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[CES 2015]Oculus VRで「Rift」の最新プロトタイプ機「Crescent Bay」が一般向けに初公開。デモを体験しつつ,副社長に製品化の進捗を聞いてきた
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印刷2015/01/10 00:00

インタビュー

[CES 2015]Oculus VRで「Rift」の最新プロトタイプ機「Crescent Bay」が一般向けに初公開。デモを体験しつつ,副社長に製品化の進捗を聞いてきた

 米ラスベガスで,2015年1月6日から9日(現地時間)まで開催されている2015 International CES会場で,VR対応ヘッドマウントディスプレイ「Rift」を手掛けるOculus VRのプライベートミーティングルームに招待された。
 そこで,一般向けに公開されるのは初めてとなる,Riftの第3世代プロトタイプ機(コードネーム「Crescent Bay」)を使った6分半ほどにわたるデモを体験してきた。それと合わせて同社副社長であるNate Mitchell(ネイト・ミッチェル)氏へのインタビューも行えたので,その模様をさっそくお伝えしたい。

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いよいよベールを脱いだ「Crescent Bay」


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まだまだプロトタイプ段階だが,かなり製品ぽくなってきた感のあるOculus VRの第3世代開発機「Crescent Bay」。ただ,開発者向けのSDKは,12月中旬にリリースされた最新版のナンバリングが「0.4.4」であり,製品版を意味する「1.0」まではほど遠い印象である
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レンズの形が,これまでの円に近い形状から,メガネのレンズのようなものへと変更されており,これが広がった視野角に貢献していると思われる
 2014年9月にカリフォルニアで開催されたデベロッパ向けイベント「Oculus Connect」で初めて公開されたCrescent Bayは,解像度が大幅に向上(Galaxy Note 4と同じ2560×1440ドット解像度のパネルを使用とも言われている)しているほか,3Dサウンドに対応したヘッドフォンがビルトインされ,構成素材を大きく変更したのか,軽量化が進められているだけでなく,前後の重量バランスも改善されているという。

 また,従来機では,左右を一周するベルトと上部を半周するベルトをそれぞれ調整する必要の会ったヘッドバンドは,後頭部でABS樹脂製のプレートで一つにまとめられ,左右のベルトはストレッチ素材になり,頭部への固定は上部のマジックテープだけで調節するという仕組みに進化した。これにより,以前のプロトタイプ機(具体的にはDevelopment Kit 2,以下DK2)とは比較にならないほど着脱しやすくなっていた。
 さらに,この後頭部のプレートにもLEDアレイが装備されたことにより,360度のポジショナルトラッキングを実現できるようになったのである。

正面から見たCrescent Bayは,DK2よりもLEDアレイの数が減っている代わりに,後頭部のプレートに計8つが配置されているのが大きな特徴だ
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 今回体験したデモは,10パターンほどの3D世界が構築されたものになっており,それぞれが30秒から1分程度の内容だった。手で扱う類のコントローラはとくに用意されておらず,3D世界を自由に動き回ることこそできなかったものの,デモルームの壁には180cmほどの高さにセンサーカメラが設置されており,ケーブルのことを意識しなければ比較的自由に動き回れるようになっていた。これは360度のトラッキングが可能になったことを強調していたのであろう。

LEDセンサーはまだまだ試作といったところ。モニター上部に設置するウェブカメラのような形状だった以前のプロトタイプ機とは異なり,今回は壁装着型の防犯カメラのような雰囲気になっている(左写真)。右の写真は認識範囲内でもっとも近付いた位置にいるところだが,認識距離は1〜3m程度だった。今回のデモは,「座ってプレイするだけでなく,立った状態で飛んだり回ったりもできますよ」ということを強調したデモになっていた
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 多少の記憶違いはあるかもしれないが,デモの内容は以下のようなものだった。

  • 潜水艦のボイラールームのような場所
  • ティラノサウルスの3Dモデル
  • セルシェーディングを使った,鹿やキツネのいるキャンプ場
  • 未来都市の高層ビルの上から,足元に広がる夜の街を眺められる風景デモ
  • 大きな鏡の前にプレイヤーが立っている設定で,顔がピエロや風船に次々と変化していく
  • 月面に降り立ったエイリアンが,目の前のプレイヤーに対して手を振ってくる
  • 飛行機なども飛び交う鉄道模型風のミニチュア都市
  • プレイヤーの周囲でラバーダック(アヒルのおもちゃ)を取り合う2体のロボットアーム
  • 反対側から恐竜が突進してくる博物館の通路
  • スローモーションで描かれるFPS風の市街戦

 これらは,どれも3Dポジショナルサウンドや360度トラッキング,顔を近付けてのクローズアップといった,Crescent Bayの特徴を生かしており,プレイヤーが現時点で体験できるバーチャルリアリティの最先端を示すデモになっていた(それぞれに正式名称はないようだ)。

 このうち,ロボットアームと市街戦は,Epic Gamesが「Unreal Engine 4.0」を使って開発したものだが,そのほかのものはすべてOculus VRの内部チームで制作されたものだという。

Epic Gamesが制作したロボットアームのデモ。もう1機のロボットアームがラバーダックを奪おうとして取り合いに発展し,プレイヤーの周囲を激しく動き回りながらの喧嘩を始める
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こちらは,よりEpic Gamesらしい市街戦のデモ。コントローラは使えず,ロボットと兵士達が戦う中を,銃弾や爆破の中をかいくぐりながらスローモーションで進んでいく。爆発で頭上を吹き飛んでいく車の中では,運転手が慌てた様子になっていることが確認できるなど,しっかりと細部まで作り込まれていたが,これ自体がゲーム化されることはなさそうだ
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 鉄道模型や市街戦などは,その短いデモだけでもどんなゲームに発展できるのか十分に想像できるほど楽しいものだったが,今のところ,これらのデモがコンテンツ化される予定はない模様。

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製品版Riftが発売される日は? Oculus VR副社長Nate Mitchell氏へのインタビュー


Oculus VR製品部門副社長Nate Mitchell氏
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 さて,前述のように,今回はOculus VRの創設者の1人であり,製品部門副社長(VP of Product)という役職にあるNate Mitchell氏にインタビューする機会を得た。ミーティングルームを飛び回わる大忙しの状態ながら,疲れた素振りも見せずに意気揚々と話すMitchell氏の姿は,やり手のビジネスマンといった印象だ。ここしばらく,Oculus VRのフロントマンとしてイベントの壇上や数々のインタビューに顔を出しているのも頷ける。

 はたして,製品版Riftはいつ発売されるのか? もちろん,それをストレートに答えてくれるはずもなかったが,今回のインタビューでのMitchell氏の発言から,その進捗状況を感じ取れるのではないだろうか。

4Gamer:
 今回のCESで初めて一般公開されたCrescent Bayのデモでは、映像の解像度の向上と3Dサウンドの追加されたことなどで,DK2から大きく進化しているのがはっきりと確認できますね。

Nate Mitchell氏(以下,Mitchell氏):
 ええ。今回のデモは,以前コンテンツデベロッパ向けに紹介したものに加えて,リマスタリングしたサウンドとプレイヤーの周囲から音が聞こえる「3Dスペーシャライズドサウンド」(3D spatialized sound)を搭載しました。これは,VisiSonicsの「RealSpace3D Audio」というサウンドテクノロジーをベースに組み込んだもので,通常のヘッドフォンでリアルな3Dサウンドが実現できるのが特徴です。
 Crescent Bayはデモ機用にヘッドフォンを一体化させていますが,製品版ではプレイヤーの皆さんがそれぞれ気に入ったヘッドセットをお使いいただけるよう,バンドルはしない方針です。

左右に伸びるヘッドバンドは伸縮性があり,ベルトによる調整は上部だけで行うというシンプルで安定性のある仕組みになった。ユーザビリティの観点から言ってもうれしい変更だ
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4Gamer:
 装着感も随分と向上しているようですが。

Mitchell氏:
 手に取ってもらえれば,どれだけ軽量化されたかが分かるでしょう? 
 LEDアレイの組み込み過程でヘッドバンドにも大きな変更を加えました。これにより,装着感が非常に安定しましたので,私達自身も興奮を隠し切れません。これまでのプロトタイプは,本体部分が重くてバランスが悪かったですからね。

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4Gamer:
 解像度も上がっていますし,軽量化したというのは新しいスクリーンが採用されているということなんですよね? どんなタイプのものが利用されているのでしょうか?

Mitchell氏:
 それについては,「知っていても言えない」って書いておいてください(笑)。

4Gamer:
 はは(笑)。随分と製品っぽくなっていますが,量産化のめどがついたのでしょうか?

Mitchell氏:
 いえ,まだまだです。ゴーグル内の空間はDK2とさほど変わっておらず,大きめのメガネフレームをお使いになっているプレイヤーからは不便とのご指摘もいただいています。このあたりの調整も必要になってくるでしょう。

4Gamer:
 Crescent Bayは,現時点で何台くらい存在するのでしょうか。すでに海外にデモ機を送っていたりしますか?

Mitchell氏:
 DK1とDK2は,それぞれ7万5千台ほどが流通していますが,現時点でCrescent Bayは50台ほどしかありません。今回のCESで皆さんにお使いいただけるよう,ホリデーシーズンを返上してようやく50台を手作りしたのです。量産化どころじゃないのはお分かりいただけるでしょう? ロンドンの支社には1台を送っていますが,私の知る限りでは,まだ海外に搬送するところまで行ってない状態です。

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4Gamer:
 今回のCESでは,これまでに聞いたことのないようなVR対応ヘッドマウントディスプレイもいくつか展示されていますが。

Mitchell氏:
 ……それらについてどう思いましたか?

4Gamer:
 いろいろ試してみましたが,正直言って,記事を書きたくなるような製品はほとんどなかったですね。とある製品は,1分もしないうちに気分が悪くなってきました。

Mitchell氏:
 そうですね(笑)。VR対応ヘッドマウントディスプレイを作り出すのは,それだけ難しいことなのです。我々Oculus VRには,VRテクノロジーに関してはトップレベルの才能が250人集結して,ゲーマーの皆さんに新しい体験を提供しようと日々改良を続けています。これができるメーカーは,世界的にも稀でしょう。

4Gamer:
 しかし,不完全な作品がRiftよりも先に市場に流入して,消費者が「結局,VRなんてこんなレベルなんだ」と失望してしまうことも考えられませんか。

Mitchell氏:
 ゆっくりとしていられない状況になっているのは確かでしょう。しかし,我々は絶対的に自信があるものになるまではリリースすべきではないと考えてますし,その品質にゲーマーは必ず賛同してくれるはずだとも確信しているのです。

4Gamer:
 DK2のリフレッシュレートは75Hzでしたが,Crescent Bayでは,以前から一応の目標としていた90Hzに引き上げられたとのことですね。以前から開発者向けのイベントなどで,Oculus側は「ソニーは,3D酔いの問題が解決するまでは,VR製品をリリースするべきではない」と語っておられますが,逆にいうと,この問題はOculusではクリアしたということでしょうか?

Mitchell氏:
 3D酔いにはさまざまな原因が考えられますが,大きく分けてレイテンシなどのハードウェア側の問題と,あとはコンテンツクリエイター側のソフトウェア面での問題となります。先にお話ししましたように,ハードウェア面では最低基準はクリアできていますので,あとはクリエイターさんにお任せするわけですが,より良いゲームを作ってもらえるように,ソフトウェアを作るうえでのガイドラインも公開しています。

4Gamer:
 コンテンツの内容面で,なにか規制のようなものをお考えでしょうか?

Mitchell氏:
 アダルトゲームが増えるようなことを想定されているのですかね? 今のところ,そうした内容規制は考えていません。PC業界という性質上,どんなに規制をしても自分達が作りたいソフトを作るデベロッパがいるでしょうし,さまざまなMODを作成する人も出てくるでしょう。
 我々の任務は,良いハードウェアを生み出してクリエイターの能力と想像力を引き出すことであり,それでゲーマーの皆さんに楽しんでもらうことなのです。今はそういった規制に労力を使うことはまったく考えていません。

4Gamer:
 分かりました。では,最後に今後の抱負を聞かせてください。

Mitchell氏:
 とりあえず,3月に行われるゲーム開発者会議「Game Developers Conference 2015」で,さらに大々的にCrescent Bayを公開することに専念していきます。また夜なべが続くことになりますけど,製品化に向けて一歩一歩前進していますので,期待していてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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「Oculus VR」公式サイト

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