レビュー
ゲームの雰囲気をすっかり変えて帰ってきたスーパーエージェント
スプリンターセル コンヴィクション
ステルスアクションの人気シリーズ最新作,「スプリンターセル コンヴィクション」(以下,コンヴィクション)が2010年4月28日にユービーアイソフトから発売された。対応機種はXbox 360。
凄腕の工作員サム・フィッシャーとなったプレイヤーが敵地の奥深くに潜入し,人知れず任務を果たすというスプリンターセルシリーズ。「レッド・オクトーバーを追え」「いま,そこにある危機」など,多数の著名な軍事小説を手がけるアメリカの作家,トム・クランシー氏が監修を行い,実在の国や機関,兵器などが登場するリアルな設定は,今回のコンヴィクションでも健在だ。
本シリーズはUbisoft Entertainmentのモントリオールスタジオと,上海スタジオが交互に開発をしており,5作目となる本作はモントリオールスタジオが担当している。
ちなみに前作「スプリンターセル:二重スパイ」は上海スタジオが制作したもので,ユービーアイソフトからリリースされたXbox 360版は英語音声+日本語字幕で,マルチプレイはローカライズされていないという仕様だった。今回は,ザコ敵や一般市民を含む,すべての登場人物のセリフが日本語吹き替えとなっており,主人公のサム・フィッシャーを玄田哲章さんが,また,サムの戦友で彼の任務をサポートしてくれるヴィクター・コステを若本規夫さん,同じくサムのサポートを担当するサードエシュロンの技術者,アンナ・グリムスドッティアを田中敦子さん,そして,サードエシュロン局長のトーマス・ジェフリー・リードを小山力也さんが担当している。海外ドラマや洋画の吹き替えでもおなじみの豪華キャストが集結しており,ローカライズにはかなり気合が入っている。
さて,ここで軽くストーリーについて紹介しておこう。主人公のサム・フィッシャーはNSA(アメリカ国家安全保障局)に設置された「サードエシュロン」に所属する工作員だ。一人娘のサラと二人で暮らしていたが,サムが任務に出かけている間に,サラが交通事故で亡くなってしまう。ところが,その事故にはサードエシュロンが関わっていた。
そこでサムは組織を抜け,娘の死の真相について単独で調査を開始するのだが,かつて自分が所属した組織から命を狙われる立場となってしまう。国家機関にマークされたサムではあるが,仲間のサポートを受け,事故に関わった人物が企てている陰謀を阻止するために行動を開始する。
こうしたストーリーであるため,本作のサムは今までのような冷静沈着なエージェントではなく,復讐に燃える一人の男。従来作のように,こっそり敵地に潜入することも可能だが,これまで見られなかったような,荒っぽいアクションも平然と行う。新作がリリースされるたびに進化してきたスプリンターセルだが,コンヴィクションでは,どのようなゲームに仕上がっているのだろうか?
「スプリンターセル コンヴィクション」公式サイト
今までのシリーズとはここが違う!
サムが繰り出すアクションの数々
コンヴィクションをプレイしてまず気づいた点は,サムが身を隠す暗闇の表現方法だ。前作までのサムは,トレードマークの特殊スーツに取り付けられたセンサーによって光を検知し,自分が敵から見えない場所にいるかどうかをバーで確認できたが,本作では画面全体の色の変化で判別するようになる。人目につくところや,ライトに照らされた場所にいれば画面全体が明るくなるし,物陰に身を隠したり,ライトを破壊してしまえば色調がモノクロになり,敵からは見えないことが直感的に分かる。
また,ステージによっては多数のNPCがいることがあり,彼らに溶け込んで敵の追跡から逃れたりすることも可能だ。このフィーチャーは,ユービーアイソフトのもう一つの人気シリーズ,アサシン クリードでも採用されており(「ソーシャルステルス」と呼ばれる),おそらくその技術を応用したものと思われる。人ごみで誰かにぶつかると,相手が「気をつけなさいよ」とか「どこ見てんだ!」などと反応することがあり,このへんもアサシン クリードによく似ている。
パイプにぶら下がって移動したり,フェンスをよじ登って乗り越えたり,まったく音を立てずに移動したりなど,並はずれた身体能力が自慢のサムだが,本作ではさらに磨きがかかり,超人的な能力を身につけている。中でも特筆すべきは「マーク&アクション」という攻撃方法。
彼は敵にこっそり近づいて格闘を仕掛けることができ,これをやるとアクションゲージが溜まる。このゲージが溜まった状態で,敵に照準を合わせると「マーキング」が可能になり,その後しかるべきボタンを押せば,自動的にマークされた敵を撃ち倒す。これがマーク&アクションで,攻撃時のアニメーションやカメラワークがとてもカッコよく,複数の敵をまとめて倒せる便利なものだ。
とはいえ,たとえマークできたとしても,持っている武器の射程距離外にいる敵は攻撃してくれない。また,マークできる相手の数は武器によって異なり,たいていは二人,ショットガンやアサルトライフルの一部で三人をマーキングできる。
従来作では,倒した敵を担いで目立たない場所に隠すことができたが,今回はついにそれができなくなった。スプリンターセルシリーズの特徴の一つではあったが,個人的には面倒臭さを感じており,廃止されたことでゲームの展開がスムースになると思う。この改良は歓迎したい。
ちなみに,敵が仲間の死体を見つけると「あの老いぼれ(サムのこと)め!」とか「おまえの仇は俺が取ってやる」などといろいろな反応を見せてくれて,それも面白い。
さらに「ラスト・ノウン・ポジション」というシステムが追加されている。これは移動中に見つかると,サムが発見された場所に白い影が残るというもので,敵はサムがそこにいると誤認するのだ。
これにより敵は「まだ近くにいるはずだ!」と白い影の場所に集まってきたり,そこへ向かって銃を乱射したりするので,そのスキに先へ進んだり,集まった敵にフラググレネードを投げてまとめて倒したりなど,いろいろ応用が利いて楽しい。これまでは敵を倒すことより,見つからないように潜入することのほうに重点が置かれていたが,今回のサムはかなり攻めの姿勢が強く,戦闘における爽快感が増している。
ただし,いくら強くなったとはいえ,サムも普通の人間。敵に見つかって囲まれたりすると,意外なほどあっさり倒されてしまう。
そのほか,戦闘とはちょっと違うが,特定の場所でキーパーソンを捕まえて,「尋問」することも可能になった。尋問とは言っても,実際はかなり荒っぽいもので,例えばトイレで尋問すれば,顔面を便器に叩きつけたり,キッチンなら熱せられたコンロに体を押し付けたりと,やることが相当エグい。情報を得るためなら敵に苦痛を与えるのをためらわないという新たなサムの姿には,かなり衝撃を受けた。
これまでのスプリンターセルシリーズでは,「アラート(敵が警戒態勢になる)を鳴らされた回数が少ない」「倒した敵の数が少ない」「達成できた任務の数が多い」など,できる限り戦闘を控えたほうが評価が高くなるというシステムがあった。だが,本作ではそうした評価システムはなくなり,代わりに「P.E.C.チャレンジ」という要素が追加されている。
これはミッション中に「気づかれずに5人の敵を連続して倒す」「フラッシュバンを使って姿をくらまし,戦闘から逃れる」など,あらかじめ設定された目標を達成することで自動的にポイントが得られる仕掛け。詳しくは後述するが,このポイントを使って武器やマルチプレイ用コスチュームなどのアップグレードを行うのだ。
リアルな設定がプレイヤーをゲームの世界へ引き込む
スプリンターセルシリーズの魅力的な特徴として,現実に起こりそうなシナリオだったり,実在の銃火器や最先端のガジェットが登場したりすることが挙げられる。
本作も例外ではなく,武器の種類は豊富だ。ピストル,サブマシンガン,アサルトライフル,ショットガンなど,ほとんど実在のものばかりで,ミリタリーファンにもアピールできる要素だろう。ちなみに日本語版には,海外版で特典として用意された武器が最初から収録されているというオマケがついている。なお,前作にあったゴム弾(一定時間敵を気絶させる殺傷力のない弾)やEMP弾(電子機器を使えなくする弾)はなくなり,すべての武器は実弾を使用し,殺傷力を持つ。
サム・フィッシャーといえば,頭につけた暗視ゴーグルの印象が筆者にとって強いのだが,コンヴィクションではある程度ゲームを進めないと,これを使えない。ただ,性能はかなりのもので,壁の向こうにいる敵の姿や,赤外線(触れるとタレットが起動する)が出ている場所が見えたりするハイテクぶりだ。ただ,ゴーグルを付けっぱなしにしているとノイズが入って映像が乱れるので,不要な場所ではスイッチを切ることも大事だ。
ゲーム開始時は一部の武器/ガジェットがロックされているが,これはゲームを進めることでアンロックされていく。ステージの特定の場所には武器庫が設置されており,ミッションの進展に応じて装備を交換できるところは便利。武器のアップグレードもここで行える。
すべての武器とガジェットは,上述したとおり,P.E.C.チャレンジで獲得したポイントを使ってアップグレードが可能であり,例えばアサルトライフルにサイレンサーを装着して発砲時の音と閃光を抑えたり,反射式サイトをつけてマーキングできる数を増やしたり,フラッシュバンの効果持続時間を延ばしたりなど,さまざまな強化ができる。
ゲームが進むにつれて敵の防御力が上がり倒しにくくなるので,それらへの対策として武器の強化はぜひ行っていこう。ただし,すべての武器をアップグレードするには莫大なポイントが必要になる。最初のうちは自分がよく使うものを中心に行っていくといいだろう。
やり応えのあるストーリーモード
ゲームのメインとなるストーリーモードは,全部で11ステージ。難度はルーキー,ノーマル,リアルの三段階から選ぶことが可能で,それぞれ試してみたところ,ルーキーは敵の反応が甘めで,撃たれても即死しないので多少の無茶が利くが,リアルでは敵の反応が鋭く,サムも撃たれ弱いので慎重な操作が求められるという雰囲気。出てくる敵の数やステージの内容に変化はないようだ。
筆者はノーマルで遊んでみたものの,それでもなかなか難しく,途中でつまずいて最初からやり直すハメに陥った。全体的な難度は高めなので,リアル系のFPSやTPSを遊び慣れていない人は,まずはルーキーから挑んでみよう。
ゲームは地中海のマルタ島からスタートするが,ここはチュートリアルも兼ねており,どうやって操作すればいいかを細かく教えてくれる。
コンヴィクションでユニークなのは,BACKボタンを押すことで,周囲の壁や地面に「Enter Kobin's Mansion」(コビンのマンションに侵入しろ)とか「Catch the Killer」(殺し屋を捕まえろ)など,現在の目的が表示されるところだろう。ポーズをかけてミッションの内容を確認することも可能だが,こうした演出はクールでカッコいい。
スプリンターセルといえば暗闇に身を潜めてこっそり移動というイメージが強いが,本作では明るいステージも多い。物陰に身を隠して敵をやり過ごしてもいいし,ほかのFPSやTPSのように歯向かう者は容赦なく倒してもいいというプレイの自由度も高く,プレイヤーの性格が出そうなところだ。
P.E.C.チャレンジを見ると,「一発も撃たずにリトライなしでステージをクリアしろ」「敵に発見されることなくリトライなしでステージをクリアしろ」といったものがあるので,十分やり込めば,戦闘を最小限に抑えることも可能なようだ。
海外メディアのレビューなどで,「ストーリーモードが短め」と言われることもあるが,筆者個人の感想をいえば,そうは感じなかった。ノーマルでプレイしたところ,後半で少々詰まり,エンディングを迎えるのに15時間ほどを要した。この手のゲームとしては標準的だと思う。
また,ストーリーモードは内容の濃い映画を何本か見たような錯覚を覚えるほど充実しており,キャラクター同士の思惑が交錯するシナリオは手に汗握る展開だ。ただ,ミッションによっては,意外なほどあっさり終わるものがあり,内容にややばらつきがあるのも事実だ。
エンディングは,最終ミッションでサムがどちらを選択したかで二つに分岐するマルチエンディング仕様。もちろん,ここには書けないが,ぜひ二つともチェックしてほしい。きっとあなたも筆者同様,意外な展開にビックリするはずだ。
マルチプレイは豊富なルールを収録
Co-op(協力)が好きな人は要チェック!
ストーリーモードのほか,本作にはCo-op(協力)を主体としたマルチプレイが用意されている。マルチプレイには以下のようなモードがあるので軽く説明しよう。
ちなみに難度はストーリーモードと同じくルーキー,ノーマル,リアルから選択可能で,マップは複数用意されている。これらはXbox Liveでのマッチングのほか,画面分割やシステムリンクでのプレイにも対応している。
・協力ストーリー
サードエシュロンの工作員アーチャーと,ロシアの諜報機関「ヴォロン」の工作員ケストレルをそれぞれが操作し,与えられた任務をクリアしていくというもの。ストーリーは,「ロシア国内で盗難にあったEMP兵器が,闇社会に流れる前に奪還せよ」というもので,ストーリーモードとは独立した,オリジナルのシナリオが楽しめる。
四つのチャプターからなるミッションが四種類用意されている。
・ハンター
エリア内の敵すべてを倒せばクリア。敵に見つかると援軍が登場し,難度が上がってしまう。
・ラストスタンド
次々と敵が押し寄せてくる敵を倒しつつ,EMP発生装置を防衛するというもの。プレイした感じは「Ghost Recon: Advanced Warfighter 2」のコープテリトリーにあった「ディフェンド」や「Gears of War 2」の「Horde」に近い印象だ。二人で敵の波状攻撃に対応しつつ,EMP装置を防衛するため,なかなか忙しい。
・フェイスオフ
こちらは唯一の対戦モード。ラストスタンドと同様に次々と敵が出現するのでそれを倒し,スコアを競うというものだ。相手プレイヤーを攻撃してもOK。
・インフィルトレーション
敵に気づかれることなく,エリア内の敵すべてを倒せばクリアとなる。発見されると警報が鳴らされ,その時点でゲームオーバーなので,難度は高め。
これら五つのゲームモードのうち,ハンター,ラストスタンド,そしてインフィルトレーションはソロプレイも可能になっており,それ以外のルールはマルチプレイ専用だ。
とくに盛り上がったのはインフィルトレーション。見つかったら即終了という緊張感と,互いに「ああしようこうしよう」と作戦を練り,それが上手く決まったときの気持ちよさなどがその理由だ。
フェイスオフ以外のルールでは,ダウンした仲間を蘇生させたり,敵に羽交い絞めにされている味方を救出したりと,プレイヤー同士の協力に重点が置かれている。そのため,オンラインで遊ぶときにはボイスチャット必須だろう。ぜひヘッドセットをつけてプレイしてほしい。
また,協力ストーリーはストーリーモードと比較しても遜色ない濃い内容で,こちらもとても面白かった。二人で協力しないと開けられない扉があったり,敵が多く出現する場所があったりと,一人でどうにかできるようなデザインではない。プレイヤー同士がコミュニケーションをとり,しっかり連携していかないとクリアは難しいだろう。
なお,マルチプレイで使用できる武器やコスチュームはストーリーモードの進捗状況を反映しているようで,ゲーム開始前にキャラクターのコスチュームを変えることもでき,コスチュームもアップグレード可能になっている。これには防御力が上昇する「アーマーアップグレード」や,持ち運べる弾薬/ガジェットの数が増える「弾薬アップグレード」「ガジェットアップグレード」といったものがある。カモフラージュのカラーパターンを入手し,見かけを変えるのも面白い。
待たされた分だけの価値は大いにある
今年遊ぶべきタイトルの筆頭
3年ぶりのシリーズ最新作となったコンヴィクションだが,待たされたぶん,システムやストーリーなど,どれをとっても完成度が素晴らしく,ステルスアクションの新たな指針となる作品になるのは間違いなさそうだ。従来作以上にアクション性が増して爽快感も高まり,プレイしていて本当に楽しかった。とくに斬新なマーク&アクションは最高! 優れた演出と巧みなストーリー展開で,プレイヤーをどんどんゲームの世界に引き込んでいき,気がついたら朝を迎えていた,なんてこともあったほどだ。
ローカライズも非常に丁寧だし,日本語音声なのでセリフがそのまま耳に入ってきて,理解しやすい。字幕の表示も可能で,耳から入ってきた情報を目でも補完できるところは親切だ。字幕の切り替わりのタイミングが気持ち早いところがあるのがちょっと気になったが,大きな問題になることではないだろう。
ミッションのレーティングがなくなったのは残念だが,代わりに追加されたP.E.C.チャレンジが内容豊富で,これを全部クリアしてやろうと,筆者は現在2周目をプレイ中だ。初回プレイでは気づかなかったルートを見つけたりして,マップの作り込みにも驚かされている。
マルチプレイは協力プレイがメインで,Co-op好きな筆者としてはかなりポイントが高い。マップやルールも豊富で,気心の知れた友人と遊ぶにはもってこいだろう。インフィルトレーションを遊んだときは,久しぶりに心臓がドキドキして,コントローラーが汗ばんでしまったほどだが,クリアできたときの嬉しさは相当なもの。一つ不満があるとすれば,やはり同時に遊べる人数の少なさだろうか。前作にあったような,チーム同士で遊べるモードもあればよかったと思う。まあ,ここはダウンロードコンテンツでぜひ拡張してほしいと希望しているが,どうだろう。
ストーリーモード,マルチプレイともに充実しており,やりこみ度は十分。非常に優れたパッケージといえるだろう。シリーズのファンはもちろん,ステルスアクションの初心者にも安心な親切な,幅広い層にアピールできる作品となっている。これは間違いなく,今年絶対に遊んでおくべきタイトルの一つだ。
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