【ミートたけし】田中公平，伊藤賢治，ミートたけし音楽談義

ミートたけし /  川村 竜  / ベーシスト，作編曲家 ，ストリーマー

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第16回：田中公平，伊藤賢治，ミートたけし音楽談義

　皆さん，あけましておめでとうございます！

　……なんてあいさつではさすがに違和感を覚えてしまうぐらい，年明けからいろいろなことがありすぎて，まだ1月なのが信じられないくらいですが，皆さんはお元気でしょうか？
　TVもネットもあの話題ばかりで辟易している方も多いと思いますが，今日はこの連載の新年一発目ということで豪華にしてみましたよ。なんと言ってもあの田中公平とあのイトケンと，このミートたけしの飲み会の話なんだから！

　……そう。
　つまりこれは正式な対談などではなく，年明け3人で飲んで話した内容がめっちゃ良かったので2人には事後承諾で書いているだけのモノだ。別に怒られたっていい！　そのときは「ごめんなさい」で解決だ！　みんなも悪いことをしたらちゃんと謝れる大人になろうぜ！
　とまぁ，別に怒られるようなことを書くつもりはないが，本当にいい話ができたので，これはいつか4Gamerさんで対談化してほしいと願いつつ，書いていきたいと思う。

先日の豪華すぎる飲み会

滅多に音楽の話にならない我々

　実は，我々が集まる飲み会の席で，音楽の話には滅多にならない。むしろ公平さんと飲むときは，音楽の話になることなどほとんどなく，いつも笑い話に終始している。
　一方，イトケンさんこと伊藤賢治さんは音楽に対してとても真っ直ぐな方。今回，我々が音楽について熱く語り合った原因は，間違いなくイトケンさんの存在があったからだと思っている（別に私と公平さんが真っ直ぐじゃないわけではない！　はず！　多分）。
　行きつけのレストラン・バーのオーナーさんも，「皆さんが音楽の話をしているのを初めて見ました」なんて言ってきたぐらいだ。

　公平さんの印象的な言葉で「人が作り出したモノにあれこれ言うのはナンセンスだ」というものがあった。そして続けて「でもイトケンと竜ちゃんには言ってもいいよね」ともおっしゃってくださった。これは信頼関係があるからこそだ。もちろんイトケンさんも私も今までこの仕事をやってきて，誰かに何かを言われたところで自分の何かを変えることなど滅多にないだろう。
　しかし公平さんの考えや意見を自分の作品にぶつけてもらえると，プラスとして受け止められる。これもまた，こちらが公平さんを信頼しているからなのだ。

これからどうやって生きていくか？

　この3人で，とりわけ公平さんとイトケンさんが，「これからどうやって生きていくか？」なんてことを考えているだなんて，皆さんきっと驚くことだろう。だがこのお2人，常にそれを考えているのだ。だから恐ろしいのだ……。
　常に昨日の自分よりも輝こうとしている。公平さんと初めて作曲家としてお仕事をさせていただいたのは，アニメ「鬼平」（鬼平犯科帳アニメ版）だった。OP曲を作ろうという段階で宮 繁之監督からは，「オーケストラとか壮大なものではなくバンドサウンドを目指している」というオーダーを受け，デモ曲を提出する2日前まで私は必死にバンドサウンドの曲を作っていた。
　そんな折，グループメールで公平さんから「こんな曲作ってみたんだけど」と，バリバリの壮大なオーケストラサウンドのデモが送られてきた。「これで行きましょう！」と一発で決まった。穴を掘って埋めてやろうかと思った。おっと，本音が漏れた。失礼。だが冗談半分，本気半分。

　これが作曲家としてトップに君臨し続ける人間のバイタリティと実力なんだ，と思い知らされた。本当に悔しかったが本当に感動した。
　とまぁ，要するに公平さんは手加減なんてものを知らないのである。大御所としての実力と経験値を持ちながら，心は今日デビューしたばかりの新人作曲家のようなエネルギーを持ち続けている。
　まじで迷惑だ。目の上のたんこぶだ。ただやはり，この人と胸を張って対等にいや，むしろ上から見下ろすぐらいにならなければいけないのだ。そう考えると，人生って全然時間が足りないのである。

大尊敬の目の上のたんこぶ、公平さん

自分に足りないもの

　私から見れば，イトケンさんも公平さんに並ぶ大先輩。「サガ」シリーズの音楽は，我々世代で知らない奴なんていないのではないだろうか。
　10年程前に，公平さんとイトケンさんのオーケストラコラボコンサートが池袋の東京芸術劇場で開催され，そのときのバンドマスターを担当させていただいたことがある。


　イトケンさんとお仕事をさせていただいのはそのときが初めてで，それからは「四魔貴族」や「七英雄」「下水道」など，名曲の数々を一緒に演奏する経験に恵まれた。これは本当に宝物だ。
　スクウェア・エニックスのJAZZアレンジプロジェクトで，イトケンさんの曲をアレンジしたときも，感謝と愛情をこれでもかと込めさせていただいた。
　しかしそんなイトケンさんでも，まだまだやりたいこと，目指しているものがあるという。なんてことだ。ここにも目の上のたんこぶがいたのだ……。

　自慢ではないがお2人に比べて，自分にはヒット曲と呼べるものが1曲もない。某掲示板やそっち系サイトの悪口にもよく書かれている。しかしヒット曲もないのに，この世界でずっとやれているのは逆にすごい，と公平さんはおっしゃる。しかし，そろそろヒット曲出しなさい，とも公平さんはおっしゃる。

　冒頭の話に戻るが，この飲み会も中盤になるとお互いの作品の批評会になった。そこで公平さんに言われたのは，「竜ちゃんは頭が良すぎる。センスが良すぎる。でもそれはいいことばかりではない。もっとバカになりなさい」ということだった。
　もっともっと具体的な意見やアドバイスもあったのだが，とにかく一番心に刺さったのが，「バカになりなさい」だったのだ。

　これは非常に破壊力のある言葉だった。確かに私は頭がいい。センスもある。お金もあるし女の子にも不自由しない。ただ太っている。いつ死んでもおかしくない。しかし，「バカになれ」と言われて，ハッとするものがあった……。
　ここで白目をむいて鼻水出しつつ半裸になって街中で踊り出したら，それは本当のバカでしかないが，私はこの公平さんの言葉を「一度持っているものをすべて手放してみろ」という意味に解釈をした。
　経験や知識，技術はときとして，ぜい肉になるのかもしれない。この1年，心と身体と音楽のぜい肉を削ぎ落とす1年にしようと固く誓うことができた日でもあった。ごめん，やっぱり心と音楽のぜい肉に留めておく。何事も欲張りすぎると良くない。身体は後回しだ。

音楽談義後日談

　ここからは後日談というより二次会の話になる。公平さんの熱に当てられたイトケンさんと私。タクシーで帰る公平さんを見送ったあとは実に自然な流れで「もう一軒行こっか？」となった。
　鼻息の荒くなった我々はお互いの今後の野望を語り合った。そこでイトケンさんが「僕は竜くんのこと戦友だと思ってる」と言ってくださったときは，ラーメン二郎の大をアブラヤサイマシマシニンニクマシカラカラで完食した瞬間に得られる多幸感を遥かに上回った。

戦友の称号を頂いたイトケンさんと

　今思えば公平さんは，我々がこうして決意を新たに様々なアイデアを出し合うことすら予想していたのではないだろうか。と思ったら翌日こんな連絡が来てたので、そこまでは考えていなかったようだ。

田中・地獄耳・公平さんからの恐ろしい連絡

　そんなイトケンさんとのサシ飲みは，もちろん公平さんの悪口などは一切なく（多分），お互いのアイデアを持ちよってあれやこれやを形にしていこうという話になったので，ぜひ今後に注目してほしい。

　というわけで新年を迎えて濃すぎるメンツで濃すぎる話をした１日の，ほんのワンシーンを皆さんにお届けしてみた。ぜひ今後の私の活動を通して，ほかにはどんな話をしたんだろう？　なんて思いを馳せてもらえたらうれしい。
　とりあえず今年の目標としては，本を出したい！　というものがある。こくじん（こく兄）が先に書籍を出版し，先日2人で食事をしたときに「いやぁ，俺なんかがなんか悪いね！　ミートさんのほうが出せそうなのにね！　悪いね！」と散々煽り散らされたので4Gamerさん，読者の皆さん。どうか応援のほどよろしくお願いしたい。

　みんなが応援してくれているから，私は今，嫉妬の業火に焼かれずに生きていられるのだ。そう，今年も世界の平和が私を守るってわけ。すんごい無理やりでごめん。また来月お会いしましょう！

■■ミートたけし / 川村 竜（ベーシスト，作編曲家 ，ストリーマー）■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ，配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で，雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。