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印刷2015/03/07 17:30

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[GDC 2015]「アーティストは電気羊の夢を見るか?」,「No Man’s Sky」のアーティストがプロシージャルアートの作り方を伝授

No Man’s Skyのアーティスト,Grant Duncan氏。セッションタイトルの「Can Artists Dream of Electronic Sheep?」は,もちろん,映画「ブレードランナー」の原作として知られるSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をもじったものだ
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 2015年期待の一作といっても過言ではない「No Man’s Sky」。本作の開発を担当するHello Gamesのシニアアーティスト,Grant Duncan(グラント・ダンカン)氏「Can Artists Dream of Electronic Sheep?」(アーティストは電気羊の夢を見るか)という題の講演を行った。1800京個という大量の惑星を自動生成するプロシージャル技法を用いた本作における,アーティストの役割が語られたので,今回はその内容をレポートしたい。


プロシージャル技法に必要な何百種類ものテンプレート


 イギリスを拠点するHello Gamesは,7年ほど前にダンカン氏と3人の仲間が設立した会社で,スタントマンが主人公のパズルアクションとしてPCやWii向けにリリースされたJoe Dangerシリーズなどを手掛けた過去を持つ。
 もともとはセガで「バーチャテニス 3」の開発にも関わっていたというダンカン氏は,Hello Gamesの設立当初から唯一のアーティストとして参加していたが,No Man’s Skyのプロジェクトが進むにつれてメンバーも増え,いまではほかに3人のアーティストが在籍しているという。

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 もはやNo Man’s Skyについては多くを解説する必要もないだろうが,本作は無限に広がる宇宙を,自分の宇宙船で自由に探索し,未知の惑星を見つけて交易したり,ほかのファクション(勢力)と戦ったりするゲームだ。プロシージャル技法による自動生成で舞台となる惑星の数は,1800京個(18Quantrillion)に達するという。正確を期せば,64bit整数の限界である1844京6744兆737億955万1616個の惑星を表現可能だ。
 そのため,「1人でプレイすれば,すべての惑星を旅するのに50億年もかかる」というすごい規模なのだが,それらの星々はプレイヤーが一つの惑星をアンロックした時点で「第一発見者」としてゲームに記録され,生成された惑星とともにほかのプレイヤーにも共有されていく。

No Man’s Skyの惑星は,一つ一つがアンロックされた時点で生成されて固定化されるのであって,最初から宇宙全体がマッピングされているのではない。しかし,宇宙空間の広さが感じられるように擬似的な瞬間移動を用いて,その距離感がうまく表現されている
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 つまり,Hello Gamesが銀河全体をマップ化しているのではなく,プレイヤーが新しい惑星に到達した時点で,その環境が初めてプロシージャルに生成されるわけだ。まずはダンカン氏を含む4人のアーティストが,1800京個の星を一つ一つデザインしているのではないことを理解しておこう。

 さて,こうした自動生成によって,少人数での制作ながらも膨大なコンテンツを生み出せるNo Man’s Skyだが,個々の惑星の違いを生み出すのは大きく分けて,「地形」「樹木」「生物」,そして「宇宙船」という四つのカテゴリーになる。

 惑星は発見された時点で,乱数によってさまざまな要素が組み合わされた環境として作り出される。簡単にいうと,サイコロを振って1が出れば針葉樹,2が出れば広葉樹,3が出ればサボテン,というような形なのだが,カテゴリーごとにその目の数が大量に用意されており,たとえば樹木の葉っぱの種類だけで何百種類も存在している。

 そして,その葉っぱ一つ一つのアートを描いているのが,ダンカン氏らアーティストなのだ。つまり,プロージャルに生成するための,細かなテンプレートを事前に用意しておくのが彼らの仕事になる。ダンカン氏は「4人で分担して,ロボットのように作業している(笑)」と話していた。

 樹木だけでも,「幹」「枝」「葉」「テクスチャ」「ねじれ具合」という五つの要素があり,やはりそれぞれに何百種類のテンプレートがある。そのため,あるプレイヤーが異なる惑星で,まったく同じ樹木を見つける可能性はほぼない。同様に,地形になる地表タイルも何百種類も用意されており,それがランダムに組み合わされることにより,一つの惑星となるわけだ。

樹木は「幹」「枝」「葉」「テクスチャ」「ねじれ具合」の五つの要素で構成され,それぞれに何百種ものテンプレートが用意される
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そこから自動生成される植物のサンプル。こうした膨大な物量を用意しておくことで,約1800京個のそれぞれの惑星がユニークなものとして表現されるわけだ
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地形テクスチャマップの数々。こうした数百種類のタイルが自動的に組み合わさり,惑星の複雑な地形を作り出す
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 No Man’s Skyのプロシージャルエンジンがさらにすごいところは,こうした惑星の環境が,「Blue Print System」という独自ツールによって,特定のルールに基づいて生成される点だ。

 惑星は,太陽までの距離や太陽の年齢,惑星の大きさ,地中の鉱物,水分量といった無数のパラメータで生み出されるわけだが,このとき,たとえば氷で覆われた惑星であれば毛皮をまとった生物が生成される確率が高まり,湿地帯の多い惑星であれば葉の広い観葉植物のような樹木が発生しやすくなる。
 また,「トゲや角のあるケバケバしい生物ほど,より攻撃的な性格を持っている」といったルールも存在するという。カラーパレットにも一定のルールが規定され,緑のプライムカラーには黄色のサブカラー,赤のプライムカラーには紫のサブカラーというような,より自然な組み合わせが発生しやすいよう調整されているとのことだ。

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動物の場合も,背骨の曲がり具合や足骨の長さといったことを基本にして,鼻の長さや耳の大きさといった要素がテンプレートから自動生成される。海洋生物はもちろん,二足歩行タイプも生成されるが,ヒューマノイドが存在するのかどうかは不明だ
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宇宙船は「カーゴ」(輸送船),「ファイター」(戦闘機),「エクスプローラー」(探査船)の三つのカテゴリーが存在し,やはりそれぞれのルールに従って生成される
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 「アーティストというのは,自分に興味のないことにまったく関心を示さない。だからNo Man’s Skyに携わるまで天文学には関心なかったし,銀河がどちら回りになっているのかも知らなかった」と話すダンカン氏。当然ながらプログラミングについての知識を持ち合わせているわけでもない。だからこそプログラマーと話し合い,それぞれの視点からゲームについて考えるのが重要であると説く。

 「少数開発チームだからこそ,Naughty DogやBioWareでは利用しないであろうプロシージャル技法を使ったが,実はこれまでの開発者人生でもっとも複雑で膨大な仕事量だった」と述べ,早くイギリスに帰って作業を再開したそうなダンカン氏だった。No Man’s Skyが予定どおり2015年中にリリースされることを祈りつつ,惑星探査の旅に出られるその日を待ちたいところだ。

「黒は使いたくなかった」というダンカン氏が参考にしたというのが,Chris Foss(左)やJohn Harris(右)らファンタジーアーティストの画風だったという
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