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Tumult Royal
  • 発売日:2015/09/30
  • 価格:27.95ユーロ
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[SPIEL’15]「カタン」を生んだTeuber一家による新感覚ゲーム「Tumult Royal」プレイレポート。雲を掴むようなプレイフィールながら,中毒性の高い一作
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印刷2015/10/10 21:28

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[SPIEL’15]「カタン」を生んだTeuber一家による新感覚ゲーム「Tumult Royal」プレイレポート。雲を掴むようなプレイフィールながら,中毒性の高い一作

横暴貴族の格好(?)でゲームを解説してくれた説明員の方
画像集 No.010のサムネイル画像 / [SPIEL’15]「カタン」を生んだTeuber一家による新感覚ゲーム「Tumult Royal」プレイレポート。雲を掴むようなプレイフィールながら,中毒性の高い一作
 Klaus Teuber氏が生み出した「カタンの開拓者たち」(以下,カタン)は,現代のドイツゲームにとって,きわめて重要な作品といえる。同作は20年前のゲームだが,かなり年配の人でも,「最初に遊んだボードゲームはカタン」という人がドイツでも少なくないようで,まさにボードゲームのあり方を変えてしまうほどの歴史的傑作となった。

 そんなカタンを生んだTeuber氏が,20周年となる2015年に息子のBenjamin Teuber氏と共同で新作を発表するというニュースは,当然ながら高い注目を集めていた。そして,ついに「SPIEL’15」でリリースされた新作「Tumult Royal」には,多くのファンが殺到した。筆者もまたその一人で,初日開幕と同時にKOSMOSブースに向かい,試遊相手を探したほどである。
 すぐに同好の士が集まり,KOSMOSスタッフのインストラクションの元で遊ぶことができたのだが……45分のプレイ後には,その卓に座った全員が「素晴らしいゲームだ」と唸らされることとなった。
 というわけで,ここでは「Tumult Royal」がどんなゲームなのか,紹介してみたい。

KOSMOSスタッフのインストを聞くゲーム馬鹿たち(含む筆者)
画像集 No.001のサムネイル画像 / [SPIEL’15]「カタン」を生んだTeuber一家による新感覚ゲーム「Tumult Royal」プレイレポート。雲を掴むようなプレイフィールながら,中毒性の高い一作

「Tumult Royal」公式サイト(ドイツ語)



「生かさず殺さず」と行きたいが……


 「Tumult Royal」は,設定からしてユニークなゲームだ。
 プレイヤーは横暴貴族の一人となり,領民から搾取して得た資産を使って,自分の彫像を領地に建てていく。その結果,最終的に最も多くの彫像(=勝利点)を建てたプレイヤーが,ゲームの勝者となる。
 ただし領民から搾取しすぎると反乱が起こり,場合によっては手ひどいしっぺ返しを受けてしまう。つまり各プレイヤーが「生かさず殺さず」を意識しつつ,ほかのプレイヤーを出し抜いていくのが肝要なのだ。

 実際のプレイでは,大きく分けて二つのフェイズで構成されるターンを繰り返すことで進行していく。領民からの搾取を行うフェイズと,搾取した資源を元に彫像を建てていくフェイズだ。なお,ここからのルール説明は,あくまで筆者の理解に基づく「だいたいこんな感じ」という解説であって,細かな手順や用語は実際と異なる可能性がある。正確なルールは公式サイト(ドイツ語だが)などを参照してほしい。

■搾取フェイズ


 搾取フェイズで行うのは,場に裏返しで置かれた資源タイルを1枚選び,内容を確認してから,手元に置くかどうかを決めることだ。このフェイズでは手番などはなく,すべてのプレイヤーが同時に行動するので,基本的に早い者勝ち。また,約20秒の制限時間内であれば,何度でもチャレンジできる。資源タイルは「食料」「石」「道具」の3種類があり,またタイルによって価値が1〜3まであるので,彫像の建設に必要な資源を,手早く集めたいところだ。

全員で一斉に搾取開始。20秒のカウントは付属の専用砂時計で行う
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 手元に置くかどうかの判断材料となるのは,搾取開始前に決定した「領民の怒り度」である。搾取が終わった後に残った資源タイルはすべて表にされ,反乱が発生するかどうかの判定が行われる。
 このとき,もしも「領民の怒り」を下回る数しか資源が残っていない場合は反乱が発生し,その反乱の原因となった資源を最も多く持っているプレイヤーは,最も価値の高い資源タイル1枚(と,後述する従者3人)を失うことになる。

画像集 No.004のサムネイル画像 / [SPIEL’15]「カタン」を生んだTeuber一家による新感覚ゲーム「Tumult Royal」プレイレポート。雲を掴むようなプレイフィールながら,中毒性の高い一作
早い者勝ちとは言え,欲しい資源タイルが必ずあるとは限らない。ターンの最初に,プレイヤーの数×3枚のタイルが場から除外されるためだ
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「領民の怒り度」は,搾取を始める前にルーレットを使って決定しておく。度数は2から5まであって,ルーレット上での比率が異なる仕組みだ。ここでは3と4の比率が高く,2と5はややレアということになる

この場合,食料と道具は残っているが,石がまったく残っていない。石を求めて反乱が発生し,たった1枚しか持っていなかったにも関わらず,筆者は石のタイルを失ってしまった。先のタイル除外や価値の差があるため,こういうこともまま起きえる。ちなみに2つの資源が足りない場合は,2つの反乱が同時に発生する
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■建設フェイズ


 無事に資源を手に入れることができたら,次は彫像を建設する番だ。ここでの進行は手番制で,「従者」の数が多い順に行動が行える(正確には,搾取を行う前に行動順を決定する)。彫像を建てるには,建設に必要なコストを支払ったのち,場に広げられたマップに彫像コマを置いていけばいい。ただし場所によってコストは異なり,すでにほかのプレイヤーの彫像がある場所には,原則として建設できないので,有利な場所は先んじて押さえておくことが重要になる。

獲得した資源タイルを使って彫像を建てていく。村や都市はコスト的に有利なので,早めに押さえておくといい。例えば,村であれば通常のコストで2つの彫像が建てられる
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 このほかに,ターン毎に決定される「王」のルールがあり,これに即位すると即座に彫像1つをノーコストで獲得できる。王の即位は,ターンの最初に最も従者が多いプレイヤーであることが条件だ。従者は彫像を建てるときに余分なコストを支払うことで増やせるが,王になった瞬間に,5人の従者を失ってしまう。

 またターン終了時に,「彫像が建っている数が最も少ないプレイヤー」に対して,「領民のお慈悲」カードが与えられる。これは自分が持ってるタイルの価値が,「領民から見て」1下がるという効果があり,つまり価値3のタイルを持っていても,反乱を恐れなくて良くなる。やや地味ではあるが,強気に行けるという意味ではかなり便利である。

 このように,「Tumult Royal」は,

  • 搾取においては手番関係なくやりたい放題できる。
  • 建設には手番の概念があり,従者の数が勝利点の獲得に大きく影響する。

 という,まったく趣の違うシステムが共存しているのが特徴といえるだろう。


雲を掴むような不思議なプレイフィール


 さて,これだけでも色々と考えさせられるゲームシステムだが,実際に遊んでいて最も強く感じたのは,破綻しそうで破綻しないゲームバランスと,戦略の多様性である。

 「破綻しそうでしない」という印象は,搾取フェイズでとくに強く感じられるものだ。
 アクションゲームさながらに(あるいは横暴貴族さながらに),皆で資源を漁っていくのだが,「とにかくたくさん取れば良い」わけでもなければ,「少なければ安全」というわけでもない。多くとりすぎると反乱が起きて多くを失うことになるし,かといって遠慮していては,肝心の彫像を建てることができないからだ。その上で,20秒という制限時間のうちに,状況は刻一刻と変化していく。

搾取の嵐が吹き荒れる,その直前の様子
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 戦略の多様性については,マップのどこに彫像を建てていくかのみならず,地図上で優位に立つことを狙うのか,王位の獲得を重視するのかでも,大きく動き方が異なってくる。王になれば彫像を建設したのと同等の勝利点を稼げるからだ。例えば,高価値の資源タイルを得て,それをあえて低コストの彫像建設に用いれば,従者を効率的に増やすことができ,王位を維持しやすくなる。とくに王位によって得られる勝利点が増える,中盤以降で有効な戦略だ。

 だが最も面白いのは,ガチで勝利を狙って本作を遊んでいると感じる,なんともいえない「雲を掴むような感覚」だろう。見通しがつくようでつかず,定石はあれど達成できるかは否かは未知数で,にも関わらず「こうすべきだった」という後悔だけは強く意識される。これが実に楽しいのだ。

 ちなみに,「Tumult Royal」は終了条件と勝利条件も面白い。
 終了条件は,各プレイヤーが手元に残している彫像の数を数え,1位と4位の差が一定以上に離れたらサドンデス,という仕組みなっている。ターンが先に進むにつれ,その差が少なくなる仕組みにはなっているが,序盤で大差がついた場合にも,ゲームはあっさりと終了してしまう。逆転を狙いたい2位としては,ゲームを終わらせないために3位以下を手助けせざるを得ない,ということもママありえるだろう。

 一方,勝利条件のほうはシンプルで,多くの彫像を獲得したプレイヤーがそのまま勝利となる。この手の「リソースを使って何かを建てるゲーム」は,ゲーム終了後に勝利点をカウントしてみたら,勝ったつもりが実は負けていたなんてことも多かったりするが,勝利点の発生源を「彫像」に絞り,見通し良くした辺りにも,さすがの手腕が感じられる。

ガチゲーマー達,行動を起こす前にスタッフを呼んで,終了条件についてしつこく確認をするの巻
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微細ながら,弱点もあるゲーム


 とはいえ,「Tumult Royal」にも弱点というべき部分はある。
 一番気になるのは,ゲーム全体の構造が理解できるまで,「何をどの段階までに考えておくべきか」が把握できず,行き当たりばったりなプレイになりがちだということだ。
 とくに搾取フェイズにおいてこれは顕著で,前もって「自分が何を建てるのか」「そのためにはどの資源が何個必要か」を確認しておかないと,20秒で考えながらタイルを集めるのは不可能に近い。つまり,行き当たりばったりになってしまうのだ。
 「それはそれでいいじゃないか」と思う向きもあろうが,資源獲得がいい加減だと,そのターンに何も建設できない「1回休み」の状況になりかねない。適当にやって勝利から遠のくだけならまだしも,ゲームに参加していて辛い気分になってしまうので,筆者がやらかした経験からも,あまりオススメできないプレイスタイルに思える。

建設コストは自分の管理シートに書かれている,とはいえ……
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 だがこういった問題は,ゲームの総合的な完成度に比べれば,些細なものだ。あのカオスな資源争奪戦はなかなかほかで体験できるものではなく,その後に待つ冷酷な陣取り合戦も,ぜひもう一度プレイしてみたいと思わせる十分なものであった。
 言語依存度はほぼゼロだが,完全日本語版が出る可能性は決して低くないだろう。国内でも入手しやすくなったら,ゲーム会の定番アイテムのひとつとして,末永く楽しめそうな作品である。

「Tumult Royal」公式サイト(ドイツ語)

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