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[COMPUTEX]Haswellの主戦場はUltrabookと2-in-1デバイス。Bay Trailとはどう住み分ける? Intel基調講演レポート
Ultrabook&2-in-1デバイスのために作られた
第4世代Coreプロセッサ
6月2日に一部製品が発売された第4世代Coreプロセッサは,Kilroy氏による基調講演に合わせて正式発表となり,残る製品ラインアップも明らかにされた。そのため,講演の中心は第4世代Coreプロセッサで,その特徴や性能を大々的にアピールする場になるのかな……と予想していたが,実際はちょっと違っていた。
今回の基調講演は,Intelが今置かれている立場と,同社が何に注力しているかを端的に示すものだった。それを象徴するのが,Kilroy氏が講演の聴衆に問いかけた質問だ。
では,なぜ両方ということになるのか。Kilroy氏は,「PCは2年前に1度死んだ」と続ける。というのも,Intelが2年前にノートPCの設計を大幅に見直し,「Ultrabookという形に再定義した」からだという。簡単にいえば,PCはUltrabookとして生まれ変わったのだ,と言いたいのだろう。
ここでいう2-in-1デバイスとは,ディスプレイ部分を取り外してタブレットとして利用したり,ディスプレイ部分を折りたたんでタブレット形状になるUltrabookのこと。今回の基調講演では,この2-in-1デバイスこそが主役だったと言っても過言ではない。
Kilroy氏が第4世代Coreプロセッサの特徴としてまず挙げたのが「非常に高速なPCのSystem-on-a-Chip(SoC)」が提供されるという点だ。こちらの記事でも解説されているが,第4世代CoreプロセッサのUltrabook向けの「U-Processor Line」(Uプロセッサライン)や,タブレット&2-in-1デバイス向けの「Y-Processor Line」(Yプロセッサライン)はCPUダイとPCHが1つのチップに集積されたSoCとなる(注:厳密にはパッケージ内に2個のチップを入れてあるだけで,SoCというわけではない)。これらのSoCにより,「PCを薄く軽くし,高いパフォーマンスを実現し,これまでになかった新しい2-in-1デバイスを可能にする」と,Kilroy氏は強調する。
Irisの名を冠する統合型GPUは,GT3と呼ばれる「Intel Iris Graphics 5100」と,GT3eと呼ばれるオンチップDRAM搭載版「Intel Iris Pro Graphics 5200」の,2種類がある(以下,Iris)。これらの実力が気になるという読者も少なくないだろう。しかし,市場に出回っているデスクトップ向けの第4世代Coreプロセッサが内蔵するのは,GT2と呼ばれる「Intel HD Graphics 4000番台」で,Irisの名が付かないことからも分かるとおり,性能面では1段低いレベルに止まる。
そのため,Irisの実力については,いまだはっきりわからないのが正直なところだが,Kilroy氏は講演で実際のゲームを使って,2010年当時の統合型GPU(おそらくノートPC用のIntel Coreプロセッサ)とIrisを比較したデモを披露した。その動画を下に掲載する。一目見るだけで,フレームレートや各種エフェクトが大違いであることが分かるだろう。
また,Kilroy氏は「飛行機の中やカフェでも,ゲームを中断することなく楽しめる」と述べ,Irisはグラフィックス性能だけでなく,単体GPUと比べてバッテリー駆動時間が長くなることも利点であると訴えた。
第4世代Coreプロセッサ搭載ノートによるデモの一部。左は顔認識のデモで,中央の女性の顔が認識されている。右は折りたたみ式2-in-1デバイスを多用途に使うデモで,手書きの漢字学習アプリを披露している |
注目集まる次世代Atom「Bay Trail」のデモも披露
Bay Trailは新しいCPUマイクロアーキテクチャ「Silvermont」(シルヴァーモント,開発コードネーム)を採用するAtomプロセッサで,従来のAtomに比べて,同じ消費電力なら性能は最大3倍,同じ性能なら消費電力は5分の1という優れた低消費電力CPUになると言われている。
だがAtomプロセッサの性能がそんなに上がるとしたら,タブレットや2-in-1デバイスの領域では,第4世代CoreプロセッサのY-Processor-Lineと直接競合するようにも思える。
Kilroy氏は両者の差別化について,明確に説明したわけではない。しかし,Bay TrailはWindows 8だけでなく,Androidもサポートするという。そこがまず1つの差別化要素というわけだ。また,Bay Trailを搭載する2-in-1デバイスは,「エントリーレベルの製品となる」とも述べている。要は製品価格帯でも住み分けが行われるということのようだ。
Bay Trailを搭載するAndroid機のデモ。「非常にスムーズに動作する」とKilroy氏 |
こちらはBay Trailを搭載するWindows 8タブレット上で,ゲームを動作させたデモの様子。デモだから当然ではあるが,サクサク動いていた |
基調講演の最初から最後まで,デスクトップの「デの字」も出ないあたりが,第4世代Coreプロセッサの位置付けをよく表していると思う。Kilroy氏も述べたとおり,第4世代Coreプロセッサは“Ultrabookや2-in-1デバイスに向けたCPU”なのだ。
Kilroy氏は講演の最後に「台湾には変革をもたらす優れた設計者が数多くいる。変革のためにはあなた方の力が必要だ」と述べて締めくくった。この最後の言葉は,モバイルデバイスでは追う側となったIntelの立場を,象徴していたように思える。第4世代CoreプロセッサとBay Trailにより,Intelはモバイル市場での劣勢を巻き返せるのかに,これからも注目していきたい。
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