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インテル,Ultrabookに向けた技術的課題とその解決法を解説〜IDF 2011 SFを総まとめ
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印刷2011/09/27 00:00

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インテル,Ultrabookに向けた技術的課題とその解決法を解説〜IDF 2011 SFを総まとめ

 Intelの日本法人であるインテルは,2011年9月26日,報道関係者向け説明会「IAプレス・ミーティング」を都内で開催した。
 今回の主題は,9月13〜15日に米カリフォルニア州サンフランシスコ市で開幕された米Intelの開発者向けイベント「Intel Developer Forum 2011 San Francisco」(以下,IDF 2011 SF)の概要説明。4Gamerでも,次世代メインストリームCPU「Ivy Bridge」(アイビーブリッジ,開発コードネーム)のグラフィックスアーキテクチャを速報としてお伝えしているが,今回のIAプレス・ミーティングでは,Intelが力を入れているUltrabookに向けた技術が重点的に説明されている。


PCを大きく進化させるUltrabook


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吉田和正氏(インテル 代表取締役社長)
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吉田氏が示したIDF 2011 SFのハイライト
 IAプレス・ミーティングでは,まずインテル吉田和正代表取締役社長が登壇し,IDF 2011 SFにおける3つのポイントを紹介した。具体的には,「1.Googleとの協力」「2.Ultrabook」「3.超小型太陽電池で動作するプロセッサ」だ。

 氏の発言を拾っておくと,1.は,スマートフォンやタブレット市場でシェアの拡大が続くAndroid OSにおいて,Googleと将来に向けた協力体制を築いた,という話である。スマートフォン&タブレット向けAtomとして開発が進められている「Medfield」(メドフィールド,開発コードネーム)の世代で,Googleと協業した効果が出るかどうかは「言える段階にない」(吉田氏)そうだが,Intelがこの市場に本腰を入れている証左としては十分に受け取れるだろう。

 順番は前後するが,3.は,スライドだと「ニア・スレッシュホールド・ボルテージコア」(Near-Threshold Voltage Core)と紹介されている。簡単にいえば,「トランジスタの閾値ギリギリで動作させ,消費電力や発熱の低減を図ろう」というもの。IDF 2011 SFでは切手大の太陽電池で動作するプロセッサが紹介されていたが,この技術はほぼ間違いなく,いずれPCにも降りてくるはずだ。

Ultrabookの特徴。「スマートフォンやタブレットなど,PC以外のデバイスが注目を集めるなかで,PCを大きく進化させるのがUltrabookである」と吉田氏は語っていた
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 そして,今ミーティングの最大の目玉が,2.のUltrabookであり,2012年のUltrabookなどに搭載されるIvy Bridgeである。

 吉田氏は,Ultrabookの特徴を右のスライドにまとめていたが,「性能が高く,軽く,薄い」Ultrabookは,端的に述べるとノートPCの直線的進化版ではある。ただ,性能を落とさずに軽く薄くするためには,プロセッサに新たな進化が求められることもまた確かだ。


既存の技術を拡張してUltrabookの課題をクリア


羽切 崇氏(インテル IA事業本部 アプリケーションスペシャリスト)
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 IAプレス・ミーティングでは,続いて,インテルで技術を担当する羽切 崇氏が登壇し,Ivy Bridge世代,そして“その次”となる「Haswell」(ハスウェル,開発コードネーム)も含めた「Ultrabookに向けての技術的課題」を説明した。

 羽切氏は最初に,Ivy Bridgeの特徴をSandy Bridge世代の現行Core iファミリーと比較してみせたが,このあたりは先の速報でもお伝えしていたとおり。ただ,3次元トライゲート・トランジスタを用いた22nmプロセス技術で製造されるというのは,強調しておくべきポイントだろう。リーク電流を低減しつつ高性能を実現するとされる3次元トライゲート・トランジスタが量産に乗るのはIvy Bridgeが世界初になるはずだ。

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Ivy BridgeでSandy Bridgeから変わらない点をまとめたスライド。「Backword compatible(後方互換性)という点は注目できるのではないか」と羽切氏は述べていた。後方互換性というのは要するに,Intel 6シリーズチップセット(Cougar Point)でもIvy Bridgeが使えるようになるという話である
画像集#007のサムネイル/インテル,Ultrabookに向けた技術的課題とその解決法を解説〜IDF 2011 SFを総まとめ
Ivy Bridgeにおける変更点をまとめたスライド(1)。3次元トライゲート・トランジスタを用いた22nmプロセスで製造されるというのが最大のポイントだが,速報で触れたGPU機能の改良も重要だ。さらに羽切氏は,IPC(Instruction per Clock)の向上や文字列系命令の拡充にも触れていた
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Ivy Bridgeにおける変更点をまとめたスライド(2)。セキュリティ面では,新しい乱数生成器と,特権レベルの昇格を監視して不正を阻止するSupervisory Mode Excecution Protectionが搭載される。また,1.35V駆動の低電圧版DDR3Lインタフェースの採用と,3画面出力も新しい機能だ


■Configurable TDP


 さて,このなかで羽切氏が時間を割いて説明したのは,Ultrabookを可能にする3つの電力制御関連機能だった。
 まず説明されたのが「Configurable TDP」だ。

TDP 17WのCPUがあったとしても,標準的な使い方では17Wに貼り付いたりせず,10W程度に収まるというスライド。フルパワーでCPUを回し続けるというケースは非常に少ないというわけである
画像集#009のサムネイル/インテル,Ultrabookに向けた技術的課題とその解決法を解説〜IDF 2011 SFを総まとめ
 読者も体験的に知っていると思うが,実際のPC利用において,CPUをフルに活用して“ぶん回す”ような局面はほとんど生じない。負荷が高いと思われがちなPCゲームでも,100%のCPU負荷が生じたりすることはまずないのだ。
 羽切氏は,「TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が17WのCPUを積んだノートPC」を実際に使ったときの消費電力分布を示していたが,この場合,「Typical Usage」と呼ばれる通常用途では10W程度に収まるという。ならば「Typcial usageのところにTDPを持ってくれば,冷却機構などを小型化でき,筐体も薄くできる」(羽切氏)というのがConfigurable TDPのアイデアだ。乱暴に言えば,TDP 17WのCPUを,10WまでのTDPに対応した筐体で使ってしまおうという考えである。

 もちろん,TDP 10W対応の筐体で使うためには,動作クロックを落とす必要があるわけだが,Configurable TDPの場合,いわゆる定格クロックにあたるP1ステートのみを下げ,「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)によるP0ステートは,Configurable TDPの有効/無効に関わらず一定に維持される。
 もともとTurbo Boostは,熱の変動にはタイムラグがあるという特性を利用して,熱が設計上の上限値へ上がりきるまでの余剰を利用して標準よりも高いクロックで動作させる技術。なので,それを拡張したのがConfigurable TDPと言ってもいいかもしれない。

従来のTDP(左)とConfigurable TDP(右)の比較。同じTurbo Boostステートは維持しつつ,P1ステートのみを下げることで,より薄い筐体へCPUを搭載可能にする。なお,下げられたTDPは「TDP Down」もしくは「Down-TDP」と呼ばれているようだ
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 Turbo Boost時の最大クロックは変わらないため,ユーザーが感じるパフォーマンスの低下はわずかで済むと羽切氏はいう。その例として挙げられたのが次のスライドだが,これはなかなか興味深いものだった。

「SYSMark 2007」の「E-Learning」テスト(上)と,「CINEBENCH」(下)における消費電力推移を追ったグラフ
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 このスライドは,TDP 17WのCPUをそのまま利用したときと,Configurable TDPにより,TDPを13Wにまで下げた状態とで,ベンチマークテスト中の消費電力を追ったものだ。負荷がそれほど高くないベンチマークを実行したとき(上)だと,TDP値によらず,グラフの線は重なっている。つまり,TDP 13W設定によるTurbo Boostのペナルティは生じていないのだ。
 一方,下は,負荷が高いテストにおける消費電力推移で,Configurable TDPで13Wに設定したほうは13W,そうでないほうは17Wに達するまで,Turbo Boostが効いていると分かる。つまり“出だし”に限れば変わらない性能が得られているわけである。

 Configurable TDPを活用しても,短時間であればTurbo Boost時の最大クロックが同じため,レスポンスのいい使い勝手が得られるということがグラフから分かるだろう。Ultrabookの条件になっている高いレスポンスを満たす技術といってもよさそうだ。


■Decouple Image Update from Screen Referesh


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60Hz設定の場合,従来は1秒に60回のリフレッシュが生じ,そのたびにグラフィックスメモリへのアクセスが発生していたが,eDP 1.3では,リフレッシュをパネル側に任せる「Panel Self Refresh」が利用可能になる
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Webブラウザやワープロなど,一般的な用途だと,画面が大きく切り替わる頻度が低いため,低電力ステートへ落とせる時間が長くなる
 続いて紹介されたのは,Embedded DisplayPort 1.3(eDP1.3)で規格に盛り込まれた「Decouple Image Update from Screen Referesh」だ。長ったらしい名前だが,簡単に言えば,画像に変化がないときにはフラットパネルディスプレイ側にリフレッシュを任せ,グラフィックスメモリのアクセスを停止させてしまおうというもので,ディスプレイの絵が停止している間はGPUやメモリを低電力ステートに落とせるようになる。

 Webブラウジングやテキスト編集などといった一般的な用途では,ディスプレイ表示が動かないケースが多いため,Decouple Image Update from Screen Refereshによる低消費電力化の降下が大いに期待できる。しかし,羽切氏も認めていたが,ゲームでは低消費電力の効果は望み薄だ。あくまでも一般用途向けのバッテリー駆動時間改善機能,くらいに捉えておけばいいだろう。


■Intel Smart Connect Technology


 最後は,いつでも最新の情報が得られるという技術「Intel Smart Connect Technology」だ。

スリープ中,定期的に低電力でスリープから復帰させ,メールやソーシャルネットワークのタイムラインを更新するIntel Smart Connect Technology
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 スマートフォンやタブレットでは,メールやソーシャルネットワークのタイムラインがスリープ中でも更新されるのが当たり前になっているが,PCはいまのところそうではない。その欠点を改善するのがIntel Smart Connect Technologyである。
 スライドで示されたように,本機能では,スリープ状態から定期的に復帰させてネットワークへ接続し,情報を同期しようというもので,対応アプリケーションを用意すれば利用可能になるとのことだった。羽切氏によれば,アプリケーションベンダーとの共同開発を始めているという。


画像集#016のサムネイル/インテル,Ultrabookに向けた技術的課題とその解決法を解説〜IDF 2011 SFを総まとめ
 以上,羽切氏が説明した「Ultrabookに向けた次世代技術」をまとめてみた。いずれも,言ってしまえば,従来からある技術の延長線上にあるものなので,さほど新鮮味はないかもしれない。
 ただ,薄く,軽く,消費電力を抑えつつ,すでにスマートフォンやタブレットで実現されている使い勝手をノートPCでも実現していこうという,Ultrabookの方向性が見えるものだったのも,また確かだ。

 4Gamer的にUltrabookが意義深い存在になってくるのは,単体GPUを内蔵するなどしたドックと組み合わせた製品が多数登場してからになりそうだが,ノートPCの進化の方向性として,Ultrabookが有力な存在であることは,憶えておいて損はしないだろう。

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2013年の市場投入が予定されているHaswellで,アイドル時の消費電力が現行製品比20分の1以下になると予告された
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インテルのプロモーション。TVCFのほか,ディスカバリーチャンネルの「Curiosity 好奇心の扉」を世界的にスポンサードすることが発表されている

インテル
  • 関連タイトル:

    Core i7・i5・i3-3000番台(Ivy Bridge)

  • 関連タイトル:

    Core i7・i5・i3-4000番台(Haswell)

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