刀剣男士たちから審神者へ，想いのこもったお返しも。「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ぜっぷつあー」東京公演レポート

　刀剣育成シミュレーション「刀剣乱舞ONLINE」（BROWSER / iOS / Android）を原案とした「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ぜっぷつあー」が2023年12月20日から2024年1月18日にわたり上演され，刀剣男士たちが6都市全24公演を駆け抜けた（全公演配信あり）。


　本作は，2022年12月〜2023年1月にかけて上演された「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ 〜新編 里見八犬伝〜」で出陣した8振りが再集結した特別出陣だ。「江 おん すていじ ぜっぷつあー」のタイトル通り，篭手切江，豊前江，桑名江，松井江，五月雨江，村雲江が中心となり，サポート役として大典太光世と水心子正秀も参戦している。

　本稿では，2024年1月5日の東京公演（Zepp DiverCity）の様子をレポートしていくが，ネタバレを含むため注意してほしい。


※本記事内の写真は愛知公演のものです

公演概要

ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ぜっぷつあー

■スケジュール
2023年12月20日〜12月21日
Zepp Nagoya（愛知公演）
2023年12月26日〜12月28日
Zepp Sapporo（北海道公演）
2024年1月2日〜1月3日
Zepp Osaka Bayside（大阪公演）
2024年1月5日〜1月7日
Zepp DiverCity(TOKYO) （東京公演）
2024年1月10日
Zepp Fukuoka（福岡公演）
2024年1月16日〜18日
KT Zepp Yokohama（神奈川公演）

■出演（敬称略）
篭手切江役：田村升吾
豊前江役：立花裕大
桑名江役：福井巴也
松井江役：笹森裕貴
五月雨江役：山﨑晶吾
村雲江役：永田聖一朗
大典太光世役：雷太
水心子正秀役：小西成弥

■STAFF（敬称略）
原案：「刀剣乱舞ONLINE」より (DMM GAMES/NITRO PLUS)
構成・演出：茅野イサム
脚本：浅井さやか
音楽監督：YOSHIZUMI with DJ RAITA
振付・ステージング：本山新之助，TETSUHARU
主催：ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会（ネルケプランニング　ニトロプラス　DMM GAMES　ユークリッド・エージェンシー）

8振りが作り出す華麗なすていじ

　今回，刀剣男士たちが出陣したのは，数々の音楽イベントが開催されているライブハウス，Zeppだ。ステージ上にはDJセットが設置されており，開演前には大典太光世と，水心子正秀が機材やカメラのチェックをするため現れた。

　DJブースから流れる音楽に合わせてダンスをする水心子正秀，そのかわいらしさにほっこりしてしまう。「一緒に踊ろう」と言わんばかりの水心子正秀に見つめられて，大典太光世も同じ振りを踊る場面もあり，会場から大きな歓声がわく。

　さらに2振りは，DJ機材を使用して会場前の注意事項の説明もこなし，すていじの頼もしい助っ人っぷりを存分に見せてくれた。


　続いて会場内に篭手切江の声が流れ，以前上演された「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ 〜新編 里見八犬伝〜」の感謝を審神者（ゲームではプレイヤーのことだが，「刀ミュ」では声のみで登場）に伝える。一方の審神者は，篭手切江が新たな舞台を求めていることを分かっており，「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ぜっぷつあー」を用意していると告げた。こうしてこの“ぜっぷつあー”が開催されることとなったのだ。

　すていじは，8振りの新曲「FANFARE」からスタートする。白を基調としたそれぞれに合った衣裳をまとう篭手切江たちと，黒をベースにした衣裳を身にまとった水心子正秀，大典太光世の対比が美しい。


　2曲目「Honey Love」も新曲，こちらは江の刀剣男士たちが歌唱する。「My sweet Honey」から始まる甘やかな歌詞で，刀剣男士が「恋している」と歌うパートでは，会場からは黄色い歓声が飛んでいた。かっこいい曲からかわいい曲まで，何でも歌いこなしてしまう刀ミュの刀剣男士たちは本当にすごい。

　3曲目は，江の刀剣男士たちが自己紹介を行う「江 おん らっぷ」だ。篭手切江は「歌って踊れる付喪神」，豊前江は「疾すぎる俺は止まらねえ」など，それぞれの刀剣男士の性質が歌詞に組み込まれており，聞けば彼らのことを知るきっかけにもなる。友達や家族に布教しやすい曲なのもうれしいところだ。

　続いては，大典太光世による「でぃじぇぱふぉうまんす」で，会場はまるでダンスフロアのようにノリノリの空間に早変わりする。水心子正秀もカメラを手に，DJパフォーマンスを撮影し，一緒に会場を盛り上げていた。

　桑名江の「Colors」から始まり，五月雨江と村雲江の「Fairytale」，豊前江の「ストレンジャー」，篭手切江と松井江の「パラサイト」と続く，ソロやペアによるパフォーマンスも充実していた。歌唱を担当する刀剣男士以外も，バックダンサーやDJとして，一緒にパフォーマンスに参加しており，全員ですていじを作っているという想いが伝わってくる。


　水心子正秀と大典太光世は，剣を2つ合わせたような光る長物を使用して，見事な殺陣を披露してくれた。かっこよく戦う姿もまた，刀剣男士たちの魅力の1つであると，うっとり見とれてしまう。2振りの力強いパフォーマンスの後，「ETERNAL FLAME」で全員の熱い歌声が響いたのも，胸が躍る展開だった。

刀剣男士たちがモノボケに挑戦！

　「江 おん ものぼけ」のコーナーでは，刀剣男士たちがさまざまなアイテムを使って，モノボケに挑戦した。審神者から現代になじむように言われている彼らは，現代に適したお題に合わせたお芝居をしながら，5分間のモノボケを披露する。歌って，踊れて，モノボケもできる刀剣男士たちは本当に器用だ。

　こちらの内容は日替わりで，2024年1月5日公演のお題は「料理教室」。篭手切江，豊前江，松井江，村雲江，水心子正秀がものボケに挑戦し，桑名江が即興の音響担当となった。

　しばし考える時間がとられたあと，いよいよ「料理教室」の幕が開ける。まず先陣を切ったのは豊前江で，生徒が来るのを待っている料理の先生らしき人物を演じる。豊前江はタンバリンを持っており，全身を使ったタンバリンパフォーマンスがあまりにうまく，会場から，どよめきと笑いが起こっていた。

　料理教室の生徒として，野菜のうなじを刈りに来た村雲江（ゲームなどに使う柔らかい剣を所持），和と洋を折衷しにきた水心子正秀（着物＆マント着用），野球少年の篭手切江（野球バット）という個性的すぎるメンバーが集まり，いよいよ料理が始まるかと思えば，ここで豊前江が先生ではないことが明らかになる。

　料理の先生として，最後の1振り・松井江が，キーボードを持って登場！　松井江の料理教室は，何とキーボード操作だけで料理ができるという超近代化された場所だった。

　最終的に真っ赤な料理が出来上がる場面では，芝居を盛り上げるべく観客がペンライトを赤にして，ステキな光景を生み出していた。「江 おん ものぼけ」のお題は，毎回違っているので，ほかの公演の様子も全部見たいと思ってしまうほど，楽しいひと時となった。


　再びライブパフォーマンスに戻った刀剣男士たちだが，DJブースで機材トラブルが起こって，音楽が流れなくなってしまう。急きょ大典太光世のヒューマンビートボックス（豊前江が言うには，くち三味線）による「江 おん だんす」で，場をつなぐことになった。

　かっこいいソロダンスがあったり，なぜか途中で野球が始まったり，個性豊かなそれぞれのダンスがたっぷりと披露されたりするなか，審神者（観客）も手拍子やライトで彼らのパフォーマンスを後押しする。けっきょく機材トラブルは，電源プラグが抜けているだけということが明らかになり，無事に本来の演目へとつながることになった。

声を届けてくれた審神者へ，
刀剣男士たちからのお返し

　後半は，松井江による「Supernova」からスタートする。そこから大典太光世と水心子正秀の「2 THE TOP」，桑名江と篭手切江の「R.U.N」，五月雨江と村雲江の「生存者バイアス」，松井江と豊前江の「ナミダドロップ」と，新曲が続々と披露され，それぞれが作り出す世界観に引き込まれた。


　8振りによるアカペラパフォーマンス「Shining Night」「ごう おん すていじ」もあり，この公演だけで，いくつの魅力を見せてくれるのか……あまりに豪華なステージ構成に感激してしまう。

　全員による新曲「Sweet & Bitter」ですていじは一旦幕を閉じるが，アンコールの熱い声に応えて，大典太光世と水心子正秀が「Lose Your Mind」を披露する。


　さらに，篭手切江たちは緑の衣裳で登場。声を出して観劇できなかった時代（コロナ禍）でも，刀剣男士たちにさまざまな方法で声や想いを届けてくれた審神者に対するお返しとして，「STARTING NOW」を歌い，会場が1つになった。


　刀剣男士たちのすていじは，まだまだ終わらない。スクリーンに篭手切江が審神者から命を受け，2023〜2024年への遠征＆すていじの練習している（世にいうバックステージ）映像が流れ，会場の審神者（観客）たちは大喜びだった。

　この時代になじむための服装を身にまとったり，商店街でご飯を食べたりと，いつもとは違う刀剣男士たちの様子がとても微笑ましい。何と豊前江は，バイクの操縦まで覚えており，観客をとても驚かせていた。

　また，すていじに向けて一生懸命練習する姿や，意気込みを語るインタビューもあり，彼らが全力を向けた場に立ち会えて，本当によかったという気持ちになる。

　最後は，刀剣男士として顕現したときの姿に戻った8振りによる「刀剣乱舞」で，賑やかなすていじは幕を閉じた。刀剣男士たちが，次はどんな活躍，物語を見せ，どんな歌声を聴かせてくれるのか，2024年の彼らの活躍からも目が離せない。

「ミュージカル『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ぜっぷつあー」公式サイト