インタビュー
「ハースストーン」最新拡張セット“ナスリア城殺人事件”合同インタビュー。新たなカードタイプやキーワードの詳細が明らかに
今回の拡張セットの舞台になるのは,死後の世界“シャドウランズ”にそびえる「CASTLE NATHRIA」だ。かつての英雄や悪霊がはびこる城で巻き起こる殺人事件の謎を,名探偵“マーロック・ホームズ”が解き明かすストーリーが展開されるという。
今回のパックでは,ヒーローカード以来となる新カードタイプ「場所」や,新キーワード能力「吸魂(X)」を持つカードも収録される予定だ。さらに“殺人事件”というテーマを活かした「推理」などの要素も登場する。
本稿では,新要素たっぷりの新パックについて,ゲームデザイナーのCora Georgiou氏,シニアナラティブディレクターのValerie Chu氏に聞いた合同インタビューの模様をお届けしよう。
「ハースストーン」公式サイト
吸魂(X)でミニオンの戦いはより苛烈に
ボードを重視する方針は最新拡張でも継続
――今回のテーマは“殺人事件”になっていますが,その理由や経緯を教えてください。
Cora Georgiou氏(以下,Georgiou氏):
私は,子供の頃から小説やTVドラマ,映画でいろいろなミステリーに触れてきたので,今回のようなマーダーミステリー(殺人事件)をテーマにした世界を作るのが夢だったんです。
ちょっとダークで怖いお話を,ハースストーンらしく軽快でおちゃめなノリで表現するのは楽しいだろうと思っていました。きっと,ハースストーンの世界にマッチした殺人事件をお届けできると思います。
――今回の拡張セットを“ヒドラ年”の2本めに据えた理由や,夏の拡張セットとして登場させた理由などはありますか?
Georgiou氏:
去年は1年を通して1つの物語を紡ぐスタイルを取りましたが,今年はひさしぶりに3つの拡張セットで,別々の物語を展開するスタイルに戻しています。ちょうど良いタイミングだろうということで,すこし我を出して好きなものをテーマに据えることにしました。
――2018年にリリースされた「妖の森ウィッチウッド」は,かつて「ギルニーアス急行殺人事件」として企画されていた,というお話を聞いたことがあります。近いテーマですが,今回に引き継がれた要素などはありましたか?
Georgiou氏:
当時はBlizzardに入社していなかったので,直接的に引き継がれた要素というのはありませんが,今回の拡張セットのテーマを決めて,舞台のアイデアを募ったとき,みんなが最初に名前を挙げたのもギルニーアスでした。ギルニーアスはそうしたテーマを扱うのに適した場所ですし,今回の拡張セットも近いテーマなのは確かです。しかし,World of Warcraft(以下,WoW)の最新拡張である「シャドウランズ」のRevendrethエリアは,より完璧にテーマとマッチする場所だったんです。
ギルニーアスの探索は少し先延ばしになってしまいましたが,そのぶん良いストーリーを届けられればと思っています。
――新要素の「推理」ですが,メタゲームを理解していない状態で使いこなすのは難しいシステムだと感じました。初心者でも推理を使って楽しめるのでしょうか。
●新要素「推理」
相手の手札や,相手が発見したカードを言い当てることができれば,何かしらの恩恵を得られる特殊能力。公開された「怪しい案内係」はレジェンドミニオンを発見できる強力な雄叫びを持っているが,相手が推理に成功すると相手にも同じカードが渡ってしまう。
Georgiou氏:
推理のギミックについては,開発チーム内でも多くの意見を交わしました。やはり,マーロック・ホームズの能力は「謎を解き明かす」という感触のあるものにしたかったんです。
メタゲームの知識は素早く謎を解き明かす鍵になりますが,推理は必ずゲーム序盤で使わなければいけないわけではありません。相手が使ってきたカードをよくチェックしていけば,ゲーム終盤には文字通り手札を“推理”できることでしょう。
これは推理の過程を楽しめるゲームなので,「正解しないといけない!」という形でストレスを感じる必要はありません。
――新しく登場した「吸魂(X)」は,具体的にどういった挙動をするのでしょうか。また,そのデザインの意図を教えてください。
●キーワード能力「吸魂(X)」
吸魂(X)を持つカードが手札にある状態で,ボード上の味方ミニオンがX体以上死亡すると,そのカードはより強力な「吸魂態」に進化する。有効に活用するためには,条件を満たす前に使ってしまうか,吸魂態になるまで温存するか,状況に応じて判断する必要がありそうだ。
Chu氏:
吸魂(X)を持つミニオンが手札にあるとき,死んだ味方ミニオンの数がXに達すると,カードが「吸魂態」にアップグレードされるギミックです。普通はミニオンが倒されると嘆き悲しむところですが,Revendrethでは正しくカードを使うことで,死がより強い力を呼び込むのです!
たとえば「屍のプリースト」は吸魂態になることでステータスが向上し,イラストも一新されます。手札にある間にカードが変身する様子は「ダークムーン・フェアへの招待状」のキーワード「変妖」と似ているかもしれません。
このシステムはボード上のミニオン同士の戦いを加速させる要素であり,掲げている目標の1つ“盤上の戦いを増やすこと”に貢献していると思います。これを皆さんが楽しんでくれると思うと本当にワクワクします。
――WoWのシャドウランズでは,新しいデスナイトが登場しました。ハースストーンのシャドウランズにもデスナイトに関連するカードは登場しますか?
Chu氏:
今回は,レナサル太使をはじめとするRevendrethのキャラクターや,ハースストーンのオリジナルキャラクターが中心になっているので,デスナイト関連のカードはあまり多くありません。ただ,“容疑者”として登場するキャラクターの中には,おなじみの顔ぶれも登場しますよ。
――新たなカードタイプ「場所」が登場しましたが,このアイデアはいつごろから考えていたのでしょうか。
●新カードタイプ「場所」
使用した「場所」はゲームボードに配置され,1ターンに1回だけ,マナコストを消費せず効果を発動できる。カードの右下に書かれている装甲値は“使用回数”を示しており,0になるとボードから除去される。
Georgiou氏:
ヒーローカード以来の新カードタイプですが,形を変えながら数年間にわたって検討を繰り返してきたアイデアです。今回は「ボード上で効果を起動するカード」という形で,ようやくしっくりくる形式に落とし込めたと思っています。
このカードタイプでは,拡張セットに登場する多彩な場所や設定を表現できます。とくにナスリア城は表現したい場所が多く,レイドコンテンツに参加した人は美しいルーンの数々を城で見て,楽しんだことでしょう。今回の「場所」では,それらを紹介できればと思っています。
また,ゲーム中にどのタイミングでも使用できる要素を導入したかった,という意図もあります。ロケーションには体力が存在せず,破壊される心配はありません。“ボードに配置される0マナのヒーローパワー”だと考えれば,イメージしやすいかもしれません。
――「場所」カードは,今後の拡張セットでも登場する可能性はありますか?
Georgiou氏:
「場所」は,拡張セットの舞台や設定をより深く感じられる要素としてデザインしたカードタイプなので,今後も使っていく予定です。もちろん,多すぎても良くないので調整は行いますが,ヒーローカードよりは一般的なカードタイプになることでしょう。
――マーロック・ホームズが殺人事件の解決に挑む,というストーリーですが“犯人”は用意されているのでしょうか。また,ライバルであるモリアーティをイメージしたカードは登場しますか?
Chu氏:
マーロック・ホームズを始めとして,デナスリアス陛下や容疑者など,多数のキャストが登場し,さまざまなどんでん返しを用意しています。また,マーロック・ホームズは圧倒的に賢いので,ライバルと呼べる存在はいません!
Georgiou氏:
ここだけの話,マーロック風のダジャレでモリアーティを表現するのがあまりにも難しかったかったんです。そのかわりマーロック・ホームズの背後にはワトソンならぬ“ワトフィン”というカエルがいます。
――新レジェンドカードのレナサル太使は,かなり独特な能力を持っていますよね。どういった経緯で,この能力をデザインしたのでしょうか。
拡張セット「荒ぶる大地の強者たち」のミニセットで登場した大ドルイド・ナラレックスは,当初のデザインではデッキを40枚にする能力を持っていたんです。それだけでもワクワクする能力だと思っていたんですが,実際に使ってみるとあまり強くないという評価になり,お蔵入りになっていました。
改めてレナサル太使をデザインするにあたって,40枚デッキを作ったご褒美としてライフを40にする仕組みを追加したんです。裏方にはデッキを40枚にするシステムは残っていたので,実装自体はそれほど難しくありませんでした。
――新パックといえばシネマティックPVですが,そのコンセプトなどについて教えてください。
Georgiou氏:
ネタバレせずにコンセプトを説明するのは難しいので,あまり多くは語りませんが……。前回の拡張セットとは大きく違った雰囲気の映像をお届けできると思います。とくに,デナスリアス陛下のファンは楽しめる内容になっていますよ。
――今年の環境では,ボードで戦うデッキが大きく増えました。対してコントロール系のデッキは減っていますが,今後もその方向性を継続する予定ですか?
Georgiou氏:
両方のデッキタイプを共存させることは可能だと考えています。おっしゃるとおり,昔ほどはファティーグまで持ち込むコントロールウォリアーのような戦略は流行していません。
しかし,消耗戦を勝ち抜くタイプのデッキが存在すべきではない,とは考えておらず,むしろ,絶対に存在すべきだとすら思っています。そうしたコントロールデッキが好きな皆さんは心配することはありません。
同時に,いわゆるコンボで勝つタイプのデッキを減らし,ボード上でミニオン同士がぶつかり合うゲームプレイを推奨したい意志もあります。それは「深淵に眠る海底都市」で目指したことでもありますし,この1年を通しての目標としています。なので,この先も似たような方向性で進むことでしょう。
ズーウォーロックやボードで戦うドルイドが強力になり,OTKデッキの流行がもう少し廃るようなメタになれば,コントロールデッキが栄えるチャンスが出てきます。今回の拡張セットが,それをもたらせると考えています。
――ロードマップではまだ公開されていないアップデートもありますよね。それらは,ハースストーン全体に関わる要素なのでしょうか。それとも,ゲーム体験全般を快適化するためのものなのでしょうか。
Georgiou氏:
現状ではお話できる状態ではありませんが,今年はすべてのプレイヤーにとって最善の体験を提供すべく,プレイの快適化を目標の主軸として掲げています。
今年度の全体像をデザインするにあたって,さまざまな企画を用意しましたし,いずれも素晴らしい出来栄えになっています。その一部は今回の拡張セットでお披露目できます。
――バトルグラウンドでも大型アップデートでPVが発表されたら喜ばれると思うのですが,いかがでしょう。
Georgiou氏:
私はバトルグラウンドのテストプレイをしていますし,個人的にも大好きではありますが,私もValerieもバトルグラウンド開発チームには入っていないので,どんな計画が用意されているかは分かりません。でも,そうなったら最高ですね!
Blizzardのストーリー,フランチャイズチームが作るカットシーンは本当に素晴らしいものですし,彼らがPVを作ってくれるとしたらすごいものができるに違いありません。
もちろん,今回の拡張セットでもバトルグラウンド特有の新コンテンツを用意しています。プレイヤーのみんながそれをワクワクして見てくれたら幸いです。
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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