インタビュー
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」の魅力は,プレイするたびに変わる展開と新たな発見。韓国のイベントでゲームデザイナーにインタビュー
2Kは2016年10月6日,韓国・ソウルのインペリアルパレスホテルにおいて,10月21日の日本発売が予定されているストラテジー「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」(以下,Civ6)のイベントを開催した。これは,日本や韓国,シンガポール,中国などアジアのメディアが集まって,プレビュー版を体験するという催しだ。さらに,会場には開発元であるFiraxis Gamesのシニアゲームデザイナー,アントン・ストレンガー氏が登場。いろいろと話を聞く機会を得たので,ここではその模様をお伝えしたい。試遊レポートは,追ってお届けする予定だ。
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは簡単な自己紹介をしてください。
アントン・ストレンガー氏(以下,ストレンガー氏):
はい。私はスタンフォード大学を卒業したあと,カーネギーメロン大学のエンターテイメント・テクノロジー・センターで学び,2011年にFiraxis Gamesに入社しました。シド・マイヤーズ作品との出会いは11歳のときで,友達にやり方を教えてもらいながら「シド・マイヤーズ アルファ・ケンタウリ」を遊び,それから,もっぱらシミュレーションを好んでプレイするようになったんです。
4Gamer:
シド・マイヤーズ アルファ・ケンタウリはかなり複雑な作品ですが,11歳で遊んだというのはすごいですね。
それから私はシヴィライゼーションシリーズを遊び続け,インターンとしてFiraxis Gamesに入ってからは,ゲームプレイデザイナーとして「シドマイヤーズ シヴィライゼーションV」の拡張パック「Gods & Kings」の開発に携わることができました。また,もう1つの拡張パック「Brave New World」では,世界議会システムをデザインしました。
4Gamer:
そして,Civ6でシニアゲームデザイナーとして制作に関わることになったわけですね。ところで,このたびの新作,Civ6のテーマはどういうものでしょうか。
ストレンガー氏:
“Bringing map to life”(マップに生命を)です。Civ6では,ランダムに生成されたマップがプレイヤーのスタイルに影響を与え,ゲームの展開が変わっていくというゲームシステムを取り入れました。このテーマはCiv6のアートスタイルにも影響を与えており,マップを生き生きとしたものにするため,カートゥーン調のグラフィックスを選んだんです。
4Gamer:
システムとアートスタイルの両面から,マップに生命を与えるというわけですね。
ストレンガー氏:
指導者達がアニメ調になっているのは「親しみが持てるリーダー像を描きたい」という意図によるものです。彼,彼女らは人類史におけるビッグネームですが,デフォルメされた絵柄と動きにより,感情豊かで親しみの持てる人物像を作っています。
4Gamer:
これまでは,「平和を唱えつつ,ミサイルを撃ちまくるガンジー」がネタにされることがありましたが,カートゥーンスタイルになったことで,新たな人気者が生まれるかもしれませんね。では,Civ6で新たに導入された要素を教えてください。
ストレンガー氏:
はい。まずは,「発展していく都市」(アンスタッキング・シティ)があります。これまで1ヘックスに収められていた都市ですが,今回は都市のまわりの区画に「港」や「大学」「劇場」といった施設を建てることで発展させられます。都市が広がることで,外見も変わっていくんです。
施設はまた,偉人の入手にも大きく関係しています。例えば,科学の偉人「大科学者」を手に入れたい場合は,都市に「キャンパス」など科学関連の施設を建築してポイントを貯めなければなりません。
4Gamer:
ゲームの要素と,発展していく都市のシステムが深く関わっているんですね。
ストレンガー氏:
次の見どころは,「社会制度ツリー」(シビックツリー)です。これまでのシリーズ作品では,テクノロジーツリーで科学技術を開発することが非常に重要でした。今回はこれに加えて,社会制度ツリーで文化を開発していきます。この社会制度ツリーの導入によって,「科学技術は遅れているけど,文化的に優れた国」という表現が可能になります。
例えば,勝利に重要な役割を持つ「世界遺産」は,社会制度ツリーを進めることで作れますし,日本の固有ユニットの「侍」はダメージを受けても戦闘能力が下がらないという特殊能力を持っていますが,技術ツリーではなく社会制度ツリーで開発していくといった具合です。
4Gamer:
技術だけでなく,文化に目を向けることも大事だということでしょうか。
ストレンガー氏:
ええ。そして,こうした科学技術や文化の研究には「積極的な研究」(アクティブリサーチ)システムが影響を与えます。条件が揃うと「ひらめき」「天啓」といったブーストが発動して,研究速度が増加するんです。
4Gamer:
積極的な研究は,どういう理由で導入されたんですか。
ストレンガー氏:
ブーストはプレイヤーの行動に応じて発動しますから,マップがランダム生成であることと合わせて,毎回異なった発展のさせ方が求められるわけです。また,積極的な研究は新たな戦略をプレイヤーに提示するものでもあります。ブーストがかかることにより,状況によっては,自分が使っている文明では考えられないようなプレイの方法が見つかることもあるでしょう。
4Gamer:
なるほど。マップが変化することでプレイヤーの取るべき行動が変わり,結果として,発動するブーストも変わると。
ストレンガー氏:
そうです。さらに「都市国家」の配置も変化しますから,そうした意味でもランダム生成の影響は大きいでしょう。今回,都市国家は24種あって,それぞれ固有のボーナスを持ち,プレイのたびにどれが出現するかが変わるんですよ。
4Gamer:
自動生成が,これまで以上に大きな影響を及ぼすわけですね。ところで,開発で一番苦労した指導者は誰ですか。
ストレンガー氏:
また,アラビアのサラディンのように,特定の状況下でのみ特殊能力が発動するような指導者もデザインが難しかったですね。サラディンの特殊能力は,「大預言者」が最後の1人になった場合,無条件でこれをもらえるというものなんですが,条件がなかなか整わないので,なかなかテストができなかったんですよ。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,テスターに最も嫌われていた指導者は。
ストレンガー氏:
スキタイのトミュリスです。「サカ族騎兵」や「軽騎兵」を訓練するたびに同じユニットをもう1つもらえるという特殊能力があるので,個人的にはお気に入りなんですが,戦う相手として嫌っていたテスターも多かったでしょう(笑)。
4Gamer:
偉人もたくさん登場しますね。
ストレンガー氏:
そこも,かなり苦労した部分です。すべて偉人は歴史上の人物を元にしており,しかも,それぞれの能力が違いますから,181人も選び出すのは大変でした。ですが,1回のゲームですべての偉人を見られず,それがプレイを繰り返すモチベーションになるという意味では,頑張って良かったなと思っています。
4Gamer:
気の早い話ですが,次回作を作るとしたら,何か課題や希望などがありますか。
ストレンガー氏:
個人的には,新しいプレイヤーにもシヴィライゼーションシリーズを楽しんでもらいたいので,ハードルをいかに下げるかということをいつも考えています。
4Gamer:
では,最後にシリーズのファンに向けたメッセージをお願いします。
ストレンガー氏:
「シミュレーションって,難しいんじゃないの」と思っている人にも気軽に楽しんでほしいと思います。チュートリアルには日本語ボイスによる説明もあるので,かなり分かりやすくなっていますよ。本作に“正しい遊び方”はないので,完璧にプレイしようなどとは考えず,とにかく試してもらえると嬉しいですね。
個人的に,日本で暮らしていたことがあり,日本の文化やゲームをリスペクトしています。日本文明の指導者が北条時宗なのはご存じのとおりですが,調査のために日本へも行きました。そのときはまだ時宗の登場をアナウンスしていなかったので,ゲームのための調査だと言えず,いろいろと苦労しましたね(笑)。日本のファンの反応が楽しみです。ぜひフィードバックをお願いします。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト
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