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Devolver Digitalの「中の人」が語った,デベロッパの夢を具現化するための「質問」とは
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印刷2016/05/06 21:02

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Devolver Digitalの「中の人」が語った,デベロッパの夢を具現化するための「質問」とは

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 Steamでゲームをよく購入するという人であれば,Devolver Digitalという名前に思い当たるフシがあるだろう。「Hotline Miami」「Serious Sam HD: The First Encounter」といったタイトルを始め,最近では「Titan Souls」Downwell「The Talos Principle」そして「Enter the Gungeon」と,非常に個性的でアグレッシブなゲームを次々にリリースしている,意欲的なパブリッシャだ。

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 では,このDevolver Digitalは,パブリッシャとして具体的にどんな仕事をしているのだろう。ただ単に,自分のゲームをSteamで販売したいというデベロッパの事務的な手続きを代行しているだけなのだろうか?
 Reboot Develop 2016では,Devolver Digitalの「中の人」によって,彼らが実際に何をしているかが語られたので,その模様を簡単に紹介したい。

Devolver Digital公式サイト



質問をすることで見えること


Devolver DigitalのAndrew Parsons氏
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 Devolver DigitalのAndrew Parsons氏は最初に,同社がゲームをパブリッシュするにあたり,デベロッパに対してどんな手助けをするのか,という最も基本的なところを語った。

 そして,この問いに対する解答は,意外にも「多くの質問をすること」だという。プロダクションを進める一般的な手法や,そのためのツールを提供したり,あるいはマネージメントについての助言をしたりといったことではない。
 あくまでデベロッパができることを手助けする。あるいはデベロッパが作りたいゲームを壊さないように,彼らを励ましていく。その最も重要な端緒が「質問をすること」だというのである。

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 Parsons氏は,ゲームの面白さとは,大きく分けて2つの要素に分解できると述べる。1つは感覚的な側面,もう1つは科学的(あるいは技術的)な側面だ。この2つがうまく協調することで,優れたゲーム体験が得られるという。しかし,この両方の観点から実際にゲーム開発を行っていく過程は,必ずしも楽しいものではない。

 Parsons氏は一例として,パブリッシャとデベロッパの「よくある対話」を示した。
 企画の立ち上がり当初,パブリッシャとデベロッパは仲良くゲームの「夢」を語り合う。こんな技術を使おう,こんなゲームメカニクスを実装しよう,こんなキャラクターはどうだろう……といったステップである。
 しかし,やがてパブリッシャはデベロッパに対し,こんな問いを投げかけ始める――「ところでこのゲームは,いったい何面あるんだい?」

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 これに対する一般的なデベロッパの答えは,「知るか!」であるとParsons氏は語る。というのもデベロッパにとってみれば,ゲームはまだ骨格段階であり,そもそも「面」の概念が必要かどうかも未知数だったりする。これはあらゆる意味において,「知るか!」としか言いようがない,愚かな問いなのだ。

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 だが,パブリッシャにとっては,この質問には重要な意味がある。ステージ数は多くの場合,必要な作業量と直結する(自動生成など,この作業量を軽減する技術はさまざまに存在するが,あくまで一般論として)。実際にゲームをリリースにまで持っていくパブリッシャとしては,「何面あるんだい?」というのはシリアスな問いなのだ。

 この問いは実際,あまり適切とは言えないとParsons氏は語る。
 それでもなお,「問いかける」ことには重要な意味がある。というのも,何が「まだ知らないこと」なのかがハッキリする,その質問のやりとりの過程において,デベロッパの人となりや,何を目指しているのか,あるいは知識のギャップといった諸々の情報を,パブリッシャは獲得できるからだ。そしてこれらの情報は,実際に質問するまで,パブリッシャにとって未知の情報なのである。
 このことを指して,Parsons氏は「質問の答えが重要なのではなく,質問のやりとりそのものが答えになる」と語った。

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質問が「夢」を「現実」にする


 とはいえ,本当にこの「質問のやりとり」は,ゲーム制作を良い方向に前進させるのだろうか?
 Parsons氏はここで「あなたのゲームはプレイヤーにどんなゲーム体験を与えたいのか」と問いかけを行った。そして,その問いに対する1つの答えとして,以下のような例を示した。簡単に和訳してみよう。

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「プレイヤーは敵に向かって坂を駆け下りながら,グレネードを投擲する。最後の瞬間,敵を薙ぎ払ったプレイヤーはジャンプする。ジャンプした空中で,プレイヤーは眼下に敵を見下ろし,ショットガンを撃ち,敵の頭を吹き飛ばす。この一連のジャンプによって,プレイヤーは自分をすごい英雄のように感じる。そして着地すると,先のグレネード攻撃で動きを止めていた敵を,近接攻撃で仕留める」

 この答えは,多くの新たな問いを生む。
 例えば「敵に向かって」というセンテンスは,敵が具体的にどんな存在で,どんな武器を持っているのかという疑問を生む。あるいは,敵はHPを持っているのか,また敵がどのようにプレイヤーを知覚するのかといった,システム上の疑問も浮かぶ。
 同様に「プレイヤーはジャンプする」というセンテンスは,どれくらいの高さでジャンプできるのか,どのボタンでジャンプするのか,ジャンプのスピードはどれくらいなのかといった疑問を発生させる。

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 この新たに発生した問いの1つ1つが,プロダクションを進めるにあたっての計画へと変化していく。
 Parsons氏は,「ゲームをどのように仕上げたいのか」「どのようにゲームを終わらせたいのか」という問いは,このように非常に重要であると指摘した。それゆえに,たとえ馬鹿げている問いであっても(「あなたのゲームは何が面白いの?」というのは,控えめに言って,デベロッパを怒らせる可能性の高い問いかけだ),その質問をすることは大事だし,デベロッパがその問いに対して怒ることもまた重要なのである。

 最後にParsons氏は5つのポイントを列挙したので,それを訳出しておこう。
  • クリエイティブであることと,現実的であることは,相反することではない。
  • 行き詰まったと感じたら,馬鹿げた質問をしてみよう。
  • 誰かに考えさせたいなら,問いかけるのが一番良い。
  • 問いに対する答えは良いものだが,答えが作られる過程はもっと大事。
  • 問いかけによって,クリエイティブであることと,現実的であることの間を,うまく橋渡しできる。

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 答えることが難しく,また気に障る質問であればあるほど,その問いに対する解答(あるいは解答を出そうとするプロセス)から得られるものは大きい――Parsons氏はそう語って,講演を終えた。
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