在学中からですね。大学の先輩が漫画家デビューしてまして,その方のアシスタントをずっとやっていました。自分の漫画が最初に雑誌に載ったのは……あれは在学中だったかな。とても漫画とは呼べないような代物で,業界の隅っこで細々って感じでしたけど。

原田氏:
 UOにハマったきっかけは何だったんですか? 僕はもう,その頃ゲーム業界にいたのと,Richard Garriott信者だったこともあって,ハマるべくしてハマったわけですけど。

川原氏:
 当時はインターネットの黎明期で,IRCっていうチャットが漫画家さんやイラストレーターさんの間ですごくはやったんですよ。

原田氏:
 ありましたね。僕はICQ派でしたけど,日本人は皆IRCをやってた。

※ICQとIRCは,共にネットワークを介してインスタントメッセージを送りあうサービスの一つ。ICQは今でいうSkypeやLINEに近く,IRCは部屋を作って複数人と会話するチャットルーム方式だった。ちなみに2017年現在でも,どちらも利用可能だ。

川原氏:
 ICQもやってましたけど,あれは1対1なので,ハマるという感じではなかったですね。それで,UOプレイヤーだけのIRCチャンネルがあって,そこで当時知り合った漫画家さんに誘われてUOを始めました。

バンダイナムコエンターテインメント 鉄拳シリーズチーフプロデューサー 原田勝弘氏
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原田氏:
 なるほど,引きずりこまれたわけですね(笑)。僕がどれほどUOにハマったかは,後でお話しするとして,あれってものすごく時間を取られるじゃないですか。

川原氏:
 そうですね。まぁ,当時はまだテレホーダイの時代なので,23:00から8:00まで限定でしたけど。

原田氏:
 あ,テレホーダイ,ちゃんと守ってたんですね(笑)。

川原氏:
 当然ですよ! 守らないと電話代が。

4Gamer:
 あれ,だんだん自制が効かなくなりません? 23:00になって接続しようとすると混雑でつながらないんで,ちょっと早めに接続するようになるっていう。そこからどんどんフライングするようになって,しまいには気にしなくなる(笑)。

原田氏:
 そうそう。僕のはネットゲームにハマりだしたのが「Diablo」だったから,当時はISDNすら珍しくて。結局テレホーダイの時間外もやっちゃうので,月の電話代が5〜6万かかってましたね。しかし深夜に遊んでると,昼夜逆転しませんか? 

川原氏:
 もちろん逆転しました。仕事への影響も……まあ,あったんでしょう(苦笑)。アシスタントの仕事をなんとかこなしつつやってましたね。

原田氏:
 じゃあ,川原先生はいわゆるネットゲーム廃人の時期ってなかったんですか? 実は,これを一番最初に聞きたかったんだけど(笑)。

川原氏:
 UOの頃は,廃人ってほどではなかったですね。派閥争いとか,ダンジョンに潜りっぱなしみたいなところまでは,当時はいかなかった。

原田氏:
 じゃあ,UO以外では?

川原氏:
 UOの次はドリームキャストの「ファンタシースターオンライン」(以下,PSO)に行って,これはUO以上にハマりました。まあ,PSOはMOですが。

原田氏:
 なるほど,日本における黄金パターンですね。僕はDiabloにまずハマってからUOに行って,その次にPSOじゃなくて「EverQuest」(以下,EQ)に行ったんですよ。そこでMirageというギルドを作って,同じ名前でWebサイトを始めたんです。MMOでの面白エピソードを紹介したり,当時流行し始めていたFlashでPVのようなものを作ったりとか。

La Mirageのトップページに掲載されていたイラスト。残念ながら,今は閉鎖となっている
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4Gamer:
 La Mirageはあの当時,とても有名なサイトでしたね。EQプレイヤーじゃなくても,海外のMMO好きなら名前を知っているレベルでした。

原田氏:
 確かにEQの世界では,それこそ知らない人がいないくらいではありましたね。海外からもアクセスがあって,多い時で1日で26万PVとかありました。で,その頃はまさに廃人でしたね。ちょうど「鉄拳3」から初代「鉄拳TAG」を作っていた時期で,社会人だったんですけど(笑)。

川原氏:
 ええっ,それ,両立できてたんですか?

原田氏:
 いや,むしろ社会人だったからあの程度で済んだんだと思います。もし僕が学生時代にMMORPGを与えられてたら,「SAO」のようなデスゲームじゃなくてもきっと勝手に死んでましたよ。当時は最高で72時間ぶっ通しで遊んでましたからね。

4Gamer:
 72時間かけて何をやってたんです? ダンジョン攻略とか?

原田氏:
 いや,たしかUOで部屋の模様替えをやってたのかな。会社の先輩と2人で,テーブルが欲しいんで木を切りに行って工作したり,色々作って飾ったりとか。で,徹夜の連続でずっとやってたから,リアルとゲームの区別がつかなくなっちゃったんでしょうね。ゲーム内で先輩に「喉が渇いたんで,そこいらの飲み物1本とってください」って言っちゃった。そしたら先輩から電話がかかってきて,「リアルな飲み物はトレードでは渡せない」って。それでお互いハッとしてね。「今の俺達はたぶんヤバイ。俺も寝るからお前も寝ろ。業務命令だ」って(笑)。

原田氏に提供していただいた,ブリタニアのご自宅。綺麗に飾り付けされている
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川原氏:
 ヤバいですねえ(笑)。

原田氏:
 その時に初めて,MMOとの付き合い方を考えるようになりました。でも,それぐらいハマってたんです。当時の上長に向かって,「まじめな話,ボーナス振込は円じゃなくてUOのゴールドにしてくださいよ。そのほうがスムースなんで」とか訴えてましたから。価値観が完全にUOの世界に換算されてしまってた。

川原氏:
 僕もUO最盛期は,リアルで街中を歩いてると,どこかからリザードマンの“シャーッ”って声が聞こえたような気がして,その度にビクっとしてましたよ。

原田氏:
 ああ,あの声ね! いまや雑魚ですけど,当時はすごく怖かった。

川原氏:
 そうそう。ヤバかったです。

原田氏:
 でもやっぱり,若かったのと,あとモチベーションが高かったのかな。仕事とは別で,なんというか二次創作的な意欲がものすごく湧いてきた。この世界の面白さ,自分の人生の一部を,世界に紹介したいというような。

川原氏:
 分かります。僕が「SAO」を書き始めたのも2001年で,まさしくUOを遊んでいた時期でした。ただ原稿は完成したけど,結局コンテストに応募はしなかったんですよね。それで,自分のWebサイトで連載する形にしたんですけど。

4Gamer:
 なぜ応募しなかったんですか?

川原氏:
 一番の理由は規定の枚数を大幅に超えてしまったからなんですが,今思えばそれで良かったというか。当時はまだ,ちょっと早すぎたんじゃないかなと思います。当時の中高生は,まだMMORPGなんてやってなかったでしょうし。

原田氏:
 ああ,確かに。あの当時はまったくカジュアルじゃなかったからね。PC環境を整えるのにまず専門知識が必要でしたし,時間的な拘束もしゃれにならない。となると,「SAO」の面白さも理解できなかったかもしれない。

4Gamer:
 日本でMMOが一般的になるのは,「FINAL FANTASY XI」(以下,FFXI)と「ラグナロクオンライン」(以下,RO)以後ですから,2001年だとMMO経験者はリテラシーの高いごく一部だったはずです。

※PS2版「FINAL FANTASY XI」のβテストが2001年12月17日開始,「ラグナロクオンライン」のβ1テストが2001年11月29日開始で,ほぼ同時期のスタートだった。

ラグナロクオンライン
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川原氏:
 そうですね。とくにROは,同人文化とつながることで,二次創作が大きく広がった印象があります。MMORPGでオンリー(即売会)が開かれたのも,ROが最初じゃなかったかな。「RAG-FES」っていう非公式イベントがあって,そこに当時のGravityの社長さんや名物GMの……。

4Gamer:
 ヒャックさん。

川原氏:
 そう,ヒャックさんが韓国から来たりとか。草の根的に二次創作がどんどん広がっていったんです。

原田氏:
 僕は当時から海外のPCゲームばかり追いかけていたので,日本で何が起きていたのか,実はあんまり追えていないんですよ。海外だとUOの集団訴訟とか「エバークエスト未亡人の会」とか,割とネガティブなイベントも盛り上がってたんですけど(笑)。

※MMORPGの黎明期には,UOに限らずさまざまな問題が噴出し,社会問題となった。原田氏の言うUOの集団訴訟は,サーバーダウン中はゲームをプレイできないにも関わらず,24時間のサービスを謳うのは誇大広告であるなどとして,1998年に5人のプレイヤーが北米で起こしたもの。結果は原告側が訴えを取り下げ,示談に終わっている。「エバークエスト未亡人の会」は,同作によって家族や恋人などがゲームの世界から帰ってこなくなったと主張する人達のグループで,ネットゲームの中毒性を象徴するものとして,当時話題を呼んだ。

EverQuest
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4Gamer:
 いや,日本は日本でネガティブなのはいろいろ……BOTやチート,RMTとの果てしない戦いとか,あるいはオンラインにおけるマナー論争とか。ただ,海外とは違って,あまりリアルな方面の動きとは重ならなかったかも?

原田氏:
 あの時期に皆,オンラインゲームのリテラシーを学んだんだよね。僕は結局「鉄拳5」を作ってる時期まで,いろんなネットゲームをずっと遊んでたんですが,川原先生は,UO,PSOときて,その次がROですか?

川原氏:
 そうです。ROの次が完美世界の「パーフェクトワールド」で,最後に「World of Warcraft」(以下,WoW)に辿り着きました。

原田氏:
 ああ,WoWはよくできてましたよね。

川原氏:
 WoWは何というか……世界の広さに圧倒されました。UOも広かったと言えば広かったけど,あれは脳に入る広さだったじゃないですか。でもWoWは,世界の端から端まで行けやしない。そんなものすごく広大な世界に膨大なクエストが用意してあって,とてもじゃないけど遊び尽くせない。あの物量にちょっとやられちゃった。

World of Warcraft
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原田氏:
 結果的に,あれがMMORPGのファイナルアンサーになっちゃいましたね。色々なMMOの良いところを全部入れて,プレイヤーの不満にも全部対応しましたっていう,当時の完成形を見せてしまった。僕もWoWはやりましたけど,1年くらいで「なるほど!」って思って,なぜかそれ以降MMOをやらなくなってしまったんです。

川原氏:
 僕は2年くらいかな。シャカリキになってやり込んで,それでもうプレイヤーとしては満足してしまった。そこからなんですよ,僕が本格的に小説を書き始めたのは。ある意味,あれがMMOを終わらせてしまったのでしょうね。

原田氏:
 そこで,その「SAO」について聞いてみたいんですが,これはやっぱり,今まで話してきたようなネットゲームの経験があって生まれた作品なわけですよね? 僕の勝手な想像ですけども。

川原氏:
 そうですね。ネットゲームをやってると,お話のネタみたいなものって,いっぱい思い浮かぶわけです。僕がUOをやっていた頃にも,小説ではないんですが,日記を書いている有名な人がいて……TENPAIだったかな。

4Gamer:
 ああ,詐欺で有名な。

※1990年代に,日本におけるUOやROなどで悪名を轟かせたロールプレイヤー。「ブリタニア詐欺案内所」といったサイトを運営し,悪辣な詐欺を働いてはその手口を日記として公開。賛否はともかく,界隈で大きな反響を呼んだ。

川原氏:
 そうそう。それを見て,こういうのもコンテンツとしてありなんだって思ったんです。それで,いつか自分も何か書いてみたいと思うようになりました。最初のきっかけといえばそれですね。

原田氏:
 なるほど。さっきも少し話が出ましたけど,僕が「SAO」ですごく面白いと思うのは,MMORPGの価値観――例えばゲームへのリテラシーとか感情移入の仕方,極端なところではネット恋愛的な部分も含めて,ちゃんと理解していないと読めない作品だってところなんです。

川原氏:
 まぁ,そうならないようにと思って書いてはいたんですけど,結果としてそうなっちゃいましたね。

原田氏:
 でも結果として時代が追いついたというか,理解できる読者が増えたことで,爆発的にヒットした。恐らく1990年代の初期に出版されていたら,きっとこうはなっていなかったんじゃないかと思うんですよ。

川原氏:
 ええ,あの当時に出版していたら,きっと説明部分が倍くらいになっちゃったと思います。そんなの読みたくないですよね(笑)。

4Gamer:
 いちおう,MMORPGを題材とした作品としては,2002年の「.hack」シリーズが先行していて,あれももちろん名作なんですが,いわゆる“ネトゲあるある”みたいなものは,「SAO」ほど拾われていなかった印象です。例えば「ソードアート・オンライン プログレッシブ」に出てきた精錬詐欺とかは,MMOプレイヤーにはまさに“あるある”で。そういうところが個人的にはグッと来ちゃうんですが……。

川原氏:
 「.hack」に“あるある”が入ってきたのは,シリーズの2,3作目くらいからですね。精錬詐欺はROでの経験が元ネタです。武器を強化してもらうには,ブラックスミスに装備を預けなくちゃいけないんですよね。

原田氏:
 あぁ,UOでいうリペア詐欺ですね。修理するからって装備を渡すと,そのまま持っていかれるってやつ。

川原氏:
 そうそう。でも,今のネットゲームでもそういう詐欺は残ってるんじゃないですか?

4Gamer:
 今はトレード自体を制限する方向に向かっているので,単純な詐欺は難しいと思います。とくにユニークアイテムなんかは,キャラクターにバインド(ひも付け)されますし。

原田氏:
 ゲームの中の資産は,サービスを提供する側が保証しなくちゃならないみたいな考え方が生まれてきて,リアルな訴訟騒ぎで判例も出ちゃったんだよね。昔はシステムも穴だらけだったし,ゲームの中のことはゲームの中のことって,規約にも書かれてた。かつ,黎明期だったからプレイヤーもリテラシーが高い人が多いこともあり,悪党のロールプレイなんかも許容……というか,ある意味世界観に貢献さえしていたんだけど。

川原氏:
 そうですね。騙される方が悪い,殺される方が悪いって感じでした。

原田氏:
 僕はUOが面白かった部分って,すごいドラマが自然に生まれてくるところだと思ってるんですよ。クエストもろくに用意されていなかったのに。例えば,僕は当時,その海外サーバーでいち早くグランドマスターになったブラックスミスだったんです。ゲーム内でも有名で,結構な資産家だった。PKとPKKの双方に大量の武器と鎧を供給してね。

Ultima Online
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4Gamer:
 完全に死の商人じゃないですか(苦笑)。

原田氏:
 そうそう(笑)。で,同じく初期にグランドマスターブラックスミスだったさっきの先輩が,鉱山で1人採掘をしていたら,突然白骸骨のPK集団に包囲されて,そのまま拉致されちゃった。魔法でリコールできないように,触媒の秘薬だけスリとられて。

4Gamer:
 それでどうなったんです?

原田氏:
 そいつらのアジトに無理矢理連れて行かれたら,大量のインゴットが積み上げられてて,ひたすらPK用の武器を作らされたんですって。ずっと剣を向けられて,「変な動きを見せたら殺す」「ログアウトしても殺す」って脅されつつ,しかもPKギルドの武具調達がいかに難しいかって身の上話を延々と聞かされながら(笑)。最終的には相場の数倍の報酬までしっかり払ってくれて,生還できたんですが。今のMMORPGのゲームシステムじゃ,こんなドラマ起きないよね?

川原氏:
 今のゲームは,そもそもPKができないですからねえ。

原田氏:
 そう,今は他人に干渉できない仕組みなんです。だから「SAO」を読んだ時,きっとこの作者はUOのあの時代を知っているんだろうな! って思ったんです。イマドキのMMOしか知らなかったら,きっとああいう緊張感のある物語にはなってなかったんじゃないかって。

川原氏:
 確かにあの空気感は,PKが存在する世界を体験してないと分からないかもしれないですね。一瞬も気を抜けないっていう(笑)。

原田氏:
 川原先生ご自身はどうなんでしょう。もし「SAO」のアインクラッドにログインしたら,自分では活躍できるタイプだと思いますか?

川原氏:
 前線で戦うとかは絶対にしないですね。死んじゃいますから。でも,どうにかしてレベルを上げようとはすると思います。不安ですからね。
 
4Gamer:
 第1層のはじまりの街から出ないタイプではないんですね。

川原氏:
 街に閉じこもってるのも,それはそれで不安ですし。ものすごく安全な狩りをして,少しずつレベルを上げるんでしょうね。それで,ある日調子に乗ってコロっと死ぬ(笑)。

原田氏:
 僕もさんざん理屈こねたうえで,「あっ!」って言って死ぬタイプですね(笑)。

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