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「薄い・速い・静か」を実現するゲーマー向けノートPC設計技術「Max-Q」について,NVIDIAから追加で話を聞いてきた
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印刷2017/06/10 00:00

インタビュー

「薄い・速い・静か」を実現するゲーマー向けノートPC設計技術「Max-Q」について,NVIDIAから追加で話を聞いてきた

Max-Qのコンセプトイメージ
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 2017年6月9日,NVIDIAは都内で,「Max-Q Design」(以下,Max-Q)に関する説明会を実施した。

 Max-Q自体は,COMPUTEX TAIPEI 2017に合わせて発表されたもので(関連記事),4Gamerでは現地取材に基づく西川善司氏の解説記事も掲載済みだ。説明会の内容も記事のそれを超えるものではなかった。
 ただ,説明会終了後の囲み取材において,国内説明会のために来日したNVIDIAのJeff Yen(ジェフ・イェン)氏に追加の質問を行うことができたため,今回はその内容をお届けしてみたいと思う。

3年前,「GeForce GTX 880M」を搭載するゲーマー向けノートPCは厚みが55mm,重さが10ポンド(約4.54kg)あったが,Max-Qであれば厚さ18mm,重さ5ポンド(約2.27kg)で,3.3倍の性能を実現できるというスライド。ちなみにMax-Qという言葉自体は,ロケット工学における「飛行中の最大動圧」を示す「Max Q」から取っているという
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 なお,囲み取材ということもあり,筆者以外による質問も混じっているが,そこは区別しないので,その点はご了承を。また,一部,囲み取材後に追加で氏へ確認した内容によってアップデートした受け答えも含んでいる。


NVIDIAのテクニカルマーケティングディレクターに聞くMax-Q


――Max-Qと非Max-Qで,「薄さ」という目に見える部分以外の違いはどこにあるのか。

Jeff Yen氏(Director of Technical Marketing, NVIDIA)
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Jeff Yen氏:
 ドライバソフトウェアは同じだ。逆に,ファームウェア(≒UEFI)は(Max-Qか非Max-Qかを問わず)すべてのノートPCで異なっている。
 率直に言えば,違いは「GPUの周辺部」にある。周辺回路が高品質になって,それこそコンデンサの“鳴き”のようなものは生じない。Max-Qでは,そういうところのグレードが上がっている。

Max-Qにおいて驚くべきこと,のスライド。Yen氏は,とくに右の2つがMax-Qにおいて重要なポイントだと言っているわけだ
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――Max-Qにおいてはどのように「GPUの最大効率」を判断しているのか?

Jeff Yen氏:
 デザインの話か製品の話かで答えは異なる。
 デザインのところでは,パートナーと協力して,(性能と消費電力の関係をグラフ化した)曲線から,最大の効率が得られるポイント(※西川善司氏による解説記事で言うところの「消費電力と発熱を最小限にしつつ,その中で最大の性能を引き出せる設定ポイント」)を探すことになる。デザインにおいてはここが最も重要だ。

MSIの「GS63VR」。非Max-Q版として発売済みの従来版GS63VRから,筐体デザインは基本的に変わっていない(関連記事
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 一方,製品のところでは,Max-Qだからと言って特別なことはしていない。それこそ「消費電力が○Wに達したら,それ以上は性能を上げない」とか,そういう設定はしていないわけだ。
 もちろん(ノートPC向けの)シリコンなので,温度が85℃に達した場合はクロックを下げて,(熱から)製品を守るようにはなっているが,エンドユーザーの立場からすると,Max-Qか非Max-Qかで,(挙動)の違いはない。Max-Q採用ノートPCは薄く静かだが,ユーザー体験は非Max-QのノートPCとの間で共通だ。

――念のため確認させてほしい。通常のGeForceだと,電圧設定とクロック設定がテーブル上にあるわけだが,それをベンダーごと,ノートPCごとにMax-Qへ最適化する方向で再設計しているということか。

Jeff Yen氏:
 だいたいそんな感じ(pretty much)。
 我々は,「我々(の製品が持つ,消費電力と性能バランス)の曲線」がどこにあるかは分かっている。それを基にした筐体設計はパートナーに任されているわけだが,「ではそれがきちんとマッチングし,きちんと動作するか」は,我々とパートナーとの間でしっかりと議論する必要がある。

詳細は西川善司氏による解説記事を参照してほしいが,上は「一定レベルまでは消費電力と引き換えに性能を引き上げられるが,それ以上では消費電力の増大量に性能向上率が見合わなくなる」というグラフ。下は「最大性能が得られるポイント」よりもずっと低い消費電力のところに,消費電力対性能値がベストとなる電圧とクロックの組み合わせがある」というグラフだ。Yen氏が述べているのは,この組み合わせをNVIDIAとしてはGPUごとに持っている,ということである
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――Max-Qでは薄型ノートPCのデザインという追加コストがかかるわけだが,そのコストは誰が持っているのか。

国内のシステムビルダーに採用例の多いCLEVOのMax-QノートPC「P950HR」。いずれ本製品をベースとしたゲーマー向けノートPCが市場を賑わわせることだろう。おそらく,コストもそれほどは高くならないはずだ
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Jeff Yen氏:
 そもそも,一見同じように見えるこれまでのゲーマー向けノートPCでも,すべて常に新しいアイデアに基づいている。その意味で「デザイン」のコストはMax-Qでも非Max-Qでも同じだ。
 もちろん,回路が高品質になっている以上,少し高コストかもしれないが,それが即座に販売価格へ転嫁されるかと言えば,そうはならないと我々は考えている。

――とはいえ,COMPUTEX TAIPEI 2017の会場でも確認したが,Max-Qなゲーマー向けノートPCが搭載するGPUのデバイスID(≒製品名)は,通常のゲーマー向けノートPCが搭載するGPUのそれとは異なっていた。NVIDIAとして両者の間に何らかの「区別」を行っていることは間違いない。そして区別されるのであれば,NVIDIAからOEMへ販売するときの価格も異なるのではないかと思うのだが。

デバイスID一覧。Max-Q仕様のGPUは通常版と区別されている
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Jeff Yen氏:
 確かに,Max-Q採用ノートPCのGPUでは「with Max-Q Design」と付く。
 ここでまずお断りしたいのは,私は最終的なOEMへの出荷価格を知る立場にないということだ。そのうえでお話しすると,あなたの言っていることが正しいといいなあと思っている。うちの利益が多くなるからね(笑)。
 同じシリコンでも違うデバイスIDである以上,料金も違う……というのは確かに「通る」話だ。また私達にとってもハッピーだが(笑),そうなるとは限らないのがビジネスの常だとも思う。まとめると,「分からない」。

――対応GPUについてだが,台湾でGaurav Agarwal(ガラフ・アガーワル)氏は,「GeForce GTX 1060 6GB」と「GeForce GTX 1060 3GB」もMax-Qをサポートすると言っていたが(関連記事),これらはどうなるのか。

Jeff Yen氏:
 未発表の製品については答えられないが,Gauravがそう言っていたのだとすれば,彼は「出てくることもあり得る」というニュアンスで語ったのだと思う。
 逆に質問させてほしい。それは本当に意味があると思うか? すでにGTX 1080で厚さ18mmの筐体を実現できているわけだよ?

――GTX 1060シリーズでMax-Qを使えば,重さ3ポンド(約1.36kg)以下のゲーマー向けノートPCを実現できると思う。

Jeff Yen氏:
 「未発表の製品については答えられない」が,ただ,あなたの言っているような製品が出てくるのだとすれば,確かにそれは相当にクールだね。

――WhisperModeについても聞かせてほしい。(説明会で)すべてのGeForce GTXノートPCで利用できると説明があったが。

WhisperModeは,GeForce Experienceの機能だ。400以上のタイトルに対して,「ゲーム体験を損なうことなく落とせるグラフィックス設定」を保持しており,たとえば「Overwatch」なら60fps,「The Witcher 3」なら30fpsといったターゲットフレームレートを保持しつつ消費電力を下げ,ノートPCのファン回転数を落とすというものになっている
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Jeff Yen氏:
 「すべてのGeForce GTXノートPC」で使える。だが,最も重要なのは,Max-QのノートPCで利用できるということだ。たとえばASUSTeK Computerが開発した「ROG Zephyrus」の場合,動作音は通常モードだと39dBだが,WhisperModeを有効化することにより,26dBにまで下げることができる。
 「なら,すべてのGeForce GTXノートPCで26dBを担保できるか?」と言えば,そういう話ではない点に注意してほしい。

――メーカーのノートPCだと,メーカーが独自にサイレントモードなどを持っていることが多いが,それらとMax-QやWhisperModeの併用は可能か。

Jeff Yen氏:
 Max-Qに関して言えば「分からない」。その「サイレントモード」が何をやっているか次第だ。モニタリング機能が温度やファン回転数を追うような場合,それと競合する可能性はある。

――WhisperModeはGeForce Experienceの機能を使って,ゲーム側のグラフィックス設定を変更するものなので,メーカー独自の「サイレントモード」と競合はしないという理解だが,それで正しい?

Jeff Yen氏:
 そのとおり。WhisperModeは競合しない。競合する恐れがあるのはあくまでもMax-Qのほうだ。

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COMPUTEX TAIPEI 2017で発表となり,話題を集めたROG Zephyrusも説明会には置いてあった。Yen氏の評価は,「キーボードとタッチパッドの配置は人を選ぶが,この薄さにチャレンジしたことは尊敬したい。あと,天板を開いたときに底面が開くギミックはクールだが埃(ほこり)が溜まりそう(笑)」とのこと
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[COMPUTEX]西川善司の3DGE:GTX 1080搭載ノートPCの厚みを20mm未満にできる技術「Max-Q」とは一体なんぞや?

NVIDIAのMax-Q Design 公式Webページ(英語)

  • 関連タイトル:

    GeForce GTX 10

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