レビュー
力を合わせて幽霊屋敷の謎を解き明かせ。テーブルトークRPGライクな協力型タイルゲーム
ゴーストハンター13 The Tile Game
さらに本作には,プレイヤー全員が力を合わせてシナリオの謎解きに挑むという,テーブルトークRPGライクなストーリーゲームの側面もあり,そういう意味でも一風変わったタイトルといえる。今回は対戦型のゲームにはない,協力型ゲームならではの魅力をお伝えすべく,本作の概要を紹介していこう。
■「ゴーストハンター」シリーズとは
タイトルとボックスアートからピンとくる人もいるだろうが,本作は安田 均/グループSNEによって生み出された,ゴーストハンターシリーズに連なるタイトルだ。1987年に発売されたPC-88用ゲーム「ラプラスの魔」から始まる同シリーズは,その後テーブルトークRPGや小説などを中心に関連作品が登場し,人気を博した。
本シリーズの舞台となるのは,1930年代のアメリカ。オカルト事件を解決するために,さまざまな能力を持ったゴーストハンター達が活躍するというもので,そのキャラクターや世界観は,ボードゲームとなった本作にも継承されている。もちろん,GH13は完全に独立したタイトルなので,これらの作品群を知らずともプレイは可能だが,知っていればニヤリとできる部分があるのは間違いない。現在は入手困難となっているものも少なくないが,興味のある人は過去作をあたってみるといいのではないだろうか。
■「ゴーストハンター」関連作品(現在入手が容易なもの)
- 「ラプラスの魔」(ゲーム/PC-88版)
- 「パラケルススの魔剣」(ゲーム/PC-98版)
- 「ゴーストハンター13タイルゲーム リプレイ 1000の部屋を持つ館」(リプレイ)
- 「スペイン屋敷の恐怖: ゴーストハンター13ゲームノベル」(ゲームブック)
- 「ゴーストハンターRPG02リプレイ 黒き死の仮面 草壁健一郎の事件簿」(リプレイ)
霊能者(ミスティック)のキャラクターシートには,ゴーストハンターシリーズの主役,草壁健一郎の姿が描かれている
「ゴーストハンター13 The Tile Game」公式サイト
タイルをめくって屋敷を探索
それでは,実際のゲームの進行を見ていこう。本作は,まず各プレイヤーが自分が操るキャラクターを選択するところからスタートする。キャラクターにはそれぞれ「戦闘が得意」「移動が速い」などの得意分野があるので,ほかのプレイヤーと役割分担を考えつつ,好みでキャラクターを選ぶといい。操作キャラクターが決定したら,幽霊屋敷の中央にあたるエントランスのタイルを場に置いて,そこにキャラクターのコマを載せれば準備は完了だ。
個性あふれる8人のキャラクター達。探索重視か戦闘重視かなど,キャラクターの得意分野を見ながら選んでいこう |
ゲームの準備が整い,キャラクターがエントランスに降り立ったところ |
タイトルに「Tile Game」とあるとおり,GH13は屋敷内の部屋を表す「部屋タイル」を次々にめくり,それによって屋敷内を探索していくゲームだ。各プレイヤーはターンが回ってくるたびに,伏せてある山札から新たな部屋タイルをめくり,すでに配置されているタイルとつながるように配置しながら,コマを動かして屋敷の中を進んでいく。キャラクターは1ターンに2回移動ができるので,どんどん新しい部屋へと進んでいこう。
部屋タイルの種類は様々だが,扉のある方向にしか,新たなタイルを接いでいくことはできない。左下のマークは遭遇する事件を表し,赤いフチはその部屋が危険であることを示している |
エントランスから左へ進み,踏み込んだタイルは危険のない「食堂」。しかし,2回目の移動では,赤いフチが危険を示す「台所」だった! |
タイルによっては,入るとアイテムを得られたり,怖いイベントが起きて狂気に陥ったり,モンスターが現れて襲いかかってきたりといったイベントが発生する。例えば先ほど踏み込んだ「台所」タイルには,左下に2つのマークが描かれており,マークと一致した山札からカードをめくって,そのカードをプレイしていくという形だ。
まずはハートマークで示された「狂気カード」を1枚めくってみよう。
狂気カードの内容はトランプそのもの(ジョーカーを除く)なので,2〜10までの数字,もしくはA,J,Q,Kの絵札のいずれかが出てくることになる。この数字は,恐ろしい事件などによってプレイヤーが受けることになるダメージを表しており,出た数字に応じてMPが減ってしまう。これでもしMPが0以下になってしまうと,プレイヤーは発狂したことになり,ゲームから一時的に離脱してしまうのだ。ただし,絵札(A,J,Q,K)の場合には,逆に狂気を癒やす効果があり,いずれのカードであっても,これまでに得た狂気カードを破棄できる。これによってMPが1以上になれば,正気をとりもどせるというわけだ。
続いて,「イベントカード」を1枚めくってみよう。
出たのは「毒針」のカードで,これはキャラクターを待ち受ける邪悪な仕掛けを表している。この罠によって,キャラクターは5点のダメージをHPに受けてしまう。しかしカードには「DX判定:6以上」との表記があるので,この判定に成功すれば回避できる。判定は1から10までの数字が書かれた判定カードを使っておこない,今回の場合はカードを引いて6以上の目が出れば成功なのだが……引いたカードは3。残念ながらダメージをもらってしまった。
「毒針」の罠のイベントカードと判定カード一式。罠を切り抜けるには,判定カードを1枚めくり,その数値に能力値ボーナス,アイテムなどによる修正値があれば加算して,指定された数字以上を出さなくてはならない |
アイテムカードを使えば,戦闘を有利に運んだり,傷を回復したりできる。使い捨てのものと,毎ターン継続使用できるものがある |
危険なモンスターをかいくぐり,館の秘密を解き明かせ
上記のような手順を繰り返しながらゲームは進行していくわけだが,ではプレイヤーは,いったい何を目指して不気味な幽霊屋敷をさまよえばいいのだろうか。そこで問題となるのが,本作に用意されたさまざまなシナリオだ。
本作には,勝利条件が異なる13本のシナリオが用意されており,遊ぶ前にその中から1つを選んでおくことになっている。基本的には,舞台となる幽霊屋敷の謎を解き明かして怪奇事件を解決し,屋敷から脱出することになるわけだが,例えば今回のシナリオ「1000の部屋を持つ館」なら,キャラクター達は幽霊屋敷に入ったまま戻らない男を探しだし,連れ戻さなければならない。
探索の途中で「資料倉庫」のタイルが見つかると,この失踪した男が残した手記が見つかり,どうやらこの館の主人は人造生命の研究をしており,財宝が収められた部屋を守る怪物がいるらしいことが分かる。ほかにもあちこちに謎めいたメモが残されており,この館がただの幽霊屋敷どころではなく,いくつもの次元につながった,とんでもない魔境だという真相が,徐々に明らかにされる,といった具合だ。
さて,そうこう探索を続けていった結果,最後の目的地「封印室」に入るためには,特殊な鍵が必要だということが判明したのだが……その鍵がなかなか見つからない。そんな中,イベントカードでモンスターをめくると,凶悪なモンスターが現れた。いよいよ戦闘の場面だ。
戦闘ではGMがモンスター役を担当し,プレイヤーとGMが互いに判定カードを1枚めくって,互いの数値を比較することで解決する。出た数値にキャラクターの能力値ボーナスや,アイテムカードの修正値を加算して,大きい値になったほうが攻撃成功となり,相手を上回った分だけ相手にダメージを与えられるのだ。
モンスターが単体なら,多人数でかかれば有利ではあるが,一度に多人数を相手にできるモンスターもいるので,戦闘はできれば避けたいところ。HPやMPが0になって倒れたキャラクターは一時的にゲームを離脱した後に,「エネミー」となってかつての仲間に襲いかかるというルールがあるので,状況はより不利となる。
GH13はあくまでホラーゲームであり,立ちはだかる怪物を必ずしも倒す必要はない。最終的に屋敷の謎を解き明かし,怪事件を解決することが目的なので,ときには「逃げる」ことも大切だ。というわけで,今は鍵を見つけ出すことを優先し,現れたモンスターからは逃げ回ることにしよう。
ようやく鍵を発見し,最後の目的地である「封印室」のタイルにたどりつくと,件の男が見つかった。しかし番人のゴーレムを倒さなければ部屋から出られない。今までに集めてきたアイテムをフル投入し,命からがらゴーレムを倒したものの,今度は館が崩落を始めてしまった。5ターン以内に入り口までたどりつけなければ,燃え落ちる屋敷と運命を共にすることになるのだが,屋敷の中にはまだまだ莫大な宝が眠っている。それを逃げる前に,それらを回収してまわることも可能なのだが……ハイリスクハイリターンか,ローリスクローリターンか,あなたならどちらを選ぶだろうか?
ホラーゲーム入門としてのゴーストハンター13
GH13は,アナログゲームの初心者が「ホラーゲームの面白さ」を体験するのに最適なタイトルだ。シナリオの難度は適度に高く,無闇な行動はすぐに破滅に通じるため,「怖いけれど,あと一歩だけ踏み込むスリル」や「生きるか死ぬかギリギリのところで,なんとか逃げのびる爽快感」といった,ホラーならではの要素を,分かりやすく感じることができるはずだ。1プレイあたりの所要時間も,シナリオにもよるが30分から1時間半程度で,やるべきことも分かりやすい。
また協力プレイ型のゲームであるため,初心者にとってはハードルが低いのではないだろうか。
ルール説明では省略したが,本作には選択したキャラクターごとに「特異力」という特殊能力が設定されており,役割分担を行うことで探索をより円滑に進めることができるようになっている。例えば「タイルを2枚めくって好きな方を配置できる」という能力のキャラクターがいれば,ここぞという場面では新しい部屋の探索をそのキャラクターに任せ,ほかのプレイヤーは万が一のトラブルに備えるのがいい。それ以外にも,戦闘で役立つアイテムを手に入れたなら,戦闘向きのキャラクターに渡しておくなど,さまざまな面でプレイヤー間の協力が求められる。
冒頭でもテーブルトークRPGに近い部分があると書いたが,こういった役割分担はまさにRPGといった感じで,経験者とともにプレイできれば,協力プレイ型ゲームの達成感を,より短い時間で理解できるだろう。プレイ後にはキャラクターの成長要素もあり,シナリオを連続して遊んでいけば,テーブルトークRPGのキャンペーンシナリオのようにプレイすることもできる。シナリオが足りなくなれば,自作することも難しくないので,かなり長く遊べるタイトルである。
国産タイトルと言うこともあってルールブックも分かりやすく,ボードゲーム事始めには最適といえる本作。あえて欠点を挙げるとすれば,細かいタイルやカードを探すのが大変なため,GMなしで遊ぶとやや煩雑になってしまうことや,一部の判定タイミングなどのルールがやや理解しづらい点だが……それらを差し引いたとしても,プレイする価値のあるタイトルといえる。そして本作に物足りなさを感じたら,「マンション・オブ・マッドネス」などのより自由度の高いホラー系ボードゲーム,もしくは「クトゥルフ神話TRPG」などのテーブルトークRPGへステップアップしてみると良いのではないだろうか。
「ゴーストハンター13 The Tile Game」公式サイト
- 関連タイトル:
ゴーストハンター13 The Tile Game
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