インタビュー
氷鷹北斗は僕自身――「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」出演,山本一慶さんインタビュー。初演からの6年間を振り返る
Happy Elementsがおくる「あんさんぶるスターズ!!」を原作とした舞台の最新作,「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」が,2022年10月7日より上演される。今作は,原作のメインストーリー第二部「キセキ」シリーズを前後篇で舞台化した作品の後篇にあたり,今回で「Trickstar」が「SS」に挑戦するストーリーがフィナーレを迎えることとなる。これまでの「あんステ」で描かれてきた物語の集大成ともいえる本作だが,2016年の初演から現在まで,物語の中心である「Trickstar」のリーダー・氷鷹北斗を演じてきた山本一慶さんに,舞台への想いや今作の意気込みなどをうかがった。
「オファーをもらって,『あんスタ』の広告を見るたびうれしかったです」(山本さん)
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。山本さんは「あんスタ」舞台化の初演作,2016年の「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」(以下,「あんステ」)から現在まで,多くの作品に出演しています。最初にオファーを受けたときのことを覚えていらっしゃいますか。
山本さん:
はい。確か当時はアプリが配信されて1年くらいでしたよね。すごくありがたいなと思うと同時に,広告などを見かけるたびに「自分が演じるんだな」と実感してうれしかったです。今はアイドルものを舞台化した作品も多いですが,当時はまだ少なかったと思います。そのはしりとしてスタートを切れたのは光栄でした。もちろん,どう演じていこうと悩むことやプレッシャーはありましたが,始まってしまえばなんとかなったのかなと(笑)。
4Gamer:
初演から素晴らしい作品でした。山本さんが演じられているのは,物語のメインと言える「Trickstar」のリーダー・氷鷹北斗です。彼については最初にどんな印象を持ちましたか。
山本さん:
すごく真面目で筋がとおっていて,決めたことに向かって突き進む力がある人だという第一印象でした。そのぶん,ちょっと天然だったり突っ走りすぎてしまうところもあったりして,そこは周りから面白いと言われるキャラクターだと思いましたね。
4Gamer:
では,ご自身と似ていると感じられたことは?
山本さん:
頑固なところは似ているかもしれません。台本を読んで稽古が始まってみたら,自分のなかにはすんなり(北斗が)入ってきましたから。あと,ビジュアルが「あんスタ」のキャラクターのなかでは比較的珍しい黒髪だったので,親近感もありました。
4Gamer:
「あんステ」キャストのなかでも珍しく,ウィッグではなく“地毛”だとおっしゃっていましたね。
山本さん:
そうなんですよね(笑)。ぜひ地毛でやりたいなと思ったんです。
◆山本一慶さん「あんステ」出演作 | |
2016年6月 | 「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」 |
2017年1月 | 「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ〜Take your marks!〜」 |
2018年1月 | 「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ〜To the shining future〜」 |
2018年9月 | 「あんステフェスティバル」 |
2019年12月 | 「あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ〜Night of Blossoming Stars〜」 |
2022年2月 | 「あんさんぶるスターズ!THE STAGE -Track to Miracle-」 |
2022年10月 | 「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」※今作 |
2021年10月 | 「劇団『ドラマティカ』ACT1/西遊記悠久奇譚」 |
2022年7月 | 「劇団『ドラマティカ』ACT2/Phantom and Invisible Resonance」 |
4Gamer:
山本さんは,これまで多数の「あんステ」関連作品に出演されています。そのなかでもとくに印象深い思い出はありますか。
山本さん:
やっぱり「あんステフェスティバル」はすごく印象に残ってますね。アイドルを演じてきて,実際にライブという形でキャラクターを演じつつ歌を届けるっていうのは,この作品だからこそ深い意味があると思うんです。たくさんの方に観ていただけましたし,「あんステ」をやっていて良かったなと。
4Gamer:
確かにそうですね。アイドルだからこそ,ステージで歌うことの重要さというか。
山本さん:
もちろんほかにもいろいろな作品でライブを経験していましたが,また意味合いが違いますし,単純にうれしかったです。あれだけのキャラクターが集合して,アイドルを演じる意味を再確認できたすてきなステージだったと思います。あの瞬間,「ここまで来られたんだな」っていう想いもありました。
4Gamer:
ちなみに,「あんステ」の初演で初めて歌ったときのことは覚えていますか。
山本さん:
覚えてます! 当時から一緒のメンバーと話すこともあるんですが,あのときは観に来てくださったお客様のなかには舞台の観劇経験がない方もいて,舞台慣れしていない方も多かったんですよ。ずっと舞台をやっている身からすると,なんというか少し“異色”でした。キャラが出てきたときの「キャーッ」という歓声だったり,歌での掛け声だったり……今までにない感覚でしたね。
4Gamer:
現実のアイドルのステージのような感じでしたね。
山本さん:
そうなんです。それで,演者全員がすごく安心しました。すでに当時の「あんスタ」は,あまりにも人気コンテンツでしたし……やっぱり初日は,ほかのみんなもキャラクターを演じる不安がすごく大きかったんです。ですが,ライブシーンでの声援やペンライトの光がすごくて,一緒に声を出して応援してくださったあの瞬間は,本当に驚いたしうれしかったのをよく覚えてます。
とはいえ舞台観劇のマナーもあるし,とくに最近の状況では声も出せないので,あの光景は今では見られないものになってしまいましたが。
4Gamer:
ある意味,まだステージ経験がそこまで多くなかった「Trickstar」の境遇とも似ているかもしれませんね。
山本さん:
そうかもしれません。「受け入れてもらえた」って想いが一番強かったです。
4Gamer:
ちなみに山本さんご自身は,“アイドル願望”はあるのでしょうか。
山本さん:
分からないです(笑)。アイドルを演じて,お客さんが応援してくださる姿を見て,アイドルの良さみたいなものには気づけてきているかなとは思います。
実は僕自身は,これまでアイドルにハマったことがないんです。学生時代,周りのみんなはそれぞれ好きなアイドルがいたし,自分も最近では男性アイドルのパフォーマンスがすごいなとか,見ていて面白いなとは思うんですけどね。なのでアイドルを応援するってどういう気持ちなんだろう? というのは,僕も知りたいところではあります。
4Gamer:
なるほど。最初のころ,稽古で苦労した面はありましたか。
山本さん:
「原作どおりのキャラクターを再現する」というのが,僕のなかで少し難しい部分がありました。ゲームのなかにちゃんと物語があって,そこで味わう良さがあるわけですから。リアルな人間がキャラクターを演じて,お客さんの前でドラマを繰り広げるのであれば,少しの誇張やオリジナル要素というか,舞台だからこそのキャラクターを作っていきたいと勝手ながら思ったんです。だからこそ,最初は怖かった部分もあったのかもしれません。
4Gamer:
そういう想いを持ちながら,北斗を演じてきたわけですね。
山本さん:
原作の氷鷹北斗が山本一慶と合体したら,こういう北斗になるよっていうベストな形を作れたらという想いがありました。「Trickstar」は4人のユニットなので,誰かがみんなを引っ張ったり,芝居的にも責任を追わなきゃいけない部分もあって……自然といろいろ複雑な気持ちが入り混じった結果,今の北斗が生まれたという感じです。ここまで,大切な積み重ねがありました。
4Gamer:
では具体的に,原作の北斗とご自身ではここが異なる,という点があれば教えていいただけますか。
山本さん:
たぶん原作の北斗は,明星(スバル)や遊木(真)が元気にはしゃいでいたら「おいおい」って止めて,あまり彼らを泳がせない感じだと思うんです。でも僕はそういう場合,良い意味で乗っかりつつ,北斗としてのキャラクターを崩さず戻ってくるという感じでしょうか。一緒に泳ぐけど戻る,みたいな(笑)。その一歩踏み込んじゃうところは,原作の「Trickstar」の掛け合いの仕方との違いかもしれません。
4Gamer:
舞台では,とくに日替わりなどの部分でコミカルさが前に出ている部分もありますよね。
山本さん:
はい。そういえば,Happy Elementsさんからすごく面白いコメントをいただいたことがありました。初演のとき,観に来てくださった皆さんと舞台が終わってからお話をさせていただいたところ,すごく喜んでくださっていたんですね。そのとき言われたのが,「本当に北斗でした! 原作とはちょっと違うんですけど」って(笑)。これは喜んでいいのか!? と思いましたが,僕もそのつもりで役を作っているしな……と。
4Gamer:
Happy Elementsさんのおっしゃったことには,個人的にも共感できます(笑)。
山本さん:
「(自分なりの)芝居をやって良かったな」と思いました。2.5次元舞台では,キャラクターを第1に考えて,役者はキャラクターに寄せるために頑張って芝居を構築していくのが,とくに昔は大きかったかなと。「あんステ」では少し崩させてもらった部分もあったから,これもまた自分がやったことを受け入れてもらえたんだなって感じられて,心強かったです。今思うと深いコメントだなと……当時はめちゃくちゃ笑ってしまったんですけどね(笑)。
物語のなかから飛び出した舞台
「劇団『ドラマティカ』」について山本さんが思うこと
4Gamer:
次に,山本さんが座長を務められている「劇団『ドラマティカ』」についてお聞かせください。
山本さん:
おっ! 分かりました。
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4Gamer:
「あんスタ」のストーリーに登場するサークル「劇団『ドラマティカ』」が上演するという設定の舞台ですが,これまでに2作が上演されています。「劇団『ドラマティカ』」を舞台化すると初めて聞いたとき,どんな印象を受けましたか。
山本さん:
先ほど「『あんステ』初演のときオファーを受けてどう思ったか」というご質問をいただきましたが,あのときとは違う感覚でした。お誘いを受けてめちゃくちゃうれしかったのは同じなんですけど……何と言うか,うれしいと同時に未知のものへのワクワク感があったと言いますか。ここからまた新しい「あんスタ」の世界に関わらせていただけるんだなって,すごく光栄に思ったんです。
これまではゲームを原作として物語を舞台化するという形でしたが,「劇団『ドラマティカ』」はゲームに登場するお話の延長線上に舞台が存在するという……同じように聞こえるかもしれないけど違う感覚で。言ってしまえば,「ゲームから飛び出してきた」感じに近いと思います。だから単純にうれしい気持ちだけではなく,こんなにすてきな挑戦をさせていただいていいのかな? と思いました。
4Gamer:
確かに異色の舞台ですよね。逆に,プレッシャーなどは感じませんでしたか。
山本さん:
もちろんありました! すごく責任を感じましたし,不安もありました。とくに,ACT1の「西遊記悠久奇譚」で悟空を演じることが難しかったです。ほかの登場人物は当て書きとも思えるくらいにキャラクターと近い雰囲気があって,その役だからこそ作れるシーンもあったんですが,北斗が演じる悟空にいたってはそれが無理で,どう頑張っても「西遊記の悟空」になるなと。
北斗はお芝居がそこまで得意じゃない面もあると思いますが,それを再現するのも違うし,お芝居としてちゃんと完成させたかったんですよ。結果として舞台では……僕の言い訳としては,北斗がめちゃくちゃ頑張ったっていう(笑)。
4Gamer:
北斗が演じる悟空は,まさに熱演でしたね。
山本さん:
北斗が日々樹 渉に怒られつつ,いっぱい頑張って何かを1つずつ掴んでいって,それが積み重なった結果を作りたいなという感覚に変わっていきました。その過程で「北斗ならどうするんだろう」「どう悩むんだろう」というのを僕が追体験して,観てくれる人に少しでも説得力を感じてもらえたらいいなと。
不安と戦いつつ演じていましたが,SNSなどで「ふとしたときに(悟空に)北斗が垣間見えた」というコメントがあって,すごくうれしかったです。正直に言うと,芝居のなかで意識して北斗を出そうとはしていなかったんですよ。
4Gamer:
そうなんですか? 私自身も舞台を拝見して,北斗を感じる瞬間があったのですが。
山本さん:
本当ですか? 良かったです。もちろん北斗がベースではあるんですが,意識的にそれを表に出すのが難しかったんです。舞台で演じているのはあくまでも悟空なので,無意識に北斗が出てきてくれたら良いなとは思っていました。あえて「北斗として演じる」というのはかなり難しかったので,見てくれた方にそれが伝わったならうれしいですね。
4Gamer:
伝わっていたと思います。続いてACT2「Phantom and Invisible Resonance」はいかがでしたか。
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山本さん:
ACT2はACT1と同様,伊勢直弘さんが脚本と演出を担当しています。こちらは完全オリジナルのストーリーなこともありましたし,キャラクターとしての居心地も難しいものがありましたね。ただACT1のとき,僕は“北斗の可能性の扉”を開けられたと感じていたので,良い意味でACT2も自由にやらせていただきました。
4Gamer:
ACT2での山本さんの役は,氷鷹北斗が演じる「笠舞 歩」という人物でした。
山本さん:
歩は警察に勤めていますが,少し複雑な設定がありました。なので僕の感覚では,第1幕は北斗をベースに役を作って,第2幕は僕自身をベースに作っていったんです。そうやって1幕と2幕で大きく変化をつけたのが,自分のなかでは自由にやらせていただいた部分です。
4Gamer:
なるほど! 2幕ではある事実が明らかになってからのストーリーだったこともありますし,確かに印象が大きく変わりました。
山本さん:
そうなんです。もちろん2幕も北斗が演じているんですけど,言ってみれば「僕が演じるならこうだよ」を北斗に見せて,北斗が実際に演じたような感覚です。逆に1幕は北斗と一緒になって作っていったっていう感じですね。
4Gamer:
とても面白いです。そうお聞きすると,あらためて作品を観なおしたくなりますね。ほかに難しかった部分などはありますか?
山本さん:
ストーリー的には大きな物語の起点となる“序章”,漫画で言えば第1巻みたいな感じだったので,盛り上がりを作ることでしょうか。どうすれば面白く見せられるのかを,役者たちがキャラクターを越えて考えていましたね。「西遊記悠久奇譚」は,ある程度皆さんが知っている物語や役柄でしたが,今回は誰がどういう人物で,喜劇なのか悲劇なのかも分からないわけですから。どう楽しませようかというのをみんなで話し合って,キャラクターに落とし込んでいく……というのが大変な作業でした。
4Gamer:
ACT2を観た側としては,「劇団『ドラマティカ』」に無限の可能性を感じる作品だと思いました。こうなると,もしACT3があるなら,どんな内容の舞台がきても驚かないですよね。
山本さん:
そうですよね。僕もぜひやりたいですし,やるとしたらどんなものになるんだろう? とすごく期待しています。
「キセキ」シリーズ完結!
集大成である「Witness of Miracle」について聞く
4Gamer:
それでは,10月7日から上演となる次の舞台「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」についてお聞かせください。まずは台本を読んでみて,どんな感想を持ちましたか。
山本さん:
僕的には,今までで一番好きなお話かもしれないです。今回は明星の物語がメインになってくるんですけど,やっと「Trickstar」がアイドルユニットとして完成した瞬間なのかなと感じています。前作では北斗と遊木と衣更の3人の成長が描かれましたが,今作は成長の過程というよりも,やっと出来上がったユニットが困難を乗り越える様を描いているので,物語としてすごく面白いと思いました。
あとは「Trickstar」の革命から始まる物語の集大成ではあるので,今まで積み重ねてきたものが垣間見える瞬間もあって感動しましたね。いいお話だな……と。
4Gamer:
本当にそう思います。お気に入りのシーンはありますか? または,稽古をしていて楽しい場面などは。
山本さん:
日々樹 渉はやっぱり楽しいですね(笑)。北斗と渉にはすごく魅力的な関係性がありますし,今回,初演と同じく一真(日々樹 渉役・安井一真さん)と一緒にお芝居できることが感慨深く,うれしいです。渉はその場を明るくしてくれるキャラでもありますし,いいスパイスになってくれているなと。一緒に演じていて楽しいし,とても心強いです。
4Gamer:
2人のシーンも楽しみです。稽古はまだ序盤の段階ではあると思いますが,何か面白いエピソードはありましたか。
山本さん:
凌平(明星スバル役・竹中凌平さん)がバスケをするシーンの練習をしていたときの話です。彼はすきあらばそのシーンの練習をしているので,その日もずっと練習していたんですね。まっつー(遊木 真役・松村泰一郎さん)と力(衣更真緒役・谷水 力さん)も元バスケ部ということもあり,ボールを見ると血が騒いじゃうらしく自分たちの稽古が終わっても眺めてたんですよ。
じつは僕も元バスケ部ではあるんですが,その日は疲れていたので「早く帰ろうよ〜」なモードでした。それで「家でペットボトルとか使って投げる練習しなよ」と,ほとんど飲み終わっていたペットボトルをポーンと投げたら,それが思ったより軽かったせいで,まっつーの胸元まで飛んでいって……。
まっつーが「あー,あー!」ってなりながら受け取ろうとしたんですが,胸のあたりで2回ぐらいバウンドして3回目でまた高く上がって飛ばしちゃったんです。そうしたらそのペットボトルが力の頭の上にポーンッと落ちました(笑)。
4Gamer:
えっ!
山本さん:
力も見ていたはずなのに,なぜかペットボトルを見失っていたから「えっ!?」みたいな顔をしているし,僕も笑って「凌平,今の見てた?」って言ったら,凌平はずっとボールをドリブルしていてまったく見ていなかったという……(笑)。その光景がめちゃくちゃ面白くて,噛み合っていないけど連携プレイみたいになっていたのが,まさに「Trickstar」だなと。そう思った奇跡の出来事でした。
4Gamer:
「キセキ」シリーズだけにですね(笑)。
山本さん:
演出助手さんも駆け寄ってきて,「今のはすごく面白かった!」っておっしゃってたんですが,カメラが回っていなかったのだけが残念でした(笑)。
4Gamer:
楽しいエピソードをありがとうございます。そして,そんな「Trickstar」に立ちはだかるのが,他校ユニットである「Eden」です。一緒に演じてみていかがですか。
山本さん:
原作のキャラクターも高い実力がありますが,役者たちも高いスキルを持ったメンバーがそろっているので,僕らからしたら本当に強大な敵ですね。これに勝たなきゃいけないのか……って思ってます。稽古でダンスを見ていても,あまりにもかっこよくて。
4Gamer:
確かにそうですね。
山本さん:
でも僕らは気づいたんですよ,「俺たちが戦っているのはここじゃない」と(笑)。「Eden」は誰が見ても「かっこいい!」と感じるだろうけど,「Trickstar」は,見てくれた皆さんに「明日も頑張ろう」と活力を与えてあげられるユニットだと。そう思って頑張ろう……って言い合いながら,毎日稽古してます。
山本さんにとって,「氷鷹北斗」とはどんな存在か
4Gamer:
そんな「Trickstar」のリーダーである氷鷹北斗ですが,「あんステ」としては足掛け6年演じてこられていかがでしたか。
山本さん:
うーん……決して長くは感じなかったですね。ずっと演じているので,北斗としての感覚は,意外とあっという間だった気がします。でも今あらためて聞かれると,最初の春に夢ノ咲で革命を起こすところから始まって,いろいろな出来事があって,「SS」に至るという一連のストーリーを僕が演じられたことは,すごくありがたくてうれしいことだなと感じました。
1人のキャラクターを6年という長い年月で演じさせていただくのは,僕の人生のなかでもなかなかないことだったので。今回の舞台は集大成となりますが,もしこの先できなくなったら嫌だし,寂しいですね。まだまだこれからも演じていきたいキャラクターだと思っています。
4Gamer:
観ている側としても,「氷鷹北斗は山本さんでなければ」と感じている人は多いと思います。
山本さん:
そう言っていただけると本当にうれしいです。とはいえ,悔いのないように演じきりたいとも思います。
4Gamer:
最後にぜひお聞きしたい質問があります。山本さんにとって氷鷹北斗とは,どんな存在なのでしょうか。
山本さん:
おお,なんだかテレビみたい! そうですね,ありきたりでつまらない答えかもしれませんが……氷鷹北斗は“僕自身”かもしれないですね。
4Gamer:
すてきな答えをありがとうございます……! 今,テロップが浮かんで番組の主題歌が流れ出したような気がしました。
山本さん:
やっぱり恥ずかしい……!(笑) でも,そう思わせていただけるのであれば,そう思いたいです。原作の北斗を舞台の役として作らせていただくとき,僕のスパイスが強く入ったところはありますし,6年続けてそれが徐々に合体していった感じがあります。だからこそ,北斗の考え方が今の僕の人生に影響している部分もあると思うんです。北斗と僕自身の,違いがもうあまり感じられないかもしれないですね。
4Gamer:
感動しました。それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
山本さん:
今作で「キセキ」シリーズは完結しますが,今までやってきた「あんステ」の集大成とも言える作品になると思います。今作の稽古をしていても,ストーリーに出てきていないキャラクターや役者を感じる瞬間があるんですよ。それは,「Trickstar」が自分たちの力だけではなく,夢ノ咲学院のアイドルみんなに支えられて,背中を押されて「SS」までたどり着いたからなのかなと。そういった背景を感じられる作品になるんじゃないかなと感じますね。ぜひ,楽しみにしていただけたらうれしいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2022年9月23日収録
「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」公式サイト
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