「迷宮クロスブラッド リローデッド」のテーマソング「SCARLET WINGS」を歌うELISAさんにインタビュー。歌詞や曲に込められた思いとは？

「迷宮クロスブラッド リローデッド」のテーマソング「SCARLET WINGS」を歌う，歌手のELISAさん。2007年10月「euphoric field」（TVアニメ「ef -a tale of memories.」OPテーマ）でデビュー。昨年はボーカリストとして参加した「神のみぞ知るセカイ」OPテーマ「Godonly knows〜集積回路の夢旅人」がオリコン初登場10位を獲得し，独特のキャラクター人気とも相まって，シンガーとしての地位を着実に築いている

　角川ゲームスは11月10日，Xbox 360用ソフト「迷宮クロスブラッド リローデッド」を発売する。本作は，2010年12月に発売されたPC用ソフト「迷宮クロスブラッド」をXbox 360に移植したもので，パブリッシャである角川ゲームスと，デベロッパであるエクスペリエンスとの，協業タイトル第1弾となる。

　TGS 2011の会期中，本作のテーマソング「SCARLET WINGS」を歌うELISAさんにインタビューを敢行し，曲に対する思いやレコーディングのエピソードなどを聞いてきた。またエクスペリエンスの代表取締役/プロデューサーである千頭 元氏と，ディレクターの安宅元也氏にも同席してもらい，ELISAさんを起用した理由や，曲の制作秘話などを語ってもらった。さっそくインタビューの模様をお届けしよう。

「迷宮クロスブラッド リローデッド」公式サイト

サビがなくてもいけるくらいカッコイイ？

ELISAさんが苦戦したという「早口」の部分とは

4Gamer：
　本日はよろしくお願いします。それではまず，「迷宮クロスブラッド リローデッド」のテーマソングに，ELISAさんが起用された経緯からお聞かせください。

エクスペリエンス代表取締役 千頭 元氏

千頭 元氏（以下，千頭氏）：
　サウンド面はすべて安宅に任せていたんですが，その安宅から「ELISAさんがいいんじゃないか」というプッシュがあり，それで色々と検討した結果，ELISAさんにお願いしようということに決まりました。

安宅元也氏（以下，安宅氏）：
　最初に，とあるサウンドクリエイターさんと「誰に曲を歌ってもらおうか」という話をしていて，その方が「ELISAさんはどう？」って仰ったんですね。そこで，自分のiPodを見てみたら，ELISAさんの曲が結構入っていて，「この人ですよね？」って（笑）。そこから話がどんどん進んでいった感じですね。そして，実際にELISAさんに決まってから「ELISAさんに歌ってもらうならどんな曲にしようか」ということを煮詰めていきました。

4Gamer：
　千頭さん的には，ELISAさんの名前が出た段階で，ほぼ即決といった感じだったんですか？

千頭氏：
　そうですね。アニメソングはゲーム作りの参考になるということもあってよく聴いてましたし，ELISAさんならぜひ……という思いもありました。

4Gamer：
　ELISAさんは，今回の話を聞いたときいかがでしたか？

ELISAさん：
　今まではアニメのオープニングがメインだったので，「ついにゲーム！」って感じでした。ゲームの曲を歌っているレーベルメイトさんも多かったので，「いつか私もゲームの曲を歌うんだろうな」って思っていたら，本当に来たっていう。
　私，実はXbox 360を持ってないんです（笑）。でもRPGということでストーリー性もあると思いましたし，それを表現できるような曲だったらいいなって考えてました。
　今回の「SCARLET WINGS」はテンポ200の曲で，いつもの倍くらい速くて苦労しました。私はいつも，カミワザって言われるくらい噛むので（笑）。

4Gamer：
　速さが倍となると，さまざまな面に影響が出そうですね。

ELISAさん：
　そうですね。まず歌詞が伝わりにくいっていうのはあります。でもその勢いを使って，迫力を出すこともできるんですよ。
　今までのシングルには色々なタイプの曲があって，ソプラノっぽく声を出したりとか，可愛い声を出したりとか，素の声に近づけたりとか，色んなことにチャレンジしていたんですね。なので「SCARLET WINGS」を聴いたときは，「あっ，かっこいい曲だ。これでコンプリート！」って思いましたね。

4Gamer：
　ということは，「SCARLET WINGS」みたいな曲は，今まであまり歌ったことがないタイプの曲だったと。

ELISAさん：
　はい。こんなに迫力があって，疾走感のある曲は初めてです。あと，ゲーム映像と一緒になっているPVを初めて見たとき，サビの盛り上がりを予感させるような序盤の曲調も，すごくいいなって思いました。「サビがなくてもいける！」みたいな（笑）。


4Gamer：
　千頭さんは曲を聴いてみてどう思われました？

千頭氏：
　すごく好きですよ。毎日何回か……15回くらいは聴いているかもしれません。曲に影響されて，中身が変わってしまった部分もあるくらいです。

4Gamer：
　中身というのは？

千頭氏：
　PVやパッケージのレイアウトですね。とくにパッケージに関しては，大きな影響を受けました。

4Gamer：
　確かに，曲調に合うカッコイイ感じのパッケージになっていますね。

「迷宮クロスブラッド リローデッド」のディレクターを務める安宅元也氏

安宅氏：
　パッケージのワインレッドは，「SCARLET WINGS」のイメージがあってこそですね。

4Gamer：
　ちなみにELISAさんは，迷宮クロスブラッドの内容はご存じですか？

ELISAさん：
　どういう内容のゲームかは知っていました。でも実際にプレイはしていないんですよ。スタッフさんに開発中のものを見せてもらったくらいで。でもゲーム自体は好きで，「ゼルダの伝説」とか，ほかにはPlayStationの最初のほうのタイトルは結構やってました。

4Gamer：
　なるほど。とくにRPGがお好きなんですか？

ELISAさん：
　好きですね。でもダンジョンRPGは初めてだったので，理解するのに時間がかかりましたね。「ダンジョン……？　RPGっていつもダンジョンに行くものだよね？」みたいな感じで（笑）。

4Gamer：
　確かにおっしゃるとおりですね（笑）。ちなみに，歌詞を実際にご覧になったときはどう思われましたか？

ELISAさん：
　ヒロイン（水無瀬シズナ）がぶつかる壁とか，切ない感情や悲しみをすべてプラスに変えていく過程が好きですね。曲名は，「品位の高い翼」っていう感じにも取れると思います。

4Gamer：
　確かにそうですね。

ELISAさん：
　私はファンの方から，愛称みたいな感じで「天使」って呼ばれていて，「品位の高い翼」の部分が私の愛称にも重なると思うんです。それに加えて今回のイメージカラーの赤とか，私の好きな色も「赤」なので，いろんなものが重なっていて，少し運命を感じました。

4Gamer：
　開発サイドとしては，そういった部分も意識していたんですか？

安宅氏：
　そうですね。ゲームの中で，「SCARET WINGS」のイメージに重なる“何か”をユーザーの皆様にも感じていただければ，本当に嬉しいですね。

4Gamer：
　なるほど。ただ単に世界観を象徴する主題歌，というだけではなく，曲とゲームがかなり密接にリンクしているんですね。

安宅氏：
　曲名や歌詞の内容は，作曲家の方全員にお知らせしているんですよ。そして，それを理解したうえで曲を作ってもらっているので，ゲームとは非常にリンクしていると思います。
　あと作詞家の方が，「ゲームの内容をすべて把握したうえで歌詞を書きたい」とおっしゃっていたので，ゲーム内のシナリオやメッセージ等をすべてお渡ししました。ゲームをプレイされた方は，「あ，ここの歌詞はこのことを言ってるんだな」って感じてもらえると思いますよ。

「SCARLET WINGS」ではELISAさんの新境地が。

4Gamer：
　千頭さんから，「歌詞にこういうキーワードはぜひ入れてほしい」といったオーダーもあったんでしょうか。

千頭氏：
　少しですがオーダーはしています。「赤」や「羽根」はもちろんですけど，重要なキーワードとなる単語は，なるべく入れてほしいとお願いしました。

ELISAさん：
　そういうキーワードを，歌う私がなるべく目立たせなきゃいけないので，口慣れをしてからレコーディングに望みました。

4Gamer：
　確かにメッセージ性の強い歌詞だと，そういった部分も意識しなくてはいけないですよね。レコーディングはいかがでしたか？

ELISAさん：
　私の声はすごくフワフワしているので，そのフワフワを生かしたほうがいいのか，それとも強さを表現するような凛とした歌い方をしたほうがいいのかとか，色々悩みましたね。
　レコーディング前は，私が参考にしていた歌手の曲を聞き直していたんですけど，聞き過ぎると影響されてしまうので，そこはバランスを取っていました。でもそうやってイメージを作って収録に臨んだら，スタッフさんから「新境地だね」って言われました。

4Gamer：
　では，この曲で自分の新しい部分が開花したということですね。

ELISAさん：
　はい！　すごく学ばせていただきました。

挿入歌「Secret Labyrinth」に関して

4Gamer：
　今回，テーマソングの「SCARLET WINGS」以外に，もう一曲ELISAさんの曲が挿入歌として使われていますよね。

ELISAさん：
　カップリングの「Secret Labyrinth」ですね。「SCARLET WINGS」と基本的には同じ曲なんですけど，アレンジはガラッと変わって，バラード調のスローテンポになっているんです。あと歌詞もすべて英語になっていて，疾走感でゲームを盛り上げるイメージの「SCARET WING」とは一味違う，しっとり聴いて頂ける仕上がりになっています。

4Gamer：
　それは面白いカップリングですね。

ELISAさん：
　今までに，ライブイベントでほかの歌手の方の曲をカバーさせてもらったことがあるんですけど，その場合はすでに世界観が出来上がっているので，その曲に合わせた歌い方ができるんです。アニメソングって音楽のジャンルが様々じゃないですか。激しい曲もあればしっとりとした曲もありますし。なので，アニメソングにはものすごく可能性を感じています。

4Gamer：
　アニメソングやゲームミュージックって，一括りにできないバラエティさがありますよね。では「SCARLET WINGS」は，ファンの方にとっては新しいELISAさんを見られる機会になるかもしれないですね。

ELISAさん：
　そうですね。まだCDが発売されていないので（インタビュー収録日：9月15日）具体的な感想はいただけていないんですけど，はやく皆さんの声を聞いてみたいですね。
　最近色んなタイプの曲を歌っているなって自分でも思うんですけど，自分の表現方法がたくさん増えたから，自分で意識的に変えることができたんじゃないかなと思っています。なので「SCARLET WINGS」には，自分が成長しているときに出会えて良かったなって思います。

4Gamer：
　なるほど。ところで「Secret Labyrinth」もゲーム中に使われているんですか？

安宅氏：
　はい。テーマソングの「SCARET WING」に関しても，オープニングで流れるだけでなく，イベント的な戦闘シーンでボーカルの入っていない曲だけのバージョンを使用し，ゲームを盛り上げてくれるんですが，「Secrt Labyrinth」も，ゲーム内の重要なシーンで流れます。
　プレイヤーの皆さんにとって，すごく印象に残るシーンになっていると思いますよ。


4Gamer：
　それでは最後に，読者の方にメッセージをお願いします。

安宅氏：
　迷宮クロスブラッドは，少し難しいゲームではあるんですけど，チュートリアルでちゃんとサポートしていますので，ELISAさんファンの方は曲を聴いて，ゲームも楽しんでいただけたらと思います。

千頭氏：
　ELISAさんが，この曲はヒロインが壁に当たりながら，困難に立ち向かっていくことがテーマだとおっしゃっていましたが，それと同じように，プレイヤーが難しいダンジョンやボスに挑戦していくゲームでもあるので，ヒロインと一緒にさまざまなことを乗り越えていってくれると嬉しいです。

ELISAさん：
　初めて歌うゲームの曲が，自分の好きなRPGなので素直に嬉しかったです。ダンジョンRPGは普通のRPGよりも難しいイメージがあると思うんですけど，私は結構完璧主義者なので，攻略情報を見ないで頑張りたいと思います。Secret Labyrinthも，ゲームの大事なシーンで使われるとのことなので，プレイする方は，曲が流れるシーンに到達するまで頑張って下さい。……あ，までって言ったらだめだ（笑）。最後まで頑張って下さい！

4Gamer：
　ありがとうございました。


　残念ながら，今回の取材直後の9月18日に，ELISAさんの体調不良による活動休止が発表された（関連サイト）が，インタビューでは，発言の端々から楽曲に込めた想いがにじみ出ていた。「SCARLET WINGS」は「初めてのカッコイイ曲調の歌」ということで，彼女の新境地がこの曲で発揮されていることは間違いないだろう。はたして，「SCARLET WINGS/Secret Labyrinth」が「迷宮クロスブラッド リローデッド」のプレイヤーにどのような感動を与えるのか。一日も早いELISAさんの復帰を願いつつ，11月9日にリリースされるELISAさんのテーマソング，および11月10日に発売されるXbox 360「迷宮クロスブラッド リローデッド」を楽しみに待っていてほしい。

「迷宮クロスブラッド リローデッド」公式サイト