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  • 発売日:2014/05/15
  • 価格:パッケージ版/ダウンロード版:各6980円(税抜)
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「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」の開発者にインタビュー。日本語版は“セガ愛”あふれる海外版に“濃い”ローカライズが加わり“完全版”と呼べる作品に
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印刷2014/05/15 00:00

インタビュー

「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」の開発者にインタビュー。日本語版は“セガ愛”あふれる海外版に“濃い”ローカライズが加わり“完全版”と呼べる作品に

画像集#001のサムネイル/「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」の開発者にインタビュー。日本語版は“セガ愛”あふれる海外版に“濃い”ローカライズが加わり“完全版”と呼べる作品に
 セガのPS3/Wii U用ソフト「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」(以下「オールスターレーシング TRANSFORMED」)が,本日(2014年5月15日)発売を迎える。
 本作は,ソニック・ザ・ヘッジホッグをはじめとした人気キャラクター達が,セガの歴代ゲームをモチーフにしたコースでデッドヒートを繰り広げるレースゲームだ。
 レース中に発生するイベントによってコースのルートが変化し,飛行機やボートに変形(トランスフォーム)するマシンで陸・海・空を駆け抜けるという,決まったコースを周回するだけのレースゲームとは一味違う内容になっている。
 また,登場キャラクターやコースモチーフとなっているゲームが,新旧セガファンの心をくすぐるチョイスになっているのもポイントだ。

「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」公式サイト

※セガの一部サーバーに不正アクセスがあったため,現在は公式サイトの公開が停止されています。http://sega.jp/topics/140512_0/

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 本作は,海外で2010年に発売された「SONIC&SEGA ALL-STARS Racing」(以下「SEGA ALL-STARS Racing」)の続編となるタイトルなのだが,前作の家庭用ゲーム機版は日本では発売されず,スマートフォン用アプリ「ソニック&セガオールスターズ レーシング」iOS/Android)が配信されただけだった。
 今回は,家庭用ゲーム機で待望の日本語版が発売された本作について,開発を手がけたSumo Digitalのエグゼクティブプロデューサーであるスティーブ・ライセット(Steve Lycett)氏と,ローカライズプロデューサーとして制作に携わったセガの奥成洋輔氏にインタビューを実施。開発の経緯や日本語版だけの独自要素など,さまざまな開発秘話を聞かせてもらった。

写真右:Sumo Digitalのスティーブ・ライセット(Steve Lycett)氏
写真左:セガの奥成洋輔氏
画像集#002のサムネイル/「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」の開発者にインタビュー。日本語版は“セガ愛”あふれる海外版に“濃い”ローカライズが加わり“完全版”と呼べる作品に


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずはライセットさんの経歴から教えてください。

スティーブ・ライセット氏(以下,ライセット氏):
 私は,主にゲームディレクターを務めていて,Sumo Digitalが設立された10年前から在籍しています。
 Sumo Digitalでは,これまでセガさんと「アウトラン2」,「アウトラン2SP」(OutRun 2006: Coast 2 Coast),「パワースマッシュ」などのタイトルを,アーケードから家庭用ゲーム機に移植する仕事をさせていただきました。
 オリジナル作品では,2008年に「Sega Superstars Tennis」を作らせていただいたのが初めてで,この「オールスターレーシング TRANSFORMED」と前作の「SEGA ALL-STARS Racing」も弊社で開発しています。

4Gamer:
 キャラクター達が変形するマシンに乗って陸・海・空を駆け巡る,という「オールスターレーシング TRANSFORMED」のコンセプトは,どのようにして決まったのでしょうか。

ライセット氏:
 順を追ってお話すると,前作「SEGA ALL-STARS Racing」の開発が決まった段階では,ソニック達がそれぞれの得意な手段でレースをするという,異種格闘技戦のような企画だったんです。
 ソニックは走って,エミーはクルマで,テイルスは飛行機でというように,全員の走行手段が異なるレースを考えていたのですが,実際に開発に入るとゲームとして成り立たせることができず,素直にクルマに乗せることになった,という経緯があったんです。
 そして今回,「オールスターレーシング TRANSFORMED」の制作が決まったとき,前作のアイデアを踏まえて,キャラクターがクルマ,船,飛行機の3フォームのマシンに乗れるようにして,コースもそれに合わせた設計にしようということで,テーマが「TRANSFORMED」(変形)になりました。

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4Gamer:
 ゲームに登場するコースは,陸・海・空でがらりとプレイフィールが変わったり,イベントなどでルートが分岐したりと,かなりバリエーションに富んでいますよね。

ライセット氏:
 レースゲームではコースをどう面白く走れるかが重要なので,設計については,プロトタイプの段階からかなり時間をかけてきました。実は,企画当初のコンセプトと現在の形は,かなり違っているんです。

4Gamer:
 そうなんですか。最初は,どのようなコンセプトだったんですか?

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ライセット氏:
 当時は,マシンが自在に変形してコースを走れるような形で考えていたのですが,そのままだとどうしても飛行機が一番速くて,クルマや船に変形する意味がなくなってしまうんです。
 そこで,変形のタイミングをプレイヤーにゆだねるのではなく,コースに設けたゲートを通るとマシンが変形するという,セクション式を採用したんです。このギミックを入れたことで,結果的に最適な面白さをプレイヤーに提供できたと思っています。

4Gamer:
 ゲートを通って変形するギミックは,すごくいいアイデアだと思いました。

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ライセット氏:
 それ以外にも,クルマ,船,飛行機というそれぞれのフォームの面白さを差別化するために,試行錯誤を繰り返しています。
 クルマの場合は,ドリフトしてブーストするという,「アウトラン2」的な面白さを取り入れることで成立できたので比較的楽だったのですが,船と飛行機は本当に大変でした。

4Gamer:
 具体的には,どのような苦労があったのでしょうか。

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ライセット氏:
 船の場合,水面を走るので波が発生するのですが,波を激しくしすぎるとプレイヤーが思うように操作できなくなって,走る爽快感が半減してしまうんです。そこで,通常時は水面を比較的穏やかにして走りやすくして,時おり大きな波を発生させることでスタントを楽しめるというように,イレギュラーな要素を折り込んだんです。
 飛行機では最初,コース上の空間を自由に飛べるようにする予定だったのですが,テストプレイではレースそっちのけで飛び回るプレイヤーが続出して,レースが成り立たなくなってしまいました(笑)。ただ,自由度の高さが飛行の楽しさの一つであることは確かですから,「自由に飛べる」感覚を維持しつつ,空間に見えない壁を作ることでコースとして完成させました。

4Gamer:
 コース内の要所に設置されているブーストマーカーも,プレイヤーを誘導する役割を果たしていますよね。

奥成洋輔氏(以下,奥成氏):
 水上と空中は,自由度が高い反面,どこを通ればいいのか分かりにくいところがありますから,マーカーのほかにも,飛行機にはコースに誘導路を表示できるオプションも用意しています。また,走行中にルートが分からなくなって迷ったときなど,通過に時間がかかったときは,誘導路を表示するかどうか聞かれるようになっています。

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4Gamer:
 コース分岐などのギミックも,プレイヤーが自発的に選択できるものがあって,ただコースを周回するだけのレースゲームとは違う楽しさがありますね。

ライセット氏:
 アーケードの「アウトラン2」的なコース分岐は,セガのゲームを象徴する面白さなので,本作でもその部分をかなり意識しています。
 また,プロジェクトの半ばぐらいからですが,「Project Gotham Racing」や「WipEout」といったレースゲームの開発経験のあるスタッフが参加していて,彼らも本作の完成度を高めるのにかなり貢献してくれました。


セガの予想を超えた,Sumoのマニアックなキャラクターチョイス


4Gamer:
 「オールスターレーシング TRANSFORMED」には,多くのキャラクターが登場しますが,セガには人気IPも多いですし,選定はかなり苦労したのではないでしょうか。

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ライセット氏:
 キャラクターの選定は,本当に難しかったですね。
 基本的には,セガの新旧IPをできるだけ正しくゲーム上で表現するというのが前提でした。さらに幅広い作品から,男女の性別だけでなく,ロボットや動物など偏りがないように選んでいます。

4Gamer:
 キャラクターをどのような基準で選別したのかを教えてもらえますか?

ライセット氏:
 まず,プレイヤーが選びたくなる「格好いい」「可愛い」キャラクターを抽出したリストを作って,セガの人気IPの中から,150体ほどのキャラクターをチョイスしました。
 「オールスターレーシング TRANSFORMED」は,キャラクターが乗り物に乗って走るゲームですから,車を運転するのに合った頭身かどうかという点と,カメラ視点の関係で後ろから見たときに格好良く見えるかどうかという点で判断しています。
 例えば欧州では,メガドライブの「リスター・ザ・シューティングスター」に登場するリスターをゲームに入れてほしい,という希望が多かったんです。でも,彼は丸っこくて,後ろから見たときにあまりキャッチーではなかったので,プレイアブルキャラクターとしては選ばれなかったんですよ。
 そのうえで,レースゲームに適しているかどうかを基準に選別して,まとめたリストをセガさんに提出したという流れです。

4Gamer:
 リスターは,プレイアブルキャラクターにならなかった代わりに,ゴール地点に登場させているんですね。

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ライセット氏:
 そういうことです。人気のある彼をまったく登場させないのはファンに申し訳ないので,フラッグマンとして活躍してもらう形で登場させました。

奥成氏:
 リストを見てみると,ほとんどのキャラクターについて,僕らとしては文句なしのチョイスでした。レトロな作品のキャラクターが思ったより多いという印象でしたが(笑)。

ライセット氏:
 北米や欧州では,レトロゲームは専門店やネットショップなどでしか手に入れることができないのですが,それにも関わらず,レトロゲームのファンは数多くいるんです。昔からセガさんのゲームを愛している皆さんに喜んでもらえるよう,できるだけ古いタイトルからもチョイスしているんです。
 ただ,ジョー・ムサシやギリウス・サンダーヘッドを使いたいと打診したときには,セガさんにも驚かれたので,少しマニアックすぎたかもしれません(笑)。

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4Gamer:
 プレイヤーキャラクターを確定させる最終段階で,チョイスに迷ったキャラクターはいましたか?

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ライセット氏:
 私が考えるセガの3大名作は,「スペースハリアー」「アウトラン」「アフターバーナー」なんです。この3作品は世界的にも人気がありますから,なんとか作品に入れたいと考えていました。
 「アフターバーナー」については,主役の戦闘機がキャラクターとして登場していて,「アウトラン」はコースが入っています。ただ,残念ながら「スペースハリアー」は,ステージのBGMがゲーム中に採用されていますが,主人公であるハリアーはどうしても都合がつかず,収録を断念せざるを得ませんでした。

4Gamer:
 それは残念でしたね。ファンも見たかったと思います。

ライセット氏:
 本当は,ユーライアという竜に乗って走るキャラクターとして登場させたかったんですよ。私も諦めていませんので,次の機会があるとしたら,ぜひリベンジして実現させたいです。

4Gamer:
 「オールスターレーシング TRANSFORMED」に登場するキャラクターやコースの中には,今回初めてグラフィックスがHD化されたものもあります。どのようにしてオリジナルの雰囲気を再現したのでしょうか。

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奥成氏:
 基本的には,Sumoさんが作成したものをセガ側で監修する形なのですが,モチーフとなる作品をより正しく表現するためのアドバイスは,こちらからも積極的にさせていただきました。キャラクターやコースは,当時のイメージを崩さないように,できる限りオリジナルを手がけた開発者に監修してもらっています。
 例えば,「パンツァードラグーン」のコースは,最初にSumoさんに見せてもらったモデルでは,単純な岩肌だけのコースだったんです。それだけでは「パンツァードラグーン」らしさが足りないと,当時の開発者がアドバイスをして,旧世紀の機械が発掘されている,という要素をデザインに加えています。

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4Gamer:
 コースには隠れキャラもけっこういるそうですが,いくつか教えてもらえませんか?

ライセット氏:
 例えば,「ジャイアントエッグ〜ビリー・ハッチャーの大冒険〜」のコースなら,ローリー・ロールやチック・ポーチャー,「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」のコースならゾンビ達,というように,モチーフとなった世界のキャラクターが,コース内にカメオ出演しています。
 とくに最後のコース「SEGA AGES」には,本作にかなり入れたかったキャラクターが何人も登場するので,ぜひ探してみてください。ミサイルにつかまった「あの人」の姿も見られる……かもしれません(笑)。

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海外版ではできなかったことを実現できた日本版は「完全版」と呼べる出来に


4Gamer:
 前作の「SEGA ALL-STARS Racing」は家庭用ゲーム機版が日本では発売されませんでした。続編の「オールスターレーシング TRANSFORMED」が日本で発売されることになったのは,なぜなのでしょうか。

「ソニック&セガオールスターズ レーシング」(※画面はAndroid版)
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奥成氏:
 前作については,世界で地域ごとの市場に向けた作品を随時提供していく,という弊社の方針に照らし合わせて検討した結果,開発中の時点で,日本国内での発売は見送られることになりました。
 ですが,最終的に完成したものがよくできていたこともあり,スマートフォン版については,日本でもリリースされるという展開になりました。

4Gamer:
 スマートフォン版の発売が実現したのは,そういう理由からだったんですね。

奥成氏:
 「オールスターレーシング TRANSFORMED」は,海外の発売後の評価が前作以上に好評だったので,発売時期が遅れたとしても,日本でもきっと満足していただけるだろうと見込んで,発売を決定しました。
 幸い,レースゲームというジャンルは発売時期をとくに気にするものではないですし,登場キャラクターは普遍の存在でしたから,一部に新要素を追加することもできました。

4Gamer:
 ライセットさんは,日本語版の発売が決定した話を聞いて,どうでしたか?

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ライセット氏:
 日本の市場では,ゲームの評価基準が非常に厳しいですから,とても緊張しました。ただ,日本語版の発売に時間をかけさせてもらえたことで,先に発売した海外版ではできなかった細かい部分を,奥成さんのプロデュースで実現できたのは嬉しかったですね。

4Gamer:
 その部分を,もう少し具体的に教えてもらえますか?

ライセット氏:
 例えば,難易度の選択メッセージです。海外版では「EASY・MEDIUM・HARD」とごく普通の表示なのですが,日本版では「8bit・16bit・64bit級」になっているんです。

4Gamer:
 32bitじゃなくて「64bit級」なのは,セガサターンのキャッチフレーズが元ネタですよね。

ライセット氏:
 そうです。実は私も,このネタを入れたいと開発中から考えていたのですが,セガ・オブ・ヨーロッパ(SOE)に提案したら「きっと誰にも分からないだろう」と突っぱねられてしまったんです。奥成さんに日本語版で実現してもらえたので,本当に感謝しています(笑)。

4Gamer:
 それはマニアックな話ですね(笑)。

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奥成氏:
 僕が最初にいちプレイヤーとして遊んだときも,マニアックな要素がかなりたくさんあるなと感じましたね。
 例えば,ゲーム中には「ステッカー」という実績を表す要素があるんですけど,その中のアイコンに,日本でしか出ていない「セガガガ」の主人公イラストも入っていたんです。
 単なる「セガ好き」の枠を超えた,日本も含めたワールドワイドのセガが好きなスタッフが作っていることが分かったので,日本に持ってくるときには,この方向を伸ばしてあげないとダメだなと(笑)。

4Gamer:
 海外版から「セガ愛」にあふれる方向性だったというのは,ファンとしても嬉しいですね。

奥成氏:
 Sumoが目指したところの延長線上,と言っていいと思います。

4Gamer:
 日本語版には,「おじゃまぷよ」など独自要素も入っていますよね。

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奥成氏:
 ええ,おじゃまぷよが日本語版での一番大きな変更だったのですが,実は「ぷよぷよ」も,先ほどお話ししたステッカーの中に,海外版の時点ですでに「Puyo Pop」という名前で入っていたんです。
 せっかく名前が入っているのだから,入れない手はないと思って,そのまま細山田のところに相談に行ったところ,「ギミックとして出すならおじゃまぷよがいいよね」とアイデアも出してくれたんです。

※「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサーの細山田水紀氏

4Gamer:
 それらの新しいギミックも,Sumo側で制作したんですか?

奥成氏:
 はい。やはりオリジナルを手掛けたスタッフが作らないと,ゲームが変わってしまいますから。

4Gamer:
 ローカライズでいうと,日本語版のボイスキャストはどうなっているのでしょうか。

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うらら
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ヴァイス
奥成氏:
 ソニックをはじめ,日本語でしゃべったことがあるキャラクターは,オリジナルのキャストの方にお願いしました。
 最後のドラマCD以来,10年以上振りとなる「エターナルアルカディア」のヴァイスは関 智一さんにお願いしましたし,「スペースチャンネル5」のうららも,もちろん「herself」ですので,ご本人が担当してます(笑)。
 細かいところでは,「バーニングレンジャー」モチーフのコースで,周回中にナビボイスが流れるのですが,これは,サターンで出ていたゲーム内のナビボイスを流用していたんです。なので日本語版でも,クリス役の笠原弘子さんによる当時のままの声が流れるようにしました。

ライセット氏:
 今回,日本語版を作っているときに感じたのが,光吉猛修さんの声が素晴らしかったという点です。とくに,ロゴ画面で流れる「セ〜ガ〜♪」の声は,海外版をアップデートする機会があったら入れたいなと思いました。

4Gamer:
 日本語版では,光吉さんが実況を担当していますが,セガのゲームにすごくマッチしているという印象でした。

奥成氏:
 このゲームでナビゲーションをしてもらうなら誰だろうと考えたときに,一番セガらしいボイスを出せる人は光吉さんしかいないなと。本人にお願いをしたのは,社内での段取りを全部決めたあとでしたけど(笑)。

4Gamer:
 断る選択肢を与えない囲い込みだったんですね(笑)。

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奥成氏:
 ボイスでいえば,Wii U版限定でMiiがプレイヤーキャラクターとして使えるのですが,日本語版では,ササキトモコさんにボイスを担当してもらっています。

4Gamer:
 かつてセガでコンポーザーをされていた方ですよね。

奥成氏:
 はい。ササキさんは,「NiGHTS」のナイトピアンや「ROOMMANIA#203」のチビネジなど,歴代のセガ作品でマスコットキャラクターの声を演じているので,今回はセガオールスターということで,Mii役として出演していただきました。

4Gamer:
 エフェクトがかかったあの早口な声ですね。

奥成氏:
 そうです。だから僕の中では,Miiはチビネジが運転しているイメージに変換されているんですよ(笑)。

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4Gamer:
 先ほど,「アフターバーナー」の話が出ましたが,F-14は「AGES」(エイジス)というキャラクターの飛行機形態として登場しますよね。クルマは「デイトナUSA」のホーネット,船はドリームキャストのコントローラという不思議な変形をしますが,AGESはどのようにして思いついたのですか?

ライセット氏:
 ゲームを作るにあたって,ファンの皆さんからの要望に,「デイトナUSA」「アウトラン」「セガラリー」など,セガの名作レースゲームの車を入れてほしいというものがあったんです。
 ただ,どちらかというとキャラクターのほうに重きを置いたゲームなので,普通に乗り物を出すだけだと,ゲームのコンセプトから少し外れてしまうんですよ。

4Gamer:
 確かに,どれも乗り手に目立った個性があるわけでもないですし,誰か別のキャラクターを乗せるのも,しっくりきませんね。

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ライセット氏:
 ですが,今回は「変形」がコンセプトですから,マシンを変形させることで面白さを出せます。
 最初は,マシンが変形するたびにランダムで車種が変わる,という仕様を考えたのですが,それだとどうしてもメモリが足りなくなってしまうので,形態ごとに1種類に限定したんです。

4Gamer:
 そこからAGESが生まれたんですね。それにしても,船をドリームキャストのコントローラにするというアイデアは,ちょっと考えが及びませんでした。

ライセット氏:
 クルマと飛行機はすんなり決まったんですが,船は悩みどころでしたね。過去のセガのIPを振り返っても,「ウェーブランナー」の水上バイク,「シーマン」の主人公,あるいは「GET BASS」の釣り船など,候補はいくつかあったのですが,どれも知名度やインパクトが今ひとつという感じでした。
 結局,社内のコンセプトデザイナーと相談して,セガの過去のハードウェアを使ってみたらどうか,という話になったんです。

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4Gamer:
 あのアイデアにたどり着くまでにも,紆余曲折があったんですね。

ライセット氏:
 「セガハードをモチーフにした船」という依頼を受けたデザイナーも,最初は難しい顔をしていました(笑)。
 ですが,翌日にそのデザイナーが興奮しながら,あのドリームキャストコントローラの船を見せてくれたんです。私も,ひと目見て「これはいい!」と思ったのですが,同時に,果たして日本のセガさんがOKを出してくれるのか,心配にもなりました。
 ですが,セガさんからの返答は「完璧だ!」と大絶賛していただけるものだったので,私もそれを聞いてホッとしましたね。これでNGが出てしまったら,AGESというキャラクター自体をボツにせざるを得なかったので。

4Gamer:
 ファンサービスとしては最高の存在だと思います。

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ライセット氏:
 私もそう思います(笑)。ですからAGESは,最後にアンロックされるキャラクターになっているんです。
 実は,コントローラ型の船にはもう一つ裏話があるんです。ドリームキャストって,日本ではロゴの色がオレンジでしたが,アメリカは赤,ヨーロッパは青というように,国によって違っていたんです。ですから「オールスターレーシング TRANSFORMED」では,リージョンによってロゴの色が違っているんです。

4Gamer:
 ものすごく細かいこだわりですね(笑)。

ライセット氏:
 もちろん,そういったネタばかりではなく,海外版で残っていた小さな不具合は当然修正していますし,ゲームバランスもさらに遊びやすく細かい調整を加えました。ある意味,日本語版は「オールスターレーシング TRANSFORMED」の「完全版」と捉えていただいていいと思います。


単なるキャラクターゲームでは終わらない,アーケード的なレースゲームの手触りを楽しんでほしい


4Gamer:
 ライセットさんは,ゲームに登場するキャラクターとコースで,それぞれ何がお気に入りですか?

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ライセット氏:
 キャラクターだとやはりAGESに一番愛着があるんですが,それ以外でしたらジョー・ムサシでしょうか。
 オリジナルの「SHINOBI 忍」には,彼が車に乗るという設定は当然ありません(笑)。ですから,バットマンが乗っているバットモービルのようなイメージを当てはめて,パワフルだけど操作するにはスキルが必要という設定のマシンを,奥成さんにアドバイスをいただきながらデザインしました。
 結果としてかなり格好いいクルマに仕上がったので,個人的にもすごく気に入っています。

4Gamer:
 奥成さんは,どんなアドバイスをしたのでしょうか。

奥成氏:
 車体のどこかに,大きく「忍」と入れてほしいという話をしたことは覚えています。ジョー・ムサシは,目立ってもいい忍者ですから(笑)。いずれかのフォームで,普段は見えないところに「忍」の文字が入っているので,プレイ中に探してみてください。

4Gamer:
 コースではどうですか?

ライセット氏:
 コースは「ゴールデンアックス」の「デスアダー・キャッスル」ですね。デザイン時に,SOEから「熔岩の上を走るのは無理だよ」と突っ込まれたんですが,そこを納得してもらえるようにがんばって作り込んだんです。そもそも,そんなところをリアルに考え出したら,ハリネズミが車を運転するゲーム自体が成り立たなくなってしまいますけどね(笑)。
 苦労した甲斐もあって,クオリティが高く面白いコースになったと思います。

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4Gamer:
 奥成さんのお気に入りはどれですか。

奥成氏:
 コースでいうと,やっぱり「パンツァードラグーン」の帝国採掘場でしょうか。マシンフォームによって変わるBGMも,初代のものから選んでいるので,そこも気に入っています。
 PS3やWii Uのクオリティで「パンツァードラグーン」を作るとこうなるんだ,という見本みたいなグラフィックスで,完成したコースを見ていたら,新しいハードで「パンツァードラグーン」を作ってみたいという気持ちになりました。
 キャラクターのほうは,アレックスキッドですね。

4Gamer:
 やっぱりそう来ますか(笑)。

奥成氏:
 はい(笑)。セガオールスターというくくりでは,絶対に必要なキャラクターですから。ちなみにアレックスキッドは,ローカライズ時のセリフに一番遊びを入れたキャラクターでもあります。キャストについては絶対に譲れなかったので,井上喜久子さんにお願いしました。

4Gamer:
 「セガガガ」のときのキャストですね。

画像集#039のサムネイル/「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」の開発者にインタビュー。日本語版は“セガ愛”あふれる海外版に“濃い”ローカライズが加わり“完全版”と呼べる作品に
奥成氏:
 そうです。「セガガガ」のときのアレックスキッドの中身はオッサンでしたけど,今回は設定どおり,少年の声で演じていただきました。
 勝ち負けなどの状況に応じて,いろいろなセリフがあるんですが,それらに何らかのネタを仕込んでいますので,遊んだ方には喜んでいただけると思います。

4Gamer:
 どんなセリフがあるのか,いくつか教えてもらえませんか?

奥成氏:
 「みんなみんな,ホシいですね!」とか,「とにかくたのしく」とかですね。SG-1000のCMのフレーズなんですが,若い人には絶対に分かりませんね。ともあれ,そういったところからチョイスしています。

4Gamer:
 かなりニッチなところを攻めていますね。自分もそのフレーズは忘れていました(笑)。アレックスキッドのセリフは,奥成さんの折り紙付きであれば期待できそうですね。

奥成氏:
 アレックスキッドが誰か分かる人なら,かろうじて分かるかな? といったところですけどね(笑)。

4Gamer:
 発売後にアレックスキッドでプレイするのが楽しみになってきました。
 それでは最後に,日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

奥成氏:
 「オールスターレーシング TRANSFORMED」は,一見するとセガファンだけに向けたゲームに見えますが,実際に触ってみると,レースゲームとしても完成度が高い作品になっていることが,分かっていただけると思います。
 スティーブさんが話していたように,セガのアーケード向けレースゲームの操作感を,そのまま家庭用のオリジナルゲームに持ってきているので,最近のシミュレータ系のリアルなレースの感覚とは違った爽快感を楽しんでいただきたいですね。
 また個人的には,1人用のキャンペーンモードを遊ぶとゲームのテクニックが身に付いていく仕様は,近年のレースゲームの中でも高く評価できる点だと思っているんです。セガのキャラクターやコースをキャンペーンモードで増やしていきつつ,腕を磨いてみてください。
 月並みな言い方ですが,世界に認められたクオリティですから,単純にキャラクターが出てくるだけのレースゲームではないと,自信を持ってオススメできます。

ライセット氏:
 私が本作で強く願っていることは,セガが好きな友達と,オフラインでも一緒に遊んでもらいたいということなんです。
 最近海外では,誰かと隣り合って一緒に遊ぶ,画面分割型マルチプレイのゲームが減っていて,私としても絶対的に数が少ないなと感じていたんです。そんな状況を,「オールスターレーシング TRANSFORMED」で少しでも打開できるよう,思いを込めて開発をしてきました。
 このゲームは,オンラインだけでなく最大4人,Wii Uでは最大5人で画面分割マルチプレイができますし,対戦だけでなくキャンペーンモードも一緒に楽しめます。
 日本の皆さんも,最近あまり遊ばなくなってしまったかもしれませんが,家に集まってワイワイとゲームをする楽しさを思い出して楽しんでもらいたいですね。

4Gamer:
 日本でも,家族や友達と一緒に遊ぶ楽しさを実感できるゲームになることを期待しています。本日はありがとうございました。



 今回,事前に日本語版「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」をプレイさせてもらってからインタビューに臨んだのだが,正直な話,プレイするまで筆者は「マリオカート」っぽいゲームを想像していた。
 しかし,実際に製品版を触ってみると,そのプレイフィールはインタビュー中で2人が話しているとおりで,アーケードの「アウトラン」や「デイトナUSA」などでセガが培ってきた,クイックで爽快,そして何度もプレイしたくなる気持ちよさを持つレースゲームだったのである。取材後,もっと遊びたくて発売日が待ち遠しくなったほどだ。
 ゲーム中のコースにもセガネタが盛りだくさんで,「アフターバーナークライマックス」の空母の甲板や「ソニック&ナックルズ」の空中庭園など,ほかのレースゲームではあまり考えられないシチュエーションのコースが多い。コースごとに陸・海・空の割合も異なるので,セガファンに限らずとも,飽きずに楽しめるのもいいところだ。
 ちなみに,個人的にツボだったのは各コースのBGMだ。誰もが知っているメインテーマだけでなく,「この曲どこかで聴いたことあるぞ?」という,オリジナルのゲームで使われていた隠れた名曲がリミックスされた曲などもあるので,何度もコースを走ってよく聴いてみてほしい。
 なお,これらBGMの選曲には,奥成氏も積極的にSumoにオーダーを出したそうで,原作を知っているファンなら,きっと納得できるサウンドとなっているはずだ。

 奥成氏も驚いたマニアックなセガファン向けのネタを,ローカライズによってさらに昇華させ,ライセット氏が「完全版」と太鼓判を押すこの「オールスターレーシング TRANSFORMED」。機会があればぜひ友達を家に呼んで,ゲームのあちこちにちりばめられたセガネタのウンチクをつまみに,ワイワイと楽しんでみてほしい。
 もちろん,ステッカー集めをはじめとしたやり込み要素やオンラインプレイなど,1人で遊ぶコンテンツもたっぷりも用意されているのでご安心を。

画像集#034のサムネイル/「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」の開発者にインタビュー。日本語版は“セガ愛”あふれる海外版に“濃い”ローカライズが加わり“完全版”と呼べる作品に

「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」公式サイト

※セガの一部サーバーに不正アクセスがあったため,現在は公式サイトの公開が停止されています。http://sega.jp/topics/140512_0/

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