企画記事
「ハースストーン」日本トッププレイヤーのTredsred選手のコーチングを受けて全力でレジェンドを目指してみた
ご存じの読者もいるかもしれないが,4Gamerは今後のハースストーンのさらなる拡大に対する期待も込めて,日本のトッププレイヤーであるTredsred選手とスポンサー契約を結んでいる。また,4Gamerはゲームメディアなので,金銭面だけでなく,大型大会の取材記事などを書くことでも選手活動を手厚くサポートできるというオマケ付きだ。
それだけに,4Gamerでハースストーンを担当する機会の多い筆者としては,Tredsred選手のプレイングを記事で伝えるべく,自分自身の知識と実力を高める必要性を感じていた。
そこで今回はTredsred選手に,ハースストーンの秘訣を直接教えてもらった。今風に言うとコーチングというやつだ。ハースストーンの復帰プレイヤーかつランク18の筆者が,Tredsred選手のコーチングを受けてレジェンドに到達する(※予定かつ未定)プロセスを,何本かの記事で紹介しよう。
本日の講師:Tredsred選手
4Gamer(Aetas株式会社)がスポンサー契約を結んでいるハースストーンのプロプレイヤー。
2014年1月,当時オープンβテストを実施していたハースストーンに触れ,それから1週間でレジェンドに到達。以後5年間,ハースストーンの競技プレイヤーとして活動中。国際大会への出場経験も豊富で,2018年は計7回の海外遠征を実施。
主な大会実績:
- 2016年6月 ハースストーン日本春季選手権 準優勝
- 2017年6月 HCT2017 アジア太平洋 春季プレイオフ 準優勝
- 2018年7月 ハースストーン・グローバルゲーム(HGG) 日本代表
- 2018年8月 第18回アジア競技大会(2018 ジャカルタ・パレンバン) 本戦出場
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生徒:m.k(4Gamer編集部)
オンラインゲーム好きの編集者。とくに好きなBlizzard作品は,「Diablo」「Warcraft III」「Heroes of the Storm」。
ハースストーンの実力は初級者に毛が生えた程度で,ブランクもあり,拡張パック「コボルトと秘宝の迷宮」「妖の森ウィッチウッド」「博士のメカメカ大作戦」のカードなどはよく分かっていない。本企画の立ち上げ当時のランクは18。
「ハースストーン」公式サイト
「ハースストーン」ダウンロードページ
「ハースストーン」ダウンロードページ
日本のトッププレイヤーによる初級者へのコーチング
―――というわけで,自分もハースストーンがうまくなりたいんです!
【Tredsred選手】
カードゲームは,指先の操作のテクニックではなく,知識と確率が支配するジャンルです。また,上達するには闇雲にプレイするのではなく,正しい考え方を身につけることが重要です。しかもブランクがあるとのことなので,拡張パックで追加されたカードなどを覚えるところから始めねばならず,“うまくなる”のは長い道のりになりそうです。
しかし,レジェンドになりたいというのであれば,ある程度の攻略法が存在します。この点なら,自分でも多少のアドバイスが行えると思います。
―――では,レジェンドになるための具体的なコツなどを教えてください。その過程でも少しずつうまくなれるでしょうし。
分かりました。
レジェンドへの到達,つまりランク戦における勝率を上げようとする場合,使用デッキの選択はもっとも重要です。たとえプレイングが上手でも,ダメなデッキを使っていては上位には決して到達できませんから。現在の環境で最も強いデッキを用意しましょう。
強いデッキを選ぶのもノウハウがあるのですが,そのあたりの詳しい説明は置いておいて,今なら“偶数パラディン”がオススメです。ちなみに自分も2018年11月に同じデッキを使って,最終的にアジアサーバーで50位内でフィニッシュできました。
―――個人的に,「アグロデッキ=お手軽」「ハースストーンが強い人=コントロールデッキを好む人」という漠然としたイメージがあります。偶数パラディンはコントロールというほど長期戦向けのデッキではありませんが,実際のところどうなんでしょう。
そこは初級者が誤解しやすい部分ですね。アグロデッキは簡単で誰でも扱えるとか,上達するにはコントロールデッキを使う必要があるという認識は,大きな間違いです。
実際にはアグロデッキにも戦術がたっぷりとあり,これを使い続けてトッププレイヤーになることも十分に可能です。むしろ個人的には,99%のプレイヤーはアグロデッキを完璧には使いこなせていないのでは,と考えています。
―――そうだったんですね。では,アグロとコントロールにおける本質的な違いについて教えてください。
一言でいうと“勝ち筋”にあります。アグロデッキの勝ち筋は,「盤面の有利を取り,相手のヒーローの体力を0にする」と至ってシンプルです。一方のコントロールデッキの勝ち筋は,アグロデッキとは異なることが多いんです。
たとえば,「相手よりも山札を多く保ち,疲労ダメージを与えて勝利」「断罪のウーサー・エボンブレードやメックトゥーンによる特殊勝利」などですね。それらのゴールは一般的なデッキとは異なるため,コントロールデッキに対して難しさを感じるのではないでしょうか。
―――確かに,コントロールデッキの使い手を見ていると,「何をやってるのかよく分からないけど,なんとなく凄い!」というのを感じることはあります。
ランク戦においてアグロデッキを勧めるもうひとつの大きな理由は,1回の対戦に要するプレイ時間が比較的短いことです。レジェンドまでは長い道のりで,これから数百回はプレイすることになるでしょう。アグロデッキが1戦を終えるのに10分前後だとしても,コントロールデッキだと30分近くになることもありますから,トータルで見ると大きな差になります。
―――なるほど。それでは,このデッキの解説をお願いします。
偶数系のデッキは,ゲン・グレイメインを採用することで,マナコストが偶数のカードしかデッキに含められない制約がある代わりに,ヒーローパワーのコストが2から1に半減されています。これを最大限に利用したデッキ構成で,各ターンにおけるプレイングが大筋で決まっているのが大きな特徴です。
今回のコーチングで教えてもらった偶数パラディンのカード一覧
プレイングをざっくり説明すると,1ターン目はヒロパ。2ターン目は2マナのミニオン。3ターン目は2マナのミニオン+ヒロパ。4ターン目は4マナのカードとなります。
このデッキには2マナのミニオンカードが30枚中9枚も含まれており,これらが2ターン目までに1枚も来ない確率は非常に低いです。マリガンを含め全力で引きに行った場合,1枚以上の2マナミニオンが来る確率は先手で96%,後手で99%もあるんですよ。
・偶数パラディンのデッキコード
AAECAaToAgb6BrnBAsLOAs30Auv3Av37AgzcA7cE9AWWBs8Grwf2B/4HlgmzwQKIxwKW6AIA
―――そんなに高いんですか。プレイングを覚えやすいというのは,復帰プレイヤーにとってかなり助かります。
覚えるべき情報が少ないのもポイントです。たとえば,7マナがあるターンの戦術としては,通常のデッキではさまざまなマナの組み合わせが考えられます。しかし偶数デッキの場合は,「2+2+2+ヒロパ」「2+4+ヒロパ」「6+ヒロパ」の3通りしかありません。これらの点を含め,初級者から中級者にかけても比較的お勧めしやすいデッキといえるでしょう。
―――実際のプレイングで注意すべきポイントはありますか。
悩ましい判断のひとつが,自分が先手で2ターン目に2マナミニオンが1枚しかなかった場合,このミニオンを出すか,あるいはヒロパで終了するかという部分です。
もし,3ターン目に2マナミニオンが引けなければ,2ターン目はヒロパだけで済ませておき,3ターン目に2マナミニオン+ヒロパを行うほうが,盤面にヒロパのミニオン1体分を多く並べられますよね。
この2ターン目の状況を考えると,山札には25枚のカードがあり,2マナミニオンが8枚入っています。つまり8/25で32%になるため,3ターン目に2マナミニオンを引ける確率は低いんですよ。そのため,僕は2ターン目は「ヒロパ」,3ターン目は「2マナ+ヒロパ」の動きを取ることが多いです。
―――使用デッキはこの偶数パラディンを使い続けるのがいいですか? それともランク帯に合わせて変えたほうがいいですか?
当面はこのデッキだけを使い続けましょう。同じデッキを繰り返しプレイし続けることで,プレイングの精度が少しずつ高まりますから。
初級者のかたにありがちなのが,負けが込むと心情的にデッキを変えたくなるんですけど,少なくともランク戦で上位を狙うこと“だけ”を考えると,それはNGです。
どんな上級者でも負けることは当たり前なんです。実際に自分は,この偶数パラディンを使って10連敗したことがありますが,逆に10連勝したこともあります。そして2018年11月を60%という非常に高い勝率で終えられました。「上級者でも負けるのは当たり前」「数をこなすことで確率は収束する」ということを覚えておいてください。
―――確かに自分が前にプレイしていた頃は,使用デッキをコロコロ変えていました(笑)。あと,アーキタイプなどのトレンドをよく分かってないのですが……。
プレイ回数を重ねることで,アーキタイプやカードなども自然と覚えられると思いますよ。また,対戦中に印象に残ったキーカードなどは,メモを取るのも良いでしょう。
たとえばプリーストの「心霊絶叫」は,トッププレイヤー間での採用率が非常に高く,対策を考えていないと,これ1枚で勝負が決まりかねません。プリーストを相手にするときは,「7ターン目に心霊絶叫が使われる可能性がある」ことを念頭に置き,これをケアするプレイングが求められるわけです。こういった知識を,ひとつひとつ積み重ねていきましょう。
―――そういえば明日,新拡張パックの「天下一ヴドゥ祭」がリリースされますが,これへの対策などはありますか。※今回のコーチングは天下一ヴドゥ祭のリリース前日に実施
拡張パックのリリース直後は,新たなカードとともにユニークなデッキが次々と登場し,環境もめまぐるしく変化しますね。覚えなければいけないカードも多いでしょう。
しかし,この偶数パラディンは,前回の環境が落ち着いてから2か月以上にわたって熟成されたTier1のデッキです。拡張パックの導入により,偶数パラディンがいきなり廃れるとは考えにくいです。気にせず使い続けましょう。
拡張パックが出てから1か月くらい経った頃に環境がいったん落ち着くと思われるので,その頃に使用デッキをあらためて相談しましょうか。
※12月20日に追記:
12月20日に,天下一ヴドゥ祭のリリース後で初となるゲームバランスの調整が行われましたが(※公式サイトの告知ページ),偶数パラディンは影響を受けなかったのでまだまだ戦えそうです。
―――分かりました,頑張ってみます!
カードゲームは数字や確率が支配するジャンルなので,上級者になるほどデッキやプレイングが「最も確率の高い,セオリーに忠実な戦術」になる傾向があります。逆に言うと初級者,つまりランクが低い対戦相手は,デッキもプレイングもバラバラです。そのため,相手の戦術に応じたプレイングのアドバイスは,ランクが低いあいだは実は行いにくいんです。
先ほども言ったとおり,偶数パラディンは各ターンで行うべきことがある程度決まっていて,そのために必要なカードも手元に来やすいです。プレイを続けていれば,基本的な部分はすぐに慣れると思いますよ。各ターンでやるべきことをきっちり行い,あとはプレイ回数を重ねれば,着実に結果に反映されます。それを実現できるのが,「強いデッキ」なんです。
使用デッキを一本に絞ってひたすらプレイ
3週間が経過した成果は……?
実際に偶数パラディンを使ったところ,確かに強く,そして扱いやすいデッキだと思える。天敵といえるアーキタイプがなく,カードの引きなどで事故ることも少なく,毎回のプレイングが比較的安定している印象だ。
もちろん,自分のランク上昇に応じて対戦相手の実力も高まるため,勝率をキープするのは次第に難しくなる。ランクが5に到達する頃には勝率が50〜60%前後まで落ち込み,プレイ中は制限時間ギリギリまで考え込むことも増えた。
それだけに,接戦で勝利したときやランクが上昇したときの喜びもひとしおだ。また,こういった真剣勝負の経験を積むことで,少しずつではあるが上達も実感できている。
一種類のデッキしか使用しないため,ほかのアーキタイプを覚えることが課題のひとつだったが,これに関しては大手ファンサイトやYouTuberの配信を大いに参考にさせてもらっている。ハースストーンの熱心なプレイヤーにとっては有名所ばかりだと思うが,あらためて紹介するので,初級者から中級者の読者は参考にしてほしい。
国内外の情報サイト
YouTuber
また,自分一人ではプレイングの正解が導き出せないケースがちらほら出てきており,そのあたりを中心に,再びTredsred選手にコーチングをお願いできればと考えている。
今回のコーチングでピックアップした偶数パラディンは,レジェンドカードが6枚も含まれておりコストが高く,誰にでも勧められるわけではなさそうだが,ほかにも強いデッキはいくつもある。上で紹介している関連サイトなどで強いデッキを選び,一本に絞ってひたすら使い続ければ,ある程度はランクに反映されることを今回のプレイで実証できたと思う。
ゲームを本気でプレイする人にとって,ハースストーンのレジェンド到達はとても手応えのある目標だと思うので,初級者から中級者のプレイヤーもこの機会に,筆者と一緒に目指してみてはどうだろうか。
俺も「ハースストーン」のレジェンドになりたい! トッププレイヤーのコーチングを受けた4Gamer編集者の奮闘レポート
4Gamerは「ハースストーン」における国内トッププレイヤーのTredsred選手とスポンサー契約を結んでいる。せっかくの機会ということで,4Gamer編集者が同選手のコーチングを受け,実際にレジェンドを目指す企画を実施してみた。その奮闘記を紹介しよう。
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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