インタビュー
「サガ3時空の覇者」は,リメイクによって本当の意味で「サガ」シリーズ作に。NDSで表現される「サガ」らしさとは? 開発者インタビューを掲載
2011年1月6日に,NDS用ソフト「サガ3時空の覇者 Shadow or Light」(以下,サガ3Sol)が発売された。本作は,ゲームボーイ用ソフト「時空の覇者 Sa・Ga 3[完結編]」のリメイク作品だ。
ゲームボーイ版は,サガシリーズの顔である河津秋敏氏が直接手がけていなかったこともあってか,システムは一般的なレベル制のRPGとなり,シリーズの中では異端児的な存在となっていた。そんなサガ3だが,河津氏がシリーズディレクターとして,あらためて手がけるということで,発表時には大きな話題となっていた。発売後は,“サガらしさ”を持つサガ3(Sol)として,サガファンの評価は高いようだ。
では,“サガらしさ”とは,どのようなものなのか。今回発売されたNDS版サガ3を通して「サガ」の魅力を,河津氏とNDS用ソフト「サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY」(以下,サガ2GOD)に引き続きプロデューサーを務める三浦宏之氏に聞いてみた。
「サガ3時空の覇者 Shadow or Light」公式サイト
「サガ」らしい作品に生まれ変わったサガ3Solの魅力
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。ついに,サガ3Solが発売されましたね。私も実際に遊んでみたのですが,思っていた以上に,なんというか「サガ」になっていてびっくりしました。
ありがとうございます(笑)。サガ3Solは,前作サガ2GODのシステムがあったので,それを生かしての開発が念頭にありました。普通のスタイルのRPGだったゲームボーイ版「サガ3」に,バトル中に成長していくという要素や,種族別の成長システムといった「サガ」らしさを取り入れ,さらに,タイムズ・ギアの使い方も「サガ」らしい表現ができました。
これによって,「これぞ『サガ』シリーズのリメイク!」と言える作品になったのでは,と思います。
4Gamer:
サガ2GODがベースになっているということですが,プレイしているとサガ2GODよりも,“らしさ”が洗練されていると個人的に感じました。
河津氏:
それは,プロデューサーの三浦や社内スタッフ,そして外部の開発会社を含めて,ほぼサガ2GODと同じメンバーで制作できたことが大きいですね。ゲームボーイ版の「サガ3」というオリジナルの設定がある中で,どうやってサガ2GODのシステムを反映させて,さらにバトルをテンポ良くしていくのか。サガ2GODの制作で培われた経験を生かして,サガ2GODの一つ上の段階,プラスアルファとなる作品が作れました。
4Gamer:
具体的にどういったところが,サガ2GODから変わったのでしょう。
三浦宏之氏(以下,三浦氏):
サガ2GODのバトルシステムは,たくさんの敵に囲まれても一気に消し去れるという,爽快感をだすことを中心に作っていたんです。
あれはあれで良かったのですが,サガ3Solでは,もっと戦略的に遊べた方が面白いだろうと考え,バトルシステムをしっかりと練り直し,ほぼ作り直しと言っていいほど細かく作り込みました。
4Gamer:
たしかに,サガ2GODのバトルとは雰囲気が大きく変わっていましたね。では,サガ2GODの爽快感タイプのシステムよりも,戦略的なタイプのバトルが面白いと考えたのは,なぜでしょうか。
「サガ3」のさまざまな要素と,サガ2GODのシステムをうまく融合させるには,プレイヤーがいろいろと考えてキャラクターを戦わせ,成長させていくシステムが良いと判断したんです。例えば,サガ3にはプレイヤーキャラクターとして,たくさんの種族がいますが,ただ見た目が変わるだけで,成長の仕方が同じでは面白くないですよね。そこで,種族に応じた成長システムを入れようと考えました。
4Gamer:
キャラクターの成長方法の幅は,本当に広いですよね。より強いモンスターに変身して成長させる方法もあれば,いろいろな種族を経験させて成長させるという方法もあります。
三浦氏:
そうです。システム的には,どんな種族の構成,どんな技の構成でもクリアできるようにしているので,みなさんの好みの遊び方でクリアを目指してほしいですね。メカだとちょっと辛い部分もありますが,それも,一つのやり込みに繋がる要素になればと考えています。
今回は,やりごたえがありますね。リチャージ屋という武器を回復する要素を入れました。これによって,武器の使用回数を回復できるのはメカだけという利点は消えましたが,代わりにメカはほかの種族が上手く扱えない銃器と重火器の性能をフルに引き出せます。ただ,リチャージ屋がなければ,ゲーム自体がもっと難しくなってしまいますから。
4Gamer:
リチャージ屋は便利ですよね。過去作品を知っていたので驚きました。
三浦氏:
僕はリチャージ屋の追加については反対だったんですが,いまのバランスだと,初心者には厳しいんじゃないかという意見がありまして。
4Gamer:
なるほど。ニンテンドーDSのプレイヤー層を考えると,とくに新規のプレイヤーはそうかもしれません。
三浦氏:
だったら,リチャージの値段を高くしようと指示を出しました。
4Gamer:
そこは値段でバランスを取ったわけですね。でも,たしかにサガシリーズの武器って,減っていくのがもったいなくて,思いっきりは使えないなんて人もいますよね。
河津氏:
そのあたりのバランス感は,個人の好みもあって賛否両論だと思います。ストイックなプレイヤーには,「武器がなくなっちゃうのが良いんだよ」という意見もありますし。逆に,サガ3Solは,武器がなくならなくなって良かったという意見もあります。
4Gamer:
陣頭指揮を執っていた三浦さんが,まさにそのストイックさにこだわった一人だったと(笑)。
三浦氏:
ええ(笑)。サガらしさとして,どこまでストイックにしていくか――というのを考えていましたね。
どうもゲームを難しくしがちなので,周りの人からは,もう少し易しくしたほうがいいよと,いつも助言をもらっていました。
そもそも武器がなくなるというのは,いろいろな武器を使って欲しいからなんです。RPGをやっていると,どんどん新しい武器が出てきますが,中には一回も使わないまま,次のもっと強い武器が手に入ることもあります。そういうのを見ていると,せっかく作ってるのにもったいない。いろいろな武器を使ってもらえたほうが,ゲームは面白いはずですし,それが重要だと思っています。
例えばサガシリーズであれば,弱い武器でも雑魚なら倒せるから,強い武器はボスまでとっておくというように,いろいろな武器を使い分けてもらえるシステムとして,耐久度を入れたんですよ。
4Gamer:
ボスを倒すまでの冒険を,武器の消費をどうマネージメントしていくかで考える楽しさがありますね。サガ3Solもリチャージがあるとはいえ,手持ちの武器でどんな風に戦っていくのか,配分計算が必要なケースもありました。強力な攻撃は消費も早いですしね。
河津氏:
あっというまに使い切ってしまいますね。しかもサガ3Solでは,種族ごとにどの武器だと成長しやすいという要素もあるので,誰にどの武器を持たせるのか,その組み合わせを考えながら遊ぶと結構複雑です。
4Gamer:
成長が絡むと,さらに育成方針に悩みますね。
河津氏:
もう,面倒くさければモンスターにしちゃえば良いんですよ(笑)。武器,装備関係のマネージメントは不要になりますからね。
4Gamer:
ああ,そうか! 変身して自給自足しちゃえば良いんだ。突然変異で強くなったりもしますから,これでボス行くか! という気分にもなれます。行き当たりばったり的ですけど,なんとかなっちゃいそうです(笑)。
河津氏:
モンスターは凄く強くなったり,すごく便利なタイプになったりするので,一人でもいるとプレイはかなり楽になりますからね。
4Gamer:
それで良いの!? と思えなくもないですが,そういった自由度の高さが,いかにも「サガ」だなと思えます。一方で,「サガ」シリーズは,バランス的な難度とは別に,ゲームに慣れるまでが難しいという印象がありますが。
河津氏:
そうですね。例えばサガシリーズって,なんとなく遊んでいるだけでは有利な方向へ展開しませんね。プレイヤーが「こうやってプレイしていこう」という明確な意識,指針を決めれば,どういう形にせよそれに応えられるシステムになっているんですよ。ですので,その感触を掴んでもらえるまでは,多少迷うところはあるかもしれません。
4Gamer:
なんとなく進めていると,ストーリー本編を見失って何をすれば良いのか分からなくなるんですよね。サガ3Solでも,始まってすぐにフリーシナリオが出現しますし,本ストーリーから逸れて進めていっても,ちゃんと敵がいて戦うことができる。もっとも,シリーズファンにとっては,これが嬉しいところなんですが。
河津氏:
先ほどおっしゃっていたように,「サガ」は自由度が高いゲームであるということを,ちゃんとスタッフ全体が意識しています。そのため,本来はまだ行くべき方向/場所ではなくても,行けないようにはしていません。
そして,そこにいる敵はある程度は強くても構わないと思っています。それで負けてしまうことがあっても良いというのが「サガ」なんですよ。うまく戦えば勝つことも不可能ではないですし,その結果として,強いモンスターに変化できることもある。それを楽しめることが,ゲームの醍醐味だと思います。
フリーシナリオの新たな境地とタイムズ・ギアのギミック
4Gamer:
そんなギリギリの戦闘が楽しめたり,「サガ」シリーズは戦闘自体が本当に楽しいので,気がつくとストーリーそっちのけで,ハマるんですよね。それも「サガ」らしさだと思うんです。ただ,ストーリー本編から外れて遊べるフリーシナリオもあるので,全然ストーリー本編が進まなくなって。
河津氏:
ふらっと脇道に逸れても,フリーシナリオのサブストーリーが発見できるので,迷い込みやすいですよね(笑)。なんとなく,話が進んでるような気になってしまうんですよ。でも,それを発見する楽しさを,良い感じで設計できたと思います。
4Gamer:
脇道ではありますが,ストーリー本編の外伝的な話にもなっているので,世界観を理解するうえで,遊んでおいて損はない内容だと思いました。
河津氏:
ええ。元々のサガ3は,ストーリーがキッチリとしたものでした。今回,フリーシナリオを充実させたことで,サガ3の物語の幅を広げられたと思います。また,タイムズ・ギアを登場させることで,サガ3の世界観に時間の流れをうまく取り込むことができたと思います。
4Gamer:
タイムズ・ギアといえば,ゲージはシナリオ・シンクロ・システム(SSS)でも必要ですし,バトルでゲージを消費してしまうと……と,ついつい貯めたままバトルで使えずにいることが。
三浦氏:
ありますね(笑)。でも,それほど貯まりにくいということはないので,どんどん使ってほしいです。
河津氏:
開発中に,シナリオでゲージを使うシステムだと,バトル中に思いっきり使えなくなってしまうのではないかという話は,当然ありました。
ですが,そこは消費する数値や,獲得しやすさを調整して,すぐにゲージが貯まるように調整しました。実際にプレイしてみれば,使っても問題ないことに気づいていただけると思います。
4Gamer:
それにしても,タイムズ・ギアを使って過去/未来の仲間を戦闘中に呼び出して,連携に繋がるという要素は驚きました。
三浦氏:
時間を操っている感じの戦闘をやりたかったんです。そこで,サガシリーズの連携という概念と絡めて,未来や過去の自分を呼び出して連携させるのは,新しくて面白いのではと考えました。
その一方で,タイムズ・ギアとSSSの絡みについては,ずっと試行錯誤を重ねましたね。なかなか上手くまとまらなくて,開発終盤ぎりぎりまで調整していました。
- 関連タイトル:
サガ3時空の覇者 Shadow or Light
- この記事のURL:
キーワード
(C)SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved. キャラクターデザイン:小林 元