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「サガ スカーレット グレイス」のプレイレポート。斬新なシステムを導入しながら無駄を排除した作りで,ストーリーもじっくりと楽しめる
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印刷2016/12/14 00:00

プレイレポート

「サガ スカーレット グレイス」のプレイレポート。斬新なシステムを導入しながら無駄を排除した作りで,ストーリーもじっくりと楽しめる

 スクウェア・エニックスが2016年12月15日に発売するPlayStation Vita用ソフト「サガ スカーレット グレイス」は,1989年から続くサガシリーズの最新作。コンシューマゲーム機向けとしては2002年リリースの「アンリミテッド:サガ」以来,14年ぶりの完全新作であり,シリーズの生みの親である河津秋敏氏がゲームデザインとシナリオを手がけるということで,注目を集めている。

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 4Gamerでは本作に登場する4人の主人公のうち,レオナルドを選んでのファーストインプレッションを掲載したが,本稿ではほかの主人公でゲームを進めてみて分かった違いや,バトルシステムの詳細などをレポートしたい。

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 本作にはタリアレオナルドウルピナバルマンテという4人の主人公が用意されており,その中から1人を選ぶのだが,そこにちょっとした趣向が凝らされている。まず心理テストのような質問がいくつか出され,その答えから1人の主人公が導き出されるのだ。これで決定というわけではなく,ほかのキャラクターを選んでもいいのだが,これも何かの縁。事前に決めているキャラクターがいないなら,この演出に従うのもよさそうだ。

質問の結果から選び出された主人公には,パラメータに若干の補正が付く
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 主人公の4人はそれぞれ異なる境遇にあり,肩書きや装備,技なども違うのだが,スタート時の強さやプレイ感覚に大きな違いはない。強いて言えば4人の中で唯一,タリアのみが初期状態で杖を装備しており,術を使える(使える技と術は装備する武器によって変わる)のが違いといえば違いだが,仲間を含めて手持ちの武器の装備変更はいつでも可能だ。
 なお,タリア以外の3人は最初から6人の仲間が揃っており,タリアもゲーム開始直後のイベントで仲間を得られるようになっている。

左からタリア,レオナルド,ウルピナ,バルマンテ。小林智美氏によるイラストの雰囲気を残したグラフィックスが特徴的
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パートナー的な人物を筆頭に,ゲーム冒頭から6人の仲間が揃う
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 物語の展開は当然ながら主人公によって違うが,序盤だけに絞れば大きく2つのタイプに分けられそうだ。
 帝国貴族のウルピナは近隣諸国の巡回,法廷処刑人のバルマンテは彼が処刑した男の名をかたる人物の調査と,公的な地位についているキャラクターは,立場に沿った目的で行動することになる。一方,陶芸家のタリアや農民のレオナルドでは,比較的漠然とした目的をもとに放浪するといった感じで,自由に歩き回れるのだ。

 従って,タリアやレオナルドなら,本作の自由度の高さを序盤から存分に味わえるのだが,「最初のプレイでは何かしら目的があったほうがやりやすい」という人は,ウルピナかバルマンテを選ぶといいだろう。

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ユラニウス家が治める都市,シルミウムの周辺を巡回中に,事件に巻き込まれていくウルピナ
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タリアは自身の陶芸作品に現れる歪みの原因を探すべく,不死鳥を追う旅に出る
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見知らぬ女性の頼みを叶えるため,旅に出るレオナルド。目指す「アイ・ハヌム」は絵本の中にあるらしいが……!?
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バルマンテが処刑した男,シグフレイは,死の直前「私は七度蘇る」と言い残したという

 本作の特徴である「フリーワールドシステム」にも改めて触れておきたい。本作にはダンジョンや街中などのマップが存在せず,全てがフィールドマップに集約されている。マップ上を移動するとポップアップするオブジェクトの上で[○]ボタンを押すと,その場所でイベントが発生し,物語が進むのだ。

ポップアップ絵本のような雰囲気のあるフィールド。右下に[○]ボタンが表示されると,イベントが発生する
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マップにある特定の場所から隣のエリアへ移動できる。タリアやレオナルドはゲーム開始直後であっても隣のエリアに行くことができた
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 バトルも例外ではなく,敵が潜む洞窟なり,イベントをクリアすると出てくるオブジェクトなりといった形でフィールドに“配置”されている。これに触れると画面左下に難度(敵の強さ)が表示され,バトルに挑むかどうかを選択できる仕組みだ。バトルに勝つと消えてしまうものもあるが,しばらくすると同じ場所に現れたり,消えずに何度でも戦えたりといったものもあるので,パーティをじっくり鍛えたい人も安心だ。

道の上を移動するとスピードアップするといったギミックも用意されている
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いきなり強敵が現れる場合もある。フィールド上ならどこでもセーブできるので,戦いに入る前には記録しておこう
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殺すか,殺さないかといった,物騒な選択をするイベントも。選択後に何が起こるのか楽しみでもある
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 ダンジョンや街をすみずみまで回っての探索もRPGの面白さの1つではあるが,それをばっさり排除した本作も,実際にプレイしてみるとかなり面白い。移動が簡素になったおかげで,物語の展開に集中できるのだ。後述するバトルも,戦略性が極めて高く,密度が濃いものになっているので,ゲームの総合的なバランスは取れていると感じた。

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 本作のバトルは,シリーズ作品の特徴である「陣形」「閃き」などの要素は取り入れつつも,全体的に見れば「まったく新しいもの」と言っても差し支えのないものになっている。それを象徴するのが「タイムラインシステム」だ。ファーストインプレッションのときにも,短い時間ながらその面白さの一端を感じられたが,今回ある程度やり込んでみて,その戦略性の高さや面白さをしっかりと感じることができた。

 タイムラインシステムの仕組みを改めて説明しておこう。画面の下にある,敵味方の顔アイコンが並んだ列が「タイムライン」で,並び方はキャラクターの行動順(左から右)を表している。
 その順番を意識しつつ,プレイヤーはキャラクターの行動を選択していくわけだが,それぞれの技や術を繰り出すには,パーティで共有する「BP」(ブレイブポイント)が必要になる。消費BPが大きいものほどその威力や効果が大きいものだと考えていい。

バトルの開始前に陣形やメンバーを選択できる
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 ただしこのBPは,序盤だとどの主人公のパーティの場合でも,最初に「4」しか与えられない。行動には最低でも1BPを消費するので,味方パーティを構成する5人全員が攻撃するのは不可能で,1ターンめに敵をせん滅するような戦い方は難しくなっている。
 BPはターンごとに全回復し,さらに陣形などによってその上限が増えていくので,ターンを重ねるほど多くの仲間が強力な技を使えるようになる。ただしこれは敵側も同じなので,ターンが進むほどバトルは激化していくのだ。

画面下にあるのがタイムライン,☆マークがBPを表す。バトル開始直後は使えるBPが少ない
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 こうしてBPをにらみながらパーティメンバーの行動を選択するわけだが,それによってタイムラインの順番は刻々と入れ替わっていく。「瞬速の矢」などの「すばやさ補正技」を使えば,ターンが始まる前からタイムラインを動かせるし,「失礼剣」などには対象の行動を遅らせる「バンプ」効果があり,成功すると対象をタイムラインの後方へ移動させられる。

 それに加えて,前ターンで待機した仲間は次のターンで行動順が少し早くなるといった要素もある。これらのルールは敵側にも適用されるので,タイムラインを完全に読むのは難しいのだが,ある程度コントロールできるようになるとバトルががぜん面白くなってくるのだ。

すばやさ補正技の代表格,「瞬速の矢」。カーソルを合わせると,発動後のタイムラインを確認できる
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術には規定のターン数の詠唱時間が必要。戦闘が激化する前に詠唱を始めておくと効果的だ
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バトル中に新しい技を閃くと,以降任意に使えるようになる。術の場合は戦闘後に発生する「フラックス」を吸収させると閃くことがある
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 それを実感できる要素が「連撃」だ。これは,敵味方の誰かが戦闘不能になってタイムライン上から消え,その両隣にいた同じ陣営のキャラクター同士がつながると発動する強力な攻撃。敵に大ダメージを与えられるだけでなく,連撃に参加したキャラクターは次のターンで技や術のBP消費や,術の詠唱時間が軽減されるので,バトルの流れを一気に引き寄せられる。もちろん同様の条件が揃えば,敵側も連撃を発動してくる仕様だ。

味方で挟んでいる単独の敵を倒すと,つながった仲間全員で連撃を発動
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 連撃を狙うために,タイムライン上で味方に挟まれた単独の敵を集中攻撃したり,敵が単独でなくても,すばやさ補正技やバンプ技で敵を孤立させる状況を作るのが基本となるが,発動方法はそれだけではない。3人並んだ味方のうち,真ん中の1人が敵の攻撃を集める技で意図的に戦闘不能になって発動させるという,“肉を切らせて骨を断つ”的な方法もあるのだ。

味方に挟まれた味方が倒された場合でも連撃は発動する
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この状況の場合,HPが減っているCの敵を狙いたくなるが,Cを倒すとBとAの敵による連撃が発動してしまうので,狙わないほうがいい
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 このように,圧倒的に有利な状況を作り出せるので,本作のバトルでは連撃のために戦略を錬るといっても過言ではない。BPが少ない序盤は,すばやさを下げる技を使ってタイムラインの並び方を調整したり,一撃で倒せるよう相手のHPを減らしたりして,連撃の準備をするのが基本になるだろう。
 その場その場で行動を決めていると,ターンが進むことに激しくなる敵の攻撃に対処できなくなる。連撃を発動させるために,今倒せる敵を倒さない,といった判断が必要になることもザラだ。

 こうやってバトルを積み重ねるうち,プレイヤーはゲーム中のキャラクターと同様に,タイムラインをコントロールする戦略を“閃く”はず。それが成功して連撃につながったときの手応えこそが,本作のバトルにおける最大の魅力だと感じた。
 なお,懸念されているバトルのロード時間はファーストインプレッションのときからさらに短縮されているように感じた。

 ここまで紹介してきた斬新なゲームシステムを盛り上げているのが,伊藤賢治氏によるサウンドだ。主人公のメインテーマとも言えるフィールド移動とバトル時の楽曲は,4人すべて違うものが用意されるという贅沢な仕様で,これらをじっくり聴きたいがために,全員を並行して進めたくなる衝動にかられる。それぞれの主人公をバトルが始まるまで進めてみて,自分好みの楽曲だったものを選んでみるというのもありだろう。

 筆者が気に入ったのはウルピナの楽曲。ヒロイックな王道のメロディは,ゲームをプレイしていないときでも何気なく口ずさんでしまうぐらいで,前回体験したレオナルドを抑えて,彼女が最初の主人公候補第1位となった。
 PS Vitaのスピーカーで聴く印象も悪くはないが,持ち歩いてプレイすることなども考えると,イヤホンを持っておくのがベストだろう。BGMなしで遊ぶ本作は,正直あまり考えられない。

レオナルドのバトルの曲も個人的にかなり気に入っていたりする
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 斬新な試みが満載された本作ではあるが,予想より馴染みやすく,新しいものに対応しづらくなってきた古いタイプのプレイヤーである筆者も,すっかり虜になってしまった。ほかのRPGとは大きく異なるシステムに身構えている人もいるかもしれないが,先入観を持つことなくプレイしてほしい。

 前述したように,本作には街やダンジョンを探索する要素はないのだが,その分物語の展開に集中できる。その点で,本作は電子書籍に近いゲームかもしれない。筆者は,自室で一気にプレイするのではなく,外出中のちょっとした時間に少しずつ楽しみたいと思っている。

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