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「ときど作戦」こと豪鬼制作プロジェクトの狙いとは。「鉄拳7 FR」ステージ後の原田P&ときど選手&ノビ選手に,JAEPO会場で話を聞いてみた
鉄拳シリーズに,ストリートファイターからあの豪鬼が参戦するということで話題を呼んでいるが,その豪鬼がプレイ可能なバージョンが一般に公開されるのは,今回が初めてである。また,ステージでは豪鬼のお披露目ということで,Evolution 2015の鉄拳部門と公式世界大会で見事二冠を飾ったノビ選手と,「ストリートファイターIV」(以下,ストIV)シリーズの豪鬼使いとして知られるときど選手による夢のエキシビションマッチが行われた。
本稿では,ステージ上での対決を終えたときど選手とノビ選手,そして鉄拳プロジェクト総合プロデューサーの原田勝弘氏の3名へ行ったインタビューの模様をお届けする。話を聞けた時間は短かったものの,プロゲーマー両名のインプレッションから豪鬼制作秘話,夢のコラボを実現するにあたってのカプコンとのやり取りなど,貴重な話がうかがえたので,格闘ゲームファンはぜひともご一読いただきたい。
「鉄拳」シリーズオフィシャルサイト
「ときど作戦」と呼ばれていた豪鬼制作プロジェクト
4Gamer:
ステージ,お疲れ様でした。ノビ選手とときど選手のエキシビションマッチはかなり白熱した試合が展開されましたが,原田さんから見ていかがでしたか。
原田勝弘氏:(以下,原田P)
ときど君には今日の朝初めて豪鬼を触ってもらったということもあって,ちょっとドキドキしながら見ていたんだけど,既にしっかり使いこなしてたね。結果,すごく熱い試合になって,我々としても嬉しかったです。
というのも,豪鬼制作プロジェクトはリークされないように,ものすごく気をつかって進めていて,社内でもバレないようにコードネームで呼んでたんだ。「ときど作戦」って言ってさ(笑)。
4Gamer:
勘の良い人なら気付いてしまいそうですけど(笑)。
原田P:
そう,だから途中で「ミスターX」に変えたんだけど(笑)。そういうわけで,本当はそれこそ制作中に監修してもらいたいぐらい,ときど君には遊んでみてもらいたかったんですよ。実際,遊んでみてどうだった?
ときど選手:
もう,めちゃくちゃビックリしました。僕はストIVシリーズでずっと豪鬼を使ってきましたし,「鉄拳6」も少しかじっていたんですが,「鉄拳7FR」の豪鬼はちゃんと鉄拳の世界観にフィットしてるのに,2DっぽくてちゃんとストIVっぽく動かせる。2Dと3Dだと表現の文法がまったく違うし,ゲームシステムだって異なるのにも関わらずです。これは相当苦労したんじゃないかと。
原田P:
実際,かなり苦労してます。まず今回の豪鬼って,カプコンさんから一切データをもらわずに,イチからこっちで作ってるんだよね。で,そのあと最初は鉄拳でのモーションの作り方──まず腰の体重移動を設定して,そこから手足の動きを付けて体の重みを表現するやり方で動かしてみたわけ。そしたら全然豪鬼っぽくならなくて。
4Gamer:
やはり文法が違うということなのでしょうか。
原田P:
それで,次は2Dの作り方を試してみようってことで,決めのポーズを固めて間をつないでいく作り方をしたら,今度はパラパラマンガみたいになってしまった。もう,アニメーションだけではどうしても2Dっぽくなってくれないので,最後の手段として豪鬼だけ,いわゆるヒットストップを入れることにしたんです。あくまでも演出としてね。
4Gamer:
ああ,なるほど!
原田P:
それに,そもそものゲームの設計が違うから,調整の部分も大変でね。例えば最初の頃は,跳び込み(ジャンプ)なんてなかったわけですよ。でも,ストリートファイターのキャラだったら,やっぱり跳び込みたいじゃん? それでジャンプ攻撃を入れてみたんだけど,「そういや鉄拳のキャラに対空技なんてないぞ? これどうすりゃいいんだ?」って(笑)。
とまあ,かなり苦労しながら作ってるんだけど,現状だとまだ65%ぐらいの完成度ですね。現状の豪鬼には,まだまだ“鉄拳の動き”が足りていないので,そこをうまく補ってやらなくちゃならない。そのうえで,鉄拳のキャラクター側にも,豪鬼の波動拳やジャンプに対抗できるものを用意していく,というのが次の課題ですね。
4Gamer:
ますます楽しみになってきました。ちなみに鉄拳プレイヤーであるノビ選手から見て,ときど選手の豪鬼はいかがでしたか。
ノビ選手:
ちゃんとキャラクター対策をしないとな,という感じです。まず鉄拳の側から見たら,波動拳が飛んでくることがもう,斬新すぎますから。鉄拳にこれまであった飛び道具って,カスタマイズアイテムの寿司とか鮭ぐらいだったじゃないですか(笑)。
4Gamer:
あとはデビル仁のビームと,仁八の炎魔砲ぐらいですね。でも,それも立ち回りで使うような技じゃないわけで。
ノビ選手:
そうそう。しかも,さっき原田さんが言ったように,豪鬼だけジャンプが特殊で,跳び込みをガードするとこっちが不利なんですよ。もう,どうすればいいやら!
原田P:
鉄拳でジャンプを使うのは,意表をつくときぐらいだもんね。
ノビ選手:
まったく違う使い方ですよね。とにかくこれまでの鉄拳にはなかった,新しい要素がいくつも入っていて,僕としてはとても楽しんですけど……ときどさんと良い勝負になってしまったことは,許せないっすよね。
(一同笑)
4Gamer:
今年のEvolution 2016では,ノビvs.ときど戦がまた見られるかもしれません。
ノビ選手:
いやいや,あり得る話ですよ!
ときど選手:
練習したいので,早く稼働してほしいですね。
原田P:
稼働まではまだまだ時間があるから,それこそこれからときどに監修に入ってもらったり,いろいろなプレイヤーから意見をもらったりしつつ,面白い豪鬼に仕上げられればいいなと。
ときど選手:
あー,それだときっと豪鬼が強くなっちゃうなあ(笑)。
アーケードと格闘ゲームコミュニティに必要なもの
4Gamer:
ところで,鉄拳7FRの豪鬼を見てしまうと,「鉄拳 X ストリートファイター」(以下,鉄クロ)がどうなるのか気になってしまうのですが……。
原田P:
鉄クロについては,「ストリートファイター X 鉄拳」(以下,ストクロ)でスピンオフ作品の難しさを痛感したので,展開の仕方をもう一度考える必要があると思っています。前にも話したとおり,ストクロってそもそもは鉄拳とストリートファイターの両方のプレイヤーにアピールしたくて生まれた企画だったわけだけど,結果的にはそのどちらでもない新たな客層である“ストクロ勢”を,海外を中心に生み出す結果になったんですね。
もちろん,それはそれで良い意味での誤算でもあったんでしょうけど,ただやっぱり格闘ゲームコミュニティ全体を揺るがす盛り上がりや,話題になるという観点から見ると,単なるコラボやゲストではなく,今回のようにしっかり「敵対」する形で登場するのが理想だと考えているんです。
4Gamer:
確かに豪鬼が発表されたとき,「ストクロや鉄クロが目指していたのは,これなんじゃないか」と感じました。
うん,スピンオフでもなくコラボでもない参戦というのは,一つの答えだと思う。なので,今回の豪鬼へのフィードバックを見ながら,鉄クロを今後どうしていくかを考えたいですね。
4Gamer:
分かりました。もう一つ,バンダイナムコがアーケードから撤退するのではないかという噂が流れていましたが,原田さんはこれについてどうお考えですか。
原田P:
これはね,僕らもびっくりしているんですよ。僕はアミューズメント事業部ではないから,その立場で話すことはできないんだけど,まあこの会場のブースを見てもらえば分かるでしょう。撤退を考えている企業が,こんな出展するはずがない。
4Gamer:
それは確かに(苦笑)。
原田P:
鉄拳7FRにせよ「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス マキシブースト ON」にせよ,運営まで込みで考えたら何年もかかるプロジェクトなわけです。さらに言えば,グループにはゲームセンターを運営するナムコという会社もあるわけで,それをいきなり畳んでしまうって,ちょっと考えにくいんじゃないかな。
4Gamer:
おっしゃるとおりですね。
原田P:
今の鉄拳は,若いプレイヤーが増えてきていますし,そうやって新しくゲーセンに来るようになった人と,これまでゲーセンを守ってくれたコア層の両方が混在するコミュニティが生まれつつある。あくまでアーケードタイトルである「鉄拳7FR」を統括する立場としてですが,僕はそうしたコミュニティを大切にしたいし,まだまだ頑張る気でいますよ。
4Gamer:
なるほど。では,その「鉄拳7FR」の稼働を心待ちにしているファンに向けて,最後にメッセージをいただけますか。
原田P:
今言ったように,鉄拳には新しいプレイヤーがどんどん入って来ています。若い新規層とコアな鉄拳プレイヤーのほかにも,ほかの格闘ゲームで遊んでいた人達が,豪鬼の参戦で注目してくれていて,それがすごくありがたいです。
だからといって,別にストリートファイターからお客さんを取ろうってわけじゃなく,格闘ゲーム全体が盛り上がるタイトルにしたいというのが狙いなので,アーケード,そして家庭用ともに,続報に期待してもらえたら嬉しいですね
4Gamer:
家庭用の「鉄拳7」はPlayStation 4版の制作が発表されていますが,発売時期は未定ですよね。家庭用でも豪鬼は使えるのでしょうか。
原田P:
リリースのタイミングはまだ話せませんが,これまでを考えてもらえれば分かるように,アーケード版にあった要素を家庭用でわざわざ削るようなことはしません。そもそも,鉄拳に豪鬼を参戦させるにあたって,僕と小野さん(カプコンの小野義徳氏)は契約書こそ交わしましたが,会社間で金銭的なやり取りは発生していないですし。
4Gamer:
えっ,そうなんですか?
原田P:
その代わりに,うちが持っている,多くの格闘ゲーム関連の細かい特許──1つの例を挙げると“プラクティスモードで入力履歴をリアルタイム表示する”みたいな仕組みを,カプコンさんに無償で提供しています。これはお互いに格闘ゲーム業界を盛り上げるという目的のために,「壁を取っ払って」やっていることなんです。とにかく格闘ゲームをお互いに盛り上げようと,プレイヤー全体の利益になることを考えてやってます。
4Gamer:
ああ,それはありがたいですね。
原田P:
だから僕と小野さんがいる限り,どちらかが“いけず”をすることはないです。そこは安心して待っていてもらえたらと。ただ,こういう取り組みや含め,鉄拳7では「前例のない」事ばかりをガンガンやってるので,そんな僕がクビになっちゃったらごめんなさい(笑)。
4Gamer:
アーケード版,家庭用ゲーム機版とも,楽しみにしたいと思います。本日はありがとうございました。
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