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「Magic Creator Summit 2024」レポート。MTG新セット「ファウンデーションズ」と対面試合の魅力を,ふんだんに味わってきた
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印刷2024/11/28 08:00

イベント

「Magic Creator Summit 2024」レポート。MTG新セット「ファウンデーションズ」と対面試合の魅力を,ふんだんに味わってきた

新人MTGプレイヤー,はじめての大規模イベントに挑戦!


 ある日の夜,筆者はいつものようにデジタルカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」のデイリーミッションをこなしながら,ランク上げに邁進していた。

 「新セットの発売,まだかな……」そう思いを馳せていたとき,突然一通のメールが届いたのである。

 メールの送信元は,なんとウィザーズ・オブ・ザ・コースト。MTGの新セット「ファウンデーションズ」発売記念イベント「Magic Creator Summit 2024」への招待状だったのだ。先日4Gamerで書いた記事が担当者の目に留まり,お声がけいただけたのだという。

 なんとありがたいことだろう! これはもうストリクスヘイブン(注: MTG世界の魔法学校)への招待状といっても過言ではない。

 「ファウンデーションズ」はトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」(以下,MTG)の新セットだ。今後のMTGの基盤となるセットであり,MTGの世界を一望する内容である。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 「Magic Creator Summit 2024」レポート。MTG新セット「ファウンデーションズ」と対面試合の魅力を,ふんだんに味わってきた

 MTGの舞台となるのは,それぞれに個性豊かないくつもの次元だ。

 荒れた西部劇の世界から,サイバーパンクの世界,小動物たちだけの世界といった,いくつもの世界が集まり,多元宇宙と呼ばれる一つの世界をなしている。ゲームのプレイヤーたちは,そんな多元宇宙を移動する力を持つ存在「プレインズウォーカー」だ。プレイヤーはいくつもの次元を旅して呪文を集め,ほかのプレインズウォーカーと決闘をしていく,というのがMTGの大枠になっている。

 そんなMTGの世界を一望するのが,今回新発売されたセット「ファウンデーションズ」だ。その名の通り今後のMTGの基礎となるセットで,これまでMTGに登場したいくつもの次元から呪文が集まっている。

 MTGが今,最も推している遊び方は「スタンダード」(注:スタンダードはデジタル版でも紙と全く同じ環境で遊ぶことができる)という,直近3年で発売されたセットにあるカードを使ってデッキを組むフォーマットだが,「ファウンデーションズ」は最低5年はこのフォーマットで使えることになっている。

 「MTGを始めたいが,売っているものが多すぎて何を買えばいいかわからない……」という初心者の人にもうってつけのセットが,「ファウンデーションズ」なのだ。筆者はそんな超重要セットの発売記念イベントに招待されたのだった。

 メールによれば,このイベントにはインターネット上のあらゆる次元から,コミュニティの盛り立て役が集まってくるのだという。まさにさまざまな次元からカードが集結する「ファウンデーションズ」のようなイベントだ。

 ここまで来るとストリクスヘイブンというより灯争大戦(注:数多の次元からプレインズウォーカーたちが集い戦った大イベント)に思えてくる。命が心配になってきた。

 正直なところ筆者には多元宇宙の知り合いはあまりおらず,プレインズウォーカーとしてはまだまだ新人でしかない。筆者がこんな煌びやかな空間に参加して大丈夫なのだろうか?

 そんな不安を抱きつつ,新人MTGプレイヤーがアウェイな次元に挑戦してきた!



コミュニケーションとしての対戦を楽しむ


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趣きある空間に集ったプレインズウォーカーたち

 2024年11月6日,イベント会場は秋葉原の「アイデアの城」。会場内はRPGに出てくる建物のようで雰囲気抜群だ。

 イベントが始まると各自の簡単な自己紹介が和気藹々と進んでいく。MTGのプロプレイヤー,イラストレーター,YouTuberまで,MTG界の有名人が次々に名乗りを上げていく。

 筆者と同じテーブルには,MTGプロプレイヤーにして強豪チーム森山ジャパンを統べる森山真秀さん,世界選手権などの大会実況をこなすブルナー実久さん,MTG専門店「晴れる屋」のメディアチームで知られるいってつさん,漫画家のカエルDXさんとアシスタントさんなど,錚々たるメンバーがいらっしゃった。あまりにもすごすぎる……。

 こんな豪華メンバーに馴染めるのだろうか? 筆者の不安はしかしすぐに解決され,「ジャンプスタート・パック」という存在の偉大さを知ることになる。

 「ジャンプスタート・パック」はパックを2個開封すれば,それがそのままデッキになるというコンセプトの製品だ。パックを買えばそれ以外に用意するものは何も必要ないので,とても気軽に対戦を楽しめる。パックには46種類のテーマに沿ったカードが20枚封入されており,これを2個組み合わせることで毎回違うデッキを作れる。

 筆者がジャンプスタートを紙で体験したのは初めてだったのだが,これが本当に楽しかった。ジャンプスタートはカードゲーマー同士が交流するのに,うってつけのコミュニケーションツールだと筆者は感じた。

 ジャンプスタートの対戦ではデッキのパワーが揃えられているから,コンボや強すぎるカードを出されてなにもわからないうちに終わることがない。カードゲーマーの実力差が出がちなデッキ構築の過程もないので,経験者と初心者でもフラットに遊ぶことができるのも魅力だ。

 また自分で選んだカードではないので,お互いに自分のカードの効果さえ曖昧にしかわかっていない時もあり,そこで自然とゲームを中心に会話が発生していく。

 「今出したカードの能力教えてもらっていいですか?」「私もちょっとわかってないんですけど……えっと,戦闘ダメージを与えるたびに宝物を作って相手のデッキの一番上のカードをもらえるみたいです……すいません,もらいます」「えっ!? 強すぎでは?」などと,楽しく会話しながら試合を満喫できた。

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強いカードや有名なカードも多く,パックから出るカードの話題でも盛り上がることもできた

プロの手ほどきに感激!


 ジャンプスタートで人間関係もジャンプスタートしたあとは,メインイベントの「ファウンデーションズ」のシールド戦がはじまる。

 シールド戦はプレイ・ブースターを6パック開封し,出てきた84枚のカード+土地から40枚以上のデッキをその場で作る遊び方だ。

 ジャンプスタートと同じくカードの資産がなくても遊べるが,運と腕がめっちゃ出る遊び方でもある。パックから何が出るかがそのままデッキの強さに直結するので,開封もいつも以上にドキドキさせられる。実際,イベントでもあちこちから開封の悲喜交々の叫びがあがっていた。

 ……と聞くと難しそうだけど,クリーチャーカードは何枚入れるのがいいか,などといった基本的な指針も多くガイドに従っていくと,意外と簡単に作れてしまう。

 ただし細かい構築で悩むことも多い。せっかくの機会なので隣にいらっしゃた森山さんに構築の仕方について色々と伺ってみた。筆者はいつも土地の枚数のバランスで悩むのだけど,「三色目にタッチするならサポートするカードがある前提で3枚くらいでいいですよ」「手札破壊系のカードは遅いデッキにするなら結構いいカードですよ」など,構築のコツを優しく教えてもらえてとてもありがたかった。実際,アドバイスをもとにデッキを組んだところ,その後の対戦では土地が足りなくなるような事態を避けられた。プロってすごい。

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驚くべき運を発揮した筆者はファウンデーションズのトップレアを引き当てる!

 さらにフリー対戦ではなんと有名プロ選手の行弘 賢さんと対戦をさせてもらうことに! プロ選手との二連続対戦はありがたすぎる。

 対戦では行弘さんが超重量級レアカード《世界を喰らうもの、コーマ》を二枚連続で叩きつけてくる熱い展開に。プロ選手はやっぱり引きの力も強い。

 筆者は行弘さんのコーマに対して,墓地へ行ったクリーチャーを回収できる《深淵の収穫者》を使用した。行弘さんのクリーチャーを別の呪文で破壊しつつ,墓地に落ちたコーマ奪って対抗。ライフが12対4のまま膠着する白熱の展開に!

 はじめは有名プロ選手が相手ということで緊張していたものの,こちらの行動にあわせて「え!? そのカード強いね!」などとリアクションしてもらったおかげで,楽しくプレイできた。

 対戦は半分指導対局,といった感じになっていき「攻撃した時はどれにダメージを与えるのがいいんでしょう?」 「このタフネス(防御力)の高いカードから順番に倒すのがおすすめ」と教えてもらう場面も。対戦結果が記録されないフリーの醍醐味だ。

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《深淵の収穫者》のテキストを読む行弘さん

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《世界を喰らうもの、コーマ》の登場! 強い!!

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《世界を喰らうもの、コーマ》を《深淵の収穫者》で奪い取り逆転しようとする筆者

 初めは「筆者なんかが参加して大丈夫!?」と緊張していたけれど,開封やデッキ構築,対戦といったゲームの過程は,驚くほど簡単に人を結びつけてくれた。

 お互いの背景がわからなくても,カードという共通の言葉で対話ができる。逆説的に言うと,自分にとってはカードを通してしか相手と関われない,という状況でもあったのだけど,その制約があるからこそ気楽に相手を尊重しあいながらコミュニケーションを取ることができるのではないか,と感じた。

 紙でプレイするカードゲームの魅力はやはりそうしたやりとりの数々にあり,それがプレイ体験をさらに楽しいものにしてくれる。筆者はここで起きた一つ一つの対戦の展開を忘れないだろう。

さまざまなクリエイターとの出会い


 イベントは「MAGIC Creator Summit 2024」と題打たれているだけあり,さまざまなコンテンツクリエイターの方が参加しており,対戦だけではない交流があった。

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筆者(左),フブルスプ(真ん中),常盤ゆいさん(右)

 なかでも筆者も時々動画を観ていたYouTuberの常盤ゆいさんに声をかけてもらい,インタビューをしていただくことができたのは思い出深かった。


 MTGが引き寄せてくれた意外な再会もあった。イベントにはWebメディア「QuizKnock」の方々も来ていたのだが,その中の一人である志賀怜太さんは筆者の大学の同級生で,今回のイベントで数年ぶりに再会できた。MTGコミュニティの広がりがこんな出会いをもたらすとは……。

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QuizKnockの志賀怜太氏(左)と筆者(右)。なんと志賀さんは大学の同級生で,卒業以来5年ぶりの再会を果たした。偶然とMTGの力である

 また,MTG専門店「晴れる屋」のメディアでいつも活躍しているいってつさんにもご挨拶。「MTGのマイノリティを表象していく姿勢がいいですよね!」とお話ができたのも,うれしい一幕だった。

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同じテーブルだった晴れる屋メディアのいってつさん(左)と筆者(右)。パーカーのカラーが素敵!

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 イベントの最後にはビンゴ大会も。コレクター・ブースターBOXもふくむ豪華景品が当たるとあって会場は白熱! 筆者はなんと,「神河:輝ける世界コレクター・ブースターBOX」を引き当てることに成功した。スタンダードではもう使えないが,他の環境でも大暴れするカードの多いセットなのでとてもうれしい……。なお,今回商品に「神河:輝ける世界」がラインナップされていたのは,このセットのカードアートを担当したアーティストが参加していたからだという。

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「いろいろな人と出会える場所」としてのカードゲームイベント


 ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのコミュニティ・マネージャーである西岡英智さんは,「マジックの魅力はなんといってもコミュニティにある」と述べていた。今回のイベントは特に,「意外な人もMTGをやっていたりする」というような,MTGコミュニティの広がりや可能性を届けたい,との考えから始められたという。

 確かに,イベント会場にはさまざまなコミュニティの人たちがいた。筆者のようにライターをやりつつ,いくつものマイノリティコミュニティに属しているような人もいれば,カードショップの人,YouTube配信者,大会主催者,プロ選手などたくさんの人がおり,またその人たち自身もそれぞれまた異なるコミュニティに属しているのだろう――ちょうど多元宇宙からたくさんの呪文が集まった「ファウンデーションズ」のように。

 「ファウンデーションズ」に収録されているカードで言えば,例えば《運命を笑う者、アリーシャ》はトランスジェンダーでもある。《次元の先駆者、ケラン》は父親と決別して戦うキャラクターである。MTGのカードはそんなふうに人生の多彩な厚みを表現しているから,さまざまなコミュニティやさまざまな状況を背景に持つプレイヤーをゲームに誘い,プレイヤーはゲームを通じて自分自身の居場所や大事なカードを見つけることができる。

 もちろん,どんなコミュニティも誰かにとって――特に新参者にとって――完全に安全ということはない。でも,各自が安心だと思える自分の周りで遊ぶだけでも,そこにMTGのコミュニティは発生していく。そんな広がり方とMTGコミュニティの未来を感じられたイベントだった。

 今後のMTGはどんなふうに動いていくのだろうか。MTGという魅惑の次元からは,当分出られそうにない(ファウンデーションズのパックをひたすら開封し,「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」のランクを上げながら)

「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト

  • 関連タイトル:

    マジック:ザ・ギャザリング

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