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レビュー
GTX 650 Tiキラーとなる「Bonaire XT」の実力チェック
Radeon HD 7790
(SAPPHIRE HD7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION)
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AMDは,デスクトップPC向けGPUとして,2013年いっぱいはRadeon HD 7000シリーズを継続すると述べ(関連記事),一方で新製品を投入するともしていたが(関連記事),その予告どおり,「Radeon HD 7000シリーズの新型GPU」が登場してきたことになる。
デスクトップPC向けGPUの新製品としては,2012年3月5日発表のRadeon HD 7800シリーズ以来,実に1年以上振りとなるHD 7790だが,この製品をゲーマーはどのように受け止めるべきか。今回は日本AMDから入手したSapphire Technology(以下,Sapphire)製グラフィックスカード「SAPPHIRE HD7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION」(以下,SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OC)の検証を通じて,その実力と立ち位置に迫ってみたい。
新しいGPUコア「Bonaire」を採用するHD 7790
シェーダコア数896基で,特性はよりHD 7800に近い
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AMDがはっきりとそう謳っているわけではないが,Bonaireは「Sea Islands」(シーアイランド)世代,いわば“Southern Islands Refresh”的なGPU世代の一員であると見ていいのではなかろうか。
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気になるシェーダプロセッサ「Stream Processor」(以下,SP)数は896基。Cape Verde世代の上位モデル「Radeon HD 7770 GHz Edition」(以下,HD 7770)だと640基なので,SP数は40%増量という計算になる。
なお,GCNアーキテクチャでは,64基のSPが,スカラユニット×1やテクスチャユニット×4,L1キャッシュなどとセットになって,演算ユニット「GCN Compute Unit」(以下,Compute Unit)を構成する。なのでCompute Unit数としては14基ということになるわけだ。
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ROPユニット数が16基で,メモリインタフェースが128bitというのはCape VerdeコアのRadeon HD 7700シリーズと同じ。なので,「Radeon HD 7850」(以下,HD 7850)よりもCompute Unit数で2基少ないだけのGPUコアを,Radeon HD 7700シリーズと同じ足回りの上に載せた存在がHD 7790であるとはいえるかもしれない。
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表1は,そんなHD 7790のスペックを,同製品の上位モデルとなるHD 7850,下位モデルとなるHD 7770に加え,AMDが競合製品と位置づける「GeForce GTX 650 Ti」(以下,GTX 650 Ti)と比較したものとなる。
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Northern Islands世代のRadeon HD 6900シリーズで採用され,「Radeon HD 7970 GHz Edition」(以下,HD 7970 GE)では,ベースクロックよりも高いブーストクロックに達する動作ステート「Boost State」(もしくは「Boost P-State」)を持った「PowerTune with Boost」へと進化していたPowerTuneが,HD 7790に合わせて最新世代へと移行してきたのである。
AMDによれば,HD 7970 GEでは,Boost Stateを含め,4つの動作ステート「Dynamic Power Management State」(以下,DPMステート)が用意され,DPMステートごとにコア電圧とコアクロックが規定されていたとのことだ。
厳密には,Boost Stateとその下の「High State」では,「コア電圧はそのままに,コアクロックだけ落としたDPMステート」も「Inferred State」(インファードステート)として用意されているが,コア電圧まで制御されるステートはあくまで4つだった。また,Boost Stateへの移行トリガーは温度と消費電力だったという。
それに対してHD 7790で採用される新世代PowerTuneでは,コア電圧とコアクロックをセットで規定したDPMステートが「State 0」から「State 7」までの8段階に細分化され,Inferred Stateなしに,きっちりこの8ステートで切り替わる。AMDいわく,「シンプルにいえば,(従来のPowerTuneにおける)Boost Stateというのは最大の動作ステートである。(GCN世代のGPUにおける)DTE(Digital Temperature Estimation)の採用で,より正確に消費電力状況を推測できるようになったことから,さらに高い動作電圧と,さらに高いDPMステートを設定できるようになり,それを我々はBoost Stateと呼んでいたわけだ。ただし,HD 7790で採用される新しいPowerTuneにおいては,単純に数字で呼ぶことに決めた」とのこと。なので,HD 7970 GEなどのBoost Stateは,HD 7790だとState 7に相当するものだという理解でいいだろう。
新しいPowerTuneでは,GPUの動作状況とTDC(Thermal Design Current,熱設計電流)とTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)を監視し,細かく動作クロックを制御する。そのため,常に高い性能を発揮できるよう,動作クロックをより高い状態で維持できるになったと,AMDは謳っている。
実際の挙動をチェックすべく,後述するテスト環境で「3DMark 11」(Version 1.0.4)を実行し,任意の250秒程度をTechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.9)で追ってみることにした。その結果がグラフ1で,8つのステートがあることをはっきり確認することはできないものの,300〜1000MHzの範囲でコアクロックが乱高下するところは見て取れよう。
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グラフ2は,CPU使用率である「CPU Load」と,電流量「VDDC Current」,電圧「VDDC Power」を,GPUコアクロックと同時に追った結果をまとめたものだが,AMDがアピールするように,動作ステートごとに動作電圧とコアクロックがセットで切り替わっているかというと,端的に述べて「分からない」。4Gamerの取材に対してAMDは,今後,PowerTuneの挙動を追えるようなツールを投入する計画があると述べていたので,新世代PowerTuneで具体的に何が変わったのかを知るためには,そのツールが登場するのを待つ必要がありそうだ。
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SapphireのHD 7790カードはOCモデル
定格相当に落とした状態でも検証
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残念ながら基板の写真は掲載不可とされたが,この目で見て,電源回路が4+1+1の構成になっていることや,基板デザインは意外にシンプルであることは分かったので,文字情報としてお伝えしておきたいと思う。
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また,日本AMDから入手したSAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCは,その名のとおりクロックアップ版で,コア1075MHz,メモリ6.4GHz相当(実クロック1.6GHz)に設定されていた。そのため今回は,カードとしての定格動作とは別に,「Catalyst Control Center」からリファレンス相当にまでコアおよびメモリクロックを引き下げた状態でもテストを行うこととする。以下文中,グラフ中とも,前者を「HD 7790 OC」,後者を「HD 7790」と書いて区別するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。
そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。
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なお,HD 7850とHD 7770のテストに用いているグラフィックスドライバがCatalyst 13.3 Beta3ではなく「Catalyst 13.3 Beta2」なのは,純然たるスケジュールの都合だ。もっとも,Beta3とBeta2の違いは,OpenGL周りの修正のみなので,今回のテストにあたって,大きな問題はないだろう。
一方,GTX 650 Tiでは,テスト開始時点の最新版である「GeForce 314.21 Driver Beta」を用いている。
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ゲームアプリケーションのテストに用いる解像度は,HD 7790がミドルクラスGPUであることを踏まえ,1600×900ドットと1920×1080ドットを選択している。
なお,これはいつもどおりだが,「Core i7-3970X Extreme Edition/3.5GHz」は,テスト時の状況によって自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」の効果に違いが生じるのを防ぐため,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化した。
その実力は概ねHD 7850とHD 7770の中間
GTX 650 Tiとは一進一退の攻防を見せる
では順にテスト結果を見ていこう。グラフ3は3DMark 11から「Performance」と「Extreme」の2つのプリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。
HD 7790のスコアはHD 7770比で31〜36%高く,HD 7850に迫っている。GPUコア周りがHD 7850に近いことのメリットを感じさせるスコアといえるだろう。HD 7790 OCはHD 7790比でスコアが4%上がっており,メーカーレベルのクロックアップによる効果も確認できる。
対GTX 650 Tiだと,Performanceプリセットで約21%,Extremeプリセットで約7%高いスコアだ。
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グラフ4は3Dmarkの実行結果だが,ここでHD 7790は,Fire StrikeでHD 7770より約31%,GTX 650 Tiに対して約22%,それぞれ高いスコアを示した。HD 7850に対しても約86%とまずまずだ。
より描画負荷が高まるExtremeプリセットだと,128bitメモリインタフェースであることが響いて,HD 7790のスコアはHD 7850から大きく置いて行かれるが,これはミドルクラスという製品の立ち位置を考えればやむを得ないところか。
なお,GTX 650 TiがExtremeプリセットでスコアを大きく落とすのは,ドライバ側の問題によるものと捉えていいだろう。
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ここからは実際のゲームタイトルを用いたテストの結果となる。
まず「Far Cry 3」のテスト結果となるグラフ5,6と見ていくと,HD 7850比で82〜84%程度,HD 7770比で121〜125%程度のスコアであり,ちょうど真ん中に収まっている印象だ。ただ,3DMark 11や3DMarkだと完勝していたGTX 650 Tiに対しては,「標準設定」で若干上回る程度,高負荷設定では逆にわずかながら下回ってしまっており,明確な優位性があるとまでは言えない。
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さらに,GeForceシリーズが高いスコアを示す傾向にある「Battlefield 3」(以下,BF3)だと,HD 7790は,今回テストしたすべての条件でGTX 650 Tiの後塵を拝した(グラフ7,8)。
もっとも,HD 7770と比べると14〜30%程度高いスコアを示しているので,上位モデルらしい性能は発揮できている。また,HD 7790 OCであればGTX 650 Tiを上回る数字を叩き出している点も注目すべきだろう。
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古い世代のゲームを代表して採用している「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果がグラフ9,10だ。Call of Duty 4ではプロセッサの規模がスコアを左右する傾向にあるため,テスト対象のGPUでは唯一のミドルハイクラスGPUとなるHD 7850が頭一つ抜け出ている。HD 7790はまったく届かない。
とはいえ,そのHD 7790は,HD 7770に対して8〜14%程度,GTX 650 Tiに対しても7〜11%程度高いスコアを示している。古めのDirectX 9タイトルでしっかり数字を残せるというのは,ミドルクラスGPUにとって重要なポイントであるだけに,この結果は評価できるところだ。
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Call of Duty 4と似た傾向になったのが,グラフ11,12にスコアをまとめた「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)だ。HD 7770だとGTX 650 Tiから置いて行かれるのに対し,HD 7790では安定的に高いスコアを示しているのはポイントといえる。
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グラフ13,14の「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)でもその傾向は変わらない。純粋な3D性能だけでなく,GPGPU性能も問うことになる「Leader Benchmark」を用いていることもあって,とくに高負荷設定時だとCiv 5はRadeon優勢となるのだが,果たしてHD 7790は高負荷設定時に対GTX 650 Tiで14〜17%高いスコアを示している。
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一方,グラフ15,16の「F1 2012」だと,HD 7790 OCがGT 650 Tiといい勝負というレベルに留まっている。HD 7790も,HD 7770と比べると27〜30%高いスコアなので,その点では評価できるのだが,Radeon HD 7700シリーズの製品スペックバランスが,あまりF1 2012向きではないということなのかもしれない。
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消費電力はHD 7770比で微増というレベル
SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCのクーラーは優秀
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そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を比較してみたい。ここでは,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
その結果がグラフ17で,アイドル時はほぼ横並びと述べていいだろう。ただし,ディスプレイ出力が無効になると,GCNアーキテクチャのGPUはロングアイドルモードへ移行し,「AMD ZeroCore Power Technology」が有効に働くことで,カードの消費電力が大幅に低下する。実際,HD 7790 OCとHD 7770は88W,HD 7850は86Wまで低下したので,この点はGTX 650 Tiに対して強みになっているといえそうだ(※Catalyst Control Centerからのクロック引き下げで実現しているHD 7790ではテストに意味がないため実施していない)。
一方,アプリケーション実行時だと,HD 7790の消費電力はHD 7770比で0〜28W高くなった。SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCというカードの設計がリファレンスカードとどの程度異なるのかは何とも言えないため,あくまでも参考値ということにはなってしまうのだが,「スペックどおり,HD 7770よりやや高め」と評することはできるように思う。また,GTX 650 Tiと比べた場合でも若干高いようだ。
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続けて,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zで各GPUの温度を追った結果がグラフ18となる。テスト時の室温は24℃で,システムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いて計測を行ったときのデータだ。
それぞれクーラーが異なり,HD 7790に至っては動作クロックすら弄った状態のものなので,横並びの比較にはまったく適さないが,ひとまず,SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCが搭載するツインファン仕様のクーラーが優秀とはいえそうである。
ちなみにこのクーラー,筆者の主観であることを断ってから述べると,動作音はさほど気になるレベルではなかった。静かなほうだと述べていいだろう。
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GTX 650 Ti対抗としての実力は十分
価格によってはHD 7850が強敵となるかも
以上のテスト結果を見るに,HD 7790は,HD 7850とHD 7770の間,これ以上ないほど順当なところに収まっている。GTX 650 Tiに対しても,一進一退ながら,DirectX 9世代のアプリケーションで優位なところを見せているのはポイントが高い。
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日本でも同じような状況は発生しており,市場では1万円台前半から購入できるGTX 650 Tiカードが人気。それだけに,HD 7790の登場を歓迎する人は多そうである。
懸念材料があるとすれば日本市場における搭載カードの価格だ。グラフィックスメモリ2GB版のHD 7850カードは,1万8000〜2万3000円程度(※2013年3月22日現在)の価格で販売されているので,仮に1ドル120〜130円程度の相場換算でHD 7790カードが市場投入されてしまうと,せっかくのGTX 650 Ti対抗製品が,HD 7850に同士討ちを挑んでしかも討ち死にするという,目も当てられない結果になりかねないのである。
HD 7790が成功するかどうかは,リファレンスに近い動作クロックの製品が,150ドルというキーワードからイメージされる市場価格で店頭に並ぶかどうかにかかっている。4月下旬からの大型連休が始まるくらいには,一定の結論を出せるようになっているのではなかろうか。
AMDのRadeon HD 7790製品情報ページ(英語)
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Radeon HD 7700
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