［E3 2015］「Assassin’s Creed Syndicate」のディレクターに話を聞く。シングルプレイのみの仕様は，ストーリーに焦点を当てるため

　E3 2015における話題作の1つ，「Assassin’s Creed Syndicate」（PC / PS4 / Xbox One）は，E3会場におけるUbisoft Entertainmentブース内シアターでの映像公開に加え，プレイアブル展示も用意されていた。


　2015年5月の正式発表から1か月あまりでの試遊台設置ということで，当然のことながらプレイアブル展示は大盛況。プレイしたい人で長蛇の列が生まれており，「え，こんなところが列の最後尾？」と驚くほどだった。
　ちなみに，ほかのタイトルのほとんどが専用ルームを作ってその中に試遊台を置いていたのに対して，「Assassin’s Creed Syndicate」と「Tom Clancy’s Rainbow Six Siege」だけは，試遊台が通路に向かって設置されており，誰でもプレイの様子を見られるという，割とオープンな状態だった。


　実際にプレイした感覚は従来作と同様で，パルクールにより建物から建物へ移動し，イーグルアイでターゲットを認識。しかるのちにスタイリッシュに暗殺するという，いつもながらの雰囲気であり，ある意味，安心だ。
　一方で，「ロープランチャー」と呼ばれる新たなガジェットを使ってロープを遠くに射ち出し，それを使って高速移動するという感覚は，かなり新鮮だった。
　また，馬車でカーチェイスをして，敵のいる馬車に飛び乗ったり，蒸気機関車に引かれた客車の屋根で至近距離の戦闘を行ったりなど，時代背景をうまく使ったスピーディなアクションが用意されている点も見逃せない。

　ビッグベンやウェストミンスター寺院など，ロンドンを象徴する建物が立ち並ぶ街は，前作「アサシン クリード ユニティ」を思わせる緻密さだが，前作から約70年ほどしか経っていないというのに，まるで数百年が経過したかのような変わりようであり，産業革命がいかに大きな時代の変化だったのかを感じさせる。


　そんなAssassin’s Creed Syndicateのディレクターを務めるScott Phillips（スコット・フィリップス）氏に，短い時間ながら話を聞くことができた。新作はなぜロンドンなのか，主人公はどういう人物なのか。気になる人もならない人も，ぜひ目を通してほしい。

産業革命を背景に，発展するロンドンの街に合わせて登場した「ロープランチャー」

4Gamer：
　よろしくお願いします。多くの人に同じことを聞かれているかと思いますが，Assassin’s Creed Syndicateの舞台を1868年のロンドンに選んだ理由はなんでしょうか。

Scott Phillips氏（以下，Phillips氏）：
　アサシン クリードシリーズに新しい何かを取り入れたいと思ったときに，産業革命というアイデアが浮かびました。この時代は，蒸気機関や電気が発達し，馬車や鉄道などが登場しています。乗り物は，それに乗ったりハイジャックしたりできますし，新しい機械，たとえばロープランチャーを使って，建物に登ったりできます。
　さらに，この時代のイギリスの首都は世界の中心であり，物語を作るにふさわしい，さまざまな出来事が起きます。こうした理由から，1868年のロンドンを選びました。

Scott Phillips氏

4Gamer：
　主人公のジェイコブ（Jacob Frye）と，双子の妹エビー（Evie Frye）は，どういう人物設定になっているのでしょうか。

Phillips氏：
　まず，ジェイコブは向こう見ずで短気な荒っぽい男で，暗殺者であることを楽しんでいますが，半面，困っている人を見ると助けずにはいられない義侠心にもあつい人物です。一方，双子の妹であるエビーは，ジェイコブとは正反対の冷静な女性ですね。


4Gamer：
　戦闘スタイルなども，新しくなったと聞きました。

Phillips氏：
　ええ，19世紀になると，いままでのシリーズのように，堂々と剣をぶら下げたり，大きな銃を抱えたりして歩くわけにはいきません。そのため，武器はすべて小さくなりました。例えばブラスナックルやナイフ，そして刃物を仕込んだ杖などですね。必然的に戦いはより近い距離で行われるようになり，ペースもさらに速くなります。拡張したマルチターゲットシステムにより，バイオレンス度のかなり高い戦いが繰り広げられますよ。


4Gamer：
　歴史上のイベントがゲームの中で発生したりしますか。

Phillips氏：
　チャールズ・ダーウィンやチャールズ・ディケンズなど，歴史上の人物は登場しますが，たとえばフランス革命のような，歴史を変えてしまうような有名な出来事は起きません。もっとも，産業革命の時代は歴史の転換点でもありますから，それ自体が歴史イベントみたいなものですけれど。

4Gamer：
　なるほど。その頃の歴史上の人物として「切り裂きジャック」なんかいかがでしょう。

Phillips氏：
　具体的にはお答えできないのですが，PlayStation 4エクスクルーシブとして，切り裂きジャックが起こしたような事件を解いていくミッションがあります（関連記事）。

※思い付きで質問した筆者だが，あとから調べ直したところ，切り裂きジャック事件は本作の20年後の出来事だったので，ちょっと無理があった。


4Gamer：
　長い歴史を持つ人気シリーズの最新作ですから，開発にはかなりのプレッシャーはあると想像しますが，どうですか。

Phillips氏：
　いえいえ。アサシン クリードシリーズを我々ケベックのスタジオ（Ubisoft Quebec）が主導するのは，今回が初めてのことになります。ですから，シリーズに何か新しいものを入れられることに，我々は非常に興奮しています。また，言うまでもありませんが，これまで重要な役割を果たしてきたモントリオール（Ubisoft Montreal）を始め，シンガポール（Ubisoft Singapore）やモンペリエ（Ubisoft Montpellier）など，世界中の8つのスタジオが現在，我々を支えてくれています。そのおかげで，これまでのようでありながら新しいアサシン クリードが作れることを，プレッシャーを感じることなく楽しんでいます。

4Gamer：
　そうなんですか。ところで，E3 2015の試遊で注目してもらいたい部分など，とくにありますか。

Phillips氏：
　いろいろありますが，今回のE3で言うなら，さっきも出てきたロープランチャーでしょう。建物が全体的に大きくなりましたし，マップは前作に比べて25％も大きくなっています。道路もかなり広いですし，シリーズ史上，最も高い建物が登場するのも本作です。
　というわけで，移動をパルクールだけに頼るわけにはいかなくなりました。パルクールは狭い範囲の移動にはとても適しているんですが，長距離にはふさわしくありません。そこでロープランチャーの出番というわけです。ロープを使った爽快な移動は，シリーズファンにとって，どこかなじみがあるのに斬新な動きだと感じてもらえるのではないでしょうか。

4Gamer：
　前作では，圧倒的な群衆シーンが強く印象に残っていますが，本作ではいかがでしょうか。

Phillips氏：
　前作のパリに比べると道がかなり広いので，そこまで人が密集したような感じは受けないかもしれませんが，もちろん，何千人もの群衆がゲームには登場しますし，彼らの間を馬車が走っていたりといった場面に遭遇できます。

4Gamer：
　ところで，シングルモードだけにしたのは，どういう理由によるものですか。

Phillips氏：
　シリーズの最新作として，「物語に焦点を当てる」ということが最も重要だと判断して，そのようにしました。

4Gamer：
　なるほど。では最後に，日本の読者にメッセージをください。

Phillips氏：
　日本のファンの皆さんに，昔のようなアサシン クリードを楽しんでもらえると同時に，近代の幕開けを背景にすることで，さまざまな新しい要素を盛り込んだ斬新なアサシン クリードをお届けできると思っています。発売を楽しみにしてください。

4Gamer：
　本日は，どうもありがとうございました。

「Assassin's Creed Syndicate」公式サイト

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