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[COMPUTEX]なぜ2017年第2四半期に出る「Vega」は「Frontier Edition」だけなのか。「Radeon RX Vegaは7月末リリース」の謎を追う
もちろん,GPUに関しても新情報はあった。当初,2017年第2四半期の登場とされていた「Vega」マクロアーキテクチャ採用のGPUのうち,Radeon Proシリーズに属するワークステーション向けの「Radeon Vega Frontier Edition」だけが先行して北米時間6月27日に登場すること,そして,ゲーマーにとっての本命となる「Radeon RX Vega」は,北米時間7月30日に開幕となるSIGGRAPH 2017のタイミングで正式発表予定であることが明らかになっている。
COMPUTEX TAIPEI 2017に合わせて開催となったAMDの報道関係者向けイベントに,Raja Koduri(ラジャ・コドゥリ)氏以下,GPU部門であるRadeon Technologies Group(以下,RTG)のキーパーソンは筆者が確認した限り1人も参加しておらず,当然,GPUに関するインタビューセッションの設定もなかった。そのため,RTGの公式見解を聞くことはできていない。
しかし今回4Gamerでは,AMD,より正確にはRTGとの関わりが深い,匿名のAIB(Add-In-Board)パートナー(=カードメーカー)関係者数名に「Radeon RX Vegaってどうなってるんですか」と尋ねて回り,一定の情報を得ることはできた。そこで,「RTGの周辺から聞いた話であって,100%正しいとは限らない」とお断りしつつ,その内容をお届けしてみたいと思う。
Radeon RX Vegaは最適化待ち,そしてRadeon Vega Frontier Editionは株価対策!?
Vegaのサンプルパッケージ |
VegaマクロアーキテクチャではHBM2をHBCとして採用する |
HBCとそれ以外のメモリをHBCCが管理。これがVega世代における新しいメモリアーキテクチャのキモだ |
2017年1月初旬の時点で明らかになっていたとおり,Vega世代の単体GPUは,新しいメモリアーキテクチャを採用する。HBM2(High Bandwidth Memory 2)を,従来からあるSRAMに代わるキャッシュ「High-Bandwidth Cache」(以下,HBC)として使うことになるのだ。
高速性が必要なメモリにはHBM2を割り当て,そうでないものはそれ以外の場所へ置いて,新設のキャッシュ管理機構「High-Bandwidth Cache Controller」(以下,HBCC)が,それらを制御することになるわけだが,そういったメモリアーキテクチャの一点……というよりはむしろ複数の部分で,何らかのボトルネックが発生しているのではないかと考えられる。
ある関係者は「ベストケースではとても素晴らしい性能を示す一方,そうでないときは,現状,競合の1080より低い性能しか出ないこともある」と述べていた。
おそらくは,ハードウェアがほぼ完成し,社内ラボでのテストも終えて,実アプリケーションとしてのゲームタイトルを動かしてみたところ,それこそゲームアプリケーション個別の事情によってキャッシュ制御がうまくいかないとか,そういうケースが発生しているのではなかろうか。
なら,7月末の時点でその問題が解決しているのかというと,それは神のみぞ知るといったところだ。Ryzenがそうであったように,ことによると,Radeon RX Vegaがフルポテンシャルを発揮するようになるには,正式発表からしばらく経って,マイクロコード(≒ファームウェア)やRadeon Softwareの熟成が進むのを待つ必要があるかもしれない。
AMDと一緒に,RyzenとRadeon RX Vegaを育てていくことこそ,2017年後半にAMDファンが味わえる醍醐味,という言い方もできそうだが,どうだろうか。
関係者の一人が,「ゲーマー向けのRadeon RX Vegaとは異なり,(Radeon Vega Frontier Editionは)すぐ世界中のエンドユーザーが飛びつく類いの製品ではない。だから“リリース”できる」と述べていたことも付記しておきたい。
RTG公式Webサイト
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