プレイレポート
“一味違う”UGCを目指すBEMANI最新作「MÚSECA」。その狙いと誕生の経緯をKONAMIに聞いてきた
しかし,短いプレイ時間の中で,その全貌を把握するのはなかなか難しいのもまた事実。まったくの新規タイトルでもあるので,もうちょっと遊んでみたかったという人も少なくはないだろう。
さらに7月には第2回,第3回のロケテストも秋葉原や福岡で開催され,ゲームの内容も第1回のものから更なる進化を遂げているとのこと。そこで今回4Gamerは,同作についてさらに掘り下げるべく,第2回のロケテスト後にKONAMIを訪れ,じっくり遊んでみることにした。そのプレイレポートはもちろんだが,同席いただいた開発チームの方々にも色々と質問してみたので,本作が気になっている読者は,ぜひご一読をいただきたい。
※本稿に掲載しているゲーム仕様は,ロケテストバージョンのものです。稼働時に変更となる場合があります。
「MÚSECA」ティザーサイト
「押す」と「回す」――新感覚インタフェースの“スピナー”がもたらす気持ちよさ
先に掲載しているロケテストレポートと被る部分もあるが,まずは本作の筐体部分から見ていこう。
本作のインタフェースは,手で操作する5つの大きなボタン――“スピナー”と,足で操作するフットペダル1つで構成されている。スピナーはボタンとして「押す」操作のほかに,その名のとおりボタン全体をクルクルと「回す」操作が可能だ。このスピナーの操作と,フットボタンを「踏む」3つの操作を組み合わせ,画面に出てくる譜面に従った操作をこなしていくのが,本作の基本的な流れというわけだ。
中でもフットペダルは,第2回ロケテストで大きく役割が変更された。
第1回ロケテストでは,後述する特殊効果“ギフト”を発動するためのトリガーの役割を担っていたが,第2回からは“ペダル用のノーツがきたら踏む”という,リズムゲームとしては一般的な操作となった。つまり,第1回では手による操作だけでリズムを取るゲームだったが,第2回版からは“手と足でリズムを刻む”ゲームに生まれ変わったというわけだ。この変更の理由を聞いてみたところ,リズムゲームとしてより奥深い操作性を求めた結果とのことだった。
こうしたインタフェースの操作感は,リズムゲームにおける最も大事な部分の一つといえるが,本作の場合はとくにスピナーの手触りがよく,ついポコポコと押してみたり,意味もなくクルクル回してみたくなる気持ちよさがある。
この点について開発チームに話を聞いてみたところ,まさにこのスピナーが,本作の原点であったという。
「本作の開発コンセプトには,“新しい操作感をもつ音楽ゲーム”を作りたいということでした。ボタンを押したり回したりといった操作は,これまでのBEMANIシリーズにもありましたが,それぞれは鍵盤やターンテーブル,あるいはアナログデバイスなど,別のインタフェースに割り当てられていた。それらを一つのインタフェースで行えたら面白いのでは,というのが本作の発端になっています。」
このスピナーが現在の形にまとまるまでには,さまざまな試行錯誤があったという。また一つのボタンで二つの操作が可能になったことで,リズムゲームとしての表現力も大きく広がったのだそうだ。
「譜面を作る際,今まではボタンのオンオフでしかリズムを表現できませんでしたが,本作では“押してから回す”といった操作が可能なんです。これを使うことで,いわゆる“裏拍”を表現したような,新しいアプローチの譜面が作れるようになりました。」
「押す」と「回す」という2つの操作が可能なスピナーだが,実際のプレイではさまざまな応用操作が登場する。筆者が確認できただけでも,「押す」「押し続ける」「回す」「回し続ける」「押し続けたのち,最後にクルッと回す」「弾くように回したのち,最後にピタッと止める」といった場面があって,なかなか奥が深そうな気配だった。
さらにスピナーの操作感は,引き続き改良が加えられているそうで,第2回ロケテストでは,以前よりも押したときの感触が軽くなっているとのこと。これは第1回ロケテストで寄せられたプレイヤーの意見を反映したものだそうで,とくに高難度の楽曲で疲れにくくなっているという。本作のキモとなるデバイスだけに,その調整にも余念がないようだ。
実際にプレイしてみて一つだけ気になったのは,本作の特徴的な画面デザインだ。5本あるレーンが上に3本,下に2本と立体的に表現されているため視覚的なズレが生じる。例えば上下のレーンで同時押しが求められるような譜面の場合,上レーンのノーツは奥側に,下レーンのノーツは手前側に見えてしまう。同時押しとなるノーツは赤いラインでつながれているので,それを確認すればいいのだが……既存レーンの配置に馴染んでいる人には,慣れが必要かもしれない。
この点についてKONAMIに投げかけてみたところ,ロケテストでも同様の声が寄せられており,ダイナミックなレーン表現と視認性のバランスについては,調整が必要と感じているとのことだった。本質的には画面だけでなく音でタイミングをとるゲームであり,現時点でも微妙なずらし押しが求められるような譜面は避けるといった配慮もあるのだが,とはいえ改善の余地はまだあるように思う。本稼働時にはよりプレイしやすくなっていることに期待したい。
Graficaとギフト――ビギナー救済とやり込みを兼ね備えた新システム
Graficaとは,本作のプレイ中に呼び出せるアシストキャラクターのことで,それぞれがギフトと呼ばれる特殊効果を備えている。そしてこのギフトは,第2回ロケテスト版からは楽曲の中にあらかじめ定められた区間で“自動的に”発動する仕組みとなった。発動タイミングは1曲につき3回用意されており,それに合わせてGraficaも3人までセットできる。つまり,どのタイミングでどのギフトを使うか――どのGraficaをどういう順番で配置するかで,プレイヤーが戦略を立てられるというわけだ。
ギフトの効果としては,「ライフを回復する」「(ミスなくプレイすることで)獲得点数をブーストする」といったプラス要素がある一方で,中には「得点倍率が低くなる」「スクロール速度が速くなる」といったマイナスの効果を持ちあわせたものも存在する。「ライフが回復」する代わりに「得点が獲りにくく」なるものや,「得点が増える」代わりに「ミスしたときのダメージが増える」ものなど,リスクとリターンがあるのだ。
初心者なら,「ライフを回復するGraficaを選んで長く遊べるようにする」という使い方ができるし,上級者なら「ハイリスクなGraficaを選択したうえで高得点を狙う」といったことも可能だ。
こうしたGrafica導入の意図についてKONAMIに聞いてみたところ,基本的にはビギナー層の救済を目的として生まれた仕掛けなのだそうだ。一方で,ギフトのマイナス効果は,上級者が更なる高みを目指すために用意したとのことで,これによってすでにクリア済みの楽曲であっても,より高得点を狙って遊べるとのことだった。
また第2回ロケテストで,発動方法が任意から自動に変更された理由については,「フットペダルもリズムを取るために使いたい」という意見がプレイヤーから寄せられたことと,「リズムゲームとして,より純粋に音楽に集中できるようにしたかった」からだそうだ。
ちなみに「KONAMI Arcade Championship」のような公式大会ではどんなレギュレーションになるのかと,少し気が早いと思いながらも聞いてみたところ,今のところ何も決まっていないと前置きしつつ,Graficaの配置による戦略も込みで,実力が問われるものになるのでは,との答えが返ってきた。もちろんリズムゲームの腕前があってこそだが,そういったゲームスタート前の駆け引きも楽しめるものになりそうだ。
「SOUND VOLTEX」とは一味違ったUGCを目指す「MÚSECA」
本作のティザーサイトに掲げられた“音楽ゲーム×イラスト”というキャッチコピー,そしてメインビジュアルにもなっているガイドキャラクター・イリルからも分かるように,本作は音楽のみならず,Graficaに象徴されるイラストにも力が入れられたタイトルだ。
もちろん,これまでのBEMANIシリーズにも多くのキャラクターが登場しており,中にはいわゆる“キャラ萌え”的な支持を受けるキャラクターも存在した。しかし,それはあくまで副産物としてであり,ゲームの盛り上がりの中心とはなりえていなかった。Graficaの狙いには,そこにメスを入れる意味もあるのだという。
「これまでは,好きなキャラクターがいても愛でる場所が少なかったですよね。でもMÚSECAなら,好きなときにGraficaを呼び出せますし,スキルによって個性も付けられる。だから,キャラ愛でGraficaを選ぶのもアリだと思います」
一方,収録楽曲についてもこだわりが見える。ボカロ系やネットミュージックが中心のラインナップで,J-POPなどの商業ベースの楽曲は配慮しながら収録を検討していくそうだ。その理由には,一つにBEMANIシリーズ内での棲み分けがあるが,もう一つはプレイヤー発信の楽曲――いわゆるUGC(User-Generated Contents)による楽曲の盛り上がりを中心に据えたい狙いがあるという。同じくUGCを志向するタイトルとしては,同社にはすでに「SOUND VOLTEX」が存在しているが,本作もまた同じ方向を向いたタイトルといえる。
では「SOUND VOLTEX」が目指すUGCと,本作のそれは何が違うのだろうか。
「同じUGCとはいえ,SOUND VOLTEXはやはりコア向けのイメージが強いですし,実際に集まる楽曲も,SOUND VOLTEXの世界観にあったBEMANIらしいものが多いです。ライト層から見ると,BEMANIシリーズが置いてある一角は少々近づき難いみたいで,興味があっても触るのに勇気がいる。それを払拭したいというのがあります。」「あとはイラスト面での差別化は大きいと思っています。SOUND VOLTEXでは,イラストでの参加はアピールカードぐらいしか活躍の場がありませんでしたし,応募作品も楽曲に偏りがちでした。本作ではイラストが得意な人に,もっとスポットを当てたいと考えています。」
「SOUND VOLTEX」の公募に寄せられる作品は,楽曲制作に必要な機材が揃えられるという経済的な理由もあってか,どうしても年齢層が高め――高校生以上が中心になりがちだった。しかしイラストでの応募なら,中学生でも十分に可能だ。そうして新しい層をゲームセンターに呼び込み,シリーズ全体の若返りを図る意図が,本作はある。
そしてゆくゆくは,BEMANI出身のイラストレーターが次々と生まれてくる未来を,KONAMIは期待しているという。……まだ稼働時期すら明らかとなっていないタイトルだが,BEMANI出身を自認するコンポーザーが,音楽業界でこれだけ活躍している現状を鑑みれば,あながちありえないとも言い切れない。よりブラッシュアップされて我々の前に現れるであろう,本作の本稼働に期待しておこう。
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