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BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか
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印刷2013/05/11 00:00

レビュー

「27インチで120Hz対応」は大画面を好むゲーマーの最適解となるのか

BenQ XL2720T

Text by 米田 聡


XL2720T
メーカー:BenQ
問い合わせ先:BenQテクニカルサポートセンター TEL 044-288-9110(平日9:00〜17:00)
実勢価格:5万8000〜6万円(※2013年5月11日現在)
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 BenQの「XL2420T」は,4Gamer読者のなかにも愛用者が多いのではなかろうか。垂直リフレッシュレート120Hz対応に加え,より小さな液晶ディスプレイのパネルサイズをエミュレートする機能や,非常に使いやすいOSDメニューコントローラから設定可能な「ゲームで意味のある」機能の搭載により,全世界的にゲーマー向けの定番ディスプレイとして受け入れられている製品だ。

 そんなXL2420Tのバリエーションモデルとして,BenQの日本法人であるベンキュージャパンから登場してきたのが,27インチ液晶パネル採用の「XL2720T」である。単なる大画面版と見せかけて,中間調(Gray-to-Gray)の応答速度がXL2420Tの半分となる1msに高速化されていたりもするこの新モデル。より大きな画面のゲーム用液晶ディスプレイを求めているゲーマーにとっての最適解となるのかどうかを,今回はベンキュージャパンから入手した製品版サンプルの検証を通じて明らかにしてみたい。


XL2420Tをそのまま大型化したデザイン

使い勝手もS.Switchの仕様もまったく同じ


 さて,半ば結論めいたことから始めると,その製品デザイン自体は,XL2420Tとまったく同じである。文字どおりパネルが「大きくなっただけ」だ。

XL2720T(左)とXL2420T(右,写真はレビュー記事より流用)。液晶パネルのサイズ以外に違いは見られない
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本体は3ピース構成
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 見た目だけでなく,機構的な部分も,XL2720TはXL2420Tを完全に踏襲している。台座と脚,ディスプレイパネル部の3ピースの構成になっている点や,組み立てる方法もXL2420Tとまったく同じ。本体重量はXL2420Tが公称約6.1kgのところ,XL2720Tでは同7.5kgと,1.4kg程度重くなっているので,多少は組み立てにくくなるかと思ったのだが,実際のところ,本体重量が増した分の多くは大きくなったパネル部を支えるための台座に回っているようで,パネル部自体はそれほど重くなっていない。27インチサイズのパネル部を物理的に置いておけるスペースさえ確保できるなら,組み立てやすさもXL2420Tと同じと述べていいだろう。

机や床の上に裏返して置いたディスプレイパネル部に脚を填め込むように固定し,さらに底にある蝶ネジで台座と脚を固定すれば組み立ては完成だ
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 上の写真で気づいたと思うが,LANパーティなどへ持って行くときに便利な取っ手や,着脱可能なヘッドフォン&ヘッドセット用フックを搭載するのも,XL2420Tと同じである。

XLシリーズのロゴとタグライン「Gaming in the Details」の文字などが入ったカバーが付属。LANパーティなどへ持って運ぶときに,いちいち分解して製品ボックスへしまわなくてもいいようになっている(※液晶パネルの安全性は保証されないので,実際に持ち運ぶときは自己責任で)
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ヘッドセットやヘッドフォンをかけておける赤いフックが標準で取り付けられている。ディスプレイを壁にできるだけ近づけて設置したい場合には簡単に取り外しが可能だ
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ディスプレイは縦にして使うこともできる
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 XL2420Tで充実していたディスプレイの設置自由度も,XL2720Tはそのまま受け継いでいる。
 まず,高さは140mmの範囲で上下に調整できる。XL2420Tは130mmだったが,パネルサイズが大きくなった分だけ,可動域が広がったというわけである。もちろん,この状態でパネル部を90度回転させることもできるので,縦画面表示に対応した一部のSTGなどを,最適化された画面表示でプレイすることも可能だ。

 一方,上下方向の回転(チルト)は−5〜+20度,左右方向の回転(スイーベル)は±45度の範囲で動かせる。片手でも動かせるほど軽い調整機構ながら,狙ったところにほぼ固定できるというのも,XL2420Tから引き継いだ部分である。

左から1・2枚めは高さ調整機構を見たところ。かなりの自由度がある。3・4枚めは上下方向の回転範囲を見たところだ
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左右方向の回転を見たところ。2ms以下の応答速度を追求するからTNパネルを採用するという方針のBenQなので(関連記事),XL2720Tでも採用されているのはTNパネルだ。そのため,最大限に画面を回転させると,色の白浮きは目立つようになる
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 そろそろ「同じ」「共通」と繰り返すのも疲れてきたが,接続インタフェースもXL2420Tと変わらない部分だ。入力はDual-Link DVI-D×1,DisplayPort×1,HDMI×2,アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1。そのほかにUSB 2.0ハブ機能があり,本体底面×1,左側面×2の3ポートを利用可能だ。左側面にはもう1つ,HDMI入力時に音声を出力するための3.5mmミニピン端子も用意されている。

本体底面のインタフェース群(左)と,本体向かって左側面のインタフェース群(右)。ビデオ入力系は実に充実している
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S.Switch
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 上で示した本体底面のインタフェース群で一番左に見えるUSB mini-B端子は,XL2420Tから引き続いての採用となるOSD(On Scren Display)コントローラ「S.Switch」。スクロールホイールでメニューを選び,“センタークリック”で決定するというその操作性は直感的で,非常に使いやすい。XL2420Tのレビュー記事から繰り返しとなるが,S.Switchを用いたOSD操作のしやすさは秀逸だ。

S.Switchは,手前に引き出して使ったり(左),台座の左右どちらかにマグネットで固定させた状態で使ったり(右)できる。よく,多機能ディスプレイにはOSDメニュー操作用のリモコンが付属するが,それらと比べて,操作性は比較にならないほどS.Switchのほうが良い。OSDメニューの反応速度も上々だ
画像集#020のサムネイル/BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか 画像集#021のサムネイル/BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか

 念のため,XL2720TとXL2420Tの主なスペックをにまとめたが,これを見ると本当に違いが少ないのが分かるだろう。

画像集#039のサムネイル/BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか


応答性能向上の背景に

AMAの拡張あり


 というわけで,XL2720TとXL2420Tの間では,違いを探したほうが早かったりするわけだが,ここからはその「違い」に焦点を当ててみよう。

 まず,言うまでもなくパネルサイズが異なるわけだが,XL2720Tでは,このパネルサイズ変更に伴って,「パネルエミュレーション」機能に拡張が入っている。
 パネルエミュレーションというのは,本稿の冒頭で紹介した「より小さな液晶ディスプレイのパネルサイズをエミュレーションする機能」のこと。ゲームの大会では,ディスプレイが規定されていることが多いので,パネルエミュレーションで小さなサイズを指定すれば,大会規定のサイズで練習できるというわけだ。

XL2720Tでは,パネルエミュレーションの選択肢として,23インチと23.6インチ,24インチが追加された
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 XL2720Tでは,従来からある17インチ(4:3アスペクト),19インチ(16:9および4:3アスペクト),21.5インチ(16:9アスペクト),22インチ(16:10アスペクト)に加えて,23・23.6・24インチ(いずれも16:9アスペクト)の3つが選択肢として追加されている。要するに,23〜24インチクラスのパネルをエミュレートする機能が追加されたのである。XL2420Tの場合,23インチや23.6インチといった,市場への流通量が比較的多いパネルサイズがサポートされていなかったので,この点はXL2720Tならではのメリットということになる。

 そしてこれも冒頭で紹介したが,XL2720Tにおける最大の特徴ともいえるのが,中間調応答速度がXL2420Tの2msから1msへと高速化された点である。
 だが,実のところそれだけでは,XL2720Tの応答速度特性を説明したことにならない。このスペックについて語るためには,BenQ独自の高速応答技術「AMA」(Advanced Motion Accelerator)の存在を踏まえる必要があるのだ。

画像集#026のサムネイル/BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか
 AMAというのは,ディスプレイ業界で一般的にいうところの「オーバードライブ」機能とほとんど同じものという理解でいい。
 液晶パネルは,受け取った信号に基づいて画素の階調を変化させることで画面の動きを表現する。そのため,その「階調切り替え速度」が遅いと,画面が大きく動くアクションゲームなどで「切り替わる前の階調」が残像として残ることになる。そこでオーバードライブは,液晶画素を駆動させるドライバに対し,ピークの電圧を上げたりすることで,液晶画素の階調切り替えを高速化させ,ひいてはユーザーが受け取る残像感を低減させているのである。

 一般的なゲーマー向け液晶ディスプレイや,ゲーム用途を想定した液晶テレビでは,「ゲームモード」などと呼ばれる動作モードにおいて,内蔵の画像処理技術を使わないことで,入力された映像信号を液晶パネルへ出力するまでの時間――一般に「遅延」「表示遅延」と呼ばれる――の短縮を図っている。ただしこの場合,画像処理技術に含まれるオーバードライブ回路も使われなくなるため,残像感が増してしまう結果につながりかねない。
 それに対してXLシリーズでは,表示遅延を抑える動作モード「Instant Mode」においても,AMAを併用できるというのが大きな特徴だ。

 そして,ここからが本題。XL2720Tでは,そのAMAに改良が入っている。
 XL2420TのOSDで,AMAは「オン」と「オフ」の2択で,ゆえに筆者は「常時有効化で構わない」という話をしていたわけだが,XL2720Tでは選択肢が「プレミアム」「高」「オフ」の3つに変わっているのである。

OSDからAMAのメニューを開いたところ。左がXL2720T,右がXL2420Tで,前者では選択肢が2つから3つに増えている
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 では,これがどういう結果を生んでいるのか? さっそくチェックしてみよう。

 ここでは,MMGames製の「液晶応答速度&低解像度チェック」(Version 1.30。以下 LCDBench)に用意されたテスト項目「動画のなめらかさ」で,移動する円と十字の残像感を検証する。LCDBench側の設定は,「解像度」が1920×1080ドット,「色数」が8で,応答速度は1msだ。LCDBenchを実行し,カシオ製のハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-FH100」(以下,EX-FH100)から240fps設定で録画し,左右に動く円と十字の軌跡から,応答速度の違いをチェックしようというわけである。

 ディスプレイ側の設定は,Instant Modeを「オン」で揃え,XL2720Tでは「プレミアム」と「高」,AMAはXL2420Tで「オン」を用いる。リフレッシュレートはすべて60Hzで,その結果が下のムービーだ。
 ハイスピード撮影すると,さすがに円や十字が“尾を引く”様子が見て取れるが,XL2720TのAMA「高」とXL2420TのAMA「オン」が同じような印象なのに対し,XL2720TのAMA「プレミアム」は,それらと比べると,明らかに残像感が減っている。ぜひ,ムービーを何度か一時停止させながら確認してみてほしい。


 以上の結果から,中間調の応答速度1msというスペックは,「プレミアム」という新しいAMA設定によって実現可能になったものではないかという推測が可能になる。AMA「高」だとXL2420Tと変わらないので,これを選択した場合はおそらく2msになっているのだろう。
 ただし,AMAを「プレミアム」に切り替えると,Windows標準のデスクトップではマウスカーソルの動きなどに若干の違和感があった。「オン」なら問題ないというのはXL2420Tと同じだが,常時「プレミアム」にするかどうかは好みが分かれそうだ。

画像モードの選択肢。ゲーマー向けの「FPS1」「FPS2」「RTS」に加え,一般的な用途向きの「標準」「動画」「写真」「sRGB」「エコ」も用意されている。なお「sRGB」はIEC標準の色空間sRGBに準拠したプリセットモード,「エコ」はバックライトを抑えて消費電力を低減させるモードだ
画像集#034のサムネイル/BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか
 もっとも,ゲームの画面なら「プレミアム」でも違和感はないので,デスクトップで違和感があるときは,ゲームをプレイするときだけAMA設定を「プレミアム」に切り替えればよかったりもする。幸いにしてXL2720Tでは,XL2420Tから引き続き,あらかじめ用意された「FPS1」「FPS2」「RTS」といったプリセットをベースにカスタマイズしたディスプレイ設定を3つまで「画像モード」のユーザープリセットとして保存し,S.Switch側に用意された[1]〜[3]のボタン一発で切り替えられるようになっているから,これを使えば問題はないはずだ。

画像集#035のサムネイル/BenQ「XL2720T」レビュー。27インチで垂直リフレッシュレート120Hzのディスプレイは大きな画面を望むゲーマーの最適解となるのか
 ちなみに,このあたりもXL2420Tと同じなのだが,念のため簡単におさらいしておくと,カスタムプリセットには,明るさやシャープネスといった一般的な設定に加えて,前出のAMAやInstant Mode,さらには「画面のコントラストなどを変えて,暗がりにいる敵を見やすくする」機能「Black eQualizer」の設定値などを保存できる。
 なお,「FPS1」「FPS2」「RTS」のプリセットで,Instant Modeが「オン」,AMAが(XL2420Tの「オン」に相当する)「高」というのは,XL2420Tと同じ。Black eQualizerの設定値が順に12,20,15となっているのも変わらずだ。さらに言えば,Black eQualizerの強度設定は0〜20の21段階で,やはりXL2420Tと同じ。設定値に応じた効果もXL2420Tと変わらなかった。

左からBlack eQualizerの設定値0(=無効),12,20にしたときのサンプル画像。明るさとコントラストが変わるだけ,ではあるのだが,Black eQualizerという1つの設定だけで,自然な感じに調節できるのがメリットとなる
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XL2420Tの低遅延ぶりはXL2720Tでも健在

ただし60Hzに設定すると1フレーム遅れる


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 続いては,先ほども少し話題に挙げた遅延のチェックに入ろう。今回はXLシリーズのウリでもある120Hzと,多くの環境で標準的な60Hz,2種類の垂直リフレッシュレート設定でテストを行うことにする。
 遅延の比較には,2台のディスプレイを並べて,同じ画面を表示させる必要があるのだが,4Gamerで確認した限り,Dual-Link DVIに対応したスプリッタであっても,垂直リフレッシュレート120Hzに対応するものはない。また,Dual-Link DVI出力端子を2系統持つグラフィックスカードは,そのほとんどがプライマリ出力とセカンダリ出力でそもそも出力タイミングがズレていたりするため,120Hz表示で2画面を比較するのは非常に難しい。
 ただ,4Gamerで独自に用意した,リファレンスデザイン採用のMSI製「GeForce GTX 480」カード「N480GTX-M2D15」は,2基のDual-Link DVI-D出力に遅延がないことを検証によって確認できている(関連記事)。今となっては古い製品だが,今回もこのカードを使って2画面を比較したいと思う。

 さて,ここで用いるツールは「Refreshrate Multitool」である。これは現在,配布されていないツールなのだが,任意の数で格子を作成すると,格子1つ1つを1秒に1回のペースで白いブロックが“走る”ようになっているので,格子の数を調整することで,視覚的に遅延状況を確認できるのが特徴だ。横12個,縦10個で合計120個の格子を作成すれば,120fpsでの表示遅延を比較できるので,今回はそれを用いる。

 テストにあたっては,向かって左にXL2720T,右にXL2420Tを置き,やはりEX-FH100から240fps設定で録画することとした。画像モードのプリセットは,XL2720T,XL2420TともにFPS1――Instant Modeはオン,AMAは高(またはオン)――をベースとし,XL2720Tでは,AMA設定を「プレミアム」に引き上げた状態でもテストすることにした。これは,より強いAMA設定を行うことによって遅延に違いが生じるかどうかを確認するためである。

 そして,その結果が下のムービーだ。見てもらうと分かるのだが,XL2720TとXL2420Tの間に違いはない。また,XL2720Tの場合,AMAがプレミアムの状態と高の状態にも違いはなかった。


※GeForce GTX 480カードを用いたクローン出力時は,プライマリディスプレイ出力にXL2720T,セカンダリディスプレイ出力にXL2420Tを接続していますが,念のため,「XL2720TとXL2420Tの遅延比較:120Hz時(2)」のテストは,,プライマリとセカンダリのケーブル接続を逆にした状態でも行い,2系統のDVI出力に遅延がないことを確認しています。そのムービーは別途YouTubeに上げてあるので,興味のある人はこちらもチェックしてください。

 この結果からすると「XL2720Tの遅延はXL2420Tと同じ」と結論づけられそうだが,やや様相が変わったのは,垂直リフレッシュレートを60Hzに変更したときだ。
 60Hz設定時は,グラフィックスカードはそのままに,Gefen製のDual-Link DVIスプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)を使って1つのディスプレイ出力を2つに分け,2台のディスプレイに同じ動画を表示させた。また,60Hzのテストには,「LCD Delay Checker」(version 1.4)を用いた。LCD Delay Checkerは,表示されているフレーム番号と経過時間が表示されるので,録画したビデオで一時停止すると2台を比較しやすいのだ(※ならなぜ120Hz時にも使わないのかという意見はあると思うが,120Hzだと負荷が高すぎて,LCD Delay Checkerでは安定して120Hz表示が行えない)。

 結果を見てもらうと一目瞭然だが,この条件では,XL2720TがXL2420Tよりも1フレームきっちり遅い。


 120Hzでは違いが見られないのに,60HzだとXL2720Tが遅れるのはどういうことだろうか? BenQは詳細を明らかにしていないので推測になるが,おそらくXL2720Tは液晶パネルを内部的に120Hzで駆動させているのではないかと思われる。そのため,60Hzを入力すると,内部でリフレッシュレートを120Hzに変換する処理が入り,1フレームきっかり遅れるというわけだ。

XL2720Tに貼られた製品紹介シール。HeatoNだけが写っている
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 パネルを120Hzで駆動させているとしても,その理由は正直なところ分からない。複数埋め込まれたLEDバックライトの明滅速度によってはちらつきが生まれるから……というのも考えたのだが,60Hzの画面を高速度撮影してもちらつきは出ていないからである。
 なのでひょっとすると,開発に協力したEmil“HeatoN”Christensen氏の意向かもしれない。
 従来,XLシリーズでは,ZOWIE GEAR所属のHeatoNとAbdisamad“SpawN”Mohamed氏が開発に協力していたのだが,HeatoNがZOWIE GEARから独立したことを受けて,XL2720TではHeatoNが単独で開発に協力している。そこで,HeatoNがネイティブ120Hz化を強力にプッシュしたというのもあり得る話だ。

 いずれにしても,XL2720Tは120Hz設定で使うのが基本のディスプレイと考えるべきだろう。120Hz設定を行う限り,最速クラスの性能が得られるのは間違いない。


パネルエミュレーションの挙動は

XL2420Tのそれを踏襲


 最後にパネルエミュレーションを使ったときの遅延状況も確認しておこう。最近の大会では23〜24インチクラスの液晶ディスプレイが採用される例が多いことから,その部分のエミュレーションが問題なく機能するかというのがチェック項目となる。

 パネルエミュレーションの利用時には,内部で画面サイズを変えるスケール変換が行われるため,内部処理が増えて遅延は大きくなる。既存モデルのXL2420Tでも1フレーム前後の遅れが確認できている。この遅延が,23〜24インチクラスという,大会での使用頻度が高そうなXL2720Tのエミュレーションで低減されているのかどうかは気になるところだ。

 というわけで,ここでもN480GTX-M2D15に用意された2つのDual-Link DVI出力を使って,XL2720Tにおけるパネルエミュレーションの遅延を調べてみることにした。
 画像モードのプリセットはXL2720T,XL2420Tとも「FPS1」。その状態でXL2720Tではパネルエミュレーションの設定を24インチ,23.6インチ,23インチに切り替えながら比較した結果が下のムービーだ。ご覧のとおり,遅延具合に大きな違いはなく,ネイティブ動作のXL2420Tに対してほぼ1フレームきっかり遅れている様子を確認できよう。


 では,どちらもパネルエミュレーションさせたらどうなるか。XL2720Tで1フレームの遅延を確認できた60Hzにした状態で,19インチ(4:3)設定での比較を行ってみた。
 その結果が下のムービーで,ほとんど変わらないか,XL2720Tのほうがわずかに速いという結果になっている。速いといっても差は非常にわずかなので,正直分かりにくいが,少なくとも,パネルエミュレーション時の性能がXL2420Tより下がっているということは一切ない,とは言えるはずだ。



表示品質と価格が減点要素

大画面と性能,多機能をすべて求める人向け


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 27インチの画面は,間近で使うと視野いっぱいにゲーム画面が広がる。この迫力は,24インチパネルを採用するXL2420Tにはないものだ。XL2420Tとほとんど同じ性能を発揮し,AMAの拡張によって一部では強化もされ,機能的には完全に同じで,23〜24インチクラスのパネルエミュレーションにも対応したバリエーションモデルが登場したのは,素直に歓迎できそうである。

 ただ,XL2720Tには,ここまであえて触れてこなかった減点要素が2つある。それは,画質と価格だ。
 XL2420Tと同じくノングレアのTNパネルを採用するのだから,画質の評価はXL2420Tと同じになるのではと思うかもしれないが,残念ながらそうではない。27インチへの大画面化に伴って,パネルの正面1m以内から画面を見ると,視野角の制限により,四隅に若干の変色が確認できるのだ。
 また,パネルの近くで見たときの四隅の変色の起こり方にムラがあるというか,角度による変色の起こり方が一様でない関係で,近くで使うと色ムラを感じやすくなっている。とくにBlack eQualizerの強度を上げると,画面が明るくなり,いきおい画面中央部が白っぽくなって,よけいに色ムラを感じてしまうということがあるようだ。

 もちろん,これはXL2720Tの問題というより,TNパネルを採用する27インチワイド液晶パネルを搭載した液晶ディスプレイ全体に共通する問題なのだが,少なくともXL2720Tに,そこへの配慮はない。

 もう1つの価格だが,6万円近い実勢価格(※2013年5月11日現在)というのは,その性能や機能が申し分ないことを踏まえても,やはり高いと言わざるを得ない。視野角や色ムラの問題が顕在化しにくいXL2420Tなら3万2000〜4万円程度(※2013年5月11日現在)で手に入ることや,ほかの要素には目をつむり,純粋に垂直リフレッシュレート120Hzで中間調応答速度1msの27インチモデルが欲しいということであれば,iiyamaブランドの「ProLite G2773HS-GB1」がマウスコンピューターの直販価格3万9800円(税込 ※2013年5月11日現在)で手に入るからだ。XL2720Tの価格設定はやはり厳しい印象が拭えない。

 というわけなので,とにかく高速で多機能な27インチ液晶ディスプレイが欲しいという人なら,XL2720Tは選ぶ価値がある。ただし,そうでないなら,XL2420Tを選んだほうが総合的には幸せになれる可能性は高いというのが,今回の結論だ。

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  • 関連タイトル:

    XL,XR,RL

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