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[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー
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印刷2011/09/19 00:00

インタビュー

[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー

画像集#003のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー
 東京ゲームショウ2011のビジネスデイ2日目(9月17日),ヴァルハラゲームスタジオの代表取締役である板垣伴信氏にインタビューする機会に恵まれた。

 同社が開発中の注目作「Devil's Third」PlayStation 3 / Xbox 360)のプロデューサーでもある板垣氏。去年のTGS 2010では,同作についての情報だけでなく,もの作りに対する氏の姿勢や,ゲーム業界とその周辺に関する話題など,興味深いお話を聞かせていただいたが(関連記事),今回も非常にエキサイティングなインタビューになったので,ぜひともチェックしてほしい。

「Valhalla Game Studios」公式サイト



“しゃがパン”は必要悪である

「多彩な遊び」にこだわりアリ


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは「Devil's Third」についてお聞きしたいのですが,去年と比べて開発の進歩状況はいかがでしょうか。

板垣伴信(いたがきとものぶ):ヴァルハラゲームスタジオ 代表取締役 CTO。DEAD OR ALIVEシリーズやNINJA GAIDENシリーズを手がけてきたゲームクリエイターで,現在開発中の最新作「Devil's Third」は,世界中のゲーマーから熱い注目を集めている
画像集#001のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー
板垣氏:
 キャラクターや武器はもちろん,ストーリーやムービーも出来上がってきています。あとは,ミニゲームなんかにも着手していますね。

4Gamer:
 Devil's Thirdにはミニゲーム的な遊びも盛り込まれているんですか。シューター要素に注力するだけでなく,多彩な遊びを入れていきたい,ということなんでしょうか。

板垣氏:
 銃を撃ちながら走りまわるだけじゃ,サバイバルゲームみたいじゃない。ゲームはもっとエンターテイメントであるべきだと思うし……やっぱ,殴り合いたいだろ? 

4Gamer:
 そうですね(笑)。

板垣氏:
 日本刀やサーベルがあったら,斬ってみたくなるだろ?

4Gamer:
 なりますねぇ。

板垣氏:
 銃があれば撃つだろ?

4Gamer:
 撃ちますね!

板垣氏:
 そうだろ? それが本能だよな? ゲームなんだから,殺していいって言われたら殺すだろうし,そういう時に武器がしょぼいナイフだけだったりしたら寂しいじゃん。なんかもっと,虐殺したくない?

4Gamer:
 あくまでゲームですからね……気持よく殺りたいですよね。

画像集#004のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー

板垣氏:
 だよね。ゲームなんだから,やっぱり遊びの変化は欲しいじゃない。ジェットコースターだってさ,ずっとコークスクリューで回ってるだけじゃ面白くないだろ? だから,そういう意味でミニゲームなんかもね。

4Gamer:
 なるほど。すでに“こだわり”を詰めている段階なんですね。

板垣氏:
 うん。この間ね,社内で25人のオンラインマルチプレイしたから。もちろん,ディレイやパケットロスもエミュレーションして。

4Gamer:
 すごいですね……いきなり25人ですか……。

板垣氏:
 あとは,AIだね。まだちょっとバカなんだけど。

4Gamer:
 シューターを制作するうえで,効果的なAIを作るのはとくに難しい部分だとよく聞きます。

板垣氏:
 “的”だよね。気持よく殺させてあげるための。演出的な部分で言うと……例えばリアルに考えて,敵が建物の上で棒立ちのまま撃ってくるか?

4Gamer:
 ……ないですね。

板垣氏:
 でも,ゲームでは当たり前のようにやってるだろ? それが必要なら,不自然とはいえ,やらなければいけない。

4Gamer:
ゲームですからねぇ。

板垣氏:
 格ゲーのしゃがみパンチ……“しゃがパン”ってリアルじゃ絶対やらないだろ? でも,しゃがパンは格ゲーに必要じゃん。それを“必要悪”って言うんだよ。

4Gamer:
 確かに……! 言われてみれば,リアルでしゃがパンなんてまず見かけないですもんね。

板垣氏:
 君が俺と喧嘩したとしても,やらないだろ? しゃがパンした瞬間,顔に蹴りが入るよ(笑)。

4Gamer:
 勘弁してください,板垣さんに勝てる絵なんか浮かびません……。というかしゃがパンと見せかけもせずに土下座します。

板垣氏:
 まぁ,“オリジナリティ”って押し売りじゃダメなんだよね。例えば「DEAD OR ALIVE 2」を作ったときの話だけど,ホールドボタンじゃなくてフリーボタンを採用して,「バーチャファイター」と同じようにガードボタンとしても使えるようにしたんだよ。そうすれば,お客さんも入って来やすいでしょ? だから,操作方法とかに関しては,慣れ親しんでいるパターンがあるならマネすればいいし,しゃがパンが必要なら入れるべきだし。

画像集#005のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー

4Gamer:
 なるほど,プレイアビリティの面に関しても,Devil's Thirdは相当こだわりを持って作られていそうですね。では,今後はどういった部分を作り込んで行く予定なんでしょうか。

板垣氏:
 ゲームの外回りだね。「DEAD OR ALIVE 4」でロビーがあったでしょ。ペンギンを撫でられたり,魚がビチビチ跳ねてたりとか……あのモーション作るの大変だったんだよ! 俺はもう魚の跳ね方には凄いこだわりがあるからね。

4Gamer:
 さ,魚の跳ね方にですか!?

板垣氏:
 うちの岡本(編注:岡本好古氏。「DEAD OR ALIVE」シリーズや「NINJA GAIDEN」シリーズの制作に関わってきた,板垣氏の右腕的存在)が担当だったんだけど,研究に2週間くらいかかったね。ヤシの木が生えた島があって,魚がスイスイ泳いでる。そこで「板垣さん,これ魚が島の上に行ったらどうなるんですか?」って聞かれたから,「バカヤロウお前,ビチビチ跳ねるんだよ!」つって(笑)。

一同:
 (笑)。

板垣氏:
 でもまぁ,ゲームの外回りっていうのは,ロビーがどうとか物理的な話じゃなくて,“遊び”のことなんだけどね。Devil's Thirdに関しては,魚をビチビチ跳ねさせるユーモアのことを言っているわけじゃない。ゲームの外回りにゲーム性を持たせるということです。

4Gamer:
 なるほど,先ほどの“エンターテイメント”にも関わってくる部分ですね。

板垣氏:
 しかしクリエイターとして,独立してゲームを作れるなんて,こんなに幸せなことはないですよ。だって俺,独立してから3年もゲームを発売してないんだよ?

4Gamer:
 そういえば確かに……。だからこそ,Devil's Thirdは非常に多くの注目を集めていますよね。

板垣氏:
 いやね,実は,本当のところ,それが自慢なんだよ(笑)。信頼関係だよね。期待してくれているファンがいるからこそ,成り立っている。だから,ファンの皆さんも「俺達のおかげでヴァルハラはゲームを作れてるんだぜ」と,友達に自慢して回ってください。

4Gamer:
 分かりました(笑)。では実際に,ユーザーがDevil's Thirdを体験できるのは,いつ頃になりそうでしょうか。

板垣氏:
 あくまで計画だけど,来年かな。クローズドβテストとオープンβテストをやろうと思っています。今回,ホントはゲームのオリジナリティを取りまとめた映像を見せようと思ってたんだけど,色々考えた結果,サスペンドすることにしました。Devil's Thirdで勝利するための選択です。期待してくれていた人達には,ホントに申し訳ないんだけどね。

画像集#007のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー


いつの間にやらクランマスターに?

小学生から人生相談を受ける板垣氏


4Gamer:
 それでは,ここからは話題を変えまして。最近ハマっているゲームとかありますか?

画像集#002のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー
板垣氏:
 タイトルは言えないけど,ソーシャル系のゲーム。MMOとかMOね。研究としてプレイしてたらハマっちゃって,何か月もずっと酒飲みながら遊んでたら,岡本が俺の家に「会社で仕事してください」って迎えに来た(笑)。

4Gamer:
 随分とロックな生活を送っていたんですね……。

板垣氏:
 オンラインゲーム系では,年齢なんかは言わないほうがいいんだけど,一緒に遊んでると小学生とかカミングアウトしちゃうんだよね。で,俺は物書きになろうと思ってたくらいだから,チャットでも文章にこだわるんだよ。人を楽しませたいから。そしたらなんか,気が付いたらクランの頭になってて。

4Gamer:
 クランマスターにされちゃったんですか(笑)。

板垣氏:
 で,人生相談とかされるんだよ。

4Gamer:
 人生相談!?

板垣氏:
 いやマジで。 

4Gamer:
 それは小学生とかが相手ということですよね? ……どういう相談なんです?

板垣氏:
 プライベートに関わる部分は言えないけど……細かいところでは「明日もゲームやりたいんだけど,雨だったら運動会休みになるんだよね。雨になるかなぁ?」とか(笑)。

4Gamer:
 微笑ましすぎる!

板垣氏:
 で,「お前どこだっけ? 天気予報パパっと見られるんじゃねーの?」って答えたら「やったー! 雨だ!」みたいな(笑)。

4Gamer:
 ちゃんと真面目に答えてあげるんですね。ギャップ萌えですよもはや……。

板垣氏:
 仲の悪い奴らもいてさ,両方が俺に「何とかしてくれ」って相談してくるんだよ。まぁ俺はね,実社会なら“法廷における闘争”という手段を選ぶけど,これはゲームだから(笑)。とりあえずしばらく,「アイツがいるときはゲームに入らないほうがいいんじゃない?」って,お互いにね。くだらないことばかり喋ってたよ。

4Gamer:
 さりげなく刺激的な発言をされていましたが……それはさておき,すっかりコミュニティの中心じゃないですか。ソーシャルゲームの面白さをフルに味わえていますね。

板垣氏:
 そうだね。チャットなんか,普段はシーンとしてるんだけど,俺がゲームに入った途端に賑やかになったり,俺が落ちたらほかのヤツらも一緒に落ちたり。

4Gamer:
 しかし,そんなに発言する頻度が高いんですか?

板垣氏:
 ていうか俺,会話しかしてないから(笑)。

4Gamer:
 狩りとか行かないんですか!?

板垣氏:
 そういう要素はなるべく課金で片付ける。とりあえずチャットだね。いつも酒飲みながらプレイしてるから,「あんまり飲み過ぎないでくださいよ,今日は3時からイベントあるんですから」「大丈夫だよ,まだビールしか飲んでねーよ」っていうやり取りがあったり(笑)。ずっとそんな感じだったよ。


最近では“フィリップごっこ”がお気に入り

「セインツロウ ザ・サード」はマストバイ


4Gamer:
 そういえば先日,「セインツロウ ザ・サード」PS3 / Xbox 360)のプレスカンファレンスにサプライズゲストとして登場していましたが(関連記事),なにやら同作にはかなり期待されているとか。

板垣氏:
 俺が嘘付かない人間だってことは知ってるよね。失敗はするけど嘘は付かない。でね,相手がTHQだからお世辞を言ってるとかじゃなくて,マジで狂ってるよあのゲーム(笑)。E3でずっと遊んでたんだけどさ,もうあれはマストだよ。マストバイ。とにかく面白い。

4Gamer:
 クレイジーにもほどがありますよね。大好きです。

板垣氏:
 すごいね。戦闘機に,顔面車両とか人間大砲とか。だけど,ちゃんとカッコいいところはカッコいい。最高だよね,ああいうの。

4Gamer:
 登場するキャラクター達は,どいつもこいつもスタイルがキマってますよね。

板垣氏:
 キマッてる。とくに,シンジケートのフィリップ(フィリップ・ローレン)は最高。彼の佇まい,いかにも“ワル”な雰囲気がカッコいいよね。

4Gamer:
 随分と惚れ込んでいるようですね。

板垣氏:
 登場する時の曲がまた良いんだよ。ずっと“フィリップごっこ”やってるもん俺。

4Gamer:
 フィリップごっこって,具体的にはどういう感じなんです?

板垣氏:
 トレイラー見てよ。エレベーター前でフィリップが,吸いさしのタバコを女の子に渡して,セインツの門番をワンパンでKOするやつ。で,そのままエレベーターに乗り込んで,スッとタバコを受け取るの。

4Gamer:
 カッコいい……!

板垣氏:
 だろ!? カッコいいだろ!? 飛び道具とかじゃなくて拳でってところも。フィリップの立場なら,自分で手を下す必要もないはずなんだよ。

4Gamer:
 腕っ節が強いボスというのは,やっぱりカリスマ性がありますよねぇ。しかし,お話を聞いていると「セインツロウ ザ・サード」は板垣さんの考えるエンターテイメントの中で,かなり上位に位置する作品なんですね。

板垣氏:
 そうだね。

4Gamer:
 ゲームのジャンルは違いますが,Devil's Thirdが,セインツロウ ザ・サードに勝るとも劣らないぶっ飛んだエンターテイメントになることを,楽しみにしています。
 それでは,名残り惜しいのですが最後に,Devil's Thirdに期待しているファンの皆さんに一言お願いします。

板垣氏:
 完成しているところは完成していますし,これから作るところも,頭の中ではプレイできています。未だかつてないシューターに仕上げますので,期待して待っていてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

板垣氏に「ちょっと来いよ」と言われた瞬間,筆者は躊躇なく土下座をしかけたのだが,実はツーショット撮影の許可だったので心底ホッとした。ヴァルハラゲームスタジオでDevil's Thirdを試遊させてもらうまで,板垣氏に“ヴァルハラ送り”されるわけにはいかない……
画像集#006のサムネイル/[TGS 2011]極上のエンターテイメントのために“必要悪”を利用し,ソーシャルゲーム研究も欠かさない。ヴァルハラゲームスタジオ“代表取締役”兼“プロデューサー”兼“クランマスター”の板垣伴信氏にインタビュー
 具体性のある発言の数々から,着々と開発が進行していることを感じ取れるDevil's Third。去年行ったインタビューでは,オンライン対戦について「現状では最大16人による対戦を実現していますが,最終的には最大24人,32人? どこまで行けるか。とにかく多ければ多いほど良いと思ってます」と語っていた板垣氏だが,現時点ですでに,25人対戦がかろうじて動いているということも明らかにされ,本作に対する期待はますます高まるばかりである。
 また,ソーシャルゲームやセインツロウ ザ・サードの話からも,ゲーム作りに対する板垣氏の真摯な姿勢や,稀有な“カリスマ性”“センス”が感じ取れて,個人的にも非常に面白いインタビューとなった。計画どおりにいけば,来年にはβテストが実現しそうなDevil's Thirdだが,来年のTGSでも,ぜひ直接お話を聞かせていただきたいものである。

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