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稲船敬二氏×Team NINJAが手掛ける「YAIBA: NINJA GAIDEN Z」をレビュー。コメディテイスト満載の,斬新なゾンビアクションゲームに挑む
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印刷2014/04/02 00:00

レビュー

アンチヒーロー,ヤイバがゾンビ相手に大立ち回りを演じる異色作

YAIBA: NINJA GAIDEN Z

Text by 稲元徹也


画像集#043のサムネイル/稲船敬二氏×Team NINJAが手掛ける「YAIBA: NINJA GAIDEN Z」をレビュー。コメディテイスト満載の,斬新なゾンビアクションゲームに挑む
 2012年の東京ゲームショウ直前に発表され,稲船敬二氏Team NINJAの共同開発による作品ということで話題となった「YAIBA: NINJA GAIDEN Z」PC / PlayStation 3 / Xbox 360)が,コーエーテクモゲームスより2014年3月27日に発売となった。
 「NINJA GAIDEN」の名を冠しながらも,アメコミ調のグラフィックスや,ゾンビを相手にするという設定など,シリーズにない要素が目を惹く本作だが,本稿ではそのプレイフィールをお届けしよう。
 なお,今回プレイしたのはPlayStation 3版で,操作系などの表記はそちらに準じている。また,画像などに一部ショッキングな表現が含まれるため,苦手な人は注意してほしい。

画像集#005のサムネイル/稲船敬二氏×Team NINJAが手掛ける「YAIBA: NINJA GAIDEN Z」をレビュー。コメディテイスト満載の,斬新なゾンビアクションゲームに挑む


主人公ヤイバの荒削りなキャラクターが魅力的


 NINJA GAIDENシリーズといえば,主人公の忍者リュウ・ハヤブサが敵を次々と斬り倒していく3Dアクションシリーズで,シビアな難度のアクションや刺激的なゴア表現が国内外で人気を博している。
 そのリュウ・ハヤブサは「YAIBA: NINJA GAIDEN Z」にも登場。オープニングのカットシーンで,ガタイのいい大酒飲みの忍者と派手な戦いを繰り広げた末,相手の刀を折っただけでなく,身体まで斬り刻んで勝利する。相変わらずの鋭い斬れ味をぞんぶんに見せつけたリュウ・ハヤブサだったが,タイトル画面を挟んだ次のシーンでは,スポットが斬り刻まれたほうの忍者へと当てられていく。そう,ハヤブサに敗北した忍者こそが,本編の主人公「カミカゼ・ヤイバ」なのだ。
 体の一部を「フォージインダストリーズ」なる企業によって機械化され「サイボーグニンジャ」となったヤイバは“体慣らし”のために,東欧諸国で発生したゾンビアウトブレイクの中へと飛び込み,自分をこのような姿にしたリュウ・ハヤブサを追っていく。

対峙するカミカゼ・ヤイバとリュウ・ハヤブサ。ハヤブサが膝を着き,ヤイバが押しているように見えたが……
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真っ二つにされながらも「フ×ック!」と叫び,笑いながら絶命するヤイバ。ここから蘇生するのだからすごい
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 このヤイバ,寡黙なリュウ・ハヤブサとは対照的に,口汚い言葉を交えてよくしゃべる。戦闘の最中に相手に浴びせる罵詈雑言や,自身を蘇生させたミス・マンデーアラリコ・デル・ゴンゾとの会話に見られる彼のキャラクター性も,本作の魅力の一つだろう。
 とくにリュウ・ハヤブサへの強烈なライバル心については,ミッションに挟まれるムービーのたびに語られていて,その激しさは逆に愛情すら感じられるほど(これは公式サイトのミス・マンデー紹介の項でも少し触れられている)。泥臭いアンチヒーローの姿は,一部のゲームファンの心を大いにつかむのではないだろうか。

ヤイバを利用するアラリコ・デル・ゴンゾ(左)と,ミス・マンデー(中央)。ともにゲーム中の通信相手としても登場する
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機械の体からくり出される豪快なアクションが斬新かつ爽快


 主人公がサイボーグニンジャになったことにより,アクションにも多くの新しい試みが導入されている。ヤイバは,「ハートレスブレイド」を使った素早い斬撃([□]ボタン)のほか,出だしが若干遅いが強力なパンチ([△]ボタン),そして伸びるチェーンを振り回して多くの敵を巻き込むフレイル([○]ボタン)という3つの基本攻撃を持っている。この3つの攻撃方法はNINJA GAIDENシリーズにおける弱攻撃/強攻撃/遠距離攻撃のそれぞれに当てはまるものだが,見た目もガラッと変わっているうえ,演出も派手なためかなり新鮮に感じられるはず。

パンチによる攻撃を当てるのは少し難しいが,その分ダメージは大きい。ヒットさせたときの気持ちよさも格別だ
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もちろん3種類の攻撃を組み合わせてのコンビネーション攻撃が可能。繰り出したコンビネーションは画面右上に,与えたダメージとともに表示される
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 また,機械化された左腕による攻撃手段は,ゲーム中に「アップグレード」することで,「ロケットパンチ(強力な溜めパンチ)」や「サイボーグアームオープナー(ダッシュから打ち下ろす溜めパンチ)」などという,生身の人間ではとうてい不可能と思われるようなアクションによる攻撃へ強化可能になっている。
 サイボーグアームによるアクションは,弱った敵にとどめを刺す「エグゼキュート(処刑)」にも多く導入されている。エグゼキュートは弱ったゾンビの頭上に「!」マークが表示されている間に[L2]ボタンを押すと発動する必殺の攻撃。これで倒した敵からは必ず体力回復アイテムが出現するため,プレイ中は常に狙っていくべき重要なアクションとなっている。
 当然ながらゲーム中にエグゼキュートを決める回数は多くなるわけで,それを飽きさせないための演出としてサイボーグアームを使ったアクションが多数用意されているのだと思われる。このエグゼキュートもアップグレード可能で,初期状態では敵1体にしか効果がないものが,強化後は複数の敵に対してくり出せるようになるのだ。

攻撃をヒットさせた敵に「!」マークが出たら,すかさず[L2]ボタンを押してエグゼキュート。必ず回復アイテムが出るおまけつきだ
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アップグレードは,画面右上に表示されるポイントを消費して行う
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ゾンビの体を引きちぎって武器にする芸当はヤイバならでは


 そんなヤイバのアクションの中でもとくに印象的なのが,敵の体を使った「ゾンビアクション」だ。ザコのゾンビは,[R2]ボタンによる「グラブ」でつかみ,それを振り回したり,投げたりして攻撃できる。同じように振り回して攻撃するフレイルは,範囲は広いものの威力に乏しく,斬って半身になったゾンビに当たらないなどの欠点もあるので,敵が多い場所ではこのグラブと使い分けることで,より多くの敵に対応できるようになるはずだ。

グラブでつかんだゾンビは攻撃に使えるほか,特定の場所に放り投げて道を切り開くこともできる
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 また,エグゼキュートでは敵の体の一部分をもぎ取って「ゾンビ武器」にするという芸当も可能だ。ゾンビの腕を引きちぎり,ヌンチャクとして振り回す「チャクス」は,公開済みのムービーなどでも紹介されていたが,そのほかにも,もぎ取った敵の頭部から炎をまとったドクロをバズーカのように撃ち出す「リガモーター」,電気を使うゾンビの脊髄を身にまとって,自分の攻撃に電気の属性を持たせる「スパイナルザップ」,酸を吐くゾンビの内臓を使って敵の目をくらます「バグパイプ」など,通常時とはまったく違った攻撃が可能になり,後に紹介する敵の属性に対しても優位に立てるのだ。
 ヤイバの性格そのままの豪快かつ刺激的なゾンビアクションは,かつてのNINJA GAIDENシリーズでは見られなかったもので,常に狙っていきたくなる気持ちよさがあふれている。

ゾンビ武器は装備するとヤイバの攻撃力が大幅にアップ。見た目も派手で非常に楽しい
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 その一方で,中ボス以上の敵は,ボタン連打のコンボだけでなく,敵の攻撃をタイミングよく見切ってブロックし,それをカウンターで返すといったアクションを組み込まなければ簡単には倒せない。こういった緻密な操作の必要性と,さきほどの爽快なゾンビアクションがうまくミックスされているような手応えも感じられた。

敵の攻撃に合わせてガードするとカウンターが発動。ゾンビ相手ならその動きが一瞬遅くなり,飛び道具に対して行ったときははね返す
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中ボス級ゾンビのエグゼキュート時は,ボタン連打による押し合いも発生。これに成功するとゾンビ武器が入手できる
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 そして本作ではひたすらバトルが繰り広げられるだけではない。バトルの合間にある移動シーンでは,ボタンをタイミングよく押していくQTE的なアクションが展開されていく。慣れないうちはすぐに落っこちてしまい,イライラさせられることもあったが,うまくボタンを押せると非常に気持ち良く移動していけるようになっている。

移動のシーンでは,ジャンプやフレイルなどを駆使して移動していく。ミスしてもやり直せるのでご安心を
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 これらのアクションについて個人的にちょっと気になったのは,ボタンのコンフィグができない点だ。通常のアクションにおける操作に問題はないのだが,エグゼキュートがストロークの長い[L2]ボタンにアサインされているため,反応が遅れて発動できないことが何度かあった。これを[L1]ボタンにアサインできれば,ほんの少しでも遊びやすくなったかもしれない。
 ちなみにヤイバは,前述したように移動シーンではジャンプを駆使して進んでいくのだが,戦闘時にはジャンプしない。何故かは不明だ……。

ヤイバの一族に伝承された必殺の「ブラッドラスト」を発動すると,一定時間強力な攻撃が繰り出せる
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グロテスクなゾンビが,とても明るいキャラクターに見える


 「DEAD RISING」シリーズを手掛けた稲船氏が関わったから,かどうかは知らないが,本作の敵キャラクターはとにかくゾンビ,ゾンビである。ゾンビゲームというと,(ゲームタイトルではなく,災害という意味での)「バイオハザード」や「アウトブレイク」といった言葉とともに,暗く陰惨なバックストーリーが用意されることが多いが,本作にはそういった匂いがほとんど感じられない。そもそもなぜこのYAIBAの世界でゾンビたちが発生したのか,少なくとも筆者がプレイできたゲームの前半部分ではほとんど触れられていないのだ。まぁヤイバの目的はゾンビを倒すことではないので,そこにまつわるエピソードは必要ないのかもしれないが。

 そんなゾンビたちは,全員がとびきり個性的で面白い存在である。ゾンビの兵士「グラント」,体中に爆弾をぶら下げて自爆する「グレネディア」,上半身だけの「トルソー」,花嫁姿でヒステリックに電撃を放つ「ゾンブライド」,ピエロ姿ではしゃぎ回る背の高い「サイドスプリッター」等々,特徴的なゾンビにはその性質に基づいた名前がつけられている。このネーミングやルックスのセンスは,筆者が大好きな1985年の名作ゾンビ映画「バタリアン」に影響されているように思えたのだが,どうだろうか。

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 彼らの登場シーンや動き,あるいはセリフに至るまで,すべてにおいてコメディチックで,それがアメコミ調のグラフィックスに実によくマッチしている。本作の売りの一つでもあるゴア描写による真っ赤な血しぶきは,ある意味画面を彩るアクセントのようにも見え,個人的にはあまり残酷という印象は受けなかった。もし本作がフォトリアルなグラフィックスを採用し,戦う相手が生身の人間だったとしたら,きっと成立しなかっただろう。

個人的に傑作だと思ったのがこのシーン。運転席に投げ入れられたゾンビが動かすタンクローリーがすっ飛んで,ランジェリーショップの看板の間にナイスイン!
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 ゾンビに関してもう一つ面白いのが,いくつかの特殊なゾンビに「属性」が設定されている点だ。属性には炎・電気・酸の3種類があるのだが,いわゆる三すくみとは少し違い,前述のゾンビ武器などによるこちらの攻撃属性と,対象が持っている属性をうまく組み合わせると,派手なエフェクトとともに特別な現象が発生し,対象を含めた範囲内の敵に大ダメージを与えるというものだ。これを踏まえて,属性を持つ敵が出現する場所を覚え,対応するゾンビ武器を持っていけば有利に戦えるといった攻略が成立する。

 筆者の場合,敵全体を把握できるカメラ設定(ワイド)でプレイをしていたため,慣れないうちは個々のゾンビの姿が判断しづらく,あまり属性効果を意識したプレイはできなかった。ただ何度か偶発的に効果が発動したときは,強力な敵をも一網打尽にできるなど,その効果の高さを実感できた。この属性を絡めた攻略こそが,本作を極めることにつながるだろう。
 なお敵の属性攻撃は,すべてがヤイバにとっての弱点となっている。炎は彼の生身を焼き,電撃は機械のパーツをしびれさせ,酸はその視界を遮ってしまうのだ。それぞれ対処法はあるものの,属性を持っている敵は優先的に倒すという意識は持っていたほうがいいだろう。

ヤイバが持つ特殊能力「サイバービジョン」([L1]ボタン)を使うと,進むべき方向や,重要なポイントが見える。酸で視界が塞がれたときに敵の動きを知ることも可能だ
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遠慮なく映し出されるケレン味たっぷりの演出が,プレイヤーの心を躍らせる


 本作は「NINJA GAIDEN」の名を冠してはいるものの主人公のアクションやゾンビを相手にするゲームシステムなどの感触を味わうかぎり,基本的に別物と考えていいだろう。ゲームは終始高いテンションで進行し,アクションの最中に挿入されるケレン味あふれる演出が,プレイヤーのプレイ意欲を煽ってくれる。
 個人的には前述の「バタリアン」などをはじめとしたコメディライクなゾンビ映画へのオマージュがとにかくツボ。そして,いちいち挿入されるサブタイトルの元ネタなどを頭に浮かべつつ,プレイしていた次第だ。

サブタイトルには,昭和を感じさせるネタが多め
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 また,今回はプレイできる範囲が限られていた開発ROMを使用したため,何度か同じステージを遊ぶことになったわけだが,そのたびにいい成績を残せるようになり,アクションゲームが上達する感覚を実感できた。このあたりの絶妙なバランス調整はさすがTeam NINJA作品といったところだろう。

 例えコミカルな味付けでもゾンビやグロ表現は苦手という人はいるだろうし,カメラ視点に独特のクセも感じられたので,万人に薦められるとは言えないのだが,プレイする価値は十分にあると思う。アクションゲームとしての完成度も標準以上だと感じられた。
 また稲船敬二氏が手掛けるゾンビゲームとしても新たな境地を開いているので,そちらの方面が好きな人にも,ぜひ触ってみてもらいたい作品である。

Mission 4のラストで登場する,おぞましい姿のボス「テリブルツー」。もはや何も言うまい
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