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MMORPGはここからが勝負――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」ローンチ直前,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビュー
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印刷2013/08/27 00:00

インタビュー

MMORPGはここからが勝負――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」ローンチ直前,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビュー

4Gamer:
 ところで,こうしたエンドコンテンツでは,リミットブレイクがかなり重要な要素になってくるのでしょうか。

吉田氏:
 リミットブレイクは,そんなにバリエーションを増やすつもりはないんです。というのも,種類が増えてくると,あれがいい,これがいい,あいつがいないとダメ,こいつがいないとダメ,となってしまうので。

4Gamer:
 エギと同じで,何かに縛られるようにはしない,と。

吉田氏:
 ですから,リミットブレイクの種類はザックリとまとめています。ちなみに,こうしたエンドコンテンツのバランスチェックは,新生FFXIVの開発チームだけでは足りないので,社内中のMMORPGプレイヤーをかき集めてやっているんですよ。

4Gamer:
 開発チームだけじゃないんですね。

吉田氏:
 ええ。それで,やっぱりみんなうまいんですよ。何も打ち合わせしてなくても,全滅寸前で「生命の鼓動(ヒーラーのレベル3リミットブレイク)きたー! 」「全員蘇生した!」だったり,敵の大技がもう止められないと覚悟した瞬間に「ラストバスティオン(タンクのレベル3リミットブレイク)」で全員2ケタのHPで生き残って,ヒーラーがものすごい勢いで回復し始めたり。もう「すげー!」という感じでテンションが上がりますよ(笑)

画像集#019のサムネイル/MMORPGはここからが勝負――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」ローンチ直前,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビュー

4Gamer:
 シチュエーションを想像しただけでシビれますね,それは。

吉田氏:
 ですよね! でも,僕に対しては「あのタイミングは,3体まとめてメテオだったんじゃないですか,吉田さん?」とか,「そこは合図がなくても使ってこそじゃないんですか!」とか言われるわけですよ。

4Gamer:
 みなさん,厳しいですね(笑)。

吉田氏:
 そんな感じで,誰が使うのかを決めなくても,その場のシチュエーションで,ファインプレイ的に使えるようなバランスになっています。最高難度のコンテンツなら,この時点までにレベル3まで溜めて,タンクがリミットブレイクを使ってしのがないと全滅――みたいなゲームデザインも組み込んでいいと思いますが,今はまだしていません。

4Gamer:
 基本的には,その場のノリで使っていけばいいものという認識ですね。

吉田氏:
 そうです。でも一か所だけ……かなり終盤のほうですが,狙って使ったほうが良さそうなところがあったかな。ともかく,リミットブレイクは見た目のイメージにとらわれがちだと思うんですが,ゲームシステムとしてしっかりとした,面白いものになっています。

4Gamer:
 分かりました。いまの話を聞いていてもそうですが,吉田さんはロール,プレイヤーの役割を重視していますよね。フェーズ3では,バトル中の蘇生が白魔道士しかできないようになっていましたが,それも同じ理由でしょうか。旧FFXIVではエンドコンテンツ中,吟遊詩人などが緊急で蘇生することもありましたけど。

吉田氏:
 そうです。吟遊詩人だったり,DPSなどで代役が可能になると,ロールの役割を削ってしまいますから。このロールの役割を,こっちのロールでもできるという風にすると,僕らの想定しているバランスを崩すパーティが生まれてしまう可能性があるんです。
 例えば白魔道士を外してヒールは学者に任せ,代わりにDPSを入れて押し切る。事故があってもDPSがレイズすればいいという戦い方が有効だったとします。その戦術が広まって安定してしまうと,そのコンテンツでは白魔道士は必要ないという話になるんですよ。すると,マッチングしたときに「なんだ白か」という反応になりますよね。

4Gamer:
 うーん,そうなる……かもしれませんね。

吉田氏:
 ゾンビアタックを防ぐためじゃないかと言われたりしますが,意図はそこではありません。新生FFXIVでは,クラスやジョブのアイデンティティにこだわってるので,ほかのロールの役割は絶対に持たせないようにしています。

4Gamer:
 ということは,学者も戦闘中の蘇生が可能なんですか?

吉田氏:
 ロールがヒーラーですから可能です。

4Gamer:
 分かりました。ほかにコンテンツ関係では,アイテムのロットで,NEED()の回数に制限をつけるかどうか調整するというお話がありましたが,そちらはどうなったのでしょうか。

※パーティを組んだ状態でアイテムを入手したとき,そのアイテムに適したロールのプレイヤーならNEED/PASSが選択でき,NEEDでアイテムのロットに参加できる。それ以外のプレイヤーはGREED/PASSが選択でき,GREEDを選択するとNEEDを選択したプレイヤーが居なかった場合にロットに参加できる

画像集#022のサムネイル/MMORPGはここからが勝負――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」ローンチ直前,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビュー
吉田氏:
 結局,制限は入れていません。取得時のロールにあった装備しかNEEDが選択できませんし,同じロールの枠内でしかロット勝負になりませんから,そこまでする必要もないだろうという話になりました。トークンを集めれば装備と交換もできますし。

4Gamer:
 ではこれからの状況を見て,問題がなさそうであれば制限なしのままになるわけですね。

吉田氏:
 コンテンツによって,あまりにも不公平になる可能性が出てきた場合は,制限をかける場合もあるかもしれないですけど,今のところはないです。あとGREEDは,みなさん積極的に選択してくださいね。

4Gamer:
 ああ,結構PASSされてますよね。

吉田氏:
 そうなんですよ。誰も必要なかったらくれ! というボタンなんですけどね(笑)。2クラス目以降のことを考えると,とっておいたほうがいいと思うんで,バンバンGREEDしていいと思いますよ。

4Gamer:
 でも,フェーズ3のときにGREEDを押しまくっていたら,身内から強欲だと言われてしまいました……。

吉田氏:
 いやいや,そんなことはないと思いますよ。そういうときは「全員がパスして流れるともったいないので,僕がGREEDを押しておきますね」と。

4Gamer:
 次はそうします(笑)。先ほどトークンについて触れていましたが,この仕様についても教えてください。旧FFXIVでは,蛮神武器をトーテムなどを集めて交換していましたが,同じようなイメージなのでしょうか。

吉田氏:
 蛮神武器を得るためのアイテムとは少し違います。新生FFXIVでは,ロウェナというNPCが大量の商品を抱えていて,珍しいものを集めてきてくれたら交換する形になっています。
 要は,エンドコンテンツをクリアしたときのドロップ品を狙うか,コツコツとダンジョンを回りながらトークンを貯めて,ドロップ品に近いアイテムレベルの装備をロウェナから入手するかになるんです。

4Gamer:
 ドロップ品以外にも,レベルに見合ったアイテムの入手方法が用意されていると。

吉田氏:
 装備のデザインは,見た目でドロップ品が格上だと分かるようにはしてありますが,難しいエンドコンテンツをクリアしなくても,自分ができる範囲のコンテンツをクリアしていトークンを集めていけば,装備のアイテムレベルを上げることはできるんです。

4Gamer:
 なるほど。トークン自体は,どれくらいのコンテンツから入手できるようになるんでしょうか。

吉田氏:
 レベル40以上のダンジョンをクリアすれば報酬で必ず手に入り,レベルが高いコンテンツになればなるほど,1回で得られるトークンの数も増えます。また,トークンは2種類あって,それぞれ交換できる装備が違ったりもしています。
 もっとも,最初はクラフターが作れる装備に対して,マテリアクラフトで能力を底上げして,そこからダンジョンを回ってトークンが貯まったら,ロウェナに装備と交換してもらうという形になるでしょうね。

4Gamer:
 高難度コンテンツには,そういった段階を踏んで進めていくわけですね。

吉田氏:
 だから,「何回やっても真イフリートに勝てない! もうやめた!」といって諦めてしまうのではなく,トークンを集めて装備を整えれば,当然ダメージ量もアップしますから。それで倒せるようになっていきます。
 ドロップ品狙いでうまく装備が揃った人に比べれば,少し遠回りにはなりますが,これまでずっと言ってきた「コツコツやればいつか追いつきます」というのはそういうことです。コンテンツヒエラルキーというのはこうした考えの元に構築されています。


プレイヤーの誰もがたどり着けるエンドコンテンツ


4Gamer:
 このインタビューが掲載される頃には,フェーズ4も終わり,ちょうどアーリーアクセスからのプレイヤーが思いっきり遊んでいると思います。

画像集#023のサムネイル/MMORPGはここからが勝負――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」ローンチ直前,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビュー
吉田氏:
 そうですね。アーリーアクセスで遊んでいるプレイヤーさんが,力尽きていないといいんですが……。残暑も厳しそうですから,体調には十分気をつけてエオルゼアでの旅行を楽しんでください。
 スタートのタイミングは,オープンβテスト,アーリーアクセス,正式サービスと3つに分散しました。βテストでもキャラクター制限だったり,ログイン制限だったりを厳格にやってきましたが,やはりサーバーが数日間まともに稼働しなかったり,ゾーンに人が集まりすぎてサーバーが落ちるよりは,少しずつドアを開けて,徐々にプレイしてもらったほうがいいと思っていますのでご了承ください。一度ログインできたら,あとはもうログアウトせずに満喫してください(笑)。

4Gamer:
 フェーズ3では,インスタンスに入れなかったりもしましたね。

吉田氏:
 そこは解消していますから大丈夫です。また,クエストのインスタンスバトルもバランスを見直しました。難度そのものを調整したのと,本当はもっと後でやる予定だったバフのシステムを導入しています。

4Gamer:
 バフのシステムというのは?

吉田氏:
 バトルを失敗した回数によってクリスタルの加護がかかるようになっていて,諦めずに挑戦していただければ自分がパワーアップしていくようになりました。やはりメインストーリーだけはちゃんとクリアしてほしいですからね。そのあたりはフィードバックを見させていただきましたし,しっかりFFとして遊べるようにしたつもりです。

4Gamer:
 なるほど,エンドコンテンツまでプレイヤーを誘導する,救済措置のようなものなんですね。あとPS3版の動向も楽しみです。

吉田氏:
 PS3版は,フェーズ3からしっかりテストしていただけたので,どんどんクリティカルポイントを修正して,PS3特有のメモリハングであったり,ドライバーハングであったりを修正できました。みなさんから丁寧なレポートをいただけたので,本当に助かりました。PS3の性能で,あの見た目で遊べるMMORPGというのはもう2度とないと思うので,ぜひ楽しんでください。PCと比べると価格もお安いですしね。
 もしPC版の画像を見て,クオリティが高いなと思ったら,PCを購入していただいてもいいんですが,そのままPlayStation 4(以下,PS4)版をお待ちいただくことも選択肢として考えてください。データはPS4版にあっさりと引き継げますから。

4Gamer:
 高クオリティが楽しめるような高いスペックのPCというと,やはりそこそこ値段が張りますからね。
 では,最後に読者へのコメントをお願いします。

吉田氏:
 メインストーリーは本当にファイナルファンタジーらしさが感じられるよう,徹底的にこだわって,サブクエストのテキストまできっちり作り込みました。メインストーリーをクリアするころには,エオルゼアのすべてが分かるようになっています。
 どんな冒険譚があって,それぞれがどんな事情を抱えていて,それぞれの地域にどんな悲劇や喜劇があるのか。そういうところも全部織り込んだストーリーにしたつもりです。久々のハイファンタジーRPGを味わってください。
 ストーリーに関しては,パッチごとに大きな進捗があるように新しいものを作っていますので,きっとプレイヤーのみなさんに驚いてもらえるはずです。夏休みはもう最後の一週間ぐらいですが,まずはプレイしてみてください。そしてエオルゼアの世界を気に入っていただけたなら,その後も末永く楽しんでほしいなと思います。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。

画像集#002のサムネイル/MMORPGはここからが勝負――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」ローンチ直前,プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビュー


 2010年12月に「ファイナルファンタジーXIV」の運営/開発チーム全面刷新が発表されてから2年と8か月。何もかもが作り直された「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」のローンチがついに実現する。吉田氏の言葉にもあるように,これまでの動向を知る人であれば,「本当によくここまできた」という印象を持つのではないだろうか。

 一度は信頼を失ってしまった「FFXIV」だが,いま注目されている大部分はポジティブな受け入れられ方をしていると感じている。その理由は,吉田氏をはじめとした,いまの開発/運営スタッフの努力の結果にほかならないだろう。
 いずれ破棄されることが決まっていた旧FFXIVの改修と,新生FFXIVの開発を同時に行うという,本来ありえない方針にも驚かされたが,それだけではない。実際に面白くなっていった旧FFXIVのコンテンツ,吉田氏のひと言ひと言,プロデューサーレターLIVEといった生配信における国内のプロデューサー/ディレクターにはあまり見られない姿勢など,これまでの結果がMMORPGファンに刺さり,失った信頼以上の期待を開発/運営が得ているのは間違いない。

 もちろん,吉田氏が話すように,MMORPGのスタートはこれからであり,新生FFXIVの本当の評価が出てくるのは,プレイヤーの多くがエンドコンテンツに触り始めたころになるだろう。これだけ期待が大きくなっただけに,それに応えることができ,信頼へと昇華できるのか,1プレイヤーとして見守りたい。
 ただ,今度こそは最高のローンチが迎えられるのではないかと,個人的に期待している。吉田氏がまだまだ頑張るというお墨付きももらえたのだし,あとはプレイヤーとして,エオルゼアの世界を楽しむだけだ。

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