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[CEDEC 2012]「GOD EATER」のリードアニメーターが,ポージングによる“中二的”キャラクターの表現方法を紹介
河野氏は,GOD EATERの開発スタート時に,アートディレクターから「開発期間が少ないので,少ない演技を使い回したい。したがって,かっこいいポーズでキャラクターを表現してほしい」という注文を受けた。
そこで河野氏はまず,「GOD EATERにおけるかっこよさ」を考えたという。GOD EATERのターゲットは中高生であり,キャラクターのビジュアルも中高生好みの尖ったものだったことから,河野氏は「GOD EATERに必要なのは“中二キャラクター”だ」という結論に行き着いたという。
河野氏の見解によれば,中二キャラクターとは,「中二病のまっただ中にいる人に,ものすごく好まれるキャラクター」とのこと。中二病というのは,インターネット上などではかなりの認知度を持つ言葉で,「うまくもないコーヒーを飲み始める」「クラスメイトとどこか違う感じを出したがる」など,思春期の少年少女がとってしまいがちな行動をやや誇張して表現したものだ。
河野氏は,中二病をより深く理解するため,その“症例”を6つに分類した。それは,以下のスライドのとおりだ。
●自分はもう大人だとアピールしたい | ●自分は社会の規制に怯まない,強い存在だとアピールしたい |
このあたりは誰でも思い当たる節があるのではないだろうか |
ルールに縛られたくない,という感情 |
●独立心と依存した現実との葛藤 | ●今までの自分に疑問を持ち,これまでと違うことをする |
結局は家族に養われている,という事実にイライラする |
母親が買ってきた服を着なくなり,代わりにダメージジーンズをはくようになる,といったようなこと |
●やればできると思う | ●他人より物事の本質を分かっていると思いたい |
より正確に言えば「努力せずにできると思う」といったところだろうか |
「人気の出たバンドを『無名の時から知っている』」は河野氏も身に覚えがあるという |
ここで河野氏は「アニメーション・メソッド」という手法を紹介した。これは,河野氏が心理学などを参考にして,キャラクター性や心理状態を表す体の動きを独自にまとめたものだ。今回は「相手への意識の強さ」「オープン・ポジションとクローズド・ポジション」「性別による違い」という3つのポイントが,実例を通して紹介された。
最初の「相手への意識の強さ」は,視線や体の向きによって相手への興味を表現するというものだ。まったく興味がなければ視線すら合わせず,興味津々なら頭と胸,腰がすべて相手に向くといった具合だ。
次の「オープン・ポジションとクローズド・ポジション」は,腕や脚の開き方,背中の角度などによって,受け入れや拒絶,自信や思考などの心理状態を表すもの。
河野氏がオープン・ポジションの好例として挙げたのが,少し前に女子高生の間ではやった「eggポーズ」。これは両腕を広げ,さらに手の指まで広げるというもので,相手への友好的な態度やオープンさが表現されているという。
アニメーション・メソッドの説明が終わると,河野氏は実際にアニメーション・メソッドを使ったキャラクター作りを披露した。
表現すべきキャラクターは18歳の男性。「他人より優れた能力がある」「他人とのなれ合いを好まない」という特徴があり,「大人であることを主張」「自分探しをしたい」という心理状態に置かれている。典型的な中二病だ。
河野氏はまず,キャラクターを斜め45°に向けた。これは大人であることの主張と,なれ合いを好まないということを表現している。仮に正面を向いていれば,子どもらしい素直なキャラクターということになるわけだ。
次は脚を開き,オープン・ポジションを取らせる。これは能力の高さを表すものだ。あまりに広げすぎると,なれ合いを好まないという特徴が消えてしまうので,「そこそこに」(河野氏)。加えて,男性なので,関節を外向きに広げる。
続いては,背中を丸め気味に。これは「思考」を表すクローズド・ポジションで,自分探しを表現している。
さらに,両足が揃ったままだと下半身が緊張した状態になるので,片足に重心を乗せる。背筋がS字を描くようにするといいのだという。
最後に,相手への意識の強さを示すため,頭をやや正面に振って,中二病キャラクターのポージングが完成。これはGOD EATERのキャラクターである,ソーマのポーズとして実際に採用されているが,素の状態に比べて,確かに中二病的な,「いきがってる」感じが出ている。
ソーマに続いて,ほかのキャラクターのポージングも紹介された。下の写真がそのスライドだが,注目すべきは,女性キャラクターのポーズがアニメーション・メソッドの女性的なポーズには当てはまらないことだ。河野氏によると,GOD EATERの女性キャラクターはみんな芯が強い性格なので,あえて関節を内向きにしたポーズは取らせなかったという。
これはソーマのポージングでも出てきた「S字」をもっと簡単に表現したものであり,自分探しを表現するために背中を曲げて,片足に重心を乗せると,自然に骨盤が斜めになり,くねくねした感じになる。
実はこのくねくねポーズ,有名な中二病キャラクターにも使われている。セッションのスライドでは「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイや,「DEATH NOTE」の夜神 月,「機動戦士ガンダム00」の刹那・F・セイエイなどがくねくねポーズをとっているイラストが紹介された。残念ながら権利上の問題で写真は掲載できないのだが,興味のある人は各自調べてみてほしい。「なるほど」と思えるイラストが見つかるかもしれない。
「GOD EATER BURST」公式サイト
「CEDEC 2012」公式サイト
セッションの内容は以上となる。
キャラクターを表現する方法の1つとしてポージングがあるということは理解していたつもりだったが,体の各部の動きが表す意味を丁寧に説明されると,その表現の幅の広さに驚かされた。これから,ゲームのキャラクターイラストを見る楽しみが増えそうだ。
人と話すとき,目をそらせたり,腕を組んだりすることはやめようと改めて思ったセッションでもあった。
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(C)2010 NBGI
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