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[E3 2011]まだまだ不明点の多い「Wii U」,スペックから読み解く新機種の真価
→【速報】[E3 2011]任天堂がWiiの後継となる新型ゲーム機「Wii U」を発表(※スペック追記,画像追加)
気になる本体性能は?
今回行われたプレゼンテーションでは,ほとんどコントローラしか出てこなかったのだが,本体部分はコントローラとは別に据え置きで設置されており,基本的に本体側でゲームの処理をして,コントローラの液晶画面にワイヤレスで映像を飛ばしている。PC用でも最近はいくつかの方式が出てきているが,映像のワイヤレス転送にどういった技術を使っているのかといったところも興味深い。
さて,その本体部分だ。
本体サイズは,Wiiをひと回り大きくした程度と,少し大きくはなったもののまだかなり小さめ。A4用紙の長辺を3cm,短辺を4cm短くしたくらいの底面となる。写真を見れば,スロットインタイプの光ディスク挿入口からして,だいたいの大きさは想像できるだろう。今後,この小さなゲーム機がどれだけの夢を見せてくれるのだろうか。
●CPU
スペックを見てちょっと驚いたのはPowerプロセッサが使われているとされていることだ。
現行機であるWiiのCPUは,PowerPCをベースとしており,実は,PlayStation 3のCPUであるCellもPowerPCベース,Xbox 360のCPUも3コアのPowerPCだ。Powerプロセッサはゲーム機でよく使われているPowerPCの上位のプロセッサにあたり,IBMのハイエンドサーバーやエンジニアリングワークステーションなどで使われている。現在ではアーキテクチャはほとんど変わらないらしいが,PowerPCではなくPowerプロセッサと明記しての採用というのは珍しいように思われる。
とはいえ,搭載されるプロセッサの詳細はまだ明らかにされていない。マルチコアであることだけは明らかにされているのだが,Power 7であれば8コアまでのラインナップがあるので,現状では推測するにしても幅が広すぎる感じではある。筐体の大きさから考えれば,動作クロックを抑え気味にして,コア数を増やす感じの構成が順当だろうか。
●外部記憶
スペック表で「容量」とされている部分は外部記憶の容量だ。HDDではなくフラッシュメモリの搭載が予定されているようだ。SDカードやUSBデバイスが利用できるなど,簡単に拡張可能なので大きな心配はないのだが,ゲーム自体のサイズも大きくなりそうなので,それなりの容量を期待したいところだ。
●ソフト供給メディア
Wiiソフトとの後方互換性があるということで,DVDが読めることは間違いないのだが,カセットは互換性保持のために用意されているだけのようだ。使用メディアは「12cmの高密度光ディスク」とされている。普通に考えればBlu-rayディスクなのだが,わざわざ新ハード用と明記されており,独自規格のものである可能性が高い。Blu-rayの延長上にあるものか,DVDの延長上にあるものかが気にかかる。
●グラフィックスとサウンドは?
今回公開された各種映像を見る限りでは,少なくとも最近の家庭用ゲーム機の水準はクリアしており,HDR調の絵など,フルHD画面でそれなりの絵を見せてくれていたが,それでもグラフィックスで押すマシンではないようだ。現行機のWiiと比較すると飛躍が見られるものの,他機種と比べて圧倒的な優位までは感じられない。とはいえ,EAのCEOであるJohn Riccitiello氏が「Frostbiteによるゲームが動くところを想像してください」といった表現をしていたので,Frostbite(同時に出ていた画面からしてFrostbite 2と思われる)は十分に動くスペックだと思って間違いないだろう。
その一方で,Wii Uでは立体視の追求といった姿勢は打ち出しておらず,ニンテンドー3DSで目指しているものとは方向性がちょっと違いそうだ。
サウンドについては,いたって普通。6chだから,5.1chのサラウンドにも対応できる。
ユニークすぎるコントローラ部
ぱっと見にはタブレットPCのような外観なのだが,主要な処理は本体側で行い,コントローラ部はあくまで入出力を担当するようだ。現状では,単体でもなにかできるのかなどは不明だ。とはいえ,カメラ機能や各種センサーを搭載しており,コントローラ自体にもある程度のCPUが搭載されている可能性はある。
6.2インチの液晶画面は,テレビに出していた絵を切り替えてプレイできるということで,フルHDまでいかないとしても,それなりの解像度は確保されているものと思われる。
タブレットPCと違うのは,コントローラは入力と出力をもっぱら処理し,ゲーム処理などは本体側で行うということだ。内蔵CPUで演算してGPUでレンダリングしてという処理がいらない分,電池の持ちもよいものと思われる。
さて,本体でレンダリングした映像は,ワイヤレス通信で転送される。ワイヤレス転送で気になるのは,まず遅延だが,デモムービーを見る限りは目立った遅延は確認できない。
このコントローラに限っていえば,傾きセンサーなどはゲームよりも,ほかのアプリに適しているように思われる。
一方で,体感系でないゲーム用については十分な機能を持っているといえる。
昨今は,ゲーム用デバイスとしてのタブレットが注目されてきてもいるのだが,性能は十分上がっているものの,操作性がネックとなっているケースが目立ってきている。ゲーム用入力デバイスを完備したタブレットというのは,なかなか存在しない。そんななかでこのコントローラを見ると,ゲーム用タブレットとしてかなり理想的な形になっていることも分かるだろう。こういうのをちゃんとしたタブレットで他社にも作ってほしいものだ。
発表会場で岩田氏は,「Wii Uは携帯型として設計されたものではない」ということを強調していたのだが,それでも「コントローラ部だけ持ち歩けないの?」「持ち歩けそうじゃないか?」という思いを抱く人は少なくないだろう。
とはいえ,Wii Uは本体側で処理を行い,コントローラは入力と出力だけを行うものなので,本体なしではなにもできない。コントローラになんらかのCPUを搭載していたとしても,昨今のタブレットのような高性能なものではないだろうから,できることがあったとしても,非常に限られるだろう。
本体側とコントローラ側はワイヤレスで通信しているわけだが,これが長距離にまで伸びたらどうだろうか。ワイヤレスでは限界があるのだが,途中は光回線でもいいのではないだろうか。映像の送信方式次第ではあるのだが,もしWi-Fiの帯域に圧縮された映像信号を乗せて送信する方式だとすると,アクセスポイントを経由して,遠くにある本体を操作するようなことも比較的簡単にできそうな気はする(遅延はあるだろうが)。
一方で,任天堂はニンテンドーゾーンなどでWi-Fiコネクションに接続できるスポットをどんどん拡大しつつある。これにWii Uのコントローラが対応して使用できるようになれば,ネットワーク越しに自宅のWii Uにつないだりすることも可能になるかもしれない。
さらに妄想を膨らませて,自宅のWii Uではなく,Wii Uと同等の処理を行うデータセンターを作って外出先のアクセスポイントからそこを呼び出せれば,コントローラだけでどこででもWii Uが使える世の中というのも不可能ではないように思われる。そこまで考えれば,なんでWii Uに高性能サーバーと同種のCPUを使っているのだろうかという疑問も晴れてくるのだが,少々穿ちすぎだろうか。
昨今はサーバーサイドで処理を行うネットワーク上のアプリケーションも増えている。複雑なことはサーバー側が行うようなシステムでは,クライアント端末は簡単なものでかまわない。ゲームに限っていえば信号遅延など,課題は多いのだが,インターネットが普及してまだ15年ほど。いわゆる次世代ネットワークでは低遅延化の研究も進んでおり,将来的にはかなり緩和されることが期待できる。Wii Uで実現されるローカルなクライアント-サーバーモデルのゲーム機は,これまでにないプレイの形を提案しつつ,ゲームデバイスの新たな方向性を指し示しているように思われる。これが順当に進化すれば,ゲームの未来も変わってきそうなインパクトを持っている。この夢をさらに広げてくれるような今後のインフラ整備と技術革新に期待したいところだ。
任天堂公式サイト「E3 2011情報」
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