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初期のX79はPCIe 3.0対応保留,DIMMサポート4枚か。少数精鋭のマザーボード開発チームを立ち上げたSapphireにいろいろ聞いてきた
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印刷2011/09/13 00:00

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初期のX79はPCIe 3.0対応保留,DIMMサポート4枚か。少数精鋭のマザーボード開発チームを立ち上げたSapphireにいろいろ聞いてきた

Sapphireの台湾支社であるTrimark。同社のグラフィックスカードやマザーボードは,現在,台湾で企画・開発が進められている。
画像集#002のサムネイル/初期のX79はPCIe 3.0対応保留,DIMMサポート4枚か。少数精鋭のマザーボード開発チームを立ち上げたSapphireにいろいろ聞いてきた
 AMD陣営最大のグラフィックスカードメーカーとして知られるSapphire Technology(以下,Sapphire)。世界最大のグラフィックスカード製造会社であるPC Partnerのグラフィックスカードブランドとして立ち上がった経緯がありつつも,現在ではPC Partnerから独立し(※現在でもPC Partnerは主要株主の一社),独自路線を強化している同社だが,2009年に,少数精鋭のマザーボード開発チームを,本社のある香港ではなく台湾で立ち上げたことはあまり知られていない。

 Sapphireの台湾支社であるTrimark Technology(トライマークテクノロジー,以下 Trimark)でこのチームを率いるAllen Lee(アレン・リー)氏は,オーバークロック性能を重視する個性的なマザーボード製品を展開していた某社でプロダクトマネージャーを務めてきた人物。その経験を活かし,Sapphireでは,ゲーマー向けなど,高性能マザーボードを中心に,種類を絞った展開で市場に打って出るという。

 顔出しNGという条件ながら,今回4GamerではそのLee氏に,次期主力製品の開発状況を聞く機会が得られた。AMDとIntelの次世代プラットフォームについても興味深い話を聞けたので,まとめてみたい。


SapphireがAM3+マザーボードを投入していない理由


 Radeon搭載グラフィックスカード市場のトップシェアを守り続けているSapphireが,AMD陣営のエースであることに異を唱える人はいないだろう。日本市場でこそ存在感はあまりないものの,AMD製チップセットを搭載したマザーボード製品も,Sapphireは定期的にリリースし続けている。

 ただ,実のところ,Sapphireは未だにAM3+対応マザーボードを市場投入していない。それはなぜなのか。
 この疑問をLee氏に投げかけてみると,返ってきた答えは「より優れたオーバークロック動作を実現するのはもちろんのこと,“将来のCPU”に対応するため,TDP 150WのCPUでの安定動作を図るべく設計変更を行っている段階だからだ」というものだった。

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AMD 990FXを採用したSapphire製のSocket AM3+マザーボード。COMPUTEX TAIPEI 2011の会場で一度公開されたが,その後,基板デザインやVRMの変更が行われている
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マルチGPU性能を向上させるべく,PCI Express 2.0ブリッジとしてnForce 200を搭載。サウスブリッジと一緒に,Sapphireロゴ入りヒートシンクの下に置かれる
 3月に開催されたCeBIT 2011で,Socket AM3+世代のマザーボードは展示されていた。6月のCOMPUTEX TAIPEI 2011を待たず,対応製品を市場投入するメーカーもあったほどだ。
 一方,9月3日の記事でもお伝えしたとおり,AMDの次期FX-Seriesとなる「Komodo」(コモド,開発コードネーム)では,AM3+パッケージが継続することと,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が最大で150Wに達することが明らかになっている。Lee氏の回答は,これを受けてのものである。

 「AM3+プラットフォーム用としてAMDがマザーボードベンダーに対して提供していた最初の設計ガイドに従ったまま,Socket AM3+マザーボードを作った場合,150WというTDP設定で動作させると,VRM周りが極めて高温になると分かった」と言うLee氏は,市販されている他社のSocket AM3+マザーボードも検証済みだそうで,「VRMの部品が90℃を超えることがあることも分かっている」とも語る。発売のタイミングが競合他社より遅れるのは覚悟のうえで,自作ユーザーが次世代CPUでも安心して使い続けられる製品を作ることこそが,チームの限りあるマザーボード開発リソースを有効に活用する手段であるという考えを示していた。
 現在Lee氏のチームでは,Socket AM3+を搭載した「AMD 990FX」マザーボードの開発において,VRM設計を見直すだけでなく,放熱性を高めるべく基板設計や冷却機構も改良することで,“Komodo世代”に向けた安定性を確保しようとしているとのことだ。


初期のX79はPCIe 3.0対応保留,DIMMは1chあたり1枚に


X79チップセット
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 またLee氏は,Intelの次期フラグシッププラットフォームたる「Intel X79 Express」(以下,X79)に関しても,興味深い情報を与えてくれた。
 いわく「X79マザーボードは当初,PCI Express 3.0に対応しない」「Intelは,デスクトップ向けSandy Bridge-Eにおいて,1スロットあたり1 DIMMのみのサポートに切り替えた」とのことである。

SapphireのX79マザーボード。デスクトップ向けCPUでは,DIMMは1chあたり1本に制限されるという
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 順に見ていこう。まずPCI Express 3.0対応は,初期のSandy Bridge-EにおけるCPU側の問題もあって保留されることになるようだ。そのため,PLX Technology製のPCI Express 3.0ブリッジチップを搭載する計画だったSapphireでは,いま,NVIDIAの「nForce 200」へ切り替える設計変更を行っているところだという。

 Lee氏は,「PCI Express 3.0対応グラフィックスカードの検証は,9月にようやく始められるという状況だ。10月末〜11月の発売の製品でPCI Express 3.0対応を謳うのは現実的ではない」と,大手グラフィックスカードベンダーならではの見方も示す。Sapphireがこう見るなか,競合他社がX79マザーボードでPCI Express 3.0対応をどう謳ってくるかは,興味深いところだ。
 ちなみに同様の情報はほかのマザーボードベンダーからも漏れ出しているが,最新の「Intel Z68 Express」マザーボード(の一部)のように,CPU側のPCI Express 3.0検証が終われば利用可能になるのか,初期のX79マザーボードではハードウェア的に非対応なのかはまだ分からない。

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初期のSandy Bridge-E CPUではPCI Express 3.0対応が保留されることから,SapphireではPCI ExpressブリッジにnForce 200を採用。PCI Express 3.0の検証が進めば,対応するPLX Technology製ブリッジチップを採用したモデルの展開計画もあるとのことだ
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PCI Express 3.0対応を果たすべく基板や回路設計は完成している。実際,CPUに近いPCI Express x16スロット2本には,「PCIE Gen3」の文字が残っていた

 もう1つのメモリサポートだが,Lee氏は「サーバー向けのSandy Bridge-EPでは1chあたり2 DIMM構成をサポートする」と断言。あくまでもデスクトップPC向けSandy Bridge-Eのみのスペックダウンだと示唆していた。
 Intelに近いOEM関係者は,「Sandy Bridge-Eのフル機能をサポートするため,Intelは市場投入時期を2012年初頭にまで遅らせることも考えていたが,AMDのBulldozer世代へ対抗すべく,10月下旬〜11月上旬という,当初の予定での市場投入を優先することになった」と述べていたりもするので,AMDへの対抗戦略が,当初計画されていた“フル機能実装”を後退させた可能性は高い。

 なお,現時点で分かっているデスクトップ向けSandy Bridge-Eのサインナップは下記のとおりである。

  • Core i7 3960X/3.3GHz:6コア/12スレッド,LLC 15MB
  • Core i7 3930K/3.2GHz:6コア/12スレッド,LLC 12MB
  • Core i7 3820/3.6GHz:4コア/8スレッド,LLC 10MB

Kirk Skaugen氏(Vice president and General manager of Intel's Datacenter and Connected Systems Group, Intel)
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 ところで,8月下旬に来日したIntelのKirk Skaugen(カーク・スカウゲン)副社長は,8月31日の報道関係者向け説明会において,「11月に公表される,次のスーパーコンピュータ500傑リスト『TOP500』では,Sandy Bridgeベースのシステムもランクインする見通しだ」と述べ,「10コア版CPUの投入も計画している」と明らかにしていた。要するに,最大6コア12スレッド仕様となるデスクトップPC向けのSandy Bridge-Eと,サーバー向けの「Sandy Bridge-EP」「Sandy Bridge-EN」(いずれも開発コードネーム)では,仕様が異なるというわけである。

 また,ここにきて,OEM関係者から「サーバー向けには,Socket B2対応のSandy Bridge-ENも用意される」という情報が入ってきたことも押さえておきたい。
 サーバー向けのCPUは,メインストリーム2-way用がSandy Bridge-EP,エントリー2-way用がSandy Bridge-ENとされてきた。当初,前者はLGA2011のSocket R,後者はLGA1356のSocket B2向けとされてきたが,その後,後者は計画が見直され,LGA2011で一本化される予定になっていたのだ。そんな“消えたLGA1356版Sandy Bridge-EN”が,ここに来て復活したというのである。

ASUSTeK Computerのハイエンドマザーボードプロトタイプ「Danshui Bay」。LGA2011+LGA1366という構成だったが,ひょっとすると各社から製品化される!?
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 LGA1356版Sandy Bridge-ENの場合,トリプルチャネルDDR3対応は現行のLGA1366と同じだが,LGA1366で組み合わされる「Intel 5520」「Intel X58 Express」ではチップセット側にあったPCI ExpressインタフェースがCPU内部に実装されるため,LGA2011版Sandy Bridge-ENと同様に,「Patsburg」(パッツバーグ,開発コードネーム)チップセットとの組み合わせが可能とのことだ。
 面白いのは,LGA2011版Sandy Bridge-EPをプライマリCPU,LGA1356版Sandy Bridge-ENをセカンダリCPUとして搭載可能なデュアルCPUマザーボードのリファレンスデザインを,Intelがマザーボードメーカーへ供給しているということ。「LGA2011+LGA1356(もしくはLGA1366)」プラットフォームといえば,ASUSTeK ComputerがCOMPUTEX TAIPEI 2011で公開した「Danshui Bay」が思い出されるところだが,果たしてこのあたり,どういった製品が出てくるのかは気になるところである。


 ……話が大幅に脱線してしまったが,もう一度Sapphireのマザーボード開発に話題を戻そう。
 Lee氏は,20人足らずというTrimarkのマザーボード開発チームを,「おそらく,業界最小の開発チーム」と位置づけていたが,「小さなチームだけに,ラインナップ全体を見渡せるメリットはある」とも胸を張る。Sapphireで展開するマザーボードは,チップセットごとに複数の製品を用意していくのではなく,「チップセットやCPUの特性を活かした製品作りに注力している」(Lee氏)とのことだ。

 その方向性は実にシンプルで,AMD 990FXやX79といったハイエンドチップセット搭載製品では,マルチグラフィックスカード構成やオーバークロック耐性を追求しつつも,「ピーク性能だけでなく,長期間使い続けてもらえるだけの安定性を提供したい」(Lee氏)。この考え方が,序盤で紹介した,「電源強化のためのAMD 990FXマザーボード再設計」や「PCI Express 3.0への固執を止めてnForce 200へ切り替え」といった決断をもたらしたようだ。

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H67搭載のMini-ITXマザーボード「PURE Platinum H67」。グラフィックス性能を最大限に引き出すべく,Virtuをサポートしているが,Virtu Universalへの対応も検討されている
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AMD A75を搭載する,開発中のMini-ITXマザーボード。こちらもVirtu Universalのサポートが検討されている
 一方,ミドルクラス以下では,グラフィックス機能を重視したMini-ITXマザーボードを積極的に展開するという。
 同社はすでにLucidLogix Technologiesの「Virtu」に対応した「Intel H67 Express」(以下,H67)搭載のMini-ITXマザーボード「PURE Platinum H67」を市場投入済みだが,さらに「AMD A75」搭載のMini-ITXマザーボードも計画中だ。

 Lee氏は,これらの製品において,LucidLogix Technologiesの「Virtu Universal」対応も検討しており,「老舗グラフィックスカードベンダーのマザーボードらしく,メインストリーム製品でも最大限のグラフィックスパフォーマンスを提供できる製品展開をしていきたい」と,意気込みを語っていた。
 また氏は「マザーボードの品質を向上させるために,一部製品については台湾国内で生産することも検討している」と,アグレッシブな製品戦略を持っていることも明かす。かつて所属していた某社における実績も踏まえるに,面白いマザーボード開発チームが戦線に戻ってきたといえそうだ。


Sapphire Technology
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