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「Hearthstone」Japan Majorの決勝トーナメントが東京都内で開催。新環境で迎えた初の国際大会ではコントロールデッキ同士による名勝負が続出
「Hearthstone」開発者インタビュー
「大魔境ウンゴロ」リリース後の手応えなどを聞いた
「Hearthstone」の国際大会“Japan Major”決勝トーナメントの当日に,本作のプロダクションディレクターを務めるJason Chayes氏への合同インタビューが行われた。「大魔境ウンゴロ」リリース後の反響などが聞けたので紹介しよう。
――Chayesさんは,現在Hearthstoneでどういったお仕事をされているのでしょうか。
Jason Chayes氏(以下,Chayes氏):
これまで約3年間,Hearthstoneの開発チームに参加しています。現在は,開発チームの進捗管理や,新たな拡張パックの基本コンセプト,そして今後のアップデート方針の決定などに関わっています。
より具体的なゲームシステムやカードのアイデアなどは,専門のデザインチームが担当しているのですが,それらの作業プロセスは,自分も逐次目を通しています。
――「大魔境ウンゴロ」のリリースから1か月余りが経過しました。現在の手応えはいかがですか。
Chayes氏:
マンモス年の開幕と合わせて環境が激変しており,非常にエキサイティングですね。たとえ同じヒーローでも,いろいろなタイプのデッキが実現できている多様性の部分を,最も評価しています。
――“クエスト”のシステムは,デジタルTCGとして非常にユニークですよね。
Chayes氏:
ええ。まったく新しいシステムでしたが,実装後はポジティブな反響が多くて安心しています。
――クエストローグ(地底の大洞窟)がゲームバランスを崩している印象を受けますが,開発チームとしてはどのような認識でしょうか。
Chayes氏:
意外に思われるかもしれませんが,実はクエストローグの勝率といったデータを見る限り,いわゆる“Tier1”ではないんですよ。ただ,1ターンで20点以上のバーストダメージが手軽に出せるなど,やや問題だと感じる部分もあります。
Chayes氏:
ええ,そうなんですよね……。
――また,クリスタルコアが適用されたミニオンに動物変身や呪術を使っても,スタッツが5/5から変わらないのは,正しい仕様なのでしょうか。
Chayes氏:
それらのスペルは,もともとは強力なミニオンに対するメタというコンセプトで開発しました。しかし,5/5のミニオンだと強力なままですよね。あらためてデザインチームと協議してみます。
――今後,新たなクエストを実装する予定はありますか。
Chayes氏:
今回のクエストは,ウンゴロ拡張におけるメインコンセプトである“探検”を実現するべく導入したシステムです。新たなクエストを追加する可能性はありますが,その前に,現在のクエストに対するプレイヤーのフィードバックを集める必要がありますね。
――“適応”のシステムは,どういった経緯で導入されたのでしょうか。
Chayes氏:
ウンゴロにおけるもう1つのメインコンセプトである,“恐竜”にちなんで開発しました。
恐竜といえば,環境に応じてさまざまな進化を遂げましたよね。それをデジタルTCGとして,どうやって具現化するべきかと突き詰めていったんです。単純にミニオンを強力にするのではなく,状況に応じてプレイヤーが選択する多様性を重視して開発しました。
――新しいカードを作成するうえで心がけていることは。
Chayes氏:
大事なのは,プレイヤーに向けて,戦術を繰り出すための“ツール”を提供することです。そのツールを使って,どういった戦術を繰り出すかは,プレイヤーに極力任せたいと考えています。
――新カードのデザインや,既存カードのバランス調整を行うとき,どのようなアプローチを行っていますか。
Chayes氏:
ひとつは,最初にテーマを考えて,それに合わせてメカニクスを考えるといった手法です。
具体的には,今回のウンゴロで導入した先遣隊長エリーズが挙げられます。エリーズはとても魅力的なキャラなので,エリーズ・スターシーカーがスタン落ちするのはとても残念だったんです。彼女がハースストーンに戻るなら,どういったメカニクスが良いのかを追求して,“ウンゴロパックを混ぜる”というアイデアを閃いたんです。
あるいは逆に,優れたメカニクスを思いついて,それに合わせてカードのテーマを決めるアプローチもあります。
――Chayesさんがお気に入りのカードはありますか。
Chayes氏:
個人的にはロード・ジャラクサスと希望の終焉 ヨグ=サロンです(笑)
プレイすることで,何かしらのストーリーが生まれるカードが好きなんですよ。ヨグが生み出すストーリーは少々クレイジーで,開発時のバランス調整作業も大変だったのですが,とても気に入っています。
――海賊ウォリアーに関して,ちんけなバッカニーアの弱体や,ゴラッカ・クローラーの追加などが行われたものの,依然として人気のあるデッキです。どのように認識していますか。
Chayes氏:
仁義なきガジェッツァンの実装時は,海賊デッキがあまりにも強力だったので,ご存じのとおり若干の調整を行いました。データを見ても,以前と比べても改善されていますね。ただ,海賊デッキを完全になくしてしまおうとは考えていません。
――前環境と比べると,コントロールデッキが盛り上がっている印象です。それによりプレイ時間も長くなっていますが,スマホよりもPCでのプレイ人口を底上げしたいという狙いはありましたか。
Chayes氏:
いえ,特定のプラットフォームのことを重視してはいません。ちなみに,現在の1試合あたりの平均試合時間は8〜10分前後で,丁度良いバランスだと考えています。
――まだ追加スキンが実装されていないヒーローが残っていますが,これらの実装予定はありますか。
Chayes氏:
ドルイドやウォーロックのことですね(笑)。
実は両方とも開発を行っており,モチーフとなるWarcraftのキャラクターも決まっています。実装するタイミングは,これから検討することになるでしょうけど。
Chayes氏:
我々としては,WarcraftのIPを知らないと楽しめないゲームにはならないように気をつけています。
確かにローンチ時はWarcraftの有名なキャラクターを多数採用していますが,最近は託宣師モルグルや,ガジェッツァンのアヤ・ブラックポー,ドン・ハン=チョー,カザカスなど,新しいキャラも積極的に採用しています。
Chayes氏:
Warcraftの世界はとにかく広大で,まだ採用していないキャラクターやアイデアが山のようにあります。今のところ,無理にシナジーを行う必要性は感じていませんね。
――プレイヤーが保存できるデッキの種類を,もっと増やせるようにはなりませんか。
Chayes氏:
その点に関しては,現在検討しているところです。
また,自分が作ったデッキを,友達やコミュニティ内でシェアするためのサポート機能も検討しています。
――対戦相手とのチャットを実装する予定はありませんか。
Chayes氏:
チャットを行うことによるメリットはありますが,ハラスメントなどのデメリットもあります。これは開発チームの内部でも,意見が分かれている部分なのですが,安全なゲーム環境を実現するべく,実装しない方が良いのでは,という考えです。
――では,エモートの追加などといった,対戦相手とのコミュニケーションに関連したシステム全般に関しては,どうでしょうか。
Chayes氏:
仮にエモートの種類を増やすと,ユーザーインタフェースが複雑になってしまうのが悩ましいですね。どんなエモートを使っても,意地悪な使い方ができてしまいますし。
――対戦相手のエモート表示を毎回手作業でオフにするのが面倒です。デフォルトでオフにしたいのですが。
Chayes氏:
それは,リクエストが多い機能の一つですね(苦笑)。
仮に対戦相手とのコミュニケーションを遮断してしまうと,AI相手に戦うのと一緒だと思います。ですので,コミュニケーションをゼロにすることは考えていません。
現在,エモートに関連した新システムを計画しており,数か月以内に発表できればと考えています。
――ゲーム内で,ミニトーナメントを主催するためのシステムに関してはどうでしょうか。
Chayes氏:
その要望も多いですね。自分としては良いアイデアだと思うのですが,現在開発には取りかかっていない状態です。
――今回のスタン落ちを機に,ワイルド環境が大きく充実しています。ワイルド環境に関する,今後の展望についてお聞かせください。
Chayes氏:
これまではスタンダードを優先で考えていましたが,マンモス年以降はワイルド環境にも力を入れていきます。ヒロイック酒場の喧嘩のほかにも,ワイルド環境を採用した大会なども開催したいですね。
――少々気が早いですが,今後の拡張パックの構想について,お話できる範囲で教えてください。
Chayes氏:
現在,3種類の拡張パックを並行して企画・開発しています。大まかなスケジュールとしては,今年の夏と第四四半期,そして2018年の始めあたりにそれぞれ実装できたらいいなと考えています。ちなみに拡張パックとアドベンチャーに関して,今までは別の扱いでしたが,今後は一緒に考えます。
もし開発作業が順調に進めば,BlizzCon 2017で何かしらの発表をしたいですね。
――なんと,3つですか。
Chayes氏:
ええ。3つ目は大分先の話なので,今から取りかかれば余裕を持った開発スケジュールを組めます。それにより,たとえばヨグ=サロンのようなクレイジーなアイデアでも,十分にテストを行えますし。
ただ,あまりにも先の話なので,その頃の環境を予測するのが難しいんですよ。たとえば,現在の環境に対する改善策を検討しても,それが実装されるまでの間に,環境そのもの変化している可能性がありますから。
――PlayStation 4やNintendo Switchに,Hearthstoneが移植される可能性はありますか。
Chayes氏:
現在はPCとスマホを同時に対応していていますが,据え置き機とモバイル端末の両方に対応するのは,Blizzardにとって非常に大きなチャレンジでした。現在もその対応に手一杯で,新たなプラットフォームへ進出する予定はありませんが,コミュニティからのフィードバックには引き続き注視しています。
――日本でもデジタルTCGの新規タイトルが続々と登場しています。迎え撃つHearthstoneのスタンスはいかがですか。
Chayes氏:
いろいろなメーカーからデジタルTCGがリリースされるのは「Great!」なことだと思いますよ。なにしろ,開発チームもみんな大好きですし,もちろんプレイしています。
Hearthstoneとしては,とくに意識はしていません。これまで通り,誰でも5分でゲームシステムを理解して楽しめ,そしてグローバルで通用するデジタルTCGとして,これからも頑張って開発していきます。
――そろそろお時間のようなので,最後に,日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
Chayes氏:
もちろんマーケットとしても重要ですし,これからも日本でHearthstoneを盛り上げるべくサポートしていきます。そのための具体的なアイデアもいくつか実行に移しているので,ぜひ,今後の展開に期待してほしいですね。
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」ダウンロードページ
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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