ニュース
GPUを買えばお金を節約できる? 2017年のAI分野におけるNVIDIAを総括したJensen Huang氏によるGTC Japan 2017基調講演レポート
事前に予想していたことではあったが,ゲーマーには残念なことに,ゲームグラフィックスに関する話題は今年も一切ナシ。そもそもグラフィックス技術の話すら,多少触れたという程度で,講演はNVIDIAが最も力を入れている人工知能(AI)に関わる話題に終始した。そんなわけで,本稿ではごく簡単に,基調講演の概要をまとめてみたい。
Volta世代GPUのAIにおける性能をアピール
基調講演でHuang氏は,2017年にNVIDIAが発表した,さまざまな製品や技術を次々と披露していった。その1つが,仮想空間内で共同作業を行える多人数同時参加型VRシステムの「NVIDIA Holodeck」(以下,Holodeck)だ。
Holodeckは,2017年5月に米国で行われた「GTC 2017」で「Project Holodeck」として発表された技術で,仮想空間内で製品のデザインや機能を検討したりといった共同作業を行えるものである。基調講演では,ライブデモを披露したのだが,完成度が上がっているように見えた。
Holodeckに続けてHuang氏は,Volta世代GPUを搭載する数値演算アクセラレータ「Tesla V100」や,Volta世代GPUを組み込んだ車載用SoC「Xavier」(エグゼイヴィア,開発コードネーム),そして12月7日に発表されたばかりのVolta世代GPUを搭載する初のグラフィックスカード「NVIDIA TITAN V」といった具合に,次々と新製品を取り上げた。まさに2017年の総ざらえといった感じである。
怒濤の新製品披露に続けてHuang氏は,話題をAIに切り替える。氏は,すでにさまざまな分野で,これまで不可能と思われていたことをGPUとAIが実現できているという。そしてHuang氏は,「世界を変えるのはクラウドでもモバイルでもない,まさにAIなのだ」と,強調した。
Huang氏が基調講演で強調していたのは,AIにおけるGPUとCPUの性能差だ。写真から花の種類を判別するデモでは,IntelのSkylake世代CPUだと,1秒間にせいぜい5枚の写真しか認識できないのに対して,1基のTesla V100では秒間900枚以上,8基のTesla V100を搭載する「DGX-1 with Tesla V100」(以下,
もっとも,DGX-1の発売時点における価格は14万9000ドル(約1678万円)だったので,価格対性能比という点では,1000倍もの差があるわけではないが。
日本企業はAIに商機あり?
新たにコマツとの協業を発表
さて,日本で開催されるGTCということもあり,Huang氏は日本の話題も取り上げている。曰く,「AIに関して日本は,非常に活発に研究開発が行われている国だ」(Huang氏)であるそうだ。
その例としてHuang氏,Preferred Networkが開発しているAIフレームワーク「Chainer」が,2017年11月にディープラーニングの学習速度で世界記録を達成したことや,スーパーコンピュータの国際会議「SC17」において,東京大学地震研究所がAI関連の研究で2件の賞を受賞したことなどをした。
そして日本には,世界をリードする自動車産業や,産業機械のメーカーがあり,そうしたメーカーは「AIに大きな商機がある」と,Huang氏は述べる。そしてHuang氏は壇上で,NVIDIAと日本企業の新たなパートナーシップとして,建設機械大手である小松製作所(以下,コマツ)との協業を発表した。
「ドローンを使って建設現場の地形をデータ化することで,建設作業の安全性や効率を向上させられる。さらに将来的には仮想現実技術を使った建設機械の遠隔操作もコマツは視野に入れている」(Huang氏)とのことである。
2017年のNVIDIAを総括したような基調講演の概要は,以上のとおり。AIに特化した講演を聞いていると,NVIDIAが,どんどんゲームから離れていってしまうような気もして,ちょっと寂しい気もする。
ただ,2018年1月には,米国・ラスベガスで家電見本市「CES 2018」が行われる予定で,NVIDIAも北米時間1月7日に,報道関係者向けイベントの開催を予定しているとのこと。メインテーマは自動車関連になるだろうが,もしかしたらCES 2017でのHuang氏による講演のように,ゲーム関連の新しい何かが発表されるかもしれないので,それを期待したい。
GTC Japan 2017 公式Webサイト
- 関連タイトル:
Volta(開発コードネーム)
- この記事のURL: