インタビュー
「ブラウザ三国志」2年7か月ぶりの運営インタビュー。プロデューサーの杉村剛介氏に,この2年の動きと今後のアップデートについて聞いた
4Gamerではこれまでずっと,年に一度のインタビューで本作の動向をお伝えしてきたが,新型コロナウイルス(COVID- 19)感染症の影響によって,2020年と2021年の2年はそれをお届けすることができずにいた。もちろんその間にもさまざまな要素が追加されているが,「ブラ三」チームの“顔”が見えにくい状況が続いてしまい,不安を抱いているプレイヤーも,もしかしたらいるかもしれない。
そこで,2020年1月よりプロデューサーとして本作の開発,運営を取り持つ杉村剛介氏に,2年7か月ぶりの運営インタビューを実施。2020年から2021年までのブラ三の状況を振り返りながら,今後予定されているアップデートや取り組みについてお話いただいた。
「ブラウザ三国志」公式サイト
2020年から2021年までの「ブラ三」を振り返る
4Gamer:
お久しぶりです。「ブラ三」のインタビューは実に2年7か月ぶりということで,まずは“その間,どんなことをしてこられたか”をお聞きできればと思います。
杉村剛介氏(以下,杉村氏):
まず運営と開発ですが,コロナ禍の影響で,2020年の春からは在宅ワークで対応することが増えてしまいました。作業自体やその進め方にも目まぐるしい変化があり,慣れるまでに半年から年近くかかりましたね。
4Gamer:
具体的はどのあたりが,慣れるまで時間を要したのでしょう。
杉村氏:
やはり,コミュニケーションですね。とくに新しいコンテンツの開発を進めるうえで必要なやり取りがしづらかった。オンラインでのミーティングは顔を合わせて話し合うのとは勝手が違うので,意思疎通には苦労しました。
4Gamer:
サービス面ではどうでしょう。
杉村氏:
元々「ブラ三」は,平日のアクティブ数が高いゲームなのですが,こういった状況下で在宅ワークが推奨されたことの影響は大きいかもしれません。仕事の合間や休憩時間……なかには“仕事中”という人もいらっしゃるかもしれませんが(笑),在宅ワークになってゲームを遊ぶ時間を作りやすくなっているのかなと。
4Gamer:
通勤時間がなくなり,勤務終了直後からが自分の時間になる点も,影響は大きそうですね。
気になるのが,そのプレイヤーたちとのコミュニケーションです。「ブラ三」と言えば運営とプレイヤーとの交流イベントくらいのイメージがあるのですが,対面での開催は難しくなりました。予定されているイベントや,流れてしまったものはあったのでしょうか。
「ブラウザ三国志」の「10周年記念ファン感謝祭」をレポート。10周年アップデートで実施されるワールド統合や新機能追加の詳細が公開に
マーベラスは2019年7月14日,ブラウザゲーム「ブラウザ三国志」のオフラインイベント「10周年記念ファン感謝祭」を東京都内にて開催した。ワールドの統合や追加される新機能といった,会場で発表されたアップデート情報を中心に,イベントの模様をレポートしていこう。
杉村氏:
残念ながら,現状は企画を立てられない状況です。2019年に10周年イベントがあったので,2020年は大きなイベントの実施を予定していたわけではなく,具体的に中止となったものがあるわけではないのですが。
15周年となる2024年には絶対に何かやりたいと考えていますが,それまでに何ができるかは検討を続けます。以前,プレイヤーの皆さんと居酒屋で集まったような小規模のイベントは実施したいのですが……
4Gamer:
こればかりは,今の段階での判断は難しいと。
では,2020年から2021年までに実施されたゲーム内の施策やアップデートについて聞かせてください。
杉村氏:
2020年に実施したもので一番の大きな変化をもたらしたものと言えば,2月に追加した武将カードの最上位レアリティ「SL」(スーパーレジェンド)ですね。
最上位レアリティが更新されるのは5年ぶりだったことはもちろん,副将を2枚セットできることや,実装記念で配布したSL趙娥の武将カードがイラストを含めて好評で,プレイヤーの皆さんに喜んでもらえたかと思います。
4Gamer:
10年以上サービスが続くゲームに新たなレアリティを追加するというのは,ゲームバランスなどの面でなかなか大変な作業ではないですか。
杉村氏:
そうですね。カードのデザインやスキル名を新しく考えるのにも苦労しました。
それまで最上位だったL武将カードは,背景が金色で,さらにアニメーションでキラキラ光るような仕様になっているので,その上のレアリティということでもっとリッチにしなければと,当初はSR武将カードの虹色の背景をキラキラさせようと考えました。
しかし,それは断念せざるを得ませんでした。アニメーションを動かす際の機能的な制限で使える色数に制約があり,虹色をキラキラさせようとしても綺麗に表示されないんですね。最終的に,プラチナに高貴なイメージのある紫を組み合わせたデザインを採用しました。
4Gamer:
スキル名はどんなところに苦労したのでしょうか。
杉村氏:
「騎兵の大○撃」というスキルを例に挙げると,SRだと「騎兵の大“極”撃」,URだと「騎兵の大“神”撃」,Lだと「騎兵の大“天”撃」といったように,レアリティが上がるごとにスキル名もより上位感のあるものへと変化していきます。つまりSLでは“天”よりも上のイメージがなければならないわけで,これを考えるのはかなり大変でしたね。
最終的に,三国志において“天”と同じくらいの位置付けとされる“帝”を採用したんですが,「Lの上であるという印象を持ってもらえるのか?」ということは最後まで迷いがありました。読んだときの響きがよく,結果的には満足できましたけどね。
4Gamer:
次に最上位レアリティを更新するときが大変ですね。
杉村氏:
いずれは直面するかもしれませんが,現状は具体的な予定もないですし,今は考えるのを先延ばしにしています(笑)。
4Gamer:
(笑)。そのほかの,2020年アップデートと言うと。
杉村氏:
ログインボーナスを大幅に改修した,2020年10月実装の「洛陽への路」ですね。それまでログインボーナスは,ゲームのシーズンごとに設定していたんですが,改修後に通算ログインボーナスも追加しました。
これ自体はほかのタイトルでもやっているので珍しくないですが,「ブラ三」はそのタイミングで11年以上運営しているタイトルでしたから,長期のプレイヤーの皆さんのためにも追加したいなと。
4Gamer:
サービス当初から遊んでいる人となると,相当な日数になりますよね。
杉村氏:
通算ログイン日数が4000日を超える方もいらっしゃいます。ただ,洛陽への路では実装後からの通算ログイン日数になるので,そういったプレイヤーの皆さんのことを思うと,もっと早い段階から実装しておきたかったな……と,悔しさを感じる部分も大きいです。
4Gamer:
では,2021年のアップデートについても聞かせてください。
杉村氏:
2021年1月の「争覇ワールド」と「カードカスタマイズ機能」は,ゲームに大きな変化をもたらす新要素となりました。
争覇ワールドは,初期に作ったワールドがなかなか統合できず新陳代謝が起きない状況を鑑み,ワールドの垣根を越えて天下統一を目指す特別な場として用意しました。基本的には,先行ワールドと呼ばれる古いワールドほど強いとされているんですが,争覇ワールドの第1回,第2回ともにw1ワールドは4位でした。
4Gamer:
最古参のワールドが勝てなかったのですか。
杉村氏:
はい。ただ,これは決してw1ワールドが弱かったわけではなく,“w1ワールドが強いからこそ”の結果なんです。ほかの全ワールドが連合を組んでw1ワールドと戦っていたんですね。
また,これはあくまでも制圧ランキングの結果で,そのほかの個人ランキングではw1ワールドのプレイヤーが上位を占めていて。そのため報酬は,いずれのワールドもほぼ同じくらいの量を受け取った形になります。
4Gamer:
もう1つのカードカスタマイズ機能は,どんなものなのでしょうか。
杉村氏:
争覇ワールドの報酬を検討していたときに,あるスタッフから「『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編みたいに,自分の好きなカードを選ぶことができたらいいんじゃないか」というアイデアが出たんです。争覇ワールドは,ある意味で「ブラ三」の世界におけるグリードアイランドのような仮想空間ですから,それは面白いなと。
実際は少しアレンジを加えて,プレイヤーが争覇ワールドで「カードカスタムポイント」を獲得し,それを自分のワールドに持ち帰って,オリジナルの武将カードを作成できる仕様にしたんです。プレイヤーの皆さんからは,なかなか好評でした。
戦略・戦術の幅を広げる「軍議所β版」と「警備デッキ」
4Gamer:
では,「ブラ三」の“これから”についてお聞きしたいと思います。
2022年に入り,2月3日から「大決戦イベント[攻防戦]孟獲からの挑戦状〜軍議所β版先行体験イベント〜」がスタートしました。このイベントで体験できる「軍議所β版」とは,どんなものなのでしょうか。
杉村氏:
軍議所β版は,2021年11月に開催した第3回争覇ワールドにて実装した軍議所α版の結果やアンケートの回答を反映させたものです。
軍議所は,カード育成状況で同盟内の役割が固定化されているプレイヤーに対する,新たなプレイスタイルの提供と,カード育成が進んでいるプレイヤーが,余った資源の使い道に困っているという状況を変えるという目的をもって企画開発した機能です。その余った資源に別の使い道を用意し,ゲーム内でさまざまなことができるようにしたいと。
2月16日にオープンするw32新ワールドから実装を開始し,その他のワールドでも次回のゲーム開始から順次実装を予定しています。
4Gamer:
具体的に,どんなことができるのでしょうか。
杉村氏:
できることは,大きく分けて「号令」「軍備」「農村」「設計」「南蛮」の5つがあります。号令は,発動することで攻撃力や防御力の上昇など,ステータスにさまざまな効果が適用されます。
軍備は,どちらかというと内政のサポートで,施設の建設や兵士作成の時間を短縮するなど,効率よく戦争の準備を進めることができます。また,領地を入手するステータスの「名声」も獲得できます。
農村は,特定の条件を満たすと「村門」を閉門でき,これによって村を破壊されることがなくなり,資源が安全に生産できるようになる機能です。これは戦争に負けた同盟やプレイヤーが,そのあとやることがなくなるという課題をクリアするべく企画しました。
設計は,軍議所実装に伴い新たに追加した施設・拠点の設計図を獲得できるというもので,南蛮は,既存コンテンツの「南蛮襲来」を効率的に進めるためのサポート機能です。
要するに軍議所は,「ブラ三」のプレイを効率的に進めるためのさまざまなサポートをまとめたものなんです。
4Gamer:
α版のときのプレイヤーの反響はいかがでしたか。
杉村氏:
まず我々の反省点として,一度にいろいろ機能を詰め込みすぎたというものがあります。そのため,「分かりにくかった」「全部を試せなかった」という意見が多数寄せられました。
その一方で,やり込んでくださった皆さんの間で,号令の1つでデッキダウン時のHP減少がなくなる「湯薬の号令」が,「操作の煩わしさがなくなった」と非常に好評でした。また,農村の「村門」は,戦争をしないプレイスタイルの同盟に高い評価をいただけています。
4Gamer:
逆に,不評だった部分や,課題点と感じた意見などはありますか。
杉村氏:
軍議所の機能を利用するのに必要な資源量が多く,上位プレイヤーと下位プレイヤーで差が開くという指摘が結構ありました。そこで正式実装の際には,無料ガチャの「ヨロズダス」で出るものに,軍議所を利用できるアイテムを追加します。あとは,軍議所で新たに登場した施設「要塞」ですね。
4Gamer:
どのあたりが課題となったのでしょう。
杉村氏:
空き地であればどこでも建設できて,非常に多くの兵士を送り込むことができる仕様だったんです。しかしその結果,攻撃側が防衛側の本拠地を二重三重に囲むように要塞を建設する,通称“要塞団地”が考案されてしまいました。
これをやられると,防衛側はどうしようもなくなるんです。そこで軍議所β版では,要塞を建設できる領地を限定する修正を施しました。
4Gamer:
そのほかα版から変更された部分はありますか。
杉村氏:
大きいところだと号令の種類を増やしたことですね。
α版では1回につき1つの号令しか発動できなかったため,一度劣勢になると,その同盟は攻撃系の号令に耐えるべく防御系の号令を使わざるを得なくなっていました。つまり,勝っている側がどんどん有利になっていくと。この,一方的な展開を改善するため,β版では攻撃と防御を並立できるよう,複数の号令を同時発動できる仕様にしました。
4Gamer:
正式実装されたとき,ここに着目してほしいというポイントを教えてください。
杉村氏:
このタイミングで正式実装される「警護デッキ」も,ゲームプレイに新たな楽しみ方をを生む新要素になると思うので,反響が楽しみです。
4Gamer:
警護デッキについても詳しく知りたいです。
杉村氏:
武将カードでの防御に特化したデッキになります。プレイヤーによって利用方法はさまざまありますが,個人的に注目している点としては,領地の防衛でしょうか。
これまでは,領地を取り合う攻防での防御手段が,忠誠心の防御力を上げるスキルを使うか,領地取得時の保護期間を利用するしかありませんでした。援軍を送って守ることもできはしましたが,デッキコストの制限といった要因であまり利用されていませんでした。そんな領地の攻防を盛り上げてくれるものになるかなと期待しています。
4Gamer:
α版での反響はどうだったのでしょうか。
杉村氏:
「警護デッキ用の武将を育てていなかった」という意見も多く,α版のときに活用できたプレイヤーは少なかったようですが,できることが増えたという点で,まず好評をいただけました。警護デッキに有効なスキルを持つ武将カードの育成が伸びたというデータもあり,そのあたりでも手応えは感じています。
号令の中に「領地防戦の号令」という,領地にいる民兵の防御力を上げるものがあるので,正式実装時にはこれらの新要素を駆使して,より戦略的な領地戦の攻防を楽しんでほしいですね。
2022年前半は覇勢力の強化とマップの改修を予定
4Gamer:
ほかにも2022年内に予定されているアップデートで,お話しいただけることがあればぜひお願いします。
杉村氏:
現在,2つの企画を進行しています。
1つは,2022年春頃に実装予定の「覇アップデート」です。その名のとおり,覇勢力を強化するアップデートで,既存の覇武将カードを強化できる手段を用意したいと思っています。
まだ詳細はお伝えできないですが,覇武将の特徴であるボーナスポイントやスキル4つ所持がより際立つようなアップデートになります。L覇武将カードの追加もですね。
4Gamer:
UR止まりだった覇勢力の武将カードに,いよいよLが追加されると。
杉村氏:
はい。イラストもすでに準備を始めていて,このラフスケッチの諸葛亮と司馬懿のように,三国志が好きな人なら“これは強い”と感じるようなものを制作中です。
覇勢力の武将カードは,特殊な能力を持つ一方,その個性を活かしきれない部分がありました。今回のアップデートで,このあたりは解消したいと考えています。
4Gamer:
もう一つのアップデートはどんなものになるのでしょう。
杉村氏:
マップの改修です。現状は,基本的に領地の戦力と距離の要素しかありませんが,新たに河川や山岳地帯といった「地形」の概念を入れようと考えています。
これによって,どのルートで進軍すると効率的に攻撃を仕掛けられるか,戦う場所によってどう陣取りをすると有利かといった,戦略や戦術の面で新たな楽しみ方ができるようにしたいと。
4Gamer:
かなり大きく遊び方が変わるアップデートとなりそうですね。覇武将カードのアップデート同時期に行われるのでしょうか。
杉村氏:
いえ。マップの改修は13周年を迎える7月までに実現したいと考えていますが,ゲームを楽しむプレイヤーに大きな影響を与える部分なので,慎重に進めていきます。
長年,プレイヤーの皆さんとコミュニケーションを取ってアップデートしてきたゲームなので,変えていい部分とそうでない部分は心得ています。大事な部分は守りながら,新しい楽しみ方を提供できればと思っています。
4Gamer:
そのほか,さらにサービスを継続するうえで考えていることや課題に思っているものがあれば教えてください。
杉村氏:
UIを改修していく必要があると考えています。年齢層が上がっていることもあって,テキストやボタンが見づらいという声も多くなりましたし,ただでさえ情報量が多いところに新要素もたくさん増えていますから。
これまでも,例えば数字の表記で,“1億1000万”というふうに漢数字を交えるといった工夫もしてきていますが,細かいデータを眺める楽しさは保ちながらも,遊びやすさの面でもう少し改善できるところは変えていきたいなと考えています。
4Gamer:
最後に,読者や「ブラ三」ファンにメッセージをお願いします。
杉村氏:
軍議所を利用することで,同盟内の各プレイヤーの立ち回りも変わってくるので,コミュニケーションを取りながら新たな戦略や戦術を構築していくと非常に面白くなるんじゃないかと期待しています。
β版なので,引き続きプレイヤーの皆さんの意見を取り入れながら調整を行っていきたいと考えています。ヨロズダスにもアイテムを追加するので,こちらも活用してほしいですね。
「ブラ三」は7月に13周年を迎える長寿タイトルですが,開発や運営を担当する人間としてはもちろん,いちプレイヤーとしても同じゲームに13年関わるというのは初めての体験なので,プレイヤーの皆さんと一緒に未知の領域でのさらなる“開拓”を進めていけると嬉しいです。今後も,よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「ブラウザ三国志」公式サイト
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